元魔王おじさん

うどんり

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二章

第59話 元魔王、勇者と出会う

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時刻はもう昼を少し過ぎてしまった。

「さて、そろそろ集まって戦利品を見せ合うか」

分散して拾い集めていたマヤたちを呼ぼうとしたところで、

「――む?先客か?」

がさり、と上から音がして、男が一人こちらを覗いた。

「ああ、こりゃどうも。ここの鉱山の持ち主か?」

俺は手を振ってあいさつした。

黒い髪の、まだ若い男だった。男は首を振った。

「いや、違う。探し物だ」

「なるほど、俺たちと同じとみえるな」

「同じ……?」

「ああ、エーテル結晶を探しにな」

「それなら同じだ。こちらもエーテル結晶を探している」

「念のため言っておくが俺たちは盗人の類ではないぞ」

エーテル結晶という言葉を疑問に思わないのか。
ならばこの国ではない、どこか別の国の、魔法が発達した場所から来たのだろうか。

男は急こう配を軽やかに下りると、

「俺も盗人ではない」

ぶっきらぼうに答えた。
抑揚の少ない、無機質な声色だった。

……と。

こいつの体内からも魔法石の気配がする。

《戦士》といい、体に魔法石埋めるのが流行っているのか?

「お前、あれか?名無しの戦士と知り合いか?」

「なぜ?」

「うむ、まあ、なんとなくな」

「《戦士》と呼ばれている知り合いなら一人いる」

男はうなずいた。

「おお、そうかそうか。奴と知り合いか」

戦士の仲間ということは、戦士のやつはまだこのへんにとどまっているのか。

「エーテル結晶は何のために集めておるのだ?」

「わからん」

男は首を振って答えた。

「わからんとは?」

「あるじにそう命じられた」

「なるほど、従者だったか。なら戦士も同じようだな」

「ああ。だが、俺はまだ教育途中らしい」

「新人か」

「まだ何もわからん。自分がなぜこんなところにいるのかも……」

男は少し遠い目をして言った。

「…………」

なるほど、なにか事情があるらしい。

なんのために仕事をしているかわからない、悩める若者といったところか?

「それは時間をかけねばわからんことかもしれんな」

「そういうものか」

「おおむねそういうものだ。時間をかければ、はじめは理解できなかった自分や相手のことが知れるだろうさ」

「ああ、そうかもしれないな……そうだといいんだが」

男はうなずいた。

「エーテル結晶ならばそのへんに落ちておる。うまいこと探し出せれば、すぐに用事は終わるだろうさ」

「そうか、助かる」

あるじ、あるじか……。

おそらく旅をしていて魔法石を作れるであろう『あるじ』――なるほど、少し興味がわいたぞ。

「タロンハルティア村のはずれにある森の中に俺の家がある。もしその『あるじ』と近くに寄る機会があれば訪ねて来てほしい。ぜひ話を聞きたい」

「わかった。伝えおこう」

男がうなずく。

それと同時に、

「何をしているのです!」

上の方から声がした。

「仲間だ」

と男は俺に言った。

覗き込んできたのは、白い服を着た気難しそうな男だった。

俺をみて驚いたような顔をしている。
さすがにこんなところで人に出くわすとは思っていなかったとみえる。

「……他人との接触はなるべく避けるようにと言っていたでしょう。いったん戻ってきなさい」

「ああ、わかった」

「あなたは少し油断がすぎます。もう少し考えて行動しなさい」

「すまない」

あまり理解していなさそうな淡白さで男は白服に言って、勾配を上がりだした。

「そうだ。名を聞いておこう」

「名……とは、俺のか」

「ほかに誰がおるのだ」

「俺には名などない。ただほかの者には《勇者》と呼ばれている」

「ほう、ではまた会おうではないか、名無しの勇者よ」

「ああ」

名無しの勇者が勾配を上がっていくと、入れ違いになるようにサリヴィアたちが集まってきた。

人の気配に反応していつの間にか隠れていたツエニリニも出てきた。

「誰か来ていたようだが……?」

「うむ、同じ目的で来た者だった。俺たちに遠慮して引いてくれたようだ」

俺は三人の手の中に転がるエーテル結晶たちを見てうなずいた。

きらきらと生き生きした顔のラミナの手には死んだコガネムシが……って虫じゃねえか。石でさえないのか。

「ずいぶん探してくれたようだな」

「でも、あまり見つかりませんでしたね。水晶の方が多く見つかったくらい……」

「十分だ。礼を言うぞ。シオンがメシの支度をしているので、魔法で戻ろう」

「ああ、それなのだが、私は今回は遠慮しておく」

サリヴィアは苦笑しながら言った。

「行きたいのはやまやまなのだが」

「それは残念だな……何か用事か?」

「これから、知り合いの商人たちに話を聞く約束をしている。なんでも行商が何人か野盗の被害にあったらしい」

「ほう?」

「それに……」

サリヴィアはエーテル結晶を手の中で遊ばせながら目をそらした。

「私がいたら兄様はいづらかろう」

「いや、それはもう大丈夫そうだぞ。事実シオンが一緒にいても暴走はしていないようだしな」

「そうなのか?」

「あとはあいつの心次第ってところだが、まあサリヴィアに用事があるなら今回はいいさ。その代わり近いうちに無理やり会わせてやろうぞ」

「はは……期待してるよ」


サリヴィアを町に送り届けた後、俺たちは自宅へと戻った。

自宅へ戻ると、

「――!」

マヤは慌てたように俺の服を引っ張った。

「こ、コーラルさん、あれ!」

マヤが指差した先。
数日前にノームどもに作ってもらっていた仮住まいから、もうもうと煙が上がっていたのだ。
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