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第2章「復興の女神」
第16話「道は未来へ続く」
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雪山の斜面に、私は立っていた。
「この斜面を削って、道を通す……」
目の前には、急峻な崖。
「無茶だ、エリシア様」
技術者のマルコが、首を横に振った。
「この傾斜では、崩落の危険があります」
「わかっています」
私は、前世の土木工学の知識を思い出していた。
「だから、補強工事をします」
「補強?」
「石垣を組み、排水路を作り、斜面を安定させる」
私は、設計図を広げた。
「この方法なら、可能です」
マルコが、設計図を見る。
「……確かに、理論上は。でも、こんな工法、見たことがない」
「前世――いえ、古い文献で学びました」
私は、自信を持って言った。
「必ず、成功させます」
道路建設プロジェクト開始から一ヶ月。
現場には、二百人以上の労働者が集まっていた。
「全員、配置についてください!」
オスカーが、指揮を執っている。
彼は、工事の現場監督に任命されていた。
「第一班は、斜面の整地!」
「第二班は、石材の運搬!」
「第三班は、排水路の掘削!」
皆が、一斉に動き出す。
「すごい……」
ミラが、呟いた。
「こんな大規模な工事、初めて見る」
「これが、インフラ整備よ」
私は、現場を見渡した。
「道路が完成すれば、ノルディアと王都が繋がる」
「そしたら、もっと商売が盛んになるね」
「ええ。物流が変われば、経済が変わる」
しかし、困難は続いた。
「エリシア様、大変です!」
作業員が、駆け寄ってきた。
「崖が、崩れました!」
現場に駆けつけると――。
大量の土砂が、道を塞いでいた。
「怪我人は!?」
「幸い、誰も巻き込まれませんでした」
「良かった……」
私は、崩落現場を調べた。
「地盤が、思ったより脆い」
「このままでは、何度も崩れます」
マルコが、不安そうに言った。
「どうしますか?」
私は、考えた。
前世の知識を総動員する。
「杭を打ちます」
「杭?」
「深く地面に杭を打ち込んで、地盤を固定するんです」
「でも、そんな長い杭、どこに……」
「作ります」
私は、グレンを見た。
「グレンさん、鉱山の木材を使えますか?」
「もちろんだ。すぐに手配しよう」
二週間後。
長さ五メートルの杭が、何十本も運ばれてきた。
「これを、斜面に打ち込みます」
私の指示で、作業員たちが杭を設置していく。
ドンドンドン。
重い音が、山に響く。
「これで、地盤が安定する……」
祈るような気持ちで、見守った。
「エリシア」
ルシアンが、隣に立った。
「お前、本当に成功すると思っているのか?」
「……正直、不安もあります」
私は、素直に答えた。
「でも、やるしかない」
「そうか」
ルシアンは、私の肩に手を置いた。
「お前なら、できる」
その言葉が、力になった。
三ヶ月後。
道路は、徐々に形になってきた。
「見てください、エリシア様!」
マルコが、興奮して報告してくれた。
「五キロメートル、完成しました!」
「本当に!?」
現場に行くと――。
真っ直ぐに伸びる、美しい道。
石が敷き詰められ、両脇には排水路。
「素晴らしい……」
私は、道を歩いた。
平らで、安定している。
「これなら、馬車も楽に通れる」
「ええ。しかも、雪が積もっても排水路があるから大丈夫です」
マルコが、誇らしげに言った。
「エリシア様の設計、完璧でした」
「いいえ、皆のおかげです」
私は、作業員たちを見た。
泥だらけ、汗だらけ、でも――。
皆、笑顔だった。
「俺たち、すごいことやってるよな」
「ああ。こんな道、王国でも見たことない」
「誇りに思えるよ」
その言葉が、嬉しかった。
半年後。
ついに、道路が完成した。
ノルディアから王都まで、全長八十キロメートル。
整備された街道が、雪山を貫いていた。
「完成式を、行います」
城の前に、数千人の民衆が集まった。
「皆さん!」
私は、演台に立った。
「今日、ノルディア王都街道が完成しました!」
「「「おおおお!!」」」
大きな歓声。
「この道は、皆さんの努力の結晶です」
私は、作業員たちを見た。
「半年間、雨の日も雪の日も、皆さんは働き続けてくれました」
作業員たちが、照れたように笑っている。
「この道が、ノルディアと王国を繋ぎます」
私は、遠くの道を指差した。
「そして、私たちの未来を繋ぎます」
「では――」
ルシアンが、前に出た。
「最初の馬車を、走らせよう」
馬車が用意された。
ルシアンと私が、乗り込む。
「行くぞ」
御者が、手綱を引いた。
馬車が、動き出す。
新しい道を、滑るように走る。
「速い……!」
ミラが、窓から顔を出した。
「こんなに速く走れるなんて!」
以前なら、がたがた揺れて一週間かかった道。
今は――。
「このペースなら、三日で着きます」
マルコが、計測していた。
「いや、二日半かもしれない」
「すごい……」
私も、窓の外を見た。
美しい道。
努力の結晶。
「やり遂げたのね……」
「ああ」
ルシアンが、私の手を取った。
「お前は、また奇跡を起こした」
「奇跡じゃありません」
私は、微笑んだ。
「これは、科学と努力の成果です」
「だが、それを導いたのは、お前だ」
ルシアンの目が、優しかった。
「エリシア、お前は――」
彼の言葉が、続く前に――。
「到着しました!」
御者の声。
もう、最初の休憩所に着いていた。
「早い……」
「本当に、時間が短縮された」
降りると、民衆が集まっていた。
「エリシア様!」
「ありがとうございます!」
「この道で、商売ができます!」
商人たちが、喜びを表現している。
「これから、もっと活気が出るぞ」
農民たちも、希望に満ちた顔をしている。
「野菜を、王都に運べる」
「新鮮なまま、届けられる」
全ての人々が、未来を語っていた。
その夜、完成記念の宴が開かれた。
「乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
食事、音楽、笑い声。
「エリシア」
ルシアンが、私をバルコニーに誘った。
「はい」
二人で、夜景を見る。
新しい道に、松明の明かりが点々と灯っている。
「綺麗……」
「ああ」
ルシアンは、私を見た。
「エリシア、三つの大プロジェクトが全て成功した」
「はい」
「温室、学校、道路――」
彼は、私の両肩に手を置いた。
「お前は、本当にノルディアを変えた」
「皆で、変えたんです」
「いや」
ルシアンは、首を横に振った。
「お前がいなければ、何も始まらなかった」
彼の顔が、近づいてくる。
「エリシア、私は――」
心臓が、激しく打った。
「私は、お前を――」
「ルシアン様! エリシア様!」
レオンの声が、響いた。
ルシアンが、舌打ちした。
「……なんだ」
「王都から、急使が!」
「急使?」
私たちは、急いで戻った。
謁見の間。
王都からの使者が、立っていた。
「エリシア=ハーランド様」
「はい」
「国王陛下から、召喚状です」
使者が、書類を差し出した。
「王都にて、叙勲式を行うと」
「叙勲式……?」
「はい。あなたの功績を讃え、正式に公爵位を授与する」
場内が、どよめいた。
「それに――」
使者が、別の書類を出した。
「第二王子殿下との、婚約の話が」
「婚約!?」
私は、驚いた。
「第二王子?」
「はい。アルベルト殿下が王位継承権を失った今、第二王子殿下が次期国王です」
「待て」
ルシアンが、前に出た。
「それは、エリシアの意志を無視している」
「これは、国王陛下の意向です」
使者が、冷たく答えた。
「拒否はできません」
場が、静まり返った。
私は――。
「一晩、考えさせてください」
「わかりました。明日の朝、返事を」
使者が、退出した。
自室。
一人で、窓の外を見ていた。
「婚約……」
複雑な気持ちだった。
コンコン。
「どうぞ」
ルシアンが、入ってきた。
「……話がある」
「はい」
彼は、私の前に立った。
「エリシア、行くな」
「え?」
「王都に、行くな」
ルシアンの目が、真剣だった。
「ここに、残れ」
「でも、国王陛下の命令を――」
「構わない」
彼は、私の手を握った。
「私が、お前を守る」
「ルシアン……」
「エリシア」
彼の声が、震えていた。
「私は、お前を――」
「お前を、愛している」
時が、止まった。
「愛して……?」
「ああ」
ルシアンは、私を抱きしめた。
「ずっと、伝えたかった」
彼の心臓の音が、聞こえる。
激しく、打っている。
「ルシアン……」
「お前は、私の全てだ」
その言葉に、涙が溢れた。
「私も――」
私は、彼を見上げた。
「私も、あなたを愛しています」
ルシアンの顔が、喜びで輝いた。
「本当か?」
「本当です」
私は、彼の頬に手を伸ばした。
「ずっと、そうでした」
ルシアンは、私の額に自分の額を押し当てた。
「なら、残ってくれ」
「でも――」
「私の妻に、なってくれ」
その言葉に、心臓が止まりそうになった。
「妻……」
「ああ。副王ではなく、私の妻として」
ルシアンは、私を見つめた。
「一緒に、この国を治めよう」
涙が、止まらなかった。
「……はい」
私は、頷いた。
「喜んで」
ルシアンが、私を強く抱きしめた。
「ありがとう」
二人で、しばらく抱き合っていた。
温かい沈黙。
「明日、使者に伝えます」
私は、彼の胸から顔を上げた。
「私は、ここに残ると」
「王都は、怒るだろうな」
「構いません」
私は、微笑んだ。
「私の居場所は、ここです」
窓の外、新しい道が月明かりに照らされている。
未来への道。
私たちの道。
「さあ」
私は、ルシアンの手を取った。
「明日から、また新しい挑戦が始まります」
「ああ」
ルシアンも、微笑んだ。
「お前と一緒なら、どんな挑戦も乗り越えられる」
二人で、窓の外を見た。
星空の下、ノルディアは静かに眠っている。
でも、その心臓は――。
力強く、鼓動していた。
明日への、鼓動。
未来への、鼓動。
愛への、鼓動。
「この斜面を削って、道を通す……」
目の前には、急峻な崖。
「無茶だ、エリシア様」
技術者のマルコが、首を横に振った。
「この傾斜では、崩落の危険があります」
「わかっています」
私は、前世の土木工学の知識を思い出していた。
「だから、補強工事をします」
「補強?」
「石垣を組み、排水路を作り、斜面を安定させる」
私は、設計図を広げた。
「この方法なら、可能です」
マルコが、設計図を見る。
「……確かに、理論上は。でも、こんな工法、見たことがない」
「前世――いえ、古い文献で学びました」
私は、自信を持って言った。
「必ず、成功させます」
道路建設プロジェクト開始から一ヶ月。
現場には、二百人以上の労働者が集まっていた。
「全員、配置についてください!」
オスカーが、指揮を執っている。
彼は、工事の現場監督に任命されていた。
「第一班は、斜面の整地!」
「第二班は、石材の運搬!」
「第三班は、排水路の掘削!」
皆が、一斉に動き出す。
「すごい……」
ミラが、呟いた。
「こんな大規模な工事、初めて見る」
「これが、インフラ整備よ」
私は、現場を見渡した。
「道路が完成すれば、ノルディアと王都が繋がる」
「そしたら、もっと商売が盛んになるね」
「ええ。物流が変われば、経済が変わる」
しかし、困難は続いた。
「エリシア様、大変です!」
作業員が、駆け寄ってきた。
「崖が、崩れました!」
現場に駆けつけると――。
大量の土砂が、道を塞いでいた。
「怪我人は!?」
「幸い、誰も巻き込まれませんでした」
「良かった……」
私は、崩落現場を調べた。
「地盤が、思ったより脆い」
「このままでは、何度も崩れます」
マルコが、不安そうに言った。
「どうしますか?」
私は、考えた。
前世の知識を総動員する。
「杭を打ちます」
「杭?」
「深く地面に杭を打ち込んで、地盤を固定するんです」
「でも、そんな長い杭、どこに……」
「作ります」
私は、グレンを見た。
「グレンさん、鉱山の木材を使えますか?」
「もちろんだ。すぐに手配しよう」
二週間後。
長さ五メートルの杭が、何十本も運ばれてきた。
「これを、斜面に打ち込みます」
私の指示で、作業員たちが杭を設置していく。
ドンドンドン。
重い音が、山に響く。
「これで、地盤が安定する……」
祈るような気持ちで、見守った。
「エリシア」
ルシアンが、隣に立った。
「お前、本当に成功すると思っているのか?」
「……正直、不安もあります」
私は、素直に答えた。
「でも、やるしかない」
「そうか」
ルシアンは、私の肩に手を置いた。
「お前なら、できる」
その言葉が、力になった。
三ヶ月後。
道路は、徐々に形になってきた。
「見てください、エリシア様!」
マルコが、興奮して報告してくれた。
「五キロメートル、完成しました!」
「本当に!?」
現場に行くと――。
真っ直ぐに伸びる、美しい道。
石が敷き詰められ、両脇には排水路。
「素晴らしい……」
私は、道を歩いた。
平らで、安定している。
「これなら、馬車も楽に通れる」
「ええ。しかも、雪が積もっても排水路があるから大丈夫です」
マルコが、誇らしげに言った。
「エリシア様の設計、完璧でした」
「いいえ、皆のおかげです」
私は、作業員たちを見た。
泥だらけ、汗だらけ、でも――。
皆、笑顔だった。
「俺たち、すごいことやってるよな」
「ああ。こんな道、王国でも見たことない」
「誇りに思えるよ」
その言葉が、嬉しかった。
半年後。
ついに、道路が完成した。
ノルディアから王都まで、全長八十キロメートル。
整備された街道が、雪山を貫いていた。
「完成式を、行います」
城の前に、数千人の民衆が集まった。
「皆さん!」
私は、演台に立った。
「今日、ノルディア王都街道が完成しました!」
「「「おおおお!!」」」
大きな歓声。
「この道は、皆さんの努力の結晶です」
私は、作業員たちを見た。
「半年間、雨の日も雪の日も、皆さんは働き続けてくれました」
作業員たちが、照れたように笑っている。
「この道が、ノルディアと王国を繋ぎます」
私は、遠くの道を指差した。
「そして、私たちの未来を繋ぎます」
「では――」
ルシアンが、前に出た。
「最初の馬車を、走らせよう」
馬車が用意された。
ルシアンと私が、乗り込む。
「行くぞ」
御者が、手綱を引いた。
馬車が、動き出す。
新しい道を、滑るように走る。
「速い……!」
ミラが、窓から顔を出した。
「こんなに速く走れるなんて!」
以前なら、がたがた揺れて一週間かかった道。
今は――。
「このペースなら、三日で着きます」
マルコが、計測していた。
「いや、二日半かもしれない」
「すごい……」
私も、窓の外を見た。
美しい道。
努力の結晶。
「やり遂げたのね……」
「ああ」
ルシアンが、私の手を取った。
「お前は、また奇跡を起こした」
「奇跡じゃありません」
私は、微笑んだ。
「これは、科学と努力の成果です」
「だが、それを導いたのは、お前だ」
ルシアンの目が、優しかった。
「エリシア、お前は――」
彼の言葉が、続く前に――。
「到着しました!」
御者の声。
もう、最初の休憩所に着いていた。
「早い……」
「本当に、時間が短縮された」
降りると、民衆が集まっていた。
「エリシア様!」
「ありがとうございます!」
「この道で、商売ができます!」
商人たちが、喜びを表現している。
「これから、もっと活気が出るぞ」
農民たちも、希望に満ちた顔をしている。
「野菜を、王都に運べる」
「新鮮なまま、届けられる」
全ての人々が、未来を語っていた。
その夜、完成記念の宴が開かれた。
「乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
食事、音楽、笑い声。
「エリシア」
ルシアンが、私をバルコニーに誘った。
「はい」
二人で、夜景を見る。
新しい道に、松明の明かりが点々と灯っている。
「綺麗……」
「ああ」
ルシアンは、私を見た。
「エリシア、三つの大プロジェクトが全て成功した」
「はい」
「温室、学校、道路――」
彼は、私の両肩に手を置いた。
「お前は、本当にノルディアを変えた」
「皆で、変えたんです」
「いや」
ルシアンは、首を横に振った。
「お前がいなければ、何も始まらなかった」
彼の顔が、近づいてくる。
「エリシア、私は――」
心臓が、激しく打った。
「私は、お前を――」
「ルシアン様! エリシア様!」
レオンの声が、響いた。
ルシアンが、舌打ちした。
「……なんだ」
「王都から、急使が!」
「急使?」
私たちは、急いで戻った。
謁見の間。
王都からの使者が、立っていた。
「エリシア=ハーランド様」
「はい」
「国王陛下から、召喚状です」
使者が、書類を差し出した。
「王都にて、叙勲式を行うと」
「叙勲式……?」
「はい。あなたの功績を讃え、正式に公爵位を授与する」
場内が、どよめいた。
「それに――」
使者が、別の書類を出した。
「第二王子殿下との、婚約の話が」
「婚約!?」
私は、驚いた。
「第二王子?」
「はい。アルベルト殿下が王位継承権を失った今、第二王子殿下が次期国王です」
「待て」
ルシアンが、前に出た。
「それは、エリシアの意志を無視している」
「これは、国王陛下の意向です」
使者が、冷たく答えた。
「拒否はできません」
場が、静まり返った。
私は――。
「一晩、考えさせてください」
「わかりました。明日の朝、返事を」
使者が、退出した。
自室。
一人で、窓の外を見ていた。
「婚約……」
複雑な気持ちだった。
コンコン。
「どうぞ」
ルシアンが、入ってきた。
「……話がある」
「はい」
彼は、私の前に立った。
「エリシア、行くな」
「え?」
「王都に、行くな」
ルシアンの目が、真剣だった。
「ここに、残れ」
「でも、国王陛下の命令を――」
「構わない」
彼は、私の手を握った。
「私が、お前を守る」
「ルシアン……」
「エリシア」
彼の声が、震えていた。
「私は、お前を――」
「お前を、愛している」
時が、止まった。
「愛して……?」
「ああ」
ルシアンは、私を抱きしめた。
「ずっと、伝えたかった」
彼の心臓の音が、聞こえる。
激しく、打っている。
「ルシアン……」
「お前は、私の全てだ」
その言葉に、涙が溢れた。
「私も――」
私は、彼を見上げた。
「私も、あなたを愛しています」
ルシアンの顔が、喜びで輝いた。
「本当か?」
「本当です」
私は、彼の頬に手を伸ばした。
「ずっと、そうでした」
ルシアンは、私の額に自分の額を押し当てた。
「なら、残ってくれ」
「でも――」
「私の妻に、なってくれ」
その言葉に、心臓が止まりそうになった。
「妻……」
「ああ。副王ではなく、私の妻として」
ルシアンは、私を見つめた。
「一緒に、この国を治めよう」
涙が、止まらなかった。
「……はい」
私は、頷いた。
「喜んで」
ルシアンが、私を強く抱きしめた。
「ありがとう」
二人で、しばらく抱き合っていた。
温かい沈黙。
「明日、使者に伝えます」
私は、彼の胸から顔を上げた。
「私は、ここに残ると」
「王都は、怒るだろうな」
「構いません」
私は、微笑んだ。
「私の居場所は、ここです」
窓の外、新しい道が月明かりに照らされている。
未来への道。
私たちの道。
「さあ」
私は、ルシアンの手を取った。
「明日から、また新しい挑戦が始まります」
「ああ」
ルシアンも、微笑んだ。
「お前と一緒なら、どんな挑戦も乗り越えられる」
二人で、窓の外を見た。
星空の下、ノルディアは静かに眠っている。
でも、その心臓は――。
力強く、鼓動していた。
明日への、鼓動。
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