2 / 5
2
しおりを挟む
信号が青に変わり、色とりどりの傘が一斉に揺れ動く。
横断歩道の中程で、ふと視界に入った男性とガッチリ視線が絡み、萌香は思わず足を止めた。彼は雷にでも打たれたように、目を大きく見開いている。
「また会えたね」
「えっ? ……ああ、あの時の……?」
萌香は少し考えてからそう口にしたが、実際には全く記憶になかった。それは、相手を不快にさせない為の社交辞令のようなもので、挨拶されたから返した、というだけだった。
「うん、そうそう」
けれど、萌香の言ったあの時は、偶然にも彼のその時だったようで、会話のキャッチボールが成立してしまった。
ふと我に返り、通行人からの迷惑そうな視線を浴びていることに気付いた萌香は、彼に目配せをして横断歩道を引き返した。
彼は山城拓海と名乗ったが、やはり聞き覚えも見覚えもなかった。それは、絶対と言い切れる。何故なら彼が、一度見れば絶対に忘れないであろう容姿をしていたからだ。要するに、イケメンということだ。
萌香の胸は早鐘を打っていた。
「萌香ちゃん、だよね?」
「え? ……はい」
名前を呼ばれて、萌香の自信は揺らいだ。
やはり何処かで会っているのだろうか。
「良かったら、連絡先交換しない?」
「ああ、はい」
萌香はスマホを操作する彼の横顔を凝視したが、やはり見覚えがなかった。
「じゃあ、近いうちに連絡するね。ご飯でも行こう」
「はい……待ってます」
思わず心の声まで漏らしてしまい、彼の後ろ姿を見送りながら萌香は苦笑した。
横断歩道の中程で、ふと視界に入った男性とガッチリ視線が絡み、萌香は思わず足を止めた。彼は雷にでも打たれたように、目を大きく見開いている。
「また会えたね」
「えっ? ……ああ、あの時の……?」
萌香は少し考えてからそう口にしたが、実際には全く記憶になかった。それは、相手を不快にさせない為の社交辞令のようなもので、挨拶されたから返した、というだけだった。
「うん、そうそう」
けれど、萌香の言ったあの時は、偶然にも彼のその時だったようで、会話のキャッチボールが成立してしまった。
ふと我に返り、通行人からの迷惑そうな視線を浴びていることに気付いた萌香は、彼に目配せをして横断歩道を引き返した。
彼は山城拓海と名乗ったが、やはり聞き覚えも見覚えもなかった。それは、絶対と言い切れる。何故なら彼が、一度見れば絶対に忘れないであろう容姿をしていたからだ。要するに、イケメンということだ。
萌香の胸は早鐘を打っていた。
「萌香ちゃん、だよね?」
「え? ……はい」
名前を呼ばれて、萌香の自信は揺らいだ。
やはり何処かで会っているのだろうか。
「良かったら、連絡先交換しない?」
「ああ、はい」
萌香はスマホを操作する彼の横顔を凝視したが、やはり見覚えがなかった。
「じゃあ、近いうちに連絡するね。ご飯でも行こう」
「はい……待ってます」
思わず心の声まで漏らしてしまい、彼の後ろ姿を見送りながら萌香は苦笑した。
0
あなたにおすすめの小説
優しい彼
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の彼は優しい。
……うん、優しいのだ。
王子様のように優しげな風貌。
社内では王子様で通っている。
風貌だけじゃなく、性格も優しいから。
私にだって、いつも優しい。
男とふたりで飲みに行くっていっても、「行っておいで」だし。
私に怒ったことなんて一度もない。
でもその優しさは。
……無関心の裏返しじゃないのかな。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる