日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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24.世界秩序の建築者

焦土に花を

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1943年4月。

戦争は続いている。ドイツは崩れかけながらも、なお粘り、ナチス政権は末期の狂気に囚われながら権力を握り続けていた。
だが、すでに敗北の色は濃い。
イタリアの降伏からひと月。欧州全土に流れる“戦後”の気配を、レイは見逃さなかった。

──焦土に、未来の種を。

東京に戻ったレイは極秘裏に、ある構想を進めていた。
それは「欧州復興支援計画」――アメリカに先んじる、日本主導の戦後構想だった。

「欧州は、まだ滅びていない。たとえ都市が焼けようとも、思想や文化の炎までは消えていない」

帝国議会の地下に設けられた非公開の会議室。そこに集められたのは、外交官、経済技官、そして“未来の設計者”たちだった。
レイは地図を指しながら、静かに言った。

「我々が援助を始めるのは、終戦“後”だ。だが、準備は“今”しかできない。
 終わってから考える者たちは、すでに遅れている」

資料の一部には、ドイツ国内の知識人たち――ナチスに反発し、地下で活動している旧社会民主派や宗教指導者の名前が記されていた。
彼らの存在をレイは“種子”と呼んだ。

「破壊ではなく、再建を主導する。勝者が敗者を裁く戦後ではなく、共に未来を築く戦後を目指す。そのためには、正義より“構造”が必要だ」

ある参謀が疑問を口にした。

「ドイツ人を信用するのですか? ナチスが生き延びる可能性は?」

「体制と民族は別だ。あの国にも、命を賭してヒトラーに抗った者たちがいる。日本が彼らを信じねば、誰が焦土に花を咲かせるのか」

その言葉は、静かながらも強い波紋を広げた。

――

同時期、アメリカとの対話も継続されていた。
ホノルルでの会談以来、日米関係はかつてないほど緊密になった。
だが、それは同時に、距離の近さゆえの“競合”の芽も生む。

ワシントンD.C.から届いた1通の報告書には、こう記されていた。

「日本の構想は、明らかに米国の戦後戦略を先取りしている。
友好国であることは間違いないが、指導権を巡る摩擦の火種となり得る」

それを読んだレイは、わずかに目を細めた。

「……世界を導く者は、一人であってはならない。
 だが、“先に歩く者”は必要だ。日本は、その道を選んだだけだ」

レイは桜に目を向けた。
彼女は一歩下がって、それでも確かに“隣”にいた。

「桜。世界は、もうすぐ“戦後”になる。けれど、“平和”にはならない。今度は“経済”が、次の戦争を始めるだろう」

「だから、あなたが“設計”するのね」

「……ああ。成長による平和を、戦争ではなく、繁栄で人を繋げる世界を」

レイは立ち上がった。机の上には、真新しい外交文書。
その表紙にはこう記されていた。

『欧州復興支援構想草案 ―E.R.S.P.―』

Economic Reconstruction Support Plan。略して“ERSP”。

未来に花を咲かせるための、日本の種蒔きが、いま始まった。
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