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【第1章】追放と絶望の夜
第11話「公開裁判の真実」
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王宮大広間は、人で溢れていた。
貴族、商人、そして多くの民衆。
公開裁判は、王国の重要な儀式だ。
特に、元公爵令嬢の裁判となれば――話題性は抜群だった。
「静粛に」
玉座の前に立つ、裁判長の声。
「これより、エリシア=ハーランドの裁判を開廷する」
王妃が、玉座の隣に座っている。
その横には、アルベルトとクラリッサ。
「被告は、逃亡中である」
裁判長が、書類を読み上げた。
「よって、不在のまま裁判を進める」
ざわめきが広がる。
「被告エリシア=ハーランドは、国家反逆罪、不正採掘、脱獄の罪により――」
「待ってください」
突然、声が響いた。
全員が、入口を見た。
扉が、ゆっくりと開く。
「私は、ここにいます」
黒いドレスを纏った女性が、堂々と歩いてきた。
エリシア=ハーランド。
「な、なんだと!?」
アルベルトが、立ち上がった。
「貴様、どうやって――」
「被告が、出廷しました」
裁判長が、動揺を隠せない。
「これは、異例中の異例ですが――」
「私には、弁明する権利があります」
私は、中央に立った。
民衆の視線が、一斉に注がれる。
「ならば、聞こう」
王妃が、冷たく言った。
「お前の弁明を」
「その前に」
私は、懐から巻物を取り出した。
「一つ、証拠を提示させていただきます」
「証拠?」
裁判長が、眉をひそめた。
「それは、何だ?」
「密約書です」
私は、巻物を高く掲げた。
「王妃、侯爵令嬢クラリッサ、そして商人ヴィクターの三者による、国家を私物化する密約書です」
場内が、一気にざわめいた。
「なんだと!?」
「王妃が密約を!?」
「黙りなさい!」
王妃が、立ち上がった。
「そのような偽造文書で、何を証明するつもりだ!」
「偽造?」
私は、微笑んだ。
「では、筆跡鑑定をしてみますか?」
「それは――」
「王妃様の署名、クラリッサ様の署名、そしてヴィクターの署名。全て本物です」
私は、裁判長に巻物を渡した。
「どうぞ、ご確認ください」
裁判長が、巻物を広げる。
その表情が、みるみる青ざめていく。
「これは……本物だ」
場内が、さらに騒然とした。
「何が書いてあるんだ!?」
「読み上げろ!」
民衆の声。
裁判長は、震える手で巻物を持った。
「え、えー……『我々三者は、ノルディアの魔鉱石利権を独占することに合意する』」
「魔鉱石の独占だと!?」
「そのために、『エリシア=ハーランドを排除し、ノルディアを直轄地とする』」
民衆が、怒りの声を上げ始めた。
「つまり、エリシア様は無実なのか!?」
「全ては、王妃たちの陰謀だったのか!?」
「静粛に! 静粛に!」
裁判長が叫ぶが、もう遅い。
「嘘だ!」
クラリッサが叫んだ。
「そんな文書、知りません!」
「では、なぜあなたの署名があるのですか?」
私は、彼女を見た。
「しかも、日付は――私が最初に追放される、三日前」
「それは――」
クラリッサの言葉が詰まった。
「計画的だったんですね」
私は、一歩一歩、彼女に近づいた。
「最初から、私を陥れるつもりだった。魔鉱石を独占するために」
「違う、違うのよ!」
クラリッサが、後ずさる。
「エリシア、あなたは――」
「私は何ですか?」
「あなたは、最初から邪魔だった!」
彼女が、叫んだ。
「完璧で、美しくて、全てを持っていて――私は、いつもあなたの影だった!」
その告白に、場内が静まった。
「だから、消したかった。あなたを、この世界から――」
「クラリッサ! 黙れ!」
アルベルトが、彼女の口を塞ごうとした。
でも、遅い。
「あなたもです、アルベルト様」
私は、彼を見た。
「あなたも、共犯ですね」
「私は、何も――」
「知らなかったとは言わせません」
私は、巻物の別の箇所を指差した。
「ここに、『第一王子の了承を得た』と書いてあります」
アルベルトの顔が、真っ青になった。
「それは――」
「認めますか? それとも、否定しますか?」
私の問いに、彼は何も答えられなかった。
「エリシア様!」
突然、民衆の中から声が上がった。
「私たちは、あなたを信じます!」
「そうだ! 王妃たちの方が嘘をついている!」
「エリシア様は、ノルディアを救った恩人だ!」
次々と、声が上がる。
「静粛に!」
王妃が、怒鳴った。
「この文書が本物だとしても――それがどうした! 私は王妃だ! お前たち平民が、私を裁けると思うのか!」
その言葉に、民衆が怒りを爆発させた。
「何を言っている!」
「王族だからといって、何をしてもいいのか!」
「これが、この国の王妃か!」
「黙れ、黙れ!」
王妃が、叫んだ。
「衛兵! この女を捕らえろ! 今すぐに!」
衛兵たちが、私に向かってくる。
その時――。
「待て」
低い声が、大広間に響いた。
扉が開き、一人の男が入ってきた。
「ルシアン……!」
辺境王ルシアン=ノルディアが、堂々と歩いてくる。
その後ろには、ノルディア親衛隊。
「辺境王!? なぜ、ここに!?」
王妃が、動揺した。
「エリシアを守るためだ」
ルシアンは、私の隣に立った。
「彼女は、私の国の重要な人材だ。不当に裁くことは許さん」
「お前に、口出しする権利はない!」
「ある」
ルシアンは、懐から書類を取り出した。
「これは、国王陛下の署名入りの勅令だ」
「国王の!?」
「『エリシア=ハーランドの裁判には、辺境王の立ち会いを認める』――陛下は、すでにこの件を把握しておられる」
王妃の顔が、さらに青ざめた。
「まさか……」
「そうだ。陛下は、お前たちの陰謀に気づいていた」
ルシアンの言葉に、場内がどよめいた。
その時。
「皆の者」
奥の扉が開き、杖をついた老人が現れた。
国王――エルデンハイム十三世だった。
「父上!?」
アルベルトが、驚いた。
「陛下、お体が――」
「黙れ、アルベルト」
国王の静かな声。
でも、そこには確かな怒りがあった。
「余は、全てを知っている」
国王は、ゆっくりと玉座に向かった。
「王妃よ、お前の企みを」
「陛下、それは誤解です――」
「誤解ではない」
国王は、玉座に座った。
「エリシア=ハーランド」
「はい」
私は、膝をついた。
「顔を上げよ」
国王の優しい声。
「お前は、無実だ。いや――この国の恩人だ」
「恩人……?」
「ノルディアを復興させ、民を救い、そして今、真実を明らかにした」
国王は、微笑んだ。
「余から、礼を言う。ありがとう」
その言葉に、涙が溢れそうになった。
「もったいないお言葉です」
「そして――」
国王は、王妃を見た。
「お前には、失望した」
「陛下……」
「王妃の地位を剥奪する。そして、クラリッサとヴィクターは逮捕せよ」
衛兵たちが、動き出した。
「待って! 待ってください!」
クラリッサが叫んだ。
「私は、ただ――」
「お前は、国を裏切った」
国王の冷たい声。
「それ以上の罪はない」
クラリッサは、崩れ落ちた。
「そして、アルベルト」
「は、はい……」
「お前も、共犯だな」
「父上、それは――」
「言い訳は聞かん」
国王は、深くため息をついた。
「王位継承権を剥奪する」
場内が、静まり返った。
「あとは――」
国王は、私を見た。
「エリシア、お前に褒美を与えたい」
「褒美など、必要ございません」
「いや、受け取れ」
国王は、書類を取り出した。
「ノルディアの永代開発権。そして、公爵位の復権」
「陛下……」
「お前は、この国に必要な人材だ。頼む、力を貸してくれ」
その言葉に、私は深く頭を下げた。
「謹んで、お受けいたします」
場内から、拍手が起こった。
小さな拍手が、やがて大きな歓声に変わった。
「エリシア様万歳!」
「正義は勝った!」
「ノルディアの英雄だ!」
民衆の声が、大広間を満たした。
私は――。
やっと、肩の力が抜けた。
「終わった……」
「ああ」
ルシアンが、私の肩を支えた。
「よく頑張ったな」
「あなたのおかげです」
「いや」
彼は、微笑んだ。
「お前の力だ」
裁判が終わり、私は控室で休んでいた。
「お姉様!」
ラウラが飛び込んできた。
「やったね、お姉様!」
「ラウラ……」
私は、妹を抱きしめた。
「ありがとう。あなたがいなければ、ここまでこれなかった」
「アタシもだよ!」
ミラも入ってきた。
「エリシア、かっこよかった!」
「ミラも、ありがとう」
次々と、仲間たちが入ってくる。
商人たち、騎士たち、そして――。
「父上、母上」
両親が、涙を流していた。
「エリシア……よくやった」
父が、私の頭を撫でた。
「お前は、ハーランド家の誇りだ」
「私の娘よ」
母が、優しく抱きしめてくれた。
「よく、頑張ったわね」
温かさに包まれた。
家族の温かさ。
仲間の温かさ。
「ありがとうございます」
私は、全員を見渡した。
「皆さんのおかげです」
「いや、お前の力だ」
ルシアンが、窓辺から言った。
「お前が、皆を導いた」
「そうだぞ」
グレンが、杖をついて入ってきた。
「グレンさん! 解放されたんですね!」
「ああ。おかげさまでな」
老人は、嬉しそうに笑った。
「さあ、帰ろう。ノルディアに」
「はい」
私は、頷いた。
「帰りましょう。私たちの、場所へ」
窓の外、夕日が沈んでいく。
長い戦いが、終わった。
でも――。
「これは、始まりに過ぎないわ」
私は、空を見上げた。
「本当の戦いは、これからよ」
ノルディアの復興。
王国の改革。
そして――。
新しい世界の創造。
「楽しみだわ」
小さく呟いた。
仲間たちに囲まれながら。
私の、新しい人生が――。
今、本当に始まるのだ。
王都の空に、星が瞬き始めていた。
希望の星のように。
明日への、道標のように。
貴族、商人、そして多くの民衆。
公開裁判は、王国の重要な儀式だ。
特に、元公爵令嬢の裁判となれば――話題性は抜群だった。
「静粛に」
玉座の前に立つ、裁判長の声。
「これより、エリシア=ハーランドの裁判を開廷する」
王妃が、玉座の隣に座っている。
その横には、アルベルトとクラリッサ。
「被告は、逃亡中である」
裁判長が、書類を読み上げた。
「よって、不在のまま裁判を進める」
ざわめきが広がる。
「被告エリシア=ハーランドは、国家反逆罪、不正採掘、脱獄の罪により――」
「待ってください」
突然、声が響いた。
全員が、入口を見た。
扉が、ゆっくりと開く。
「私は、ここにいます」
黒いドレスを纏った女性が、堂々と歩いてきた。
エリシア=ハーランド。
「な、なんだと!?」
アルベルトが、立ち上がった。
「貴様、どうやって――」
「被告が、出廷しました」
裁判長が、動揺を隠せない。
「これは、異例中の異例ですが――」
「私には、弁明する権利があります」
私は、中央に立った。
民衆の視線が、一斉に注がれる。
「ならば、聞こう」
王妃が、冷たく言った。
「お前の弁明を」
「その前に」
私は、懐から巻物を取り出した。
「一つ、証拠を提示させていただきます」
「証拠?」
裁判長が、眉をひそめた。
「それは、何だ?」
「密約書です」
私は、巻物を高く掲げた。
「王妃、侯爵令嬢クラリッサ、そして商人ヴィクターの三者による、国家を私物化する密約書です」
場内が、一気にざわめいた。
「なんだと!?」
「王妃が密約を!?」
「黙りなさい!」
王妃が、立ち上がった。
「そのような偽造文書で、何を証明するつもりだ!」
「偽造?」
私は、微笑んだ。
「では、筆跡鑑定をしてみますか?」
「それは――」
「王妃様の署名、クラリッサ様の署名、そしてヴィクターの署名。全て本物です」
私は、裁判長に巻物を渡した。
「どうぞ、ご確認ください」
裁判長が、巻物を広げる。
その表情が、みるみる青ざめていく。
「これは……本物だ」
場内が、さらに騒然とした。
「何が書いてあるんだ!?」
「読み上げろ!」
民衆の声。
裁判長は、震える手で巻物を持った。
「え、えー……『我々三者は、ノルディアの魔鉱石利権を独占することに合意する』」
「魔鉱石の独占だと!?」
「そのために、『エリシア=ハーランドを排除し、ノルディアを直轄地とする』」
民衆が、怒りの声を上げ始めた。
「つまり、エリシア様は無実なのか!?」
「全ては、王妃たちの陰謀だったのか!?」
「静粛に! 静粛に!」
裁判長が叫ぶが、もう遅い。
「嘘だ!」
クラリッサが叫んだ。
「そんな文書、知りません!」
「では、なぜあなたの署名があるのですか?」
私は、彼女を見た。
「しかも、日付は――私が最初に追放される、三日前」
「それは――」
クラリッサの言葉が詰まった。
「計画的だったんですね」
私は、一歩一歩、彼女に近づいた。
「最初から、私を陥れるつもりだった。魔鉱石を独占するために」
「違う、違うのよ!」
クラリッサが、後ずさる。
「エリシア、あなたは――」
「私は何ですか?」
「あなたは、最初から邪魔だった!」
彼女が、叫んだ。
「完璧で、美しくて、全てを持っていて――私は、いつもあなたの影だった!」
その告白に、場内が静まった。
「だから、消したかった。あなたを、この世界から――」
「クラリッサ! 黙れ!」
アルベルトが、彼女の口を塞ごうとした。
でも、遅い。
「あなたもです、アルベルト様」
私は、彼を見た。
「あなたも、共犯ですね」
「私は、何も――」
「知らなかったとは言わせません」
私は、巻物の別の箇所を指差した。
「ここに、『第一王子の了承を得た』と書いてあります」
アルベルトの顔が、真っ青になった。
「それは――」
「認めますか? それとも、否定しますか?」
私の問いに、彼は何も答えられなかった。
「エリシア様!」
突然、民衆の中から声が上がった。
「私たちは、あなたを信じます!」
「そうだ! 王妃たちの方が嘘をついている!」
「エリシア様は、ノルディアを救った恩人だ!」
次々と、声が上がる。
「静粛に!」
王妃が、怒鳴った。
「この文書が本物だとしても――それがどうした! 私は王妃だ! お前たち平民が、私を裁けると思うのか!」
その言葉に、民衆が怒りを爆発させた。
「何を言っている!」
「王族だからといって、何をしてもいいのか!」
「これが、この国の王妃か!」
「黙れ、黙れ!」
王妃が、叫んだ。
「衛兵! この女を捕らえろ! 今すぐに!」
衛兵たちが、私に向かってくる。
その時――。
「待て」
低い声が、大広間に響いた。
扉が開き、一人の男が入ってきた。
「ルシアン……!」
辺境王ルシアン=ノルディアが、堂々と歩いてくる。
その後ろには、ノルディア親衛隊。
「辺境王!? なぜ、ここに!?」
王妃が、動揺した。
「エリシアを守るためだ」
ルシアンは、私の隣に立った。
「彼女は、私の国の重要な人材だ。不当に裁くことは許さん」
「お前に、口出しする権利はない!」
「ある」
ルシアンは、懐から書類を取り出した。
「これは、国王陛下の署名入りの勅令だ」
「国王の!?」
「『エリシア=ハーランドの裁判には、辺境王の立ち会いを認める』――陛下は、すでにこの件を把握しておられる」
王妃の顔が、さらに青ざめた。
「まさか……」
「そうだ。陛下は、お前たちの陰謀に気づいていた」
ルシアンの言葉に、場内がどよめいた。
その時。
「皆の者」
奥の扉が開き、杖をついた老人が現れた。
国王――エルデンハイム十三世だった。
「父上!?」
アルベルトが、驚いた。
「陛下、お体が――」
「黙れ、アルベルト」
国王の静かな声。
でも、そこには確かな怒りがあった。
「余は、全てを知っている」
国王は、ゆっくりと玉座に向かった。
「王妃よ、お前の企みを」
「陛下、それは誤解です――」
「誤解ではない」
国王は、玉座に座った。
「エリシア=ハーランド」
「はい」
私は、膝をついた。
「顔を上げよ」
国王の優しい声。
「お前は、無実だ。いや――この国の恩人だ」
「恩人……?」
「ノルディアを復興させ、民を救い、そして今、真実を明らかにした」
国王は、微笑んだ。
「余から、礼を言う。ありがとう」
その言葉に、涙が溢れそうになった。
「もったいないお言葉です」
「そして――」
国王は、王妃を見た。
「お前には、失望した」
「陛下……」
「王妃の地位を剥奪する。そして、クラリッサとヴィクターは逮捕せよ」
衛兵たちが、動き出した。
「待って! 待ってください!」
クラリッサが叫んだ。
「私は、ただ――」
「お前は、国を裏切った」
国王の冷たい声。
「それ以上の罪はない」
クラリッサは、崩れ落ちた。
「そして、アルベルト」
「は、はい……」
「お前も、共犯だな」
「父上、それは――」
「言い訳は聞かん」
国王は、深くため息をついた。
「王位継承権を剥奪する」
場内が、静まり返った。
「あとは――」
国王は、私を見た。
「エリシア、お前に褒美を与えたい」
「褒美など、必要ございません」
「いや、受け取れ」
国王は、書類を取り出した。
「ノルディアの永代開発権。そして、公爵位の復権」
「陛下……」
「お前は、この国に必要な人材だ。頼む、力を貸してくれ」
その言葉に、私は深く頭を下げた。
「謹んで、お受けいたします」
場内から、拍手が起こった。
小さな拍手が、やがて大きな歓声に変わった。
「エリシア様万歳!」
「正義は勝った!」
「ノルディアの英雄だ!」
民衆の声が、大広間を満たした。
私は――。
やっと、肩の力が抜けた。
「終わった……」
「ああ」
ルシアンが、私の肩を支えた。
「よく頑張ったな」
「あなたのおかげです」
「いや」
彼は、微笑んだ。
「お前の力だ」
裁判が終わり、私は控室で休んでいた。
「お姉様!」
ラウラが飛び込んできた。
「やったね、お姉様!」
「ラウラ……」
私は、妹を抱きしめた。
「ありがとう。あなたがいなければ、ここまでこれなかった」
「アタシもだよ!」
ミラも入ってきた。
「エリシア、かっこよかった!」
「ミラも、ありがとう」
次々と、仲間たちが入ってくる。
商人たち、騎士たち、そして――。
「父上、母上」
両親が、涙を流していた。
「エリシア……よくやった」
父が、私の頭を撫でた。
「お前は、ハーランド家の誇りだ」
「私の娘よ」
母が、優しく抱きしめてくれた。
「よく、頑張ったわね」
温かさに包まれた。
家族の温かさ。
仲間の温かさ。
「ありがとうございます」
私は、全員を見渡した。
「皆さんのおかげです」
「いや、お前の力だ」
ルシアンが、窓辺から言った。
「お前が、皆を導いた」
「そうだぞ」
グレンが、杖をついて入ってきた。
「グレンさん! 解放されたんですね!」
「ああ。おかげさまでな」
老人は、嬉しそうに笑った。
「さあ、帰ろう。ノルディアに」
「はい」
私は、頷いた。
「帰りましょう。私たちの、場所へ」
窓の外、夕日が沈んでいく。
長い戦いが、終わった。
でも――。
「これは、始まりに過ぎないわ」
私は、空を見上げた。
「本当の戦いは、これからよ」
ノルディアの復興。
王国の改革。
そして――。
新しい世界の創造。
「楽しみだわ」
小さく呟いた。
仲間たちに囲まれながら。
私の、新しい人生が――。
今、本当に始まるのだ。
王都の空に、星が瞬き始めていた。
希望の星のように。
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