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第2章

第10話:男性を助けました

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翌日眠い目をこすり、何とか目を覚ました。昨日眠るのが遅かったため、物凄く眠いが、今日はグレイ様の初出勤の日。寝坊する訳にはいかない。早速朝ごはんの準備に取り掛かる。

そしていつもの様に朝練をしているグレイ様の為に、お風呂も沸かさないと。とにかく朝は時間との勝負。朝からしっかり食べるグレイ様の為に、お肉と野菜のスープとサラダ。ホットサンドを作った。

ちょうど机に並べ終わった頃、お風呂から上がったグレイ様がやって来た。

「昨日は遅かったのに、こんなにも沢山の朝食を作ってくれたんだな。ありがとう。早速頂こう」

グレイ様が席に着いたところで、朝食開始だ。

「今日も多分遅くなると思うが、なるべく早く帰る様にするよ。もし遅くなる様なら、先に食べていてもらって構わないから。それから、昨日も見たと思うが、この街はとても治安が悪い。市場は昼間の人の多い時間に出来るだけ行って欲しい。それから、カバンは手で持つのではなく、首から下げるタイプがいいだろう。出来るだけ、人が通る通路側にカバンが来ない様にすることも大切だ。そうすることで、奪われにくくなる。後、夜は絶対に外には出てはいけないよ!これだけは約束して欲しい」

「大丈夫ですわ。グレイ様に迷惑を掛けない様、私も細心の注意を払って生活をいたしますので、安心してください」

極力迷惑を掛けない様に生きて行かないとね。

「とにかく、気を付けるんだぞ。それじゃあ、俺はそろそろ行ってくる。俺が出掛けたら、内側からしっかり鍵を掛けてくれ」

「はい、わかりました」

グレイ様を見送ると、しっかり内側から鍵を掛ける。さあ、引越しの片づけをしないとね。そう、昨日片づけが終わらず、まだ箱に入った荷物がたくさんあるのだ。早速箱から荷物を取り出して、並べていく。

意外と荷物が多く、全て片付け終わった頃には、お昼を過ぎていた。いけない、買い物に行かないと。あらかじめ準備しておいたパンとスープを口の中に放り込み、急いで市場に買い物に行く。確か肩掛けカバンがいいのよね。それから、人があまり通らない方に置くのよね。

細心の注意を払いながら、買い物に向かう。と言っても、徒歩3分の距離なんだけれどね。あっという間に市場に着いた。早速買い物を済ませ、後は近所にあるパン屋さんに寄って帰るだけだ。確かうちの近くに、美味しそうなパン屋さんがあった。あそこで買って帰ろう。

家に向かって歩いていると、人通りの少ない通路で、1人の男性が4人の男に絡まれているではないか。これはもしかして、喧嘩?その瞬間、男性が男に殴られた。人が殴られる瞬間なんて、初めて見たわ。恐怖で体が震え、その場から動く事が出来ない。

しっかりするのよ、私はグレイ様の妻なのだから!そうだわ、こんな時は。

「騎士団員さん、こっちです、こっちで喧嘩をしています。早く来てください!」

自分でもびっくりする程大きな声で、そう叫んだ。

「ちっ、騎士団員が来たみたいだ!逃げるぞ」

4人の男が物凄い勢いで逃げていく。どうやらうまく行った様だ。でも…

恐怖から、その場にへたり込んでしまった。まだ震えが止まらない。それでも、喧嘩を止める事が出来たのね。

そんな私に近づく男性。

「おい、大丈夫か?お前、そんなに震える体でよく叫んだな。でも、ありがとう。助かったよ。俺はベス。見かけない顔だけれど、この辺りの人間か?」

いけない、いつまでも震えていてはダメよね。何とか立ち上がり

「私はスカーレットと申します。昨日この街に引っ越してきました。どうぞよろしくお願いします。それよりも、唇が切れておりますわ。少しじっとしていてください」

カバンから消毒液と絆創膏を取り出す。昨日の事件を目の当たりにして、いつケガ人に出くわしてもいい様に、ちょっとした救急セットを持ち歩くことにしたのだ。

「別に大したことはないからいいよ」

「いいえ、よくありません。とにかくジッとしていてください」

ハンカチに消毒液を付け、切れている唇に当てる。そして絆創膏を傷口にはった。よし、とりあえずはこれでいいだろう。

「スカーレットだっけ?カバンにそんなもの入れているのか?でも、ありがとう」

なぜか顔が赤いベスさん。一体どうしたのかしら?まあいいわ。とにかく早く帰らないとね。

「それではベスさん。私はこれで失礼します」

そう言って立ち去ろうとしたのだが

「待ってくれ。助けてもらって手当てまでしてもらって、はいさようなら何て、行く訳ないだろう。せめて家まで送らせてくれ」


「ありがとうございます。でも、家はこの近くですし、パン屋さんにも寄っていきたいので」

「パン屋だって。それなら家のパンを持って行くといい。実は俺、パン屋の息子なんだ。こっちだ」

私の荷物を持つと、スタスタと歩き出したベスさん。少し歩くと、私が行こうとしていたパン屋さんの中に入って行く。まさかこのパン屋さんの息子さんだったなんて。
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