1,406 / 1,519
雌鳥
しおりを挟む空間が出来ると鳥達が飛び込んで来るので《結界》で阻む。見えない壁にぶつかって転がる鳥達には済まないが、飛んで来た子は雌なのだろう。大体が羽の付け根に黄色いリボンが巻かれてる。
「あの黄色いのは雌って事か?」
「ははっ、その通りでございます」
成程。壁にくっ付いて蹲る鳥達も、よく見たら黄色いのを着けてるわ。《鑑定》すると、リボンの無い者も雌鳥と出た。見えない壁を推して参ろうとするリボン無しに、リボンを着けるよう指示を出し作業再開。
雑木の板を組み合わせ、格子状の棚を作る。鳥の大きさに合わせて一部屋縦横五十ドン、奥行八十ドンとした。高さは五階建てにして、部屋数四十室の集合住宅の出来上がりだ。入口側には卵落下を防ぐ壁を付けるのを忘れない。
「カケル、鳥ってこんな高さに迄上がれるの?」
「少しなら飛んで上がれるとは思うが、先ずはコレで様子を見よう。上の方迄上がれなくても今の状態なら部屋数は足りてるだろうしね」
さて、此処から少し難しい。卵を転がし、割らぬように下迄下ろさねばならん。棚全体をほんの少し背後へ傾け設置する。卵代わりの楕円球を転がして、落下速度を調節した。
「カケル殿、そのままだと落ちてしまうが、どの様なとんでも技術を見せられるのか」
「要はゆっくり降りてくれれば良いだけなんだが、難しいから調整の連続だ」
デュセルが言う程とんでも技術では無いのが残念だが、何れ自分達で同様の施設を作るとなると下手にスキルを使えない。シルケ人の技術でも作れる施設でなければならん。
卵は意外と丈夫だが、それでも衝撃で罅が入る事もある。スロープを使い下迄転がし、採卵効率を高めたかったが今回は個室の直ぐ外に貯める形にする。雑木で作った四角いお椀を斜面側に取り付けて、中に枯れ草を入れるだけ。外に出ない事を確認したら鳥が中に入らないよう、卵だけ出て来るだけの隙間を設けて背板を張った。
最後に、集合住宅と裏口の間に壁と引き戸を作り、集合住宅の上には飛び越え防止の天井迄伸びる柵を建て、全てをくっ付けたら完成だ。
「ふう」
「おお…。魔法建築は初めてお見受け致しますが、何と早い事でしょうか。静かで埃も立たず、鳥達が暴れる間もありませんでした」
「あっ、暴れるの!?」
暴れると聞いてブルランさんの背後に隠れたハークだが、この鳥だって一応野獣なんだぞ?
「この国でも真似出来る技術で作ったから、増設する時は真似して作ってくれ。早速鳥に入ってもらおうか」
《結界》を解き、壁を消す。《結界》に体当たりしていた鳥達は一斉に集合住宅を目指し、飛び上がる。
「飛んだ!」
皆が皆、高い所を選ぶので、直ぐに五階は埋まってしまい、負けた者は落っこちて、四階に落ち着いた。壁の端で抱卵していた者は動けず、悔しそうに最上階を見上げるしか無かった。抱卵してるママ達を浮かせ、壁の端に安置する。
「其方は入れないのでございますか?」
「此奴等の卵は育っちゃってるから、雛にするしか無いな。それにしても高い所が好きだったのか」
「下の階が空き家になってしまったな」
デュセルの言う通り、五階全てと四階で計十四室が埋まり、三階以下が完全に空き家。コレでは作った意味が無い。それにこれでは全ての卵が採卵されてしまう。
「やり直しだな」
集合住宅の対面側の壁に四、五階だけ作った集合住宅を作る。その下は唯の柱だ。元の集合住宅も同様に三階以下を消して柱に変えた。コレで総部屋数三十二部屋。そして入口の対面側の壁には採卵機能を無くした状態で集合住宅を作る。幅が無いから上下で十二部屋しか無いが、部屋が無くとも壁の端で産むから問題無いな。
「奥のは雛取り用だ」
「まるで劇場の様だな。見られているのが我等と言うのがちと悔しいが」
「しっかりと世話をすれば対価に卵を産んでくれる。道化では無く名優にならねばな」
「「ははっ」」
壁に佇むママ達を、再び浮かせて奥へと運ぶ。クルルと小さく鼻を鳴らすと、部屋の中で動かなくなった。気に入ってもらえたようだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる