日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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4.蒼月外交、世界へ

ホワイトハウスの動揺

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1942年(昭和17年)1月2日――
ワシントンD.C. ホワイトハウス大統領執務室。

アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトは、国務長官コーデル・ハルから手渡された一通の電報に目を落としていた。

「貴国に対し、日本として軍事的勝利を目的としない、
“戦争を終わらせるための秩序交渉”の意志あり――
我が国としては、貴国国民の良識と民主主義を信じるがゆえに、
対話の余地を残すべきと考える」

署名:蒼月レイ、日本帝国大学・戦略研究所

ハルが語る。

「これは、ただの少年の“意見”ではありません。
この文章には、軍略、心理、法、外交……あらゆる理論が折り重なっています。
正直に申し上げて、読んでいるうちに、“書き手が14歳だということを忘れた”ほどです」

ルーズベルトは書簡を伏せ、静かに呟いた。

「……我々に“勝てる戦争”をやめる理由はない。
だが、“続ける理由”が揺らぎ始めたら、それが最も危険な兆候だ」



米国務省では、すでにレイの演説全文(第12章)が英訳され、新聞社・ラジオ局に“自主的に”渡っていた。

ニューヨーク・タイムズ紙は一面で報じる。

「The Boy Who Spoke Before the Bullet
(銃口の前で語った少年)」
「日本に、“思想”で動く存在がいる」

ハーバード大学の政治学教授チャールズ・ボーマンは、BBCのラジオ番組でこう語った。

「この少年は、国家を破壊しようとしているのではない。
国家を、“本来の姿”に戻そうとしている。
戦争とは、制度の狂気が人を殺す過程であるが――
彼は、制度より先に“思想”を打ち込んできた」



ホワイトハウス内では、政権中枢を揺るがす議論が始まっていた。

副大統領ヘンリー・ウォレス
「レイは日本の国民的支持を得ている。つまり、彼を通じた講和は“国民が受け入れる形”で可能になるかもしれない」

軍参謀総長ジョージ・マーシャル
「しかしこれは、“攻撃された側が講和を持ちかけられる”という屈辱だ。戦況では我々が優勢にある」

財務長官モーゲンソー
「ならば、逆に今、“最小限の損害”で講和する方が、将来的な国力の温存になる」

そして――

ハル国務長官は、ルーズベルトに静かに告げた。

「彼の提案に直接乗るのは難しい。だが、“交渉の窓口を閉じない”という姿勢だけでも、
今後の展開で我々の“正義”を保つことができます」



一月三日、アメリカ国務省は非公式声明を発表。

「戦争における主敵は、日本の軍事政権であり、
それ以外の内部的変革と交渉の兆しには、国際社会の観察が必要である」

事実上の“対話拒否ではない”姿勢。
これは、レイの電報がアメリカの政策軸をわずかに揺らがせた証だった。



東京。

その声明が極秘裏に届いたのは、蒼月レイが14歳の誕生日からわずか二日後のことだった。

久坂が読み上げる。

「……交渉を“否定しない”。アメリカがそう言った。君の言葉が届いたんだ」

レイは黙って、手元の地図を見つめた。
日本とアメリカの間に引かれた線を、細いペンで消していく。

「まだ終わってない。
でも、“一発の銃弾より重い言葉”が、やっと海を渡った」

そう呟いたレイの横顔に、決して14歳には見えない鋭い光が宿っていた。
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