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見送り
しおりを挟む飯を挟んで夜迄ハーク達をウォッチして、本日の業務は終了となる。飯を食って横になるだけの簡単なお仕事だが、音が聞こえないながらも彼等の計画は見えた。
どうやら少数で要塞を落としたいようで、国葬が始まる前に終わらせてしまいたいと考えているようだ。今から兵を集めるには時間が無いし、敵対貴族を城に抱えたままでの出征は、大手を振って行く訳に行かん。戦闘に紛れてハーク達を殺し、適当な傀儡を擁立され兼ねんからだ。
「歯痒いな…」
小さく独り言ちると左右に纏わる温もりが蠢き、俺の毛布を奪う。肌寒さを覚えて起き上がり、風呂へと向かった。
湯に浸かり、目を瞑る。見守ると決めた以上、ヤキモキする心を耐えねばならん。それは分かってる。指がシワシワになる程長湯して、それでもモヤモヤは晴れなかった。
翌日は朝食後から城へ向かい、ハーク達の様子見をする。これから皆で集まって出発すると言う。
「カケル、何か、怒ってる?」
「否、そんな事は無いぞ」
城に《転移》した際、ナイフを突き立てて来たメイドに《威圧》を纏わせたりはしたが、それだけの事だ。リュネがペニスケ持ってっちゃったままなので今日はライデンの服を着ているが、人の子が作った程度の刃物では、リュネの作った此奴に傷一つ付く事は無い。それでもちょっと煩わしかったのだ。
「お兄様、カケル様は悩んでおいでなのですよ」
「悩み?」
「悩み…、悩みか。確かにそうだな。手伝ってやりたいが見守ると言った手前手を出せん」
「安心ししてよ。ボクはもう、覚悟決めたんだから」「私もです」
「カケル様、私が命に代えましてもハーク様とアルア様をお守り致します」
ブルランさんはそう言って頭を下げる。執事服の上から身に着けた軽装の鎧がカチャリと音を鳴らした。
「アタダーン様達がお見えになられました」
ドアをノックし入って来たメイドが横に逸れ、後ろの二人を前に出すと、見知った二人が現れた。
「む?カケルも居たのか」「見送りご苦労」
アタダーンってトリントン達の家名かよ。何処かへ出掛けるような素振りの無い、何時もの貴族な出で立ちで来た兄弟は、挨拶もそこそこに号令を出した。
「ハーク様、よろしいですか?」
「大丈夫だよ」
「行きましょう、お兄様」
「頑張るから、ちゃんと見ててよ?」
「…分かった。皆、ご無事で」
見送りの俺と三人のメイドを残して姿を消した。アルアが《転移》を使ったようだ。天才め、無理はするなよ?
「カケル様、お茶は如何ですか?」
「…貰おうか」
メイドの一人に促されてソファに座る。アルアの位置を《感知》すると街を出て池の外、森を貫く街道の中に居た。ゾーイの居ない客車が並び、デュセルとエルシドの姿がある。彼等が用意したのだろう。ハークとブルランさんにメイドが二人、アルアにはメイド三人、デュセルとエルシドにはメイドが二人。そしてアダターン兄弟にメイド二人が組になり、示し合わせたように乗り込んで行く。余ったメイドが馭者席に座り、車輪が回って移動が始まる。これはハークの魔法か。
アルアの《転移》は客車四台余裕で飛ばせる威力はあるが、距離は短くクールタイムがあって回数にも上限があるようだ。それを補う為、ハークの魔法で移動の足しにしているみたい。リュネの仕込みの結果だな。
「所でリュネは何処行った?」
「はい。昨夜お休みになられてからお顔を伺っておりません」
「てっきりカケル様の所へ向かわれたのかと…」
因みに昨夜は島に帰って来ていない。この場に居なくても見ているだろうが、居ないと少し不安である。メイドより供されたお茶を飲み、《白昼夢》で追跡した。
四回目の《転移》で大アトールの手前迄来た一行は、客車に乗り込んだまま森の中へと踏み入ると、そこで夜を待つようだ。
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