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聖女様の取り合い
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結局、話をまとめると、貴族間での争いになりそうだと結論。
原因は「聖女様の取り合い」だと思われる。
町長はすっかり頭を抱えてしまって動かない。
同じ領地内の長たちに、どう知らせるか思い浮かばないのだろう。
道具屋のじいさんの読みだと、隣の国の介入もあり得る。
昨年、隣国の同じ様に隠居した、行商人仲間からの笑い話で「こっちの王子とそっちの聖女が往来で喧嘩していた」のを思い出したからだ。
牧師と薬師二人は苦り切った顔だ、しかも否定しない。
似たような話を、どこからか聞いているのだろう。
その隣国は代々版図を広げる事に熱心で、この国とも五十年前まで小競り合いをしていた。
今の隣国は未だに、別の国々とやり合った戦後処理に追われている。
こちらの国には、今の所"まだ"ちょっかいをかけて来ていない。
もし戦争になるとしても、昔のように騎士や兵士だけで砦の取り合いが関の山だろう。
それでも税の徴収があるのは、予想はつく。
その対策も考えなければ。
この場の話が大きくなりすぎて、ほとんどの者がついていけない。
とにかく詳しい話が分からないので、ここは町長に領主の所に突撃してもらおうとなった。
可哀想なほど震え、真っ白になる町長。
さすがに住民も付き添いで領主館へ行く事になったが、一緒に逝きたい奴なんている訳が無い。
くじ引きで決める事にしたが、何かあった時町長を担いで逃げれる、体格の良い面子でのくじ引きだ。
体格と見た目的には薬師が一番最適で本人も希望したが、職業的に居残りを寄ってたかって決定された。
結果。
武器屋兼鍛冶屋の若旦那、貸荷馬車屋の店員の二人に決まった。
参加したがった薬師は、粘り勝ちで座席を確保した。
筋肉を主張する、謎の粘りではあったが。
「では明日、朝一番で町長宅で、雪が降ったら延期にしましょう」
「そうじゃな、集会は明後日でいいじゃろう。また教会で集まっても良いかの?」
「もちろんです。いつでも使って下さい。但しお酒の持ち込みはナシですよ?」
「麦のジュースじゃと何度も」
「麦のお茶だと何度も」
「果物を漬けた汁だと」
「はい、ダメですよ」
立ち上がりパンパンと手を叩き、牧師がお開きを宣言する。
すでに本気で泣き始めている町長から、皆そっと目を逸らす。
生きて帰って来いよと、心の中で祈る一同。
教会から出る前に、皆で町長の為に神様に祈ったのは無駄にはならないハズ。
町長にとって残念な事だが、綺麗に晴れた。
早朝にも関わらず多くの住人が集まった。
一応慕われている町長。尊敬とはまた違うのだが。
好かれている事には変わりない。
当日のうちに領主と話が出来るかは、領主の都合次第。
その為、面会の際は一日仕事だ。
面会できなくても夜までには戻って来れるだろうと、馬車を見送る。
子供達が町の入り口で、見張りに立ってくれる事になった。
見張りと言っても、通行門のそばで遊んでいるだけだが。
その日町は一日中、ソワソワした男衆がウロウロしてる一日だった。
女衆はいつも通りに過ごしている。
パンを焦がしたのはお針子の娘だけだ。
なかなか火加減の調節が上達しないので、通常通りとも言える。
恋人はいるので、まぁ結婚は大丈夫だろう。
誰もが落ち着かないまま、皆早めの夕食をとる。
見張りの子供達も、もうすでに家に戻っている。
明日晴れたら、教会へ。
もどかしい気持ちのまま、何となく町の門まで集まってくる住民達。
日が落ちる前に町長の馬車が戻って来た。
一同がほっとするのと同時に、無事が気になる。
馬車の御者が大きく手を振ってくる。
近くなると、表情もはっきりしてきた。
笑顔とまでは言えないが、大丈夫そうだ。
町の門で馬車を止める、中から今日の朝見送った面々が降りてくる。
全員無事!
しかし顔色が悪い。とても悪い。
「明日、教会に集まってくれ。全員とは言わないが、女衆も出来る限り集まってくれ」
朝よりげっそりと痩せたような町長が、声を振り絞る様に話す。
その顔色と声に住民達は今日の面会での話が、悪い方向で当たった事を悟る。
集会の日は薄曇りで寒い日だった。
跡継ぎの息子を隣に座らせ、真っ青な顔の町長が喋り出す。
参加者全員、黙って椅子に座っていた。
「今日は寒い所を集まってくれてありがとう」
「昨日、領主様の所へ陳情に行ってきた。」
「町に滞在している傭兵数人が、花蝶宿の従業員多数に怪我を負わせた件だ。姉さん達は軽い症状で顔の青あざ、重いもので……腕と腰の骨折だ」
「うう、ひでぇ」
「なんてこと!」
「酷い」
「えげつねぇ」
「うわぁ」
「骨折って、治るのどのくらいかかるんだよ……」
女衆の悲鳴と、ざわめきが広がる。
町長は静める様に手を上げ、話を続ける。
「もちろん、余りに酷いので町から治療費を出す事にした。異議があれば、後で私の所に来て欲しい」
「そして、これからが本題だが」
深呼吸を何度か繰り返す。
気の弱い町長は、無い勇気を振り絞って一気に話す。
「ご領主様は。早ければ雪が解けてすぐか、遅くても夏までに他領に兵を率いて攻め入るかもしれない」
「貴族に派閥があるのは、皆知っていると思う。ご領主様は中立派だったのが、王族派にご参加される予定だ。」「攻め入る領地は未定だそうだが、私兵と傭兵団と」
一呼吸おき、俯きながらも大きな声で言い切る。
「一般兵を募集する御積もりらしい」
「ちょ、町長!一般兵って!?」
原因は「聖女様の取り合い」だと思われる。
町長はすっかり頭を抱えてしまって動かない。
同じ領地内の長たちに、どう知らせるか思い浮かばないのだろう。
道具屋のじいさんの読みだと、隣の国の介入もあり得る。
昨年、隣国の同じ様に隠居した、行商人仲間からの笑い話で「こっちの王子とそっちの聖女が往来で喧嘩していた」のを思い出したからだ。
牧師と薬師二人は苦り切った顔だ、しかも否定しない。
似たような話を、どこからか聞いているのだろう。
その隣国は代々版図を広げる事に熱心で、この国とも五十年前まで小競り合いをしていた。
今の隣国は未だに、別の国々とやり合った戦後処理に追われている。
こちらの国には、今の所"まだ"ちょっかいをかけて来ていない。
もし戦争になるとしても、昔のように騎士や兵士だけで砦の取り合いが関の山だろう。
それでも税の徴収があるのは、予想はつく。
その対策も考えなければ。
この場の話が大きくなりすぎて、ほとんどの者がついていけない。
とにかく詳しい話が分からないので、ここは町長に領主の所に突撃してもらおうとなった。
可哀想なほど震え、真っ白になる町長。
さすがに住民も付き添いで領主館へ行く事になったが、一緒に逝きたい奴なんている訳が無い。
くじ引きで決める事にしたが、何かあった時町長を担いで逃げれる、体格の良い面子でのくじ引きだ。
体格と見た目的には薬師が一番最適で本人も希望したが、職業的に居残りを寄ってたかって決定された。
結果。
武器屋兼鍛冶屋の若旦那、貸荷馬車屋の店員の二人に決まった。
参加したがった薬師は、粘り勝ちで座席を確保した。
筋肉を主張する、謎の粘りではあったが。
「では明日、朝一番で町長宅で、雪が降ったら延期にしましょう」
「そうじゃな、集会は明後日でいいじゃろう。また教会で集まっても良いかの?」
「もちろんです。いつでも使って下さい。但しお酒の持ち込みはナシですよ?」
「麦のジュースじゃと何度も」
「麦のお茶だと何度も」
「果物を漬けた汁だと」
「はい、ダメですよ」
立ち上がりパンパンと手を叩き、牧師がお開きを宣言する。
すでに本気で泣き始めている町長から、皆そっと目を逸らす。
生きて帰って来いよと、心の中で祈る一同。
教会から出る前に、皆で町長の為に神様に祈ったのは無駄にはならないハズ。
町長にとって残念な事だが、綺麗に晴れた。
早朝にも関わらず多くの住人が集まった。
一応慕われている町長。尊敬とはまた違うのだが。
好かれている事には変わりない。
当日のうちに領主と話が出来るかは、領主の都合次第。
その為、面会の際は一日仕事だ。
面会できなくても夜までには戻って来れるだろうと、馬車を見送る。
子供達が町の入り口で、見張りに立ってくれる事になった。
見張りと言っても、通行門のそばで遊んでいるだけだが。
その日町は一日中、ソワソワした男衆がウロウロしてる一日だった。
女衆はいつも通りに過ごしている。
パンを焦がしたのはお針子の娘だけだ。
なかなか火加減の調節が上達しないので、通常通りとも言える。
恋人はいるので、まぁ結婚は大丈夫だろう。
誰もが落ち着かないまま、皆早めの夕食をとる。
見張りの子供達も、もうすでに家に戻っている。
明日晴れたら、教会へ。
もどかしい気持ちのまま、何となく町の門まで集まってくる住民達。
日が落ちる前に町長の馬車が戻って来た。
一同がほっとするのと同時に、無事が気になる。
馬車の御者が大きく手を振ってくる。
近くなると、表情もはっきりしてきた。
笑顔とまでは言えないが、大丈夫そうだ。
町の門で馬車を止める、中から今日の朝見送った面々が降りてくる。
全員無事!
しかし顔色が悪い。とても悪い。
「明日、教会に集まってくれ。全員とは言わないが、女衆も出来る限り集まってくれ」
朝よりげっそりと痩せたような町長が、声を振り絞る様に話す。
その顔色と声に住民達は今日の面会での話が、悪い方向で当たった事を悟る。
集会の日は薄曇りで寒い日だった。
跡継ぎの息子を隣に座らせ、真っ青な顔の町長が喋り出す。
参加者全員、黙って椅子に座っていた。
「今日は寒い所を集まってくれてありがとう」
「昨日、領主様の所へ陳情に行ってきた。」
「町に滞在している傭兵数人が、花蝶宿の従業員多数に怪我を負わせた件だ。姉さん達は軽い症状で顔の青あざ、重いもので……腕と腰の骨折だ」
「うう、ひでぇ」
「なんてこと!」
「酷い」
「えげつねぇ」
「うわぁ」
「骨折って、治るのどのくらいかかるんだよ……」
女衆の悲鳴と、ざわめきが広がる。
町長は静める様に手を上げ、話を続ける。
「もちろん、余りに酷いので町から治療費を出す事にした。異議があれば、後で私の所に来て欲しい」
「そして、これからが本題だが」
深呼吸を何度か繰り返す。
気の弱い町長は、無い勇気を振り絞って一気に話す。
「ご領主様は。早ければ雪が解けてすぐか、遅くても夏までに他領に兵を率いて攻め入るかもしれない」
「貴族に派閥があるのは、皆知っていると思う。ご領主様は中立派だったのが、王族派にご参加される予定だ。」「攻め入る領地は未定だそうだが、私兵と傭兵団と」
一呼吸おき、俯きながらも大きな声で言い切る。
「一般兵を募集する御積もりらしい」
「ちょ、町長!一般兵って!?」
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