処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

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第28章「最後の決戦」

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決戦の日。
中央平原に、両軍が対峙した。
東国軍五千。
リオネール軍四千。
数で劣るが、士気は高い。
セリーヌは馬に乗り、軍の前に立っていた。
鎧を着て、剣を腰に差している。
「殿下、本当に戦場に出られるのですか」
レオンが心配そうに聞いた。
「ええ」
セリーヌは頷いた。
「王が後方にいて、兵だけに戦わせるわけにはいきません」
「ですが、危険です」
「わかっています」
セリーヌは真剣な顔をした。
「でも、これが私の責任です」
ダミアン卿が近づいてきた。
「殿下、準備が整いました」
「わかりました」
セリーヌは深呼吸した。
そして、兵たちに向かって叫んだ。
「兵士たちよ!」
全員がセリーヌを見た。
「今日、我々は最後の戦いに臨みます」
「敵は多い。我々は少ない。ですが、我々には守るべきものがあります」
「家族、友人、故郷。全てが、この戦いにかかっています」
セリーヌは剣を抜いた。
「私は、皆さんと共に戦います。王として、一人の戦士として」
兵士たちがどよめいた。
「共に、勝利を掴みましょう!」
「勝利を!」
兵士たちが叫んだ。
士気が上がる。
敵軍も動き始めた。
太鼓の音。
進軍の合図。
「全軍、前進!」
セリーヌが命じた。
両軍が近づいていく。
距離が縮まる。
百メートル。
五十メートル。
「弓兵、放て!」
ダミアン卿が命じた。
矢の雨が敵に降り注ぐ。
敵も矢を放つ。
空が暗くなる。
矢が降ってくる。
「盾を上げろ!」
兵士たちが盾で身を守る。
矢が盾に突き刺さる音。
叫び声。
最初の犠牲者が出る。
「突撃!」
両軍が激突した。
金属音。
叫び声。
血の匂い。
セリーヌも剣を振るった。
訓練で学んだ技術。
だが、実戦は違う。
重い。
剣が敵の鎧に当たる感触。
抵抗。
そして、血。
「殿下、下がってください!」
レオンが駆けつけた。
敵を次々と斬り倒す。
「レオン!」
「私が守ります!」
レオンはセリーヌの前に立った。
二人は背中合わせで戦った。
レオンが前を、セリーヌが後ろを守る。
息が合っている。
訓練の成果だ。
「右から!」
「わかった!」
レオンが右の敵を斬る。
セリーヌは左の敵を突く。
二人は進んでいく。
敵の中央へ。
そこに、東国の将軍がいた。
大柄な男。
黒い鎧。
巨大な剣。
「お前が、王女か」
将軍は低い声で言った。
「女が戦場に出るとは、珍しい」
「女だからこそ、戦います」
セリーヌは剣を構えた。
「この国を、守るために」
将軍は笑った。
「勇敢だな。だが、無謀だ」
彼は剣を振り上げた。
「死ね!」
巨大な剣が振り下ろされる。
セリーヌは横に飛んで避けた。
剣が地面に突き刺さる。
土が飛び散る。
セリーヌは反撃した。
剣を将軍の胴に向ける。
だが、鎧が硬い。
弾かれる。
「効かんな」
将軍はセリーヌを蹴り飛ばした。
セリーヌは地面に倒れた。
痛い。
息ができない。
「殿下!」
レオンが駆けつけた。
将軍に斬りかかる。
二人の剣が激しくぶつかり合う。
火花が散る。
だが、将軍は強い。
レオンを押し返す。
「レオン!」
セリーヌは立ち上がった。
呼吸を整える。
そして、考える。
力では勝てない。
ならば、知恵で。
セリーヌは地面の石を拾った。
そして、将軍の顔に投げつけた。
将軍は避けようとしたが、石が兜に当たった。
一瞬、視界が遮られる。
その隙に、レオンが将軍の足を斬った。
将軍が膝をつく。
「今だ、殿下!」
レオンが叫んだ。
セリーヌは走った。
全速力で。
そして、剣を将軍の首に突きつけた。
兜の隙間。
剣が入る。
将軍は動きを止めた。
「降伏しろ」
セリーヌは命じた。
「お前が死ねば、兵は戦意を失う」
将軍は長い間、セリーヌを見ていた。
やがて、剣を地面に落とした。
「降伏する」
将軍は剣を地面に落とした。
「降伏する」
その声が、戦場に響いた。
東国の兵士たちが、動きを止めた。
将軍が降伏した。
それは、敗北を意味する。
「武器を捨てろ!」
レオンが叫んだ。
「戦争は終わった!」
東国の兵士たちは、互いに顔を見合わせた。
やがて、一人、また一人と、武器を地面に落とし始めた。
リオネール軍の兵士たちが歓声を上げた。
「勝った!」
「勝利だ!」
セリーヌは剣を下ろした。
体中が痛い。
疲れた。
だが、勝った。
本当に、勝った。
レオンが駆け寄ってきた。
「殿下、無事ですか」
「ええ、何とか」
セリーヌは微笑んだ。
「あなたのおかげです」
「いいえ、殿下の勇気のおかげです」
レオンも微笑んだ。
ダミアン卿が近づいてきた。
「殿下、敵は完全に降伏しました。捕虜は三千。残りは逃走しました」
「追撃は」
「させていません。これ以上の流血は不要です」
「賢明な判断です」
セリーヌは頷いた。
戦場を見回す。
地面は血で染まっている。
倒れた兵士たち。
味方も、敵も。
全員が、誰かの大切な人だった。
「負傷者の手当てを」
セリーヌは命じた。
「味方も、敵も。全員を救ってください」
「敵もですか」
「はい」
セリーヌは真剣な顔をした。
「戦争は終わりました。今は、敵も味方もありません。全員が、治療を受ける権利があります」
ダミアン卿は頷いた。
「わかりました」
兵士たちが負傷者を運び始めた。
セリーヌも手伝おうとした。
だが、足に力が入らない。
疲労と、戦いの反動。
「殿下」
レオンが支えた。
「無理をしないでください」
「でも」
「殿下がいるだけで、兵士たちは励まされます。休んでください」
セリーヌは頷いた。
レオンに支えられながら、天幕に向かった。
そこで、簡易の椅子に座る。
水を飲む。
冷たくて、美味しい。
生きている。
本当に、生きている。
そして、勝った。
東国を撃退した。
国を守った。
「殿下」
伝令兵が来た。
「北と南の戦線から、報告です」
「どうぞ」
「敵軍、撤退しました。中央での敗北を知り、戦意を喪失したようです」
セリーヌは安堵した。
全ての戦線で、勝利した。
戦争は、本当に終わった。
「すぐに父上に連絡を」
「はい」
伝令兵は走り去った。
セリーヌは空を見上げた。
青い空。
白い雲。
平和な空。
だが、その下で、多くの命が失われた。
「報告します」
医療班の責任者が来た。
「負傷者は二千。うち、重傷者が五百」
「死者は」
「確認中ですが、千を超えると思われます」
千人。
また、千人が死んだ。
三日間の戦闘と合わせて、五千人。
セリーヌの軍の半分以上が、犠牲になった。
「敵の犠牲は」
「死者二千、負傷者三千」
敵も、大きな犠牲を払った。
合計で、一万人近くが死傷した。
たった一つの戦争で。
「全ての死者に、敬意を払ってください」
セリーヌは命じた。
「味方も、敵も。全員を、丁重に埋葬してください」
「はい」
夕方、戦場の片付けが終わった。
死者は一箇所に集められ、埋葬の準備が進んでいる。
セリーヌは、その場所を訪れた。
無数の遺体。
布で覆われている。
セリーヌは一人一人の前で立ち止まり、祈った。
「あなたの犠牲を、忘れません」
全員の前で、同じ言葉を繰り返した。
時間がかかった。
だが、セリーヌは全員に祈った。
それが、王の責任だと思ったから。
日が沈み始めた頃、ようやく終わった。
セリーヌは疲れ果てていた。
だが、まだやるべきことがある。
「東国の将軍を連れてきてください」
捕虜となった将軍が、護衛に連れられてきた。
鎧を脱がされ、鎖で縛られている。
「将軍」
セリーヌは言った。
「あなたの名前は」
「劉将軍だ」
「劉将軍、あなたは勇敢に戦いました」
セリーヌは敬意を込めて言った。
「敵として戦いましたが、戦士としては尊敬します」
劉将軍は驚いた顔をした。
「お前は、変わった女だな」
「私は、無駄な憎しみを持ちたくないのです」
セリーヌは真剣な顔をした。
「戦争は終わりました。これから、平和を築かなければなりません」
「お前は、俺たちを殺さないのか」
「殺しません」
セリーヌは断言した。
「捕虜は、適切に扱われます。そして、戦争が完全に終わったら、東国に返します」
劉将軍は長い間、セリーヌを見ていた。
やがて、頭を下げた。
「お前のような王が、我が国にもいれば良かった」
「あなたの皇帝に伝えてください」
セリーヌは言った。
「もう二度と、侵略をしないように。次は、こちらから攻めることもできます」
劉将軍は頷いた。
「わかった。伝えよう」
彼は連れて行かれた。
セリーヌは深く息をついた。
全てが終わった。
本当に、終わった。
その夜、王都に戻る途中、セリーヌは馬車の中でレオンと並んで座っていた。
「レオン」
「はい」
「あなたがいなければ、私は死んでいました」
「いいえ、殿下の勇気があったからこそ、勝てたのです」
レオンは微笑んだ。
「殿下は、本物の王です」
セリーヌは頬を赤らめた。
「ありがとう」
二人は手を繋いだ。
誰も見ていない。
だから、許される。
「レオン、戦争が終わったら」
「はい」
「あなたに、答えを出します」
レオンは驚いた顔をした。
「殿下」
「待っていてくれますか」
「もちろんです」
レオンは強く手を握り返した。
「永遠に待ちます」
馬車は王都へ向かって進んだ。
星空の下を。
平和な夜空の下を。
戦争は終わった。
だが、本当の戦いは、これからだ。
国を再建する戦い。
平和を築く戦い。
そして、自分の心と向き合う戦い。
セリーヌは、その全てに挑む覚悟を決めた。
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