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第2章
第9話:この街に来たその日に事件が起きるなんて…
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悲鳴が聞こえた方を見ると、若い女性が倒れていた。さらに男が走り去る姿が。その手には女性用のカバンが握られている。
「スカーレット、少し待っていてくれ」
そう言うと、物凄いスピードで男を追い始めたグレイ様。いけない、ボーっと見ている場合ではない。急いで女性の元に向かう。
「大丈夫ですか?」
女性に声をかけると
「カバンをひったくられたんです。あの中には、夫から預かった大切なお金が入っていて…」
パニックになる女性。
「大丈夫ですよ、今犯人を追いかけておりますから」
ふと女性を見ると、ひったくられた拍子に転び、足を怪我している様で血が出ていた。どうしよう、救急箱等はないし。そうだわ。ポケットに入っていたハンカチで、怪我をしている足を巻いた。
「ごめんなさい、私にはこれくらいしか出来なくて。さあ、立てますか?」
「ありがとうございます」
泣きながらもなんとか立ち上がった女性。すると、向こうの方から犯人らしき男を捕まえてこちらに戻ってくるグレイ様の姿が。
「スカーレット、被害者の女性の側にいてくれたんだな。ありがとう。これ、あなたのカバンで間違いないですか?」
「ありがとうございます。私のです!お金もちゃんと入っております。本当にありがとうございました」
グレイ様からカバンを受け取り、何度も頭を下げる女性。
「スカーレット、申し訳ないが俺はこのまま騎士団の本部にこいつを連れて行ってくる。先に家に帰ってもらってもいいだろうか?それから、あなたも騎士団の本部に来てもらえるか?」
「はい、もちろんです。あの…スカーレット様とおっしゃられましたね。色々とありがとうございました」
そう言うと、深々と頭を下げた女性。大したことをしていないけれど、それでもこうやってお礼を言われると嬉しいものね。なんだか少しだけ、グレイ様に近づけた気がした。
女性とグレイ様、さらに犯人を見送ると、家に向かい歩き出そうとした時だった。さっき買い物をしたお店の人たちが話しかけてきた。
「女性を助けてくれてありがとう。これ、大したものじゃないけれど、持って行っておくれ」
「これも。それにしても、あなたの旦那さん、犯人を捕まえるなんて凄いんだね。もしかして、騎士団員かい?それにあなたも、すぐに女性に近づいて助けるなんて、中々出来る事じゃないよ」
そう言って次々と褒めてくれる。
「ありがとうございます。はい、夫は騎士団長をしておりまして…それで…」
「新しい騎士団長さんだったのか。そりゃ強い訳だ。この街は本当に治安が悪くてね。騎士団の方々には本当に感謝しているんだよ。確かスカーレットさんと言ったね。これからよろしく頼むよ」
そう言って頭を下げるお店の人たち。この人たちが少しでも安心して生活できる様、私も出来る事は何でもしたい、そう強く思った。
少しだけお店の人と話をした後、家に帰って来た。ふと大きな箱の奥深くにしまっておいた、リンダさんに貰った竹刀を手に取る。“この竹刀、スカーレットさんにあげる。何らかの役に立つかもしれないから”そう言ってくれたのだ。
私ももっともっと強くなって、少しでもグレイ様の役に立ちたい。早速明日から、リンダさんに教えてもらったトレーニングを再開しないと!
おっとまずは、晩御飯の準備をしないとね。きっと取り調べなどでグレイ様の帰りが遅くなる可能性が高い。物凄くお腹を空かせて帰ってくるだろう。早速今日買った貝でグラタンを作る。さらに赤い魚を使った餡かけ、お肉をたっぷり使ったサンドウィッチも作った。
予想通り、グレイ様はなかなか帰ってこないので、その間に家の片づけをする。ふと時計を見ると、夜の10時を過ぎていた。さすがに遅すぎる。心配になって外に出ようとした時だった。
ガチャ
鍵が開く音が聞こえたので、急いで玄関へと向かうと、グレイ様が中に入って来た。
「おかえりなさい。グレイ様」
「ただいま、スカーレット。まさかこんな時間まで待っていてくれたのかい?」
「ええ、もちろんですわ。それより、お腹が空いているでしょう?すぐにご飯にしますね」
早速台所に向かい、料理を温め直した。
「まさか、食べずに待っていてくれていたのかい?」
「ええ、せっかくなので、一緒に食べたいと思いまして」
「ありがとう、スカーレット。でも、これからは毎日これくらい遅くなるかもしれない。スカーレットが体調を崩したら大変だ。先に食事を済ませておいてくれ。それから、無理に起きている必要はない。遠慮なく寝てもらっても構わないからね」
「わかりましたわ。これからは、先に食べている様にします。でも、グレイ様が帰ってくるまでは、出来るだけ起きている様にしますわ。私はお昼寝も出来ますし、それに何より、グレイ様のお顔を見たいので」
「あぁ、何て君は優しいんだ。ありがとう、スカーレット。でも無理をしてはいけないよ」
そう言って抱きしめてくれたグレイ様。その後、2人で仲良く食事をした。グレイ様の話では、どうやら大きな犯罪組織の下っ端の様だが、詳しい情報は結局得られなかったらしい。
まさか引越し1日目で、犯罪を目の当たりにするなんて。でも、私は騎士団長でもあるグレイ様の妻だもの。グレイ様を支えられるような妻になれる様、頑張らないとね。
「スカーレット、少し待っていてくれ」
そう言うと、物凄いスピードで男を追い始めたグレイ様。いけない、ボーっと見ている場合ではない。急いで女性の元に向かう。
「大丈夫ですか?」
女性に声をかけると
「カバンをひったくられたんです。あの中には、夫から預かった大切なお金が入っていて…」
パニックになる女性。
「大丈夫ですよ、今犯人を追いかけておりますから」
ふと女性を見ると、ひったくられた拍子に転び、足を怪我している様で血が出ていた。どうしよう、救急箱等はないし。そうだわ。ポケットに入っていたハンカチで、怪我をしている足を巻いた。
「ごめんなさい、私にはこれくらいしか出来なくて。さあ、立てますか?」
「ありがとうございます」
泣きながらもなんとか立ち上がった女性。すると、向こうの方から犯人らしき男を捕まえてこちらに戻ってくるグレイ様の姿が。
「スカーレット、被害者の女性の側にいてくれたんだな。ありがとう。これ、あなたのカバンで間違いないですか?」
「ありがとうございます。私のです!お金もちゃんと入っております。本当にありがとうございました」
グレイ様からカバンを受け取り、何度も頭を下げる女性。
「スカーレット、申し訳ないが俺はこのまま騎士団の本部にこいつを連れて行ってくる。先に家に帰ってもらってもいいだろうか?それから、あなたも騎士団の本部に来てもらえるか?」
「はい、もちろんです。あの…スカーレット様とおっしゃられましたね。色々とありがとうございました」
そう言うと、深々と頭を下げた女性。大したことをしていないけれど、それでもこうやってお礼を言われると嬉しいものね。なんだか少しだけ、グレイ様に近づけた気がした。
女性とグレイ様、さらに犯人を見送ると、家に向かい歩き出そうとした時だった。さっき買い物をしたお店の人たちが話しかけてきた。
「女性を助けてくれてありがとう。これ、大したものじゃないけれど、持って行っておくれ」
「これも。それにしても、あなたの旦那さん、犯人を捕まえるなんて凄いんだね。もしかして、騎士団員かい?それにあなたも、すぐに女性に近づいて助けるなんて、中々出来る事じゃないよ」
そう言って次々と褒めてくれる。
「ありがとうございます。はい、夫は騎士団長をしておりまして…それで…」
「新しい騎士団長さんだったのか。そりゃ強い訳だ。この街は本当に治安が悪くてね。騎士団の方々には本当に感謝しているんだよ。確かスカーレットさんと言ったね。これからよろしく頼むよ」
そう言って頭を下げるお店の人たち。この人たちが少しでも安心して生活できる様、私も出来る事は何でもしたい、そう強く思った。
少しだけお店の人と話をした後、家に帰って来た。ふと大きな箱の奥深くにしまっておいた、リンダさんに貰った竹刀を手に取る。“この竹刀、スカーレットさんにあげる。何らかの役に立つかもしれないから”そう言ってくれたのだ。
私ももっともっと強くなって、少しでもグレイ様の役に立ちたい。早速明日から、リンダさんに教えてもらったトレーニングを再開しないと!
おっとまずは、晩御飯の準備をしないとね。きっと取り調べなどでグレイ様の帰りが遅くなる可能性が高い。物凄くお腹を空かせて帰ってくるだろう。早速今日買った貝でグラタンを作る。さらに赤い魚を使った餡かけ、お肉をたっぷり使ったサンドウィッチも作った。
予想通り、グレイ様はなかなか帰ってこないので、その間に家の片づけをする。ふと時計を見ると、夜の10時を過ぎていた。さすがに遅すぎる。心配になって外に出ようとした時だった。
ガチャ
鍵が開く音が聞こえたので、急いで玄関へと向かうと、グレイ様が中に入って来た。
「おかえりなさい。グレイ様」
「ただいま、スカーレット。まさかこんな時間まで待っていてくれたのかい?」
「ええ、もちろんですわ。それより、お腹が空いているでしょう?すぐにご飯にしますね」
早速台所に向かい、料理を温め直した。
「まさか、食べずに待っていてくれていたのかい?」
「ええ、せっかくなので、一緒に食べたいと思いまして」
「ありがとう、スカーレット。でも、これからは毎日これくらい遅くなるかもしれない。スカーレットが体調を崩したら大変だ。先に食事を済ませておいてくれ。それから、無理に起きている必要はない。遠慮なく寝てもらっても構わないからね」
「わかりましたわ。これからは、先に食べている様にします。でも、グレイ様が帰ってくるまでは、出来るだけ起きている様にしますわ。私はお昼寝も出来ますし、それに何より、グレイ様のお顔を見たいので」
「あぁ、何て君は優しいんだ。ありがとう、スカーレット。でも無理をしてはいけないよ」
そう言って抱きしめてくれたグレイ様。その後、2人で仲良く食事をした。グレイ様の話では、どうやら大きな犯罪組織の下っ端の様だが、詳しい情報は結局得られなかったらしい。
まさか引越し1日目で、犯罪を目の当たりにするなんて。でも、私は騎士団長でもあるグレイ様の妻だもの。グレイ様を支えられるような妻になれる様、頑張らないとね。
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