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48.王太子side
しおりを挟む「もう他の女に会わないで!」
「ソニア、何度言ったら分かるんだ」
「そんなの分かんない!!」
「これは必要な事なんだ」
「酷い!」
酷いのはどっちだ。
ソニアの癇癪は酷くなる一方だった。
カレンと比べてはいけないと分かっているが。それにしてもソニアは酷い。
私に他の女性の臭いが染みついていると言ってはヒステリックに泣き叫ぶ。髪を振り乱し半狂乱で罵倒する。幼児のように地団駄を踏んで暴れる彼女をどう扱えばいいのか私もいい加減分からなくなってきた。私は疲れて溜息を漏らす。
ストレスが溜まる……。
ハッキリ言って、ソニアの言動は私の精神をがんがん削っている気がした。最近では後宮に行く足取りすら重い。後宮を去る時に必ずといっていいほどソニアに縋り付かれる。涙と鼻水が混じったような汚らしい顔で足に縋りつかれて、私はソレを振り払いたい衝動に堪えなくてはならない。汚れる衣服。……もう着れないな。
昔ならソニアが膨れた顔をすると、どうやって機嫌を直そうかと楽しく考えた。それが今ではどうだ?あれだけ可愛らしいと思った言動の全てが疎ましく感じる。いや、違う。いつからだろう?彼女と会話をすることが苦痛になったのは……。ソニアに向ける想いが色褪せ始めたのはいつからだろう?記憶の中よりもずいぶんと歳をとった。それでも愛らしい美貌は衰えていない。それでも彼女の子供のような言動は見苦しいの一言に尽きた。受け入れられない。
不思議なものだ。
まるで魔女からかけられた魔法が解けたかのような感覚だった。
もしかすると本当に魔法だったのかもしれない。
恋という魔法に掛けられていた。それが解けて冷静になっただけかもしれない。
子供が出来ないからといってソニアとの離縁はありえない。
無理を通して妃にしたのだ。
父上だって許さない。
貴族達だって同じだろう。
夜に後宮に赴くのも面倒になってきた。
気が滅入る。
ここまで我慢して通う必要はあるのか?
ソニアは感情的だ。
会話にならない。
何か話すたびに一々癇癪を起こす。ヒステリックに叫んで暴れるソニア。
この女に私の貴重な時間を割く意味があるのか? 気が付けば苦痛なだけの時間をだらだらと過ごしている自分に気が付いた。益々ソニアを疎ましく感じ、ほんの少し会話をするのが億劫になっている自分がいる。何故ここまで疲弊するのかといえば一つしかない。
愛情が尽きてしまったのだ。
数日後、私は後宮を管理する女官長を呼び出した。
「ソニアの部屋替えをしたい」
「お部屋の移動ということでございますね?」
「そうだ」
「現在、後宮にはソニア側妃様しかいらっしゃいません。どちらの部屋に移動いたしましょうか」
「もっとも最奥の部屋だ」
「宜しいのですか?」
「ああ」
「最奥の部屋は寵愛を失った妃、または、お身体が不適格と判断された妃に与えられる部屋にございますが……」
「構わない」
「……畏まりました。直ぐに手配いたします」
「よろしく頼む。それと部屋替えはソニアには内密に進めてくれ」
私の言葉に、女官長は戸惑いながらも頭を下げたのだった。
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