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第19話:お父様が私の背中を押してくれました
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我が家の図書館は、その名の通り、一館丸々本がぎっしり詰まっているのだ。その上司書までいる。
早速司書に、他国に関する書物の場所を教えてもらった。それにしても、他国に関する本だけでも、かなりの量がある。これは色々と調べるのに、随分時間がかかりそうだ。
多分私が国を出ると言ったら、お父様とお兄様が公爵家の使用人や護衛を付け来るだろう。自分1人なら、行き当たりばったりでもいいかもしれないが、私の為について来てくれる使用人たちを、危険に晒す訳にはいかない。
かといって、1人で旅をするなんて言ったら、絶対にお父様もお兄様たちも反対するだろう。私の気持ちを尊重してくれるお母様やお姉様ですら、難色を示すのは目に見えているのだ。
極力穏便に国を出るためには、公爵令嬢として国を出る必要がある。
日本人だった時は、お金と時間があれば、自分1人で好きに行動できたのに…1人で世界一周クルーズの旅をしたこともあったな。いつの間にか同じ船に乗っていた人たちとも仲良くなって、とても充実した旅だった。
そうよ、私は旅をするのが大好きだったのよ。だからきっと、アルト様を失っても大丈夫…
アルト様の事を考えると、つい涙が溢れてしまう。やはりまだ、アルト様の事を考えると涙が溢れてしまうのは仕方がない事。
それでも色々な事を調べているだけで、なんだか心が楽になる。
「まあ、この国はレンガで出来た建物が多いのね。作りもまるでメルヘンの様で素敵だわ。こっちの国は、年中温かいのね。海も我が国よりずっと綺麗そうね。あら?この国には、かなり大きな滝があるのね」
時間も忘れて、夢中で他国の情報を調べていく。
すると…
「カナリアは、他国に興味があるのかい?」
話しかけてきたのは、お父様だ。いつの間にか日が暮れかかっている。どうやら何時間も、図書館で本を読み続けていた様だ。
「ええ、世界には色々な国があるのですね。見ているだけで、楽しくなってしまいますわ。あの、お父様、私は…」
「この国は、寒い日の夜には、光のカーテンが空一面に広がるそうだ。その美しさと言ったら、この世のものとは思えない程のものらしい」
お父様がある本を手に取り、嬉しそうにそう呟いたのだ。きっとオーロラの事だろう。私も前世でノルウェーやフィンランドに行った時、見るのを楽しみにしていたのだが、生憎見る事が出来なかった。
この世界でも、オーロラを見る事が出来るのね。
「ここの地域は、海が凍っているらしい。すごいだろ?あの大きな海が凍るのだよ。お父様には想像も出来ないよ。かと思えば、こちらの地域はとても暑いらしい。ここの国は、年中夜になると星が流れているらしい。世界には、私たちの想像をはるかに超える国が沢山あるのだと思うと、なんだかワクワクしてね」
「お父様?」
「カナリアは、そんな世界に興味があるのだろう?さっきのカナリアの嬉しそうな顔を見たら、昔の自分を見ている様な気がして…」
「お父様も、世界に興味があったのですか?」
「ああ、ただ私は、公爵家の嫡男だ。世界中を旅したいだなんて、両親には口が裂けても言えなかったがな。だからせめて、こうやって他国の資料を集めて、読んでいたのだよ」
「そうだったのですね…だからこんなに、他国に関する資料が多いのですね」
お父様も、世界に興味を持っていたのだろう。でも、次期公爵としてのしがらみが、それを許さなかった。
「カナリア、もし君が世界を見て回りたいと思っているのなら、私は反対しないよ。カナリアは確かに公爵令嬢だ。でも、公爵令嬢というしがらみの中で、生きて欲しくはない。もちろん、他の子供たちもそうだ。だからカナリアも、自分の好きな様に生きなさい」
お父様の優しい眼差しを見たら、涙が溢れ出て来た。
「お父様、私…」
「カナリア、どうか自分の気持ちに正直になりなさい。私達家族は、どんな時も君の味方だから」
「ありがとうございます、お父様」
お父様はきっと私が国を出ると言ったら、絶対に反対すると思っていた。
でも…
お父様はどんな時でも、私の気持ちに寄り添っていてくれたのだ。そんなお父様の偉大さに、今気が付くだなんて…
ギュッとお父様に抱き着いた。そんな私を抱きしめ、頭を撫でてくれる。大きくて温かい手、私はずっと、お父様に守られていたのだ。
「お父様、ありがとうございます。実は私、アルト様とは婚約を解消し、国を出たいと考えております。ただ、色々と準備をし、出国の準備が整い次第アルト様には話をしようと思っております。私の我が儘で、お父様たちには多大なご迷惑をかけてしまう事、本当に申し訳なく…」
「カナリアが謝る事ではない。今までずっと、アルト殿下の為に無理をして来たのだろう。大丈夫だ、あの男がなんと言おうが、私が何とかするから。そうだ、婚約を解消したその日に出国するといい。そうすれば、あの男ももう追っては来られないだろうから」
お父様、アルト様は既にシャーラ様に心を奪われております。ですから、アルト様が私を追って来る事はありませんわ。
そう言いたいが、さすがに言えない。
「ありがとうございます。まさかお父様が味方になって下さるだなんて…これで心置きなく、準備が出来ますわ」
「私はどんな時でも、カナリアの味方だよ!ただ、やはりカナリアだけで旅をさせるのは心配だから、使用人と護衛を付けないと。そうだ、いつでもカナリアと連絡が取れる様に、最新の通信機も準備しないと。船も最新のものを手配しよう。カナリア、君は何も心配はいらないから。でも…カナリアが国を出るのは、やはり寂しいな…」
「もう、お父様ったら。今すぐに国を出る訳ではありませんから」
とはいえ、多分もう話はだいぶ進んでいる様だから、急いで準備を進めないと。
※次回、アルト視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
早速司書に、他国に関する書物の場所を教えてもらった。それにしても、他国に関する本だけでも、かなりの量がある。これは色々と調べるのに、随分時間がかかりそうだ。
多分私が国を出ると言ったら、お父様とお兄様が公爵家の使用人や護衛を付け来るだろう。自分1人なら、行き当たりばったりでもいいかもしれないが、私の為について来てくれる使用人たちを、危険に晒す訳にはいかない。
かといって、1人で旅をするなんて言ったら、絶対にお父様もお兄様たちも反対するだろう。私の気持ちを尊重してくれるお母様やお姉様ですら、難色を示すのは目に見えているのだ。
極力穏便に国を出るためには、公爵令嬢として国を出る必要がある。
日本人だった時は、お金と時間があれば、自分1人で好きに行動できたのに…1人で世界一周クルーズの旅をしたこともあったな。いつの間にか同じ船に乗っていた人たちとも仲良くなって、とても充実した旅だった。
そうよ、私は旅をするのが大好きだったのよ。だからきっと、アルト様を失っても大丈夫…
アルト様の事を考えると、つい涙が溢れてしまう。やはりまだ、アルト様の事を考えると涙が溢れてしまうのは仕方がない事。
それでも色々な事を調べているだけで、なんだか心が楽になる。
「まあ、この国はレンガで出来た建物が多いのね。作りもまるでメルヘンの様で素敵だわ。こっちの国は、年中温かいのね。海も我が国よりずっと綺麗そうね。あら?この国には、かなり大きな滝があるのね」
時間も忘れて、夢中で他国の情報を調べていく。
すると…
「カナリアは、他国に興味があるのかい?」
話しかけてきたのは、お父様だ。いつの間にか日が暮れかかっている。どうやら何時間も、図書館で本を読み続けていた様だ。
「ええ、世界には色々な国があるのですね。見ているだけで、楽しくなってしまいますわ。あの、お父様、私は…」
「この国は、寒い日の夜には、光のカーテンが空一面に広がるそうだ。その美しさと言ったら、この世のものとは思えない程のものらしい」
お父様がある本を手に取り、嬉しそうにそう呟いたのだ。きっとオーロラの事だろう。私も前世でノルウェーやフィンランドに行った時、見るのを楽しみにしていたのだが、生憎見る事が出来なかった。
この世界でも、オーロラを見る事が出来るのね。
「ここの地域は、海が凍っているらしい。すごいだろ?あの大きな海が凍るのだよ。お父様には想像も出来ないよ。かと思えば、こちらの地域はとても暑いらしい。ここの国は、年中夜になると星が流れているらしい。世界には、私たちの想像をはるかに超える国が沢山あるのだと思うと、なんだかワクワクしてね」
「お父様?」
「カナリアは、そんな世界に興味があるのだろう?さっきのカナリアの嬉しそうな顔を見たら、昔の自分を見ている様な気がして…」
「お父様も、世界に興味があったのですか?」
「ああ、ただ私は、公爵家の嫡男だ。世界中を旅したいだなんて、両親には口が裂けても言えなかったがな。だからせめて、こうやって他国の資料を集めて、読んでいたのだよ」
「そうだったのですね…だからこんなに、他国に関する資料が多いのですね」
お父様も、世界に興味を持っていたのだろう。でも、次期公爵としてのしがらみが、それを許さなかった。
「カナリア、もし君が世界を見て回りたいと思っているのなら、私は反対しないよ。カナリアは確かに公爵令嬢だ。でも、公爵令嬢というしがらみの中で、生きて欲しくはない。もちろん、他の子供たちもそうだ。だからカナリアも、自分の好きな様に生きなさい」
お父様の優しい眼差しを見たら、涙が溢れ出て来た。
「お父様、私…」
「カナリア、どうか自分の気持ちに正直になりなさい。私達家族は、どんな時も君の味方だから」
「ありがとうございます、お父様」
お父様はきっと私が国を出ると言ったら、絶対に反対すると思っていた。
でも…
お父様はどんな時でも、私の気持ちに寄り添っていてくれたのだ。そんなお父様の偉大さに、今気が付くだなんて…
ギュッとお父様に抱き着いた。そんな私を抱きしめ、頭を撫でてくれる。大きくて温かい手、私はずっと、お父様に守られていたのだ。
「お父様、ありがとうございます。実は私、アルト様とは婚約を解消し、国を出たいと考えております。ただ、色々と準備をし、出国の準備が整い次第アルト様には話をしようと思っております。私の我が儘で、お父様たちには多大なご迷惑をかけてしまう事、本当に申し訳なく…」
「カナリアが謝る事ではない。今までずっと、アルト殿下の為に無理をして来たのだろう。大丈夫だ、あの男がなんと言おうが、私が何とかするから。そうだ、婚約を解消したその日に出国するといい。そうすれば、あの男ももう追っては来られないだろうから」
お父様、アルト様は既にシャーラ様に心を奪われております。ですから、アルト様が私を追って来る事はありませんわ。
そう言いたいが、さすがに言えない。
「ありがとうございます。まさかお父様が味方になって下さるだなんて…これで心置きなく、準備が出来ますわ」
「私はどんな時でも、カナリアの味方だよ!ただ、やはりカナリアだけで旅をさせるのは心配だから、使用人と護衛を付けないと。そうだ、いつでもカナリアと連絡が取れる様に、最新の通信機も準備しないと。船も最新のものを手配しよう。カナリア、君は何も心配はいらないから。でも…カナリアが国を出るのは、やはり寂しいな…」
「もう、お父様ったら。今すぐに国を出る訳ではありませんから」
とはいえ、多分もう話はだいぶ進んでいる様だから、急いで準備を進めないと。
※次回、アルト視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
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