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番外編
2.義兄の訴え
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珍しく義兄が王都の我が家にやってきた。
父に話があると言う。
なんの話しか想像はつく。
「フル―ム、お前も参加しなさい」
案の定だ。
これから醜態を晒すであろう義兄を嘲笑うためだろう。
本当に嘲笑うかどうかは、わからないが。
義兄は、開口一番に姉の不貞行為を訴えてきた。
お前が言うな。
呆れる私を尻目に、義兄は捲し立てた。
陛下相手に、いい度胸だ。
これは不敬罪に当たるのでは?
そもそもこの男が姉を責められる立場か?
こちらが知らないとでも思っているのか?
一通り言い終えた義兄に対して、父は淡々と事実を述べた。
「それの一体なにが問題なんだ?娘は跡取りの男児を一度に二人も産んだ。義務は果たし終わっている」
「義務を……果たし終わっている……?」
義兄は呆然としている。
まさか知らなかったのか?
自分だって子爵令嬢と不貞行為を知っていたくせに?
「ああ、そうだ。娘は家の為に結婚して、家の為に貴殿の子供を産んだ。これ以上望むのは契約違反だ」
「な、なにを……」
「なんだ知らなかったのかね?父君から聞いていると思ったのだが」
「父上が……なんと……?」
義兄の顔色が悪い。
真っ青だ。
今にも倒れそうだ。
「貴殿が娘との婚約期間中に子爵令嬢と不貞関係にあったことは既に知っている。未婚の令嬢を愛人として囲い込んでいることも。娘との結婚前に庶子を儲けていることもな」
「そ、それは……」
「ああ。子爵令嬢との間に生まれた男児を認知していることも把握している」
「……」
「これらのことを踏まえて貴殿の父君、つまり先代のレーゲンブルク公爵との間で取り決めを交わした。要するに婚姻契約の見直しだな。娘と貴殿の結婚は政略だ。家と家同士の結婚。それを無効にせんばかりの行動を起こす男は信用することはできない。勿論、そんな男の家など信用以前の問題だ。いつ、約束を反故にされるか分かったものじゃない。だからこそ、新たに婚姻契約書を作成した。公爵家の跡取りとスペアを産んだ後は互いに行動は自由だという契約を、な。安心したまえ。娘だけじゃない。君も自由だ。愛人と暮らすもよし、だ」
「そ……そんな……」
義兄はへなへなとその場に座り込んだ。
小声でブツブツなにかを呟いたが、父や私の耳には届かなかった。
本当に知らなかったらしい。
婚姻契約書を読まなかったのだろうか。
前と同じ内容だと勘違いして? いや、それにしたってありえない。最終確認をしないタイプなのか?
馬鹿げている。
そのままにしておく筈がないだろうに。
彼の愛人と化した子爵令嬢が安定期に入ってすぐに交わされた契約だ。
「喜ぶといい。貴殿の妻は今や国王陛下の寵愛を一身に受けている。貴殿の祖母君と違ってただの愛妾ではない。公式愛妾だ」
義兄に対する痛烈な皮肉。
流石は父だ。容赦がない。
「是非とも、領地にいるご両親に自慢するといい。妻がこれから生む子はただの庶子の王族ではない、と」
「……」
「もしかすると“殿下”の称号を賜るかもしれない、と」
義兄は項垂れたままだ。
自業自得だ。バカめ。
結局、義兄は父に言い負かされ、逃げるようにして帰っていった。
ざまぁみろ。
父に話があると言う。
なんの話しか想像はつく。
「フル―ム、お前も参加しなさい」
案の定だ。
これから醜態を晒すであろう義兄を嘲笑うためだろう。
本当に嘲笑うかどうかは、わからないが。
義兄は、開口一番に姉の不貞行為を訴えてきた。
お前が言うな。
呆れる私を尻目に、義兄は捲し立てた。
陛下相手に、いい度胸だ。
これは不敬罪に当たるのでは?
そもそもこの男が姉を責められる立場か?
こちらが知らないとでも思っているのか?
一通り言い終えた義兄に対して、父は淡々と事実を述べた。
「それの一体なにが問題なんだ?娘は跡取りの男児を一度に二人も産んだ。義務は果たし終わっている」
「義務を……果たし終わっている……?」
義兄は呆然としている。
まさか知らなかったのか?
自分だって子爵令嬢と不貞行為を知っていたくせに?
「ああ、そうだ。娘は家の為に結婚して、家の為に貴殿の子供を産んだ。これ以上望むのは契約違反だ」
「な、なにを……」
「なんだ知らなかったのかね?父君から聞いていると思ったのだが」
「父上が……なんと……?」
義兄の顔色が悪い。
真っ青だ。
今にも倒れそうだ。
「貴殿が娘との婚約期間中に子爵令嬢と不貞関係にあったことは既に知っている。未婚の令嬢を愛人として囲い込んでいることも。娘との結婚前に庶子を儲けていることもな」
「そ、それは……」
「ああ。子爵令嬢との間に生まれた男児を認知していることも把握している」
「……」
「これらのことを踏まえて貴殿の父君、つまり先代のレーゲンブルク公爵との間で取り決めを交わした。要するに婚姻契約の見直しだな。娘と貴殿の結婚は政略だ。家と家同士の結婚。それを無効にせんばかりの行動を起こす男は信用することはできない。勿論、そんな男の家など信用以前の問題だ。いつ、約束を反故にされるか分かったものじゃない。だからこそ、新たに婚姻契約書を作成した。公爵家の跡取りとスペアを産んだ後は互いに行動は自由だという契約を、な。安心したまえ。娘だけじゃない。君も自由だ。愛人と暮らすもよし、だ」
「そ……そんな……」
義兄はへなへなとその場に座り込んだ。
小声でブツブツなにかを呟いたが、父や私の耳には届かなかった。
本当に知らなかったらしい。
婚姻契約書を読まなかったのだろうか。
前と同じ内容だと勘違いして? いや、それにしたってありえない。最終確認をしないタイプなのか?
馬鹿げている。
そのままにしておく筈がないだろうに。
彼の愛人と化した子爵令嬢が安定期に入ってすぐに交わされた契約だ。
「喜ぶといい。貴殿の妻は今や国王陛下の寵愛を一身に受けている。貴殿の祖母君と違ってただの愛妾ではない。公式愛妾だ」
義兄に対する痛烈な皮肉。
流石は父だ。容赦がない。
「是非とも、領地にいるご両親に自慢するといい。妻がこれから生む子はただの庶子の王族ではない、と」
「……」
「もしかすると“殿下”の称号を賜るかもしれない、と」
義兄は項垂れたままだ。
自業自得だ。バカめ。
結局、義兄は父に言い負かされ、逃げるようにして帰っていった。
ざまぁみろ。
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