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第12章「王国の陰謀──囁かれる裏切り」
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迷宮都市から王都に戻った翌日。
蓮たちは騎士団本部に呼び出された。
「何の用件でしょうか?」
アリシアが団長のレオンハルトに尋ねた。
「実は、重大な報告がある」
レオンハルトは深刻な表情を浮かべた。
「王国内部に、魔王軍のスパイがいる可能性が高い」
「スパイ……!?」
四人は驚愕した。
「ああ。最近、王国の機密情報が次々と漏洩している」
レオンハルトは資料を広げた。
「軍の配置、貴族の動向、魔法研究の成果……これらの情報が、魔王軍に筒抜けになっている」
「それは……」
アリシアは顔を曇らせた。
「かなり深刻ですね」
「ああ。そして、スパイは王宮内部にいると推測している」
「王宮内部……」
蓮は眉をひそめた。
「それって、貴族か官僚ってことですか?」
「おそらくな」
レオンハルトは頷いた。
「だが、誰がスパイなのか特定できていない」
「それで、私たちに何を?」
「お前たちには、密かに調査してほしい」
レオンハルトは真剣な目で言った。
「騎士団が動けば、スパイに気づかれる。だが、冒険者であるお前たちなら、怪しまれずに調査できる」
「わかりました」
アリシアは頷いた。
「必ずスパイを見つけ出します」
騎士団本部を出ると、四人は相談を始めた。
「どうやって調査する?」
セラが尋ねた。
「まずは、情報収集ね」
リリアが言った。
「王宮内部の人間関係、最近の動向……怪しい人物をリストアップしましょう」
「私は、騎士団の同僚に聞いてみます」
アリシアが提案した。
「何か知っているかもしれません」
「じゃあ、俺とセラは街で情報を集めよう」
蓮が言った。
「酒場とか、商人とか……色々な人に話を聞いてみる」
「了解!」
四人は手分けして調査を開始した。
蓮とセラは、王都の酒場を回った。
「すみません、最近の王宮の様子、何か変わったことありませんか?」
蓮は酒場の店主に尋ねた。
「ん? 王宮か……」
店主は顎を撫でた。
「そういえば、最近、ある貴族が頻繁に謁見の間に出入りしているって話だな」
「ある貴族?」
「ああ。確か、デュランス伯爵ってやつだ」
「デュランス伯爵……」
蓮はその名前を記憶した。
「ありがとうございます」
別の酒場では、商人から情報を得た。
「デュランス伯爵? ああ、知ってるよ」
商人は声を潜めた。
「最近、急に金回りが良くなったって噂だ」
「金回りが?」
「ああ。豪華な屋敷を建てたり、高価な宝石を買い漁ったり……」
「……怪しいですね」
蓮は眉をひそめた。
夕方、四人は宿で情報を共有した。
「デュランス伯爵か……」
アリシアは考え込んだ。
「私も、騎士団で同じ名前を聞きました」
「どんな人物なの?」
セラが尋ねた。
「30代後半の貴族です。財務を担当していて、王国の予算を管理しています」
「財務……つまり、お金の流れを把握している」
リリアは鋭く指摘した。
「それなら、魔王軍に情報を売って金を稼いでいる可能性があるわ」
「そうですね」
アリシアは頷いた。
「でも、証拠がありません」
「なら、証拠を掴むしかないわね」
リリアは杖を握った。
「今夜、デュランス伯爵の屋敷に潜入しましょう」
「潜入……ですか?」
蓮は驚いた。
「ええ。違法かもしれないけど、王国を守るためには仕方ないわ」
「……わかりました」
アリシアは決意した。
「やりましょう」
深夜、四人はデュランス伯爵の屋敷に忍び込んだ。
「静かに……」
アリシアが先頭を歩いた。
屋敷は広く、多くの部屋があった。
「どこを調べる?」
セラが囁いた。
「書斎よ」
リリアが答えた。
「機密文書があるとすれば、そこにあるはず」
四人は書斎に向かった。
書斎の扉を開けると、豪華な部屋が広がっていた。
本棚、机、金庫……
「あの金庫を調べましょう」
リリアは金庫に近づいた。
「開けられる?」
「任せて」
リリアは魔法で鍵を解除した。
金庫の中には──
魔王軍とのやり取りを記した手紙が入っていた。
「これは……」
アリシアは手紙を読んだ。
「間違いない。デュランス伯爵は、魔王軍に情報を売っていた……」
「くそっ……裏切り者め……」
セラは怒りを露わにした。
「この手紙を証拠に、騎士団に突き出しましょう」
蓮が言った。
だが、その時──
書斎の扉が開いた。
「誰だ!?」
デュランス伯爵が、護衛を連れて立っていた。
「侵入者か……」
伯爵は冷笑した。
「どうやら、勘づかれていたようだな」
「デュランス伯爵……あなたは、王国を裏切ったのですか!」
アリシアは剣を抜いた。
「裏切り? いいや、取引だよ」
伯爵は肩をすくめた。
「魔王軍に情報を売り、その対価として金を得る。ただのビジネスさ」
「ビジネス……?」
アリシアは怒りで震えた。
「人々の命がかかっているんですよ!」
「知ったことか」
伯爵は冷たく言い放った。
「私は、私の利益のために動いているだけだ」
「……許せない」
アリシアは剣を構えた。
「あなたを、騎士団に突き出します」
「できるかな?」
伯爵は護衛たちに命じた。
「あの娘たちを殺せ」
護衛たちが一斉に襲いかかってきた。
「みんな、戦うよ!」
蓮は支援魔法を発動した。
「グランド・サポート!」
三人の体が光り輝いた。
「はああっ!」
アリシアが護衛たちを次々と斬り倒していく。
「フレイムアロー!」
リリアの炎の矢が、護衛たちを貫く。
「はっ!」
セラの拳が、護衛たちを殴り飛ばす。
あっという間に、護衛たちは全滅した。
「くそっ……」
伯爵は焦った。
「こんなはずじゃ……」
「観念してください」
アリシアは剣を伯爵に向けた。
「あなたは、もう逃げられません」
「……」
伯爵は諦めたように肩を落とした。
だが、次の瞬間──
伯爵の体が黒い煙に包まれた。
「な、何……!?」
「これは……闇魔法……!」
リリアは驚愕した。
黒い煙の中から、伯爵の声が響いた。
「お前たち、よくやった」
その声は──もはや伯爵の声ではなかった。
低く、冷たい声。
「だが、もう遅い」
黒い煙が晴れると──
そこには、黒いローブを纏った人影が立っていた。
「お前は……」
「俺は魔王軍第二師団長、ダークソーサラー・ゼノン」
ゼノンは冷笑した。
「デュランス伯爵は、ただの傀儡だったのさ」
「傀儡……」
「ああ。俺が洗脳して、操っていた」
ゼノンは笑った。
「お前たちが伯爵を疑うように、わざと証拠を残しておいたんだ」
「何のために……」
「決まっている。お前たちを罠にかけるためさ」
ゼノンは腕を広げた。
すると──
屋敷全体が黒い霧に包まれた。
「この霧は、闇の結界だ。外には出られない」
「くっ……」
アリシアは剣を構えた。
「お前たちは、ここで死ぬ」
ゼノンは魔法を唱え始めた。
「みんな、気をつけて!」
蓮は叫んだ。
「ダークネスボルト!」
ゼノンが無数の闇の矢を放った。
「くっ……!」
アリシアは剣で弾く。
「フリーズシールド!」
リリアが氷の盾を展開した。
だが、闇の矢は氷を貫通してくる。
「痛っ……!」
リリアの肩に闇の矢が刺さった。
「リリア!」
「大丈夫……まだ戦える……」
リリアは杖を構え直した。
「行くわよ……フレイムストーム!」
巨大な炎の竜巻がゼノンを襲う。
だが──
ゼノンは闇の壁で炎を防いだ。
「ぬるいな」
「くそっ……」
「あたしが行く!」
セラが突撃した。
だが、ゼノンは一瞬で姿を消し、セラの背後に現れた。
「遅い」
ゼノンの蹴りが、セラの背中に叩き込まれた。
「ぐはっ……!」
セラは吹き飛ばされた。
「セラ!」
蓮は駆け寄った。
「大丈夫……?」
「う、うん……でも、あいつ、強すぎる……」
「……」
蓮は焦った。
ゼノンは強い。
支援魔法をかけても、歯が立たない。
「どうすれば……」
その時、アリシアが叫んだ。
「神谷さん! あの時の魔法を!」
「あの時の……」
蓮は思い出した。
オーバードライブ・サポート。
全能力を3倍にする、最強の支援魔法。
だが、使えば倒れてしまう。
「でも……」
「いいんです!」
アリシアは真剣な目で言った。
「私たちを信じてください!」
「……わかった」
蓮は決意した。
「みんな、5分で決着をつけて」
「任せて!」
セラは拳を握りしめた。
「あたしたち、やるよ!」
「ええ」
リリアも頷いた。
「全力で行くわ」
「行くよ……オーバードライブ・サポート!」
屋敷全体が、眩い光に包まれた。
三人の体が、激しく輝く。
「この力……!」
アリシアは剣を構えた。
「行ける……!」
「はあああっ!」
アリシアは一瞬で、ゼノンの懐に飛び込んだ。
「な、速い……!」
ゼノンは驚愕した。
アリシアの剣が、ゼノンの胸を貫く。
「ぐはっ……!」
「フレイムエクスプロージョン!」
リリアの最大魔法が、ゼノンを直撃した。
「ガアアアッ!」
「とどめだ!」
セラが跳躍した。
そして──
渾身の一撃を、ゼノンの顔面に叩き込んだ。
ドゴォォォンッ!
ゼノンは壁に叩きつけられた。
「く……そ……」
ゼノンの体が煙のように消えていった。
「覚えて……ろ……」
ゼノンは完全に消滅した。
ゼノンが消えると、闇の結界も消えた。
「やった……」
三人は安堵の息を吐いた。
だが──
「神谷!」
振り向くと、蓮は地面に倒れていた。
「神谷さん!」
アリシアが駆け寄った。
「大丈夫……ですか……」
「うん……ちょっと……疲れただけ……」
蓮は弱々しく笑った。
「みんな……無事で……良かった……」
そして、意識を失った。
翌朝、蓮は騎士団の医療室で目を覚ました。
「目が覚めましたか」
レオンハルトが立っていた。
「団長……」
「よくやってくれた」
レオンハルトは頷いた。
「デュランス伯爵の件、魔王軍の幹部を倒したこと……全て報告を受けた」
「伯爵は……」
「洗脳が解けた。今は、王宮で治療を受けている」
「そうですか……」
蓮は安堵した。
「お前たちのおかげで、王国は救われた」
レオンハルトは深々と頭を下げた。
「感謝する」
「いえ、当然のことです」
蓮は笑顔で答えた。
数日後、蓮は完全に回復した。
「もう大丈夫?」
セラが心配そうに尋ねた。
「うん、完璧」
蓮は笑顔で答えた。
「みんな、心配かけてごめん」
「謝らないで」
リリアは微笑んだ。
「あなたのおかげで、私たちは勝てたのよ」
「そうですよ」
アリシアも頷いた。
「あなたは、私たちの英雄です」
「英雄なんかじゃないよ」
蓮は照れくさそうに笑った。
その日の午後、四人はギルドに集まった。
「次の依頼、どうしましょうか」
アリシアが掲示板を見た。
「ちょっと待って」
バルトが声をかけてきた。
「お前たちに、特別な依頼がある」
「特別な依頼?」
「ああ。王宮からの直接依頼だ」
バルトは一枚の手紙を渡した。
「何でも、ある人物を護衛してほしいとのことだ」
「護衛……?」
蓮は手紙を読んだ。
【依頼内容】
異世界からの来訪者の護衛
王都到着予定:明日
報酬:応相談
依頼者:王宮
「異世界からの来訪者……?」
蓮は驚いた。
「まさか……」
「どうやら、お前と同じ転生者らしいぞ」
バルトは言った。
「王宮が保護して、明日王都に到着する」
「転生者……」
蓮は複雑な表情を浮かべた。
自分以外にも、この世界に転生した人がいる。
「どんな人なんだろう……」
「明日、会えばわかるわ」
リリアが言った。
「とりあえず、今日はゆっくり休みましょう」
「そうですね」
蓮は頷いた。
その夜、蓮は一人、宿の屋上に立っていた。
星空を見上げながら、考え込んでいた。
「もう一人の転生者か……」
どんな人なのだろう。
男性か、女性か。
年齢は。
性格は。
「元の世界の話ができるかもしれない」
蓮は少し期待した。
元の世界の話を、誰かと共有できる。
それは、蓮にとって嬉しいことだった。
だが、同時に不安もあった。
もしその転生者が、自分とは違う価値観を持っていたら。
もし、敵対することになったら。
「……考えすぎか」
蓮は頭を振った。
「明日、会ってみればわかる」
窓の外には、満月が輝いていた。
運命の出会いが、すぐそこまで迫っていた。
もう一人の転生者との出会い。
それが、蓮たちの運命を大きく変えることになる。
だが、今はまだ、蓮は知らない。
ただ、明日への期待と不安を胸に、夜空を見上げているだけだった。
蓮たちは騎士団本部に呼び出された。
「何の用件でしょうか?」
アリシアが団長のレオンハルトに尋ねた。
「実は、重大な報告がある」
レオンハルトは深刻な表情を浮かべた。
「王国内部に、魔王軍のスパイがいる可能性が高い」
「スパイ……!?」
四人は驚愕した。
「ああ。最近、王国の機密情報が次々と漏洩している」
レオンハルトは資料を広げた。
「軍の配置、貴族の動向、魔法研究の成果……これらの情報が、魔王軍に筒抜けになっている」
「それは……」
アリシアは顔を曇らせた。
「かなり深刻ですね」
「ああ。そして、スパイは王宮内部にいると推測している」
「王宮内部……」
蓮は眉をひそめた。
「それって、貴族か官僚ってことですか?」
「おそらくな」
レオンハルトは頷いた。
「だが、誰がスパイなのか特定できていない」
「それで、私たちに何を?」
「お前たちには、密かに調査してほしい」
レオンハルトは真剣な目で言った。
「騎士団が動けば、スパイに気づかれる。だが、冒険者であるお前たちなら、怪しまれずに調査できる」
「わかりました」
アリシアは頷いた。
「必ずスパイを見つけ出します」
騎士団本部を出ると、四人は相談を始めた。
「どうやって調査する?」
セラが尋ねた。
「まずは、情報収集ね」
リリアが言った。
「王宮内部の人間関係、最近の動向……怪しい人物をリストアップしましょう」
「私は、騎士団の同僚に聞いてみます」
アリシアが提案した。
「何か知っているかもしれません」
「じゃあ、俺とセラは街で情報を集めよう」
蓮が言った。
「酒場とか、商人とか……色々な人に話を聞いてみる」
「了解!」
四人は手分けして調査を開始した。
蓮とセラは、王都の酒場を回った。
「すみません、最近の王宮の様子、何か変わったことありませんか?」
蓮は酒場の店主に尋ねた。
「ん? 王宮か……」
店主は顎を撫でた。
「そういえば、最近、ある貴族が頻繁に謁見の間に出入りしているって話だな」
「ある貴族?」
「ああ。確か、デュランス伯爵ってやつだ」
「デュランス伯爵……」
蓮はその名前を記憶した。
「ありがとうございます」
別の酒場では、商人から情報を得た。
「デュランス伯爵? ああ、知ってるよ」
商人は声を潜めた。
「最近、急に金回りが良くなったって噂だ」
「金回りが?」
「ああ。豪華な屋敷を建てたり、高価な宝石を買い漁ったり……」
「……怪しいですね」
蓮は眉をひそめた。
夕方、四人は宿で情報を共有した。
「デュランス伯爵か……」
アリシアは考え込んだ。
「私も、騎士団で同じ名前を聞きました」
「どんな人物なの?」
セラが尋ねた。
「30代後半の貴族です。財務を担当していて、王国の予算を管理しています」
「財務……つまり、お金の流れを把握している」
リリアは鋭く指摘した。
「それなら、魔王軍に情報を売って金を稼いでいる可能性があるわ」
「そうですね」
アリシアは頷いた。
「でも、証拠がありません」
「なら、証拠を掴むしかないわね」
リリアは杖を握った。
「今夜、デュランス伯爵の屋敷に潜入しましょう」
「潜入……ですか?」
蓮は驚いた。
「ええ。違法かもしれないけど、王国を守るためには仕方ないわ」
「……わかりました」
アリシアは決意した。
「やりましょう」
深夜、四人はデュランス伯爵の屋敷に忍び込んだ。
「静かに……」
アリシアが先頭を歩いた。
屋敷は広く、多くの部屋があった。
「どこを調べる?」
セラが囁いた。
「書斎よ」
リリアが答えた。
「機密文書があるとすれば、そこにあるはず」
四人は書斎に向かった。
書斎の扉を開けると、豪華な部屋が広がっていた。
本棚、机、金庫……
「あの金庫を調べましょう」
リリアは金庫に近づいた。
「開けられる?」
「任せて」
リリアは魔法で鍵を解除した。
金庫の中には──
魔王軍とのやり取りを記した手紙が入っていた。
「これは……」
アリシアは手紙を読んだ。
「間違いない。デュランス伯爵は、魔王軍に情報を売っていた……」
「くそっ……裏切り者め……」
セラは怒りを露わにした。
「この手紙を証拠に、騎士団に突き出しましょう」
蓮が言った。
だが、その時──
書斎の扉が開いた。
「誰だ!?」
デュランス伯爵が、護衛を連れて立っていた。
「侵入者か……」
伯爵は冷笑した。
「どうやら、勘づかれていたようだな」
「デュランス伯爵……あなたは、王国を裏切ったのですか!」
アリシアは剣を抜いた。
「裏切り? いいや、取引だよ」
伯爵は肩をすくめた。
「魔王軍に情報を売り、その対価として金を得る。ただのビジネスさ」
「ビジネス……?」
アリシアは怒りで震えた。
「人々の命がかかっているんですよ!」
「知ったことか」
伯爵は冷たく言い放った。
「私は、私の利益のために動いているだけだ」
「……許せない」
アリシアは剣を構えた。
「あなたを、騎士団に突き出します」
「できるかな?」
伯爵は護衛たちに命じた。
「あの娘たちを殺せ」
護衛たちが一斉に襲いかかってきた。
「みんな、戦うよ!」
蓮は支援魔法を発動した。
「グランド・サポート!」
三人の体が光り輝いた。
「はああっ!」
アリシアが護衛たちを次々と斬り倒していく。
「フレイムアロー!」
リリアの炎の矢が、護衛たちを貫く。
「はっ!」
セラの拳が、護衛たちを殴り飛ばす。
あっという間に、護衛たちは全滅した。
「くそっ……」
伯爵は焦った。
「こんなはずじゃ……」
「観念してください」
アリシアは剣を伯爵に向けた。
「あなたは、もう逃げられません」
「……」
伯爵は諦めたように肩を落とした。
だが、次の瞬間──
伯爵の体が黒い煙に包まれた。
「な、何……!?」
「これは……闇魔法……!」
リリアは驚愕した。
黒い煙の中から、伯爵の声が響いた。
「お前たち、よくやった」
その声は──もはや伯爵の声ではなかった。
低く、冷たい声。
「だが、もう遅い」
黒い煙が晴れると──
そこには、黒いローブを纏った人影が立っていた。
「お前は……」
「俺は魔王軍第二師団長、ダークソーサラー・ゼノン」
ゼノンは冷笑した。
「デュランス伯爵は、ただの傀儡だったのさ」
「傀儡……」
「ああ。俺が洗脳して、操っていた」
ゼノンは笑った。
「お前たちが伯爵を疑うように、わざと証拠を残しておいたんだ」
「何のために……」
「決まっている。お前たちを罠にかけるためさ」
ゼノンは腕を広げた。
すると──
屋敷全体が黒い霧に包まれた。
「この霧は、闇の結界だ。外には出られない」
「くっ……」
アリシアは剣を構えた。
「お前たちは、ここで死ぬ」
ゼノンは魔法を唱え始めた。
「みんな、気をつけて!」
蓮は叫んだ。
「ダークネスボルト!」
ゼノンが無数の闇の矢を放った。
「くっ……!」
アリシアは剣で弾く。
「フリーズシールド!」
リリアが氷の盾を展開した。
だが、闇の矢は氷を貫通してくる。
「痛っ……!」
リリアの肩に闇の矢が刺さった。
「リリア!」
「大丈夫……まだ戦える……」
リリアは杖を構え直した。
「行くわよ……フレイムストーム!」
巨大な炎の竜巻がゼノンを襲う。
だが──
ゼノンは闇の壁で炎を防いだ。
「ぬるいな」
「くそっ……」
「あたしが行く!」
セラが突撃した。
だが、ゼノンは一瞬で姿を消し、セラの背後に現れた。
「遅い」
ゼノンの蹴りが、セラの背中に叩き込まれた。
「ぐはっ……!」
セラは吹き飛ばされた。
「セラ!」
蓮は駆け寄った。
「大丈夫……?」
「う、うん……でも、あいつ、強すぎる……」
「……」
蓮は焦った。
ゼノンは強い。
支援魔法をかけても、歯が立たない。
「どうすれば……」
その時、アリシアが叫んだ。
「神谷さん! あの時の魔法を!」
「あの時の……」
蓮は思い出した。
オーバードライブ・サポート。
全能力を3倍にする、最強の支援魔法。
だが、使えば倒れてしまう。
「でも……」
「いいんです!」
アリシアは真剣な目で言った。
「私たちを信じてください!」
「……わかった」
蓮は決意した。
「みんな、5分で決着をつけて」
「任せて!」
セラは拳を握りしめた。
「あたしたち、やるよ!」
「ええ」
リリアも頷いた。
「全力で行くわ」
「行くよ……オーバードライブ・サポート!」
屋敷全体が、眩い光に包まれた。
三人の体が、激しく輝く。
「この力……!」
アリシアは剣を構えた。
「行ける……!」
「はあああっ!」
アリシアは一瞬で、ゼノンの懐に飛び込んだ。
「な、速い……!」
ゼノンは驚愕した。
アリシアの剣が、ゼノンの胸を貫く。
「ぐはっ……!」
「フレイムエクスプロージョン!」
リリアの最大魔法が、ゼノンを直撃した。
「ガアアアッ!」
「とどめだ!」
セラが跳躍した。
そして──
渾身の一撃を、ゼノンの顔面に叩き込んだ。
ドゴォォォンッ!
ゼノンは壁に叩きつけられた。
「く……そ……」
ゼノンの体が煙のように消えていった。
「覚えて……ろ……」
ゼノンは完全に消滅した。
ゼノンが消えると、闇の結界も消えた。
「やった……」
三人は安堵の息を吐いた。
だが──
「神谷!」
振り向くと、蓮は地面に倒れていた。
「神谷さん!」
アリシアが駆け寄った。
「大丈夫……ですか……」
「うん……ちょっと……疲れただけ……」
蓮は弱々しく笑った。
「みんな……無事で……良かった……」
そして、意識を失った。
翌朝、蓮は騎士団の医療室で目を覚ました。
「目が覚めましたか」
レオンハルトが立っていた。
「団長……」
「よくやってくれた」
レオンハルトは頷いた。
「デュランス伯爵の件、魔王軍の幹部を倒したこと……全て報告を受けた」
「伯爵は……」
「洗脳が解けた。今は、王宮で治療を受けている」
「そうですか……」
蓮は安堵した。
「お前たちのおかげで、王国は救われた」
レオンハルトは深々と頭を下げた。
「感謝する」
「いえ、当然のことです」
蓮は笑顔で答えた。
数日後、蓮は完全に回復した。
「もう大丈夫?」
セラが心配そうに尋ねた。
「うん、完璧」
蓮は笑顔で答えた。
「みんな、心配かけてごめん」
「謝らないで」
リリアは微笑んだ。
「あなたのおかげで、私たちは勝てたのよ」
「そうですよ」
アリシアも頷いた。
「あなたは、私たちの英雄です」
「英雄なんかじゃないよ」
蓮は照れくさそうに笑った。
その日の午後、四人はギルドに集まった。
「次の依頼、どうしましょうか」
アリシアが掲示板を見た。
「ちょっと待って」
バルトが声をかけてきた。
「お前たちに、特別な依頼がある」
「特別な依頼?」
「ああ。王宮からの直接依頼だ」
バルトは一枚の手紙を渡した。
「何でも、ある人物を護衛してほしいとのことだ」
「護衛……?」
蓮は手紙を読んだ。
【依頼内容】
異世界からの来訪者の護衛
王都到着予定:明日
報酬:応相談
依頼者:王宮
「異世界からの来訪者……?」
蓮は驚いた。
「まさか……」
「どうやら、お前と同じ転生者らしいぞ」
バルトは言った。
「王宮が保護して、明日王都に到着する」
「転生者……」
蓮は複雑な表情を浮かべた。
自分以外にも、この世界に転生した人がいる。
「どんな人なんだろう……」
「明日、会えばわかるわ」
リリアが言った。
「とりあえず、今日はゆっくり休みましょう」
「そうですね」
蓮は頷いた。
その夜、蓮は一人、宿の屋上に立っていた。
星空を見上げながら、考え込んでいた。
「もう一人の転生者か……」
どんな人なのだろう。
男性か、女性か。
年齢は。
性格は。
「元の世界の話ができるかもしれない」
蓮は少し期待した。
元の世界の話を、誰かと共有できる。
それは、蓮にとって嬉しいことだった。
だが、同時に不安もあった。
もしその転生者が、自分とは違う価値観を持っていたら。
もし、敵対することになったら。
「……考えすぎか」
蓮は頭を振った。
「明日、会ってみればわかる」
窓の外には、満月が輝いていた。
運命の出会いが、すぐそこまで迫っていた。
もう一人の転生者との出会い。
それが、蓮たちの運命を大きく変えることになる。
だが、今はまだ、蓮は知らない。
ただ、明日への期待と不安を胸に、夜空を見上げているだけだった。
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それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
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話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます
内田ヨシキ
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「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」
――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。
カクヨムにて先行連載中です!
(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。
残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。
一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。
そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。
やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
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バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
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ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
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「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
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アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
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女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
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10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
最強の異世界やりすぎ旅行記
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主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
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最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
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