41 / 61
第2章
第9話:この街に来たその日に事件が起きるなんて…
しおりを挟む
悲鳴が聞こえた方を見ると、若い女性が倒れていた。さらに男が走り去る姿が。その手には女性用のカバンが握られている。
「スカーレット、少し待っていてくれ」
そう言うと、物凄いスピードで男を追い始めたグレイ様。いけない、ボーっと見ている場合ではない。急いで女性の元に向かう。
「大丈夫ですか?」
女性に声をかけると
「カバンをひったくられたんです。あの中には、夫から預かった大切なお金が入っていて…」
パニックになる女性。
「大丈夫ですよ、今犯人を追いかけておりますから」
ふと女性を見ると、ひったくられた拍子に転び、足を怪我している様で血が出ていた。どうしよう、救急箱等はないし。そうだわ。ポケットに入っていたハンカチで、怪我をしている足を巻いた。
「ごめんなさい、私にはこれくらいしか出来なくて。さあ、立てますか?」
「ありがとうございます」
泣きながらもなんとか立ち上がった女性。すると、向こうの方から犯人らしき男を捕まえてこちらに戻ってくるグレイ様の姿が。
「スカーレット、被害者の女性の側にいてくれたんだな。ありがとう。これ、あなたのカバンで間違いないですか?」
「ありがとうございます。私のです!お金もちゃんと入っております。本当にありがとうございました」
グレイ様からカバンを受け取り、何度も頭を下げる女性。
「スカーレット、申し訳ないが俺はこのまま騎士団の本部にこいつを連れて行ってくる。先に家に帰ってもらってもいいだろうか?それから、あなたも騎士団の本部に来てもらえるか?」
「はい、もちろんです。あの…スカーレット様とおっしゃられましたね。色々とありがとうございました」
そう言うと、深々と頭を下げた女性。大したことをしていないけれど、それでもこうやってお礼を言われると嬉しいものね。なんだか少しだけ、グレイ様に近づけた気がした。
女性とグレイ様、さらに犯人を見送ると、家に向かい歩き出そうとした時だった。さっき買い物をしたお店の人たちが話しかけてきた。
「女性を助けてくれてありがとう。これ、大したものじゃないけれど、持って行っておくれ」
「これも。それにしても、あなたの旦那さん、犯人を捕まえるなんて凄いんだね。もしかして、騎士団員かい?それにあなたも、すぐに女性に近づいて助けるなんて、中々出来る事じゃないよ」
そう言って次々と褒めてくれる。
「ありがとうございます。はい、夫は騎士団長をしておりまして…それで…」
「新しい騎士団長さんだったのか。そりゃ強い訳だ。この街は本当に治安が悪くてね。騎士団の方々には本当に感謝しているんだよ。確かスカーレットさんと言ったね。これからよろしく頼むよ」
そう言って頭を下げるお店の人たち。この人たちが少しでも安心して生活できる様、私も出来る事は何でもしたい、そう強く思った。
少しだけお店の人と話をした後、家に帰って来た。ふと大きな箱の奥深くにしまっておいた、リンダさんに貰った竹刀を手に取る。“この竹刀、スカーレットさんにあげる。何らかの役に立つかもしれないから”そう言ってくれたのだ。
私ももっともっと強くなって、少しでもグレイ様の役に立ちたい。早速明日から、リンダさんに教えてもらったトレーニングを再開しないと!
おっとまずは、晩御飯の準備をしないとね。きっと取り調べなどでグレイ様の帰りが遅くなる可能性が高い。物凄くお腹を空かせて帰ってくるだろう。早速今日買った貝でグラタンを作る。さらに赤い魚を使った餡かけ、お肉をたっぷり使ったサンドウィッチも作った。
予想通り、グレイ様はなかなか帰ってこないので、その間に家の片づけをする。ふと時計を見ると、夜の10時を過ぎていた。さすがに遅すぎる。心配になって外に出ようとした時だった。
ガチャ
鍵が開く音が聞こえたので、急いで玄関へと向かうと、グレイ様が中に入って来た。
「おかえりなさい。グレイ様」
「ただいま、スカーレット。まさかこんな時間まで待っていてくれたのかい?」
「ええ、もちろんですわ。それより、お腹が空いているでしょう?すぐにご飯にしますね」
早速台所に向かい、料理を温め直した。
「まさか、食べずに待っていてくれていたのかい?」
「ええ、せっかくなので、一緒に食べたいと思いまして」
「ありがとう、スカーレット。でも、これからは毎日これくらい遅くなるかもしれない。スカーレットが体調を崩したら大変だ。先に食事を済ませておいてくれ。それから、無理に起きている必要はない。遠慮なく寝てもらっても構わないからね」
「わかりましたわ。これからは、先に食べている様にします。でも、グレイ様が帰ってくるまでは、出来るだけ起きている様にしますわ。私はお昼寝も出来ますし、それに何より、グレイ様のお顔を見たいので」
「あぁ、何て君は優しいんだ。ありがとう、スカーレット。でも無理をしてはいけないよ」
そう言って抱きしめてくれたグレイ様。その後、2人で仲良く食事をした。グレイ様の話では、どうやら大きな犯罪組織の下っ端の様だが、詳しい情報は結局得られなかったらしい。
まさか引越し1日目で、犯罪を目の当たりにするなんて。でも、私は騎士団長でもあるグレイ様の妻だもの。グレイ様を支えられるような妻になれる様、頑張らないとね。
「スカーレット、少し待っていてくれ」
そう言うと、物凄いスピードで男を追い始めたグレイ様。いけない、ボーっと見ている場合ではない。急いで女性の元に向かう。
「大丈夫ですか?」
女性に声をかけると
「カバンをひったくられたんです。あの中には、夫から預かった大切なお金が入っていて…」
パニックになる女性。
「大丈夫ですよ、今犯人を追いかけておりますから」
ふと女性を見ると、ひったくられた拍子に転び、足を怪我している様で血が出ていた。どうしよう、救急箱等はないし。そうだわ。ポケットに入っていたハンカチで、怪我をしている足を巻いた。
「ごめんなさい、私にはこれくらいしか出来なくて。さあ、立てますか?」
「ありがとうございます」
泣きながらもなんとか立ち上がった女性。すると、向こうの方から犯人らしき男を捕まえてこちらに戻ってくるグレイ様の姿が。
「スカーレット、被害者の女性の側にいてくれたんだな。ありがとう。これ、あなたのカバンで間違いないですか?」
「ありがとうございます。私のです!お金もちゃんと入っております。本当にありがとうございました」
グレイ様からカバンを受け取り、何度も頭を下げる女性。
「スカーレット、申し訳ないが俺はこのまま騎士団の本部にこいつを連れて行ってくる。先に家に帰ってもらってもいいだろうか?それから、あなたも騎士団の本部に来てもらえるか?」
「はい、もちろんです。あの…スカーレット様とおっしゃられましたね。色々とありがとうございました」
そう言うと、深々と頭を下げた女性。大したことをしていないけれど、それでもこうやってお礼を言われると嬉しいものね。なんだか少しだけ、グレイ様に近づけた気がした。
女性とグレイ様、さらに犯人を見送ると、家に向かい歩き出そうとした時だった。さっき買い物をしたお店の人たちが話しかけてきた。
「女性を助けてくれてありがとう。これ、大したものじゃないけれど、持って行っておくれ」
「これも。それにしても、あなたの旦那さん、犯人を捕まえるなんて凄いんだね。もしかして、騎士団員かい?それにあなたも、すぐに女性に近づいて助けるなんて、中々出来る事じゃないよ」
そう言って次々と褒めてくれる。
「ありがとうございます。はい、夫は騎士団長をしておりまして…それで…」
「新しい騎士団長さんだったのか。そりゃ強い訳だ。この街は本当に治安が悪くてね。騎士団の方々には本当に感謝しているんだよ。確かスカーレットさんと言ったね。これからよろしく頼むよ」
そう言って頭を下げるお店の人たち。この人たちが少しでも安心して生活できる様、私も出来る事は何でもしたい、そう強く思った。
少しだけお店の人と話をした後、家に帰って来た。ふと大きな箱の奥深くにしまっておいた、リンダさんに貰った竹刀を手に取る。“この竹刀、スカーレットさんにあげる。何らかの役に立つかもしれないから”そう言ってくれたのだ。
私ももっともっと強くなって、少しでもグレイ様の役に立ちたい。早速明日から、リンダさんに教えてもらったトレーニングを再開しないと!
おっとまずは、晩御飯の準備をしないとね。きっと取り調べなどでグレイ様の帰りが遅くなる可能性が高い。物凄くお腹を空かせて帰ってくるだろう。早速今日買った貝でグラタンを作る。さらに赤い魚を使った餡かけ、お肉をたっぷり使ったサンドウィッチも作った。
予想通り、グレイ様はなかなか帰ってこないので、その間に家の片づけをする。ふと時計を見ると、夜の10時を過ぎていた。さすがに遅すぎる。心配になって外に出ようとした時だった。
ガチャ
鍵が開く音が聞こえたので、急いで玄関へと向かうと、グレイ様が中に入って来た。
「おかえりなさい。グレイ様」
「ただいま、スカーレット。まさかこんな時間まで待っていてくれたのかい?」
「ええ、もちろんですわ。それより、お腹が空いているでしょう?すぐにご飯にしますね」
早速台所に向かい、料理を温め直した。
「まさか、食べずに待っていてくれていたのかい?」
「ええ、せっかくなので、一緒に食べたいと思いまして」
「ありがとう、スカーレット。でも、これからは毎日これくらい遅くなるかもしれない。スカーレットが体調を崩したら大変だ。先に食事を済ませておいてくれ。それから、無理に起きている必要はない。遠慮なく寝てもらっても構わないからね」
「わかりましたわ。これからは、先に食べている様にします。でも、グレイ様が帰ってくるまでは、出来るだけ起きている様にしますわ。私はお昼寝も出来ますし、それに何より、グレイ様のお顔を見たいので」
「あぁ、何て君は優しいんだ。ありがとう、スカーレット。でも無理をしてはいけないよ」
そう言って抱きしめてくれたグレイ様。その後、2人で仲良く食事をした。グレイ様の話では、どうやら大きな犯罪組織の下っ端の様だが、詳しい情報は結局得られなかったらしい。
まさか引越し1日目で、犯罪を目の当たりにするなんて。でも、私は騎士団長でもあるグレイ様の妻だもの。グレイ様を支えられるような妻になれる様、頑張らないとね。
49
あなたにおすすめの小説
私を虐げた人には絶望を ~貧乏令嬢は悪魔と呼ばれる侯爵様と契約結婚する~
香木陽灯
恋愛
「あなた達の絶望を侯爵様に捧げる契約なの。だから……悪く思わないでね?」
貧乏な子爵家に生まれたカレン・リドリーは、家族から虐げられ、使用人のように働かされていた。
カレンはリドリー家から脱出して平民として生きるため、就職先を探し始めるが、令嬢である彼女の就職活動は難航してしまう。
ある時、不思議な少年ティルからモルザン侯爵家で働くようにスカウトされ、モルザン家に連れていかれるが……
「変わった人間だな。悪魔を前にして驚きもしないとは」
クラウス・モルザンは「悪魔の侯爵」と呼ばれていたが、本当に悪魔だったのだ。
負の感情を糧として生きているクラウスは、社交界での負の感情を摂取するために優秀な侯爵を演じていた。
カレンと契約結婚することになったクラウスは、彼女の家族に目をつける。
そしてクラウスはカレンの家族を絶望させて糧とするため、動き出すのだった。
「お前を虐げていた者たちに絶望を」
※念のためのR-15です
※他サイトでも掲載中
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
婚約破棄されたけれど、どうぞ勝手に没落してくださいませ。私は辺境で第二の人生を満喫しますわ
鍛高譚
恋愛
「白い結婚でいい。
平凡で、静かな生活が送れれば――それだけで幸せでしたのに。」
婚約破棄され、行き場を失った伯爵令嬢アナスタシア。
彼女を救ったのは“冷徹”と噂される公爵・ルキウスだった。
二人の結婚は、互いに干渉しない 『白い結婚』――ただの契約のはずだった。
……はずなのに。
邸内で起きる不可解な襲撃。
操られた侍女が放つ言葉。
浮かび上がる“白の一族”の血――そしてアナスタシアの身体に眠る 浄化の魔力。
「白の娘よ。いずれ迎えに行く」
影の王から届いた脅迫状が、運命の刻を告げる。
守るために剣を握る公爵。
守られるだけで終わらせないと誓う令嬢。
契約から始まったはずの二人の関係は、
いつしか互いに手放せない 真実の愛 へと変わってゆく。
「君を奪わせはしない」
「わたくしも……あなたを守りたいのです」
これは――
白い結婚から始まり、影の王を巡る大いなる戦いへ踏み出す、
覚醒令嬢と冷徹公爵の“運命の恋と陰謀”の物語。
---
突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる