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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第295話 魔の槍の行方
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「前に、神水を飲んだら魔の力から解放された……よね? また飲ませてみる?」
「そうだな。我としては、このような害しか成さぬ者は、そもそも生かしておく必要もないのだがな……」
表情にこそ出ていないものの、イナリが怒っているのか怖い事を言い出したので、水魔法を操ってトリスタン王子の口の中へ直接水を注ぐ。
「ぐっ……やめっ! くそっ! 何だ、この水はっ! ……ん?」
「さて、神水を飲んだようだし、答えてもらおうか。魔の槍は何処にある」
「いや、そんな槍は知らぬが」
「……どういう事だ? 我の精神支配の力はしっかり効いているのだが」
先程までのトリスタン王子とは違い、イナリを睨みつけるような事はしていない。
宝物庫の奥で黒ずくめの人から話を聞いた時のように、トリスタン王子がイナリの質問に答えているものの……何故か肝心の魔槍の話が聞けない。
宝物庫では、魔槍の在り処について尋ね、トリスタン王子が持っていると答えていたのに。
「お前たちがポートガから盗んだ魔の力を持つ武器の事だ。それは、どこだ?」
「それなら、神殿の中だ」
「……槍もそこにあるのだな?」
「そもそも俺たちは槍など持っていないが」
ダメだ。話が噛み合わない。
イナリも頭を抱えているし。
「あの、もしかしてトリスタン王子は、槍を別の物だと思っているのでは? 黒ずくめの人たちも別行動をしている訳ですし、認識が合っていない人が居る可能性も」
「なるほど。お主がポートガから盗んだ魔の力を持つ物は何だ?」
「あぁ、それなら弓矢だ。さっきも言ったが、神殿にある」
弓矢……そういえば、硬すぎて実用に耐えない、歴史的価値のある黒い弓も盗まれたって、ポートガの騎士さんたちが話していたっけ。
「……槍ではなくて、最初から弓矢だったという事か?」
「そういう事じゃないかしら」
黒い大きな槍だと思っていた物が、黒い大きな矢だった……どうやら、この認識の違いで無駄な押し問答をしてしまったみたい。
なので、早くその弓矢を回収しようと思ったところで、突然神殿に大きな衝撃が走った。
「今のは……何!?」
立っていられない程の衝撃で、私やロレッタさんがその場に蹲り、イナリやコリンが周囲を警戒していると、トリスタン王子が突然笑い出す。
「ふははは……どうやら時間が来たようだな。とんだ茶番劇だった」
つい先程までイナリの目の前にいて質問に答えていたはずなのに、トリスタン王子が……宙に浮いている!?
「と、トリスタン王子!?」
「……何故だ? 奴が再び魔の力に支配されている。魔の力に触れるような事はなかったはずなのに……さっきの衝撃か!?」
「お前たちに教える義理はないな。だが、どうせアニエスが殺すなと、その化け物に甘い事を言っているんだろう? まぁそのお陰で俺様は助かったけどな」
訳がわからず、ただただ茫然としてしまっている中で、宙に浮いたトリスタン王子が腕を振り下ろす。
何をしているのだろう……と思った時には、イナリの腕の中に居て、大きく跳んでいた。
私がついさっきまでしゃがみ込んでいた場所は、床が大きくひしゃげ、目に見えない何かが落下してきたかのようだ。
「魔弓は発動した。古の契約により、今から……俺様が魔王だ」
トリスタン王子がニヤニヤ笑いながら、再び腕を振り下ろした。
「そうだな。我としては、このような害しか成さぬ者は、そもそも生かしておく必要もないのだがな……」
表情にこそ出ていないものの、イナリが怒っているのか怖い事を言い出したので、水魔法を操ってトリスタン王子の口の中へ直接水を注ぐ。
「ぐっ……やめっ! くそっ! 何だ、この水はっ! ……ん?」
「さて、神水を飲んだようだし、答えてもらおうか。魔の槍は何処にある」
「いや、そんな槍は知らぬが」
「……どういう事だ? 我の精神支配の力はしっかり効いているのだが」
先程までのトリスタン王子とは違い、イナリを睨みつけるような事はしていない。
宝物庫の奥で黒ずくめの人から話を聞いた時のように、トリスタン王子がイナリの質問に答えているものの……何故か肝心の魔槍の話が聞けない。
宝物庫では、魔槍の在り処について尋ね、トリスタン王子が持っていると答えていたのに。
「お前たちがポートガから盗んだ魔の力を持つ武器の事だ。それは、どこだ?」
「それなら、神殿の中だ」
「……槍もそこにあるのだな?」
「そもそも俺たちは槍など持っていないが」
ダメだ。話が噛み合わない。
イナリも頭を抱えているし。
「あの、もしかしてトリスタン王子は、槍を別の物だと思っているのでは? 黒ずくめの人たちも別行動をしている訳ですし、認識が合っていない人が居る可能性も」
「なるほど。お主がポートガから盗んだ魔の力を持つ物は何だ?」
「あぁ、それなら弓矢だ。さっきも言ったが、神殿にある」
弓矢……そういえば、硬すぎて実用に耐えない、歴史的価値のある黒い弓も盗まれたって、ポートガの騎士さんたちが話していたっけ。
「……槍ではなくて、最初から弓矢だったという事か?」
「そういう事じゃないかしら」
黒い大きな槍だと思っていた物が、黒い大きな矢だった……どうやら、この認識の違いで無駄な押し問答をしてしまったみたい。
なので、早くその弓矢を回収しようと思ったところで、突然神殿に大きな衝撃が走った。
「今のは……何!?」
立っていられない程の衝撃で、私やロレッタさんがその場に蹲り、イナリやコリンが周囲を警戒していると、トリスタン王子が突然笑い出す。
「ふははは……どうやら時間が来たようだな。とんだ茶番劇だった」
つい先程までイナリの目の前にいて質問に答えていたはずなのに、トリスタン王子が……宙に浮いている!?
「と、トリスタン王子!?」
「……何故だ? 奴が再び魔の力に支配されている。魔の力に触れるような事はなかったはずなのに……さっきの衝撃か!?」
「お前たちに教える義理はないな。だが、どうせアニエスが殺すなと、その化け物に甘い事を言っているんだろう? まぁそのお陰で俺様は助かったけどな」
訳がわからず、ただただ茫然としてしまっている中で、宙に浮いたトリスタン王子が腕を振り下ろす。
何をしているのだろう……と思った時には、イナリの腕の中に居て、大きく跳んでいた。
私がついさっきまでしゃがみ込んでいた場所は、床が大きくひしゃげ、目に見えない何かが落下してきたかのようだ。
「魔弓は発動した。古の契約により、今から……俺様が魔王だ」
トリスタン王子がニヤニヤ笑いながら、再び腕を振り下ろした。
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