正しい恋の始め方

凛子

文字の大きさ
3 / 5

3

しおりを挟む
 何かがおかしい……
 けれど、そう思っているのは自分だけのようだ。
 雨の日の出会いをきっかけに、拓海と数回デートを重ねた。初めてのデートの時から、一緒にいて波長が合うと感じたし、心地よさも感じていた。
 時間を忘れるほどたくさん話をしたが、あの日のことには触れずにいた。触れると、何かが崩れてしまうような気がしたからだ。
 付き合おうと言ったのは拓海だったが、そんな予感はあったし、萌香もそれを望んでいた。
 直感を信じてみようと思えた。
 気付けば「萌香ちゃん」から、「萌香」と呼ばれるようになっていた。


「もうすぐ一年だな」

「そうだね」

 あの日、萌香の心を震わせ、激しく打ちつけていた胸の鼓動が、今は安心感に変わり、拓海の腕の中で穏やかに刻まれている。萌香は幸福感に満たされていた。
 気がかりなのは、あの日拓海が言った『また会えたね』のひとことだった。萌香はどうしても思い出せずにいた。
 本当は、いつどこで会った誰かも分からないまま付き合っていた、なんていうことを拓海が知ったら、どんな気持ちになるだろうか。流石に穏やかな拓海でも、ふざけるな、と怒るだろうか。最低だ、と冷たい目を向け、信じられない、とショックを受けるのだろうか。けれど、このまま隠し通せる自信もなかった。
 萌香は意を決して、交際一年の記念日に拓海に尋ねてみることにした。それが、吉と出るか凶と出るか……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

謎かけは恋の始まり

凛子
恋愛
……その心は?

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

一途な恋

凛子
恋愛
貴方だけ見つめてる……

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...