あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi

文字の大きさ
19 / 34

第19話:お父様が私の背中を押してくれました

しおりを挟む
我が家の図書館は、その名の通り、一館丸々本がぎっしり詰まっているのだ。その上司書までいる。

早速司書に、他国に関する書物の場所を教えてもらった。それにしても、他国に関する本だけでも、かなりの量がある。これは色々と調べるのに、随分時間がかかりそうだ。

多分私が国を出ると言ったら、お父様とお兄様が公爵家の使用人や護衛を付け来るだろう。自分1人なら、行き当たりばったりでもいいかもしれないが、私の為について来てくれる使用人たちを、危険に晒す訳にはいかない。

かといって、1人で旅をするなんて言ったら、絶対にお父様もお兄様たちも反対するだろう。私の気持ちを尊重してくれるお母様やお姉様ですら、難色を示すのは目に見えているのだ。

極力穏便に国を出るためには、公爵令嬢として国を出る必要がある。

日本人だった時は、お金と時間があれば、自分1人で好きに行動できたのに…1人で世界一周クルーズの旅をしたこともあったな。いつの間にか同じ船に乗っていた人たちとも仲良くなって、とても充実した旅だった。

そうよ、私は旅をするのが大好きだったのよ。だからきっと、アルト様を失っても大丈夫…

アルト様の事を考えると、つい涙が溢れてしまう。やはりまだ、アルト様の事を考えると涙が溢れてしまうのは仕方がない事。

それでも色々な事を調べているだけで、なんだか心が楽になる。

「まあ、この国はレンガで出来た建物が多いのね。作りもまるでメルヘンの様で素敵だわ。こっちの国は、年中温かいのね。海も我が国よりずっと綺麗そうね。あら?この国には、かなり大きな滝があるのね」

時間も忘れて、夢中で他国の情報を調べていく。

すると…

「カナリアは、他国に興味があるのかい?」

話しかけてきたのは、お父様だ。いつの間にか日が暮れかかっている。どうやら何時間も、図書館で本を読み続けていた様だ。

「ええ、世界には色々な国があるのですね。見ているだけで、楽しくなってしまいますわ。あの、お父様、私は…」

「この国は、寒い日の夜には、光のカーテンが空一面に広がるそうだ。その美しさと言ったら、この世のものとは思えない程のものらしい」

お父様がある本を手に取り、嬉しそうにそう呟いたのだ。きっとオーロラの事だろう。私も前世でノルウェーやフィンランドに行った時、見るのを楽しみにしていたのだが、生憎見る事が出来なかった。

この世界でも、オーロラを見る事が出来るのね。

「ここの地域は、海が凍っているらしい。すごいだろ?あの大きな海が凍るのだよ。お父様には想像も出来ないよ。かと思えば、こちらの地域はとても暑いらしい。ここの国は、年中夜になると星が流れているらしい。世界には、私たちの想像をはるかに超える国が沢山あるのだと思うと、なんだかワクワクしてね」

「お父様?」

「カナリアは、そんな世界に興味があるのだろう?さっきのカナリアの嬉しそうな顔を見たら、昔の自分を見ている様な気がして…」

「お父様も、世界に興味があったのですか?」

「ああ、ただ私は、公爵家の嫡男だ。世界中を旅したいだなんて、両親には口が裂けても言えなかったがな。だからせめて、こうやって他国の資料を集めて、読んでいたのだよ」

「そうだったのですね…だからこんなに、他国に関する資料が多いのですね」

お父様も、世界に興味を持っていたのだろう。でも、次期公爵としてのしがらみが、それを許さなかった。

「カナリア、もし君が世界を見て回りたいと思っているのなら、私は反対しないよ。カナリアは確かに公爵令嬢だ。でも、公爵令嬢というしがらみの中で、生きて欲しくはない。もちろん、他の子供たちもそうだ。だからカナリアも、自分の好きな様に生きなさい」

お父様の優しい眼差しを見たら、涙が溢れ出て来た。

「お父様、私…」

「カナリア、どうか自分の気持ちに正直になりなさい。私達家族は、どんな時も君の味方だから」

「ありがとうございます、お父様」

お父様はきっと私が国を出ると言ったら、絶対に反対すると思っていた。

でも…

お父様はどんな時でも、私の気持ちに寄り添っていてくれたのだ。そんなお父様の偉大さに、今気が付くだなんて…

ギュッとお父様に抱き着いた。そんな私を抱きしめ、頭を撫でてくれる。大きくて温かい手、私はずっと、お父様に守られていたのだ。

「お父様、ありがとうございます。実は私、アルト様とは婚約を解消し、国を出たいと考えております。ただ、色々と準備をし、出国の準備が整い次第アルト様には話をしようと思っております。私の我が儘で、お父様たちには多大なご迷惑をかけてしまう事、本当に申し訳なく…」

「カナリアが謝る事ではない。今までずっと、アルト殿下の為に無理をして来たのだろう。大丈夫だ、あの男がなんと言おうが、私が何とかするから。そうだ、婚約を解消したその日に出国するといい。そうすれば、あの男ももう追っては来られないだろうから」

お父様、アルト様は既にシャーラ様に心を奪われております。ですから、アルト様が私を追って来る事はありませんわ。

そう言いたいが、さすがに言えない。

「ありがとうございます。まさかお父様が味方になって下さるだなんて…これで心置きなく、準備が出来ますわ」

「私はどんな時でも、カナリアの味方だよ!ただ、やはりカナリアだけで旅をさせるのは心配だから、使用人と護衛を付けないと。そうだ、いつでもカナリアと連絡が取れる様に、最新の通信機も準備しないと。船も最新のものを手配しよう。カナリア、君は何も心配はいらないから。でも…カナリアが国を出るのは、やはり寂しいな…」

「もう、お父様ったら。今すぐに国を出る訳ではありませんから」

とはいえ、多分もう話はだいぶ進んでいる様だから、急いで準備を進めないと。



※次回、アルト視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……? ※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。

全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。 さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。 “私さえいなくなれば、皆幸せになれる” そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。 一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。 そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは… 龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。 ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。 よろしくお願いいたします。 ※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。 伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。 幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。 素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、 ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。 だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。 記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、 また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──…… そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。 ※婚約者をざまぁする話ではありません ※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。 夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。 ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。 一方夫のランスロットは……。 作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。 ご都合主義です。 以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

処理中です...