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4.蒼月外交、世界へ
亡命ジャーナリストの証言
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1942年(昭和17年)1月5日。
スイス・ジュネーブ。
国際赤十字本部で開かれた非公式記者会見に、一人の元日本人が姿を現した。
名は――中嶋敬一郎(なかじま・けいいちろう)。
元「東京日報」特派員。上海・南京戦線を取材し、その後に政府方針を批判して国外亡命。現在はロンドンで日本政治の分析記事を執筆していた。
彼が提出したのは、100ページを超える報告書だった。
『帝国に現れたもう一つの“政府” ― 蒼月レイという構造』
⸻
「日本に“もう一つの戦略中枢”が存在する。それは国家機関ではなく、一人の少年で構成されている」
会見で語られた中嶋の証言は、欧米の記者たちを静まり返らせた。
「彼は軍に命令はできない。だが、軍が命令を聞いてしまうほどの論理を持つ。
政治に投票はできない。だが、民衆が彼の演説を聞いて立ち上がる。
彼は制度の上に立たず、制度の“上位概念”である“思想”によって帝国を支配している」
この“思想による権力”という概念は、欧米の政治家・学者たちに大きな衝撃を与えた。
⸻
オックスフォード大学 政治哲学研究者 アイザイア・バーリンは、BBCのラジオ番組で語った。
「我々が“権力”と呼ぶものは制度の中にある。
だが、彼は制度の外から制度を曲げている。これは“非制度的民主主義”だ。
一国の運命を、制度外の少年が導く――そんな事態は、歴史上前例がない」
⸻
ニューヨーク。
元大統領ハーバート・フーヴァーがコロンビア大学で行った講演の中で、蒼月レイに言及した。
「日本は狂信の帝国ではない。“内部から進化しようとする意志”を持った者が、存在する。
もし彼が真に主導権を握ったとすれば、日本は敵でありながら、“未来の模範”となる可能性を秘めている」
⸻
一方、東京。
外務省の情報課には、欧米で報道されたレイの名に関する資料が山積していた。
「……これほどまでに、一個人が国際世論を動かすとは」
重光葵外務次官は、報告書をめくりながら呟いた。
「彼は、日本という国家の“盾”であると同時に、我々の“暴走”を止める唯一の手綱だ。
手放せば、外からも内からも、我々は“正義”を失う」
⸻
レイ本人は、静かに新聞の英字記事を眺めていた。
「……顔も知らない人たちが、僕の言葉を読んで、何かを信じようとしてくれてる。
それは、“戦争の向こう側”にある繋がりなんだと思う」
久坂が問う。
「怖くないのか? 自分が何億人の“心の中”にいるなんて」
「怖いよ。でも、それ以上に……嬉しい」
レイは、14歳の笑みを浮かべた。
それは、言葉が通じたという実感に満ちていた。
⸻
その夜、レイは日記にこう記した。
「僕という存在が、“銃”よりも遠くへ届くならば――
それはきっと、戦争よりも強い希望だ」
スイス・ジュネーブ。
国際赤十字本部で開かれた非公式記者会見に、一人の元日本人が姿を現した。
名は――中嶋敬一郎(なかじま・けいいちろう)。
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彼が提出したのは、100ページを超える報告書だった。
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政治に投票はできない。だが、民衆が彼の演説を聞いて立ち上がる。
彼は制度の上に立たず、制度の“上位概念”である“思想”によって帝国を支配している」
この“思想による権力”という概念は、欧米の政治家・学者たちに大きな衝撃を与えた。
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オックスフォード大学 政治哲学研究者 アイザイア・バーリンは、BBCのラジオ番組で語った。
「我々が“権力”と呼ぶものは制度の中にある。
だが、彼は制度の外から制度を曲げている。これは“非制度的民主主義”だ。
一国の運命を、制度外の少年が導く――そんな事態は、歴史上前例がない」
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ニューヨーク。
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「日本は狂信の帝国ではない。“内部から進化しようとする意志”を持った者が、存在する。
もし彼が真に主導権を握ったとすれば、日本は敵でありながら、“未来の模範”となる可能性を秘めている」
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一方、東京。
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「……これほどまでに、一個人が国際世論を動かすとは」
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手放せば、外からも内からも、我々は“正義”を失う」
⸻
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「……顔も知らない人たちが、僕の言葉を読んで、何かを信じようとしてくれてる。
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「怖くないのか? 自分が何億人の“心の中”にいるなんて」
「怖いよ。でも、それ以上に……嬉しい」
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それは、言葉が通じたという実感に満ちていた。
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それはきっと、戦争よりも強い希望だ」
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