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第2章
第11話:なぜかグレイ様に怒られました
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お店の中に入ると、パンの焼けるいい匂いがする。それに沢山のお客さんで賑わっていた。かなりの人気店の様だ。
「ごめん、今ちょうどパンが焼きあがって、人で溢れかえっている時間だった。悪いがちょっと待っていてもらえるかな?」
一旦外に出てベスさんが戻ってくるのを待つ。正直早く帰りたいのだが…そう思っていると、女性を連れて戻って来た。
「あなたが息子の命の恩人ですね。息子を助けていただき、ありがとうございます。これ、焼き立てのパンです。どうか、受け取ってください」
女性はベスさんのお母さんの様だ。凄い量のパンをもってやって来た。でも、あんなにも沢山の人がパンを待っている。私がこんなに貰っては申し訳ない。
「ありがとうございます。でも、他のお客さんも待っていらっしゃる大切なパンを、こんなに沢山はいただけませんわ。ですので、食パンだけ購入させていただいても宜しいでしょうか?」
元々食パンを買おうと思っていたのだ。
「でも、息子の…」
「実は私、本日この街に赴任してきた、騎士団長の妻なのです。妻として、街の人を助けるのは当然ですわ。それに夫からも、頂き物は断る様にと言われておりますので」
昨日もお店の人から色々と貰った事を話したら、“お店の人のご厚意は有難いが、出来れば断って欲しい”そう言われた。
よく考えてみたら、誰かを助けるために何かを貰っていたら、なんだかお礼が欲しくて人を助けているみたいだものね。そう思ったのだ。
「そうだったのですね。わかりました」
その場で代金を支払い、食パンだけ頂いた。
「本当にありがとうございました」
何度も何度も頭を下げ、急いでお店に戻っていくベスさんのお母さん。なんだか忙しい時間に、申し訳なかったわね。
「お前、騎士団長の妻だったのか…まあいい、とにかく家まで送るよ。せめてそれくらいはさせて欲しい」
そう言ってくれたベスさん。でも…
「ありがとうございます。でも家は、あの白い建物ですので…」
そう、ベスさん家のパン屋の隣の隣が我が家なのだ。送るも何も、もう目の前。
「あんな近くに住んでいたのか!それでも送るよ」
そう言って家の前まで送ってくれた。
「送っていただき、ありがとうございます」
「俺の方こそ、助けてくれてありがとう。それじゃあ、また」
そう言って去っていったベスさん。なんだかんだで遅くなってしまった。さっきベスさんの家で買ったパンを使って、早速サンドウィッチを作る。ちょっと味見。そう思い、サンドウィッチを口に入れると
「美味しい…」
つい言葉がポロリと出てしまうほど、パンがモチモチで美味しいのだ。なるほど、人で溢れかえる理由が分かったわ。
この味を知ってしまったら、もうベスさんの家のパンしか買えないわね。私も明日から、パン争奪戦に参加しないと。
そんな事を考えていると、
ガチャリ
と鍵が開く音が。
なんとグレイ様が帰って来たのだ。えっ?もう帰って来たの?
慌てて玄関に向かうと、確かにグレイ様が帰って来ていた。
「おかえりなさい、早かったのですね」
「ああ、昨日はまだ就任前だったのに夜遅くまで仕事をしていたからな。今日はスティーブンが気を利かせて早く帰れるようにしてくれたんだ」
「まあ、副騎士団長様がですか。お優しい方が副騎士団長様でよかったですわ。さあ、晩御飯にしましょう」
」
急いで食卓に料理を並べ、早速2人で食事をする。
「このサンドウィッチ、メチャクチャ旨いな。特にパンがモチモチしていて旨い」
「そうなんですよ、このパン、2軒隣のベスさん家のパン屋さんで買ったのですが、メチャクチャ美味しいんです」
「ベスさん?スカーレット、そいつは誰だ?」
眉間にシワを寄せ、そう呟いたグレイ様。そうか、グレイ様にベスさんの事を話していなかった。早速グレイ様に今日の出来事を話した。
「なるほど、その助けた男が2軒隣のパン屋さんの息子だった訳だな。まさかスカーレット、家にあげたりなんかしていないよな」
「もちろんしていませんわ。ベスさんも助けてもらったお礼に荷物を運んでくれただけですので」
「それならいい。スカーレット、人助けもいいが、万が一君に何かあったら大変だ。今回はたまたまうまく行ったかもしれないが、あまり軽はずみな行動はせず、すぐに近くの騎士団員に伝えろ。街には沢山の騎士団員が待機しているからな。とにかく自分で解決しようとせず、騎士団員に報告しろ。わかったな!」
「わかりました…」
自分では良かれと思ってやった事だったのだが、なぜか怒られてしまった。シュンとする私に
「すまない、ちょっと強く言いすぎてしまった。でも、俺はスカーレットが事件に巻き込まれでもしたらと思うと、気が気ではないんだ。やっぱり護衛を雇おう」
「いいえ、大丈夫ですわ。これからは軽はずみな行動は控えますから。本当にごめんなさい」
実はグレイ様は、この街で生活するにあたり、私に護衛を付けようとしたのだ。それを必死に止めた。とにかく、なるべくグレイ様を心配させない様にしないと。
「スカーレットがそう言うなら…でも俺は、色々な意味でスカーレットが心配だ…絶対にその男、スカーレットを気に入ったはずだ…」
訳の分からないことをブツブツと呟くグレイ様。そして何を思ったのか
「また明日から帰宅時間が遅くなる。今日はゆっくり2人で過ごそう。まずは風呂に入らないとな。スカーレット、せっかくだから一緒に入ろう」
「えっ?一緒にですか?さすがにそれは…」
恥ずかしすぎる。そう言おうとしたのだが
「俺たちは夫婦だ。風呂くらい一緒に入って何が悪い!さあ、俺も手伝うから急いで片づけよう」
なぜか急に張り切り出したグレイ様。洗い物が終わると、そのままグレイ様に抱きかかえられ、お風呂場へ。その後はもちろん、ベッドに直行した2人であった。
「ごめん、今ちょうどパンが焼きあがって、人で溢れかえっている時間だった。悪いがちょっと待っていてもらえるかな?」
一旦外に出てベスさんが戻ってくるのを待つ。正直早く帰りたいのだが…そう思っていると、女性を連れて戻って来た。
「あなたが息子の命の恩人ですね。息子を助けていただき、ありがとうございます。これ、焼き立てのパンです。どうか、受け取ってください」
女性はベスさんのお母さんの様だ。凄い量のパンをもってやって来た。でも、あんなにも沢山の人がパンを待っている。私がこんなに貰っては申し訳ない。
「ありがとうございます。でも、他のお客さんも待っていらっしゃる大切なパンを、こんなに沢山はいただけませんわ。ですので、食パンだけ購入させていただいても宜しいでしょうか?」
元々食パンを買おうと思っていたのだ。
「でも、息子の…」
「実は私、本日この街に赴任してきた、騎士団長の妻なのです。妻として、街の人を助けるのは当然ですわ。それに夫からも、頂き物は断る様にと言われておりますので」
昨日もお店の人から色々と貰った事を話したら、“お店の人のご厚意は有難いが、出来れば断って欲しい”そう言われた。
よく考えてみたら、誰かを助けるために何かを貰っていたら、なんだかお礼が欲しくて人を助けているみたいだものね。そう思ったのだ。
「そうだったのですね。わかりました」
その場で代金を支払い、食パンだけ頂いた。
「本当にありがとうございました」
何度も何度も頭を下げ、急いでお店に戻っていくベスさんのお母さん。なんだか忙しい時間に、申し訳なかったわね。
「お前、騎士団長の妻だったのか…まあいい、とにかく家まで送るよ。せめてそれくらいはさせて欲しい」
そう言ってくれたベスさん。でも…
「ありがとうございます。でも家は、あの白い建物ですので…」
そう、ベスさん家のパン屋の隣の隣が我が家なのだ。送るも何も、もう目の前。
「あんな近くに住んでいたのか!それでも送るよ」
そう言って家の前まで送ってくれた。
「送っていただき、ありがとうございます」
「俺の方こそ、助けてくれてありがとう。それじゃあ、また」
そう言って去っていったベスさん。なんだかんだで遅くなってしまった。さっきベスさんの家で買ったパンを使って、早速サンドウィッチを作る。ちょっと味見。そう思い、サンドウィッチを口に入れると
「美味しい…」
つい言葉がポロリと出てしまうほど、パンがモチモチで美味しいのだ。なるほど、人で溢れかえる理由が分かったわ。
この味を知ってしまったら、もうベスさんの家のパンしか買えないわね。私も明日から、パン争奪戦に参加しないと。
そんな事を考えていると、
ガチャリ
と鍵が開く音が。
なんとグレイ様が帰って来たのだ。えっ?もう帰って来たの?
慌てて玄関に向かうと、確かにグレイ様が帰って来ていた。
「おかえりなさい、早かったのですね」
「ああ、昨日はまだ就任前だったのに夜遅くまで仕事をしていたからな。今日はスティーブンが気を利かせて早く帰れるようにしてくれたんだ」
「まあ、副騎士団長様がですか。お優しい方が副騎士団長様でよかったですわ。さあ、晩御飯にしましょう」
」
急いで食卓に料理を並べ、早速2人で食事をする。
「このサンドウィッチ、メチャクチャ旨いな。特にパンがモチモチしていて旨い」
「そうなんですよ、このパン、2軒隣のベスさん家のパン屋さんで買ったのですが、メチャクチャ美味しいんです」
「ベスさん?スカーレット、そいつは誰だ?」
眉間にシワを寄せ、そう呟いたグレイ様。そうか、グレイ様にベスさんの事を話していなかった。早速グレイ様に今日の出来事を話した。
「なるほど、その助けた男が2軒隣のパン屋さんの息子だった訳だな。まさかスカーレット、家にあげたりなんかしていないよな」
「もちろんしていませんわ。ベスさんも助けてもらったお礼に荷物を運んでくれただけですので」
「それならいい。スカーレット、人助けもいいが、万が一君に何かあったら大変だ。今回はたまたまうまく行ったかもしれないが、あまり軽はずみな行動はせず、すぐに近くの騎士団員に伝えろ。街には沢山の騎士団員が待機しているからな。とにかく自分で解決しようとせず、騎士団員に報告しろ。わかったな!」
「わかりました…」
自分では良かれと思ってやった事だったのだが、なぜか怒られてしまった。シュンとする私に
「すまない、ちょっと強く言いすぎてしまった。でも、俺はスカーレットが事件に巻き込まれでもしたらと思うと、気が気ではないんだ。やっぱり護衛を雇おう」
「いいえ、大丈夫ですわ。これからは軽はずみな行動は控えますから。本当にごめんなさい」
実はグレイ様は、この街で生活するにあたり、私に護衛を付けようとしたのだ。それを必死に止めた。とにかく、なるべくグレイ様を心配させない様にしないと。
「スカーレットがそう言うなら…でも俺は、色々な意味でスカーレットが心配だ…絶対にその男、スカーレットを気に入ったはずだ…」
訳の分からないことをブツブツと呟くグレイ様。そして何を思ったのか
「また明日から帰宅時間が遅くなる。今日はゆっくり2人で過ごそう。まずは風呂に入らないとな。スカーレット、せっかくだから一緒に入ろう」
「えっ?一緒にですか?さすがにそれは…」
恥ずかしすぎる。そう言おうとしたのだが
「俺たちは夫婦だ。風呂くらい一緒に入って何が悪い!さあ、俺も手伝うから急いで片づけよう」
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