30 / 74
第2章
封印
しおりを挟む
練習場に、叔父様の声が広がります。
「いきなり石を作るのではなく、まず、封印することから始めてみるがいい」
叔父様は私から少し離れて、教えてくださいました。
「自分の魔力の流れを感じなさい」
深く染みとおる声に促され、私は目を閉じて自分の魔力に意識を巡らせます。
まるで血の流れのように、全身に隈なく魔力が行き渡っているのが感じ取れます。
「シルヴィ、その魔力の流れを止めるように抑えつけることを想像してごらん」
刹那、私の全てが凍り付いたように固まりました。
魔力が固まっただけでなく、血の流れすら止まったように、息もできません。目を開けることもできません。身動きができず、意識も固まり、抑えつけることを止める方法を考えることすらできません。
恐怖が私に駆け巡ります。
そのとき、閉じた瞼の裏で銀の光を感じました。
すっと叔父様の魔力が体に入り込みます。
厳しいほどの清らかな魔力が、抑えつけていた私の魔力を解かし、一部は魔素にまで戻っていきます。
息ができるようになり、衝撃の反動から崩れ落ちそうになる私を、叔父様が腕を伸ばし抱え込んでくださいます。
息が整わず、お礼も口に出せない私に、叔父様は治癒をかけて下さいます。
私の命の光が強さを増し、魔力が再び行き渡ります。
「危険、という意味が分かりました」
笑う気配が頭の上でしました。支えなしに一人で体を支え、叔父様を見たときには、いつも通りのお顔だったのですが。
「石を作ってみなさい」
私は頷き、息を吸い込み、再び目を閉じました。両手を掲げて先ほどの魔法を思い返します。
――ッ!
恐怖で魔法が途切れました。体が強張っています。息が上がっています。
「シルヴィ。私がいる。必ず、私がお前を助ける。必ず」
瞳を閉じた私の世界に叔父様の声が現れました。
するりと体から力が抜けました。そうです、叔父様が付いていて下さるのです。
もう一度息を吸い込み、両手に魔法を集めます。瞬間、大量の魔力が手から溢れ、光を放ちながら組み立てられていくのを感じます。
「よくやった。見事な組み立てだ。完全な完璧な封印石だ」
ふらついた私を、再度、背後から抱え込み、叔父様が褒めて下さいました。叔父様の魔力で石が浮かべられています。
「これでいつでも卒業できるな。シルヴィ、おめでとう」
私に回された腕から、温かな魔力が染み込んできます。
治癒の力が大きくなりすぎて、学園に入ることが決まった日を思い出しました。
――「部屋に閉じこもっても、泣いても、何にもならないぞ。」
――「これから、お前が変えていくんだ。」
「叔父様、私は変えることができたのですね」
叔父様は私の頭に口づけを落としました。熱いほどの魔力が一瞬私に入り込みます。
「そうだ。見事なまでに」
目から溢れそうなものを見られたくなくて、私は体を回して叔父様に抱き着きました。
「叔父様、いつもありがとうございます。大好きです」
今度は、確かに笑い声が頭の上で響きます。顔を上げると、叔父様が満面の笑みを浮かべています。輝くような笑みに私は意識が飛ぶような気がしました。
やはり覆面は必要です。確かに。
叔父様は笑顔を収めて、私を見つめました。私の意識が戻ってきます。
「さて、シルヴィ、お前の叔父からの頼みを聞いてほしい」
「何なりと」
叔父様のためなら、全力で何でもするつもりです。叔父様は口角を微かに上げました。
なぜでしょう、何か、嫌な予感がします。
「その封印石は使わないでほしいのだ」
え…?
「発動したときの解除が一人でできるとは限らない」
あ…
徐々に私の気持ちの高ぶりが冷めていきます。
叔父様は私の頤を軽く持ち上げ、濃い青の瞳で私の意識をからめとります。
「私のいないところで発動することを考えると、私は不安で何も手が付かないだろう」
明らかに戯れを含みつつ、それでも微かに不安を魔力に滲ませて叔父様は私を包囲してきます。
「シルヴィ、その封印石はこの箱にしまっておくれ」
現れた銀の光の玉から黒い木でできた箱が浮かび上がります。
叔父様は箱まで用意なさっていたのです。
私は負けました。
確かに解除が一人でできるとは限りません。私は溜息をつきながら、箱に入れたのです。
「ありがとう、シルヴィ。これで私は安心だ」
今度は嬉しさがあふれ出た笑みを浮かべ、叔父様は私の意識をさらいます。
次から叔父様には覆面をしてお越しいただきましょう。絶対に。
その後、叔父様の助言で、魔力が溢れた時に光る石を作り、これを私の封印石とすることにしました。
今までの叔父様の封印石も、溢れた魔力で光り、その光で魔力を私に押し戻す組み立てになっていたそうです。
「もう今のお前なら、光を見れば力を収めることができる。石は光るだけで大丈夫だ」
私の額に口づけて柔らかな魔力を送り込み、叔父様は保証してくださいました。
「始めからこちらを教えて下さればよかったのに…」
こぼれ出た不満に、叔父様は楽しさを抑えきれないという笑顔を返しました。
覆面をしてください!今すぐにでも!
必死に意識をつなぐ私に叔父様は言葉を紡ぎます。
「試さなければ、お前は納得しなかっただろう」
確かに。
気が付けば私は叔父様と笑いあっていました。
「いきなり石を作るのではなく、まず、封印することから始めてみるがいい」
叔父様は私から少し離れて、教えてくださいました。
「自分の魔力の流れを感じなさい」
深く染みとおる声に促され、私は目を閉じて自分の魔力に意識を巡らせます。
まるで血の流れのように、全身に隈なく魔力が行き渡っているのが感じ取れます。
「シルヴィ、その魔力の流れを止めるように抑えつけることを想像してごらん」
刹那、私の全てが凍り付いたように固まりました。
魔力が固まっただけでなく、血の流れすら止まったように、息もできません。目を開けることもできません。身動きができず、意識も固まり、抑えつけることを止める方法を考えることすらできません。
恐怖が私に駆け巡ります。
そのとき、閉じた瞼の裏で銀の光を感じました。
すっと叔父様の魔力が体に入り込みます。
厳しいほどの清らかな魔力が、抑えつけていた私の魔力を解かし、一部は魔素にまで戻っていきます。
息ができるようになり、衝撃の反動から崩れ落ちそうになる私を、叔父様が腕を伸ばし抱え込んでくださいます。
息が整わず、お礼も口に出せない私に、叔父様は治癒をかけて下さいます。
私の命の光が強さを増し、魔力が再び行き渡ります。
「危険、という意味が分かりました」
笑う気配が頭の上でしました。支えなしに一人で体を支え、叔父様を見たときには、いつも通りのお顔だったのですが。
「石を作ってみなさい」
私は頷き、息を吸い込み、再び目を閉じました。両手を掲げて先ほどの魔法を思い返します。
――ッ!
恐怖で魔法が途切れました。体が強張っています。息が上がっています。
「シルヴィ。私がいる。必ず、私がお前を助ける。必ず」
瞳を閉じた私の世界に叔父様の声が現れました。
するりと体から力が抜けました。そうです、叔父様が付いていて下さるのです。
もう一度息を吸い込み、両手に魔法を集めます。瞬間、大量の魔力が手から溢れ、光を放ちながら組み立てられていくのを感じます。
「よくやった。見事な組み立てだ。完全な完璧な封印石だ」
ふらついた私を、再度、背後から抱え込み、叔父様が褒めて下さいました。叔父様の魔力で石が浮かべられています。
「これでいつでも卒業できるな。シルヴィ、おめでとう」
私に回された腕から、温かな魔力が染み込んできます。
治癒の力が大きくなりすぎて、学園に入ることが決まった日を思い出しました。
――「部屋に閉じこもっても、泣いても、何にもならないぞ。」
――「これから、お前が変えていくんだ。」
「叔父様、私は変えることができたのですね」
叔父様は私の頭に口づけを落としました。熱いほどの魔力が一瞬私に入り込みます。
「そうだ。見事なまでに」
目から溢れそうなものを見られたくなくて、私は体を回して叔父様に抱き着きました。
「叔父様、いつもありがとうございます。大好きです」
今度は、確かに笑い声が頭の上で響きます。顔を上げると、叔父様が満面の笑みを浮かべています。輝くような笑みに私は意識が飛ぶような気がしました。
やはり覆面は必要です。確かに。
叔父様は笑顔を収めて、私を見つめました。私の意識が戻ってきます。
「さて、シルヴィ、お前の叔父からの頼みを聞いてほしい」
「何なりと」
叔父様のためなら、全力で何でもするつもりです。叔父様は口角を微かに上げました。
なぜでしょう、何か、嫌な予感がします。
「その封印石は使わないでほしいのだ」
え…?
「発動したときの解除が一人でできるとは限らない」
あ…
徐々に私の気持ちの高ぶりが冷めていきます。
叔父様は私の頤を軽く持ち上げ、濃い青の瞳で私の意識をからめとります。
「私のいないところで発動することを考えると、私は不安で何も手が付かないだろう」
明らかに戯れを含みつつ、それでも微かに不安を魔力に滲ませて叔父様は私を包囲してきます。
「シルヴィ、その封印石はこの箱にしまっておくれ」
現れた銀の光の玉から黒い木でできた箱が浮かび上がります。
叔父様は箱まで用意なさっていたのです。
私は負けました。
確かに解除が一人でできるとは限りません。私は溜息をつきながら、箱に入れたのです。
「ありがとう、シルヴィ。これで私は安心だ」
今度は嬉しさがあふれ出た笑みを浮かべ、叔父様は私の意識をさらいます。
次から叔父様には覆面をしてお越しいただきましょう。絶対に。
その後、叔父様の助言で、魔力が溢れた時に光る石を作り、これを私の封印石とすることにしました。
今までの叔父様の封印石も、溢れた魔力で光り、その光で魔力を私に押し戻す組み立てになっていたそうです。
「もう今のお前なら、光を見れば力を収めることができる。石は光るだけで大丈夫だ」
私の額に口づけて柔らかな魔力を送り込み、叔父様は保証してくださいました。
「始めからこちらを教えて下さればよかったのに…」
こぼれ出た不満に、叔父様は楽しさを抑えきれないという笑顔を返しました。
覆面をしてください!今すぐにでも!
必死に意識をつなぐ私に叔父様は言葉を紡ぎます。
「試さなければ、お前は納得しなかっただろう」
確かに。
気が付けば私は叔父様と笑いあっていました。
1
あなたにおすすめの小説
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる