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第43話:胸が痛くてたまりません
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結局色々と考えすぎて、ろくに眠れなかった私は、その日医務室で過ごし、そのまま家に帰る事になった。
「キャリーヌ、体調は良くなった…て、朝より酷くなっているのではないのかい?大丈夫かい?僕が公爵家まで送っていくよ」
相変わらずお優しいサミュエル殿下が、私を心配して医務室に来てくれたのだ。でも、これ以上サミュエル殿下に迷惑をかける訳にはいかない。
「私は大丈夫ですので、気にしないで下さい。それから、朝は医務室に連れて来てくださり、ありがとうございました。それでは失礼いたします」
出来る限り笑顔を作り、サミュエル殿下に頭を下げると、急ぎ足で医務室を後にした。
後ろでサミュエル殿下が何か叫んでいる様な気がしたが、振り向けるほどの心の余裕はない。これ以上、サミュエル殿下に関わってはいけない。彼はいずれ、カリアン王国の国王になる人なのだ。
でも…
なぜだろう、なぜか涙が溢れだすのだ。
必死に涙をぬぐい、馬車に乗り込んだ。本当は私も、サミュエル殿下が大好きだ。あの時と変わらないサミュエル殿下を見て、当時の気持ちが溢れ出るのを感じた。
あの頃、いつも私に“キャリーヌ、大好きだよ。ずっと一緒にいようね”そう言ってくれたサミュエル殿下。きっといつか、兄でもあるジェイデン殿下と私が婚約するかもしれないという恐怖から、そう言っていたのだろう。
私もあの時、間違いなくサミュエル殿下の事が好きだったはずなのに、結局私は彼を裏切り、ジェイデン殿下と婚約する道を選んだのだ。
あの時、サミュエル殿下はどれほど傷つき、悲しかったか…
もしかしたらジェイデン殿下に酷い目に合わされた事は、サミュエル殿下に酷い事をした私への罰だったのかもしれない…
本来ならザマァ見ろと思うところなのに、サミュエル殿下は私とその家族を助けてくれただけでなく、私を迎えに来てくれたのだ。そんな優しいサミュエル殿下に、今更どの面下げて、あなた様を愛しています、幸せになりたいです、だなんて図々しい事を言えるだろうか…
こんな私よりも、もっとサミュエル殿下を心から大切にして下さる令嬢と幸せになった方が、サミュエル殿下は幸せになれる。
そうよ、そうに違いないわ。
それなら、私が出来る事は…
翌日、まだ少し体調が戻らないが、それでも学院へと向かった。
「おはよう、キャリーヌ。今日は少し体調が戻ったみたいだね。でも、無理は良くないよ。一緒に教室に向かおう」
朝から優しい笑顔を向けてくれる、サミュエル殿下。そんな彼の優しさが、嬉しくてたまらない。
ダメよ、これ以上サミュエル殿下に甘える訳にはいかないのだ。
「おはようございます、サミュエル殿下。私はもう平気ですわ。それでは失礼します」
真顔でサミュエル殿下にそう伝えると、そのまま教室へと向かった。
「待って、キャリーヌ…」
後ろでサミュエル殿下の声が聞こえる。なんだか切なそうな声に、胸が締め付けられた。これいでいいのよ、私はサミュエル殿下と関わってはいけないのだから…
その後も事あるごとに、私に話しかけてくるサミュエル殿下を、ことごとくかわしていく。悲しそうなサミュエル殿下の顔を見ると、胸が締め付けられそうになる。でも、これでいい、そう自分に言い聞かせた。
ミリアム様からは
“どうしてサミュエル殿下を避けるの?サミュエル殿下が可哀そうよ!”
そう何度も言われた。ミリアム様からそう言われるたびに、私の心は酷く痛む。
でも、これでいい。私は間違っていない。今はサミュエル殿下も辛いかもしれないが、きっと私と結婚しなくてよかったと思う日が来るはずだ。
もっと素敵な令嬢と結婚して、幸せな未来が来た時、彼はきっと…
考えただけで、胸が張り裂けそうになる。
でも、これでいい…
そう自分に言い聞かせながら、日々を過ごす。
そんな日々を過ごしていたある日
「キャリーヌ様は、サミュエル殿下の事がお好きではないのですか?」
令嬢たちとお茶を楽しんでいる時、1人の令嬢がポツリと呟いたのだ。
「私は…その…」
「ごめんなさい、あまり宜しくない話題でしたわね。ただ…サミュエル殿下をキャリーヌ様が避けている様な気がして…サミュエル殿下はとても紳士的で、本当に素敵な殿方なのに、勿体ないと思いまして。もしキャリーヌ様が興味がないのでしたら、私がアタックしようかと」
「それなら、私もサミュエル殿下にアプローチしたいですわ。それにしても、アラステ王国の方たちは皆さま、美男美女なのですね。美しくて聡明でお優しいサミュエル殿下は、令嬢たちからも人気が高いのですよ」
サミュエル殿下は、令嬢たちから人気が高い…
その言葉が、胸に突き刺さる。
確かにサミュエル殿下は、とても魅力的だ。令嬢たちも放っておかないだろう。もし令嬢たちの誰かとサミュエル殿下が結ばれたら…
いいえ、彼女たちの中にサミュエル殿下を幸せにして下さる方がいらっしゃるなら、その方がいいわ。
「私はサミュエル殿下の事は何とも思っておりませんから、ぜひアプローチしてください」
そう言って笑顔を作ったのだ。
本当は嫌よ、サミュエル殿下が他の令嬢と結婚するだなんて。でも…これでいい、これが私に出来る、サミュエル殿下への唯一の償いだから。
「キャリーヌ、体調は良くなった…て、朝より酷くなっているのではないのかい?大丈夫かい?僕が公爵家まで送っていくよ」
相変わらずお優しいサミュエル殿下が、私を心配して医務室に来てくれたのだ。でも、これ以上サミュエル殿下に迷惑をかける訳にはいかない。
「私は大丈夫ですので、気にしないで下さい。それから、朝は医務室に連れて来てくださり、ありがとうございました。それでは失礼いたします」
出来る限り笑顔を作り、サミュエル殿下に頭を下げると、急ぎ足で医務室を後にした。
後ろでサミュエル殿下が何か叫んでいる様な気がしたが、振り向けるほどの心の余裕はない。これ以上、サミュエル殿下に関わってはいけない。彼はいずれ、カリアン王国の国王になる人なのだ。
でも…
なぜだろう、なぜか涙が溢れだすのだ。
必死に涙をぬぐい、馬車に乗り込んだ。本当は私も、サミュエル殿下が大好きだ。あの時と変わらないサミュエル殿下を見て、当時の気持ちが溢れ出るのを感じた。
あの頃、いつも私に“キャリーヌ、大好きだよ。ずっと一緒にいようね”そう言ってくれたサミュエル殿下。きっといつか、兄でもあるジェイデン殿下と私が婚約するかもしれないという恐怖から、そう言っていたのだろう。
私もあの時、間違いなくサミュエル殿下の事が好きだったはずなのに、結局私は彼を裏切り、ジェイデン殿下と婚約する道を選んだのだ。
あの時、サミュエル殿下はどれほど傷つき、悲しかったか…
もしかしたらジェイデン殿下に酷い目に合わされた事は、サミュエル殿下に酷い事をした私への罰だったのかもしれない…
本来ならザマァ見ろと思うところなのに、サミュエル殿下は私とその家族を助けてくれただけでなく、私を迎えに来てくれたのだ。そんな優しいサミュエル殿下に、今更どの面下げて、あなた様を愛しています、幸せになりたいです、だなんて図々しい事を言えるだろうか…
こんな私よりも、もっとサミュエル殿下を心から大切にして下さる令嬢と幸せになった方が、サミュエル殿下は幸せになれる。
そうよ、そうに違いないわ。
それなら、私が出来る事は…
翌日、まだ少し体調が戻らないが、それでも学院へと向かった。
「おはよう、キャリーヌ。今日は少し体調が戻ったみたいだね。でも、無理は良くないよ。一緒に教室に向かおう」
朝から優しい笑顔を向けてくれる、サミュエル殿下。そんな彼の優しさが、嬉しくてたまらない。
ダメよ、これ以上サミュエル殿下に甘える訳にはいかないのだ。
「おはようございます、サミュエル殿下。私はもう平気ですわ。それでは失礼します」
真顔でサミュエル殿下にそう伝えると、そのまま教室へと向かった。
「待って、キャリーヌ…」
後ろでサミュエル殿下の声が聞こえる。なんだか切なそうな声に、胸が締め付けられた。これいでいいのよ、私はサミュエル殿下と関わってはいけないのだから…
その後も事あるごとに、私に話しかけてくるサミュエル殿下を、ことごとくかわしていく。悲しそうなサミュエル殿下の顔を見ると、胸が締め付けられそうになる。でも、これでいい、そう自分に言い聞かせた。
ミリアム様からは
“どうしてサミュエル殿下を避けるの?サミュエル殿下が可哀そうよ!”
そう何度も言われた。ミリアム様からそう言われるたびに、私の心は酷く痛む。
でも、これでいい。私は間違っていない。今はサミュエル殿下も辛いかもしれないが、きっと私と結婚しなくてよかったと思う日が来るはずだ。
もっと素敵な令嬢と結婚して、幸せな未来が来た時、彼はきっと…
考えただけで、胸が張り裂けそうになる。
でも、これでいい…
そう自分に言い聞かせながら、日々を過ごす。
そんな日々を過ごしていたある日
「キャリーヌ様は、サミュエル殿下の事がお好きではないのですか?」
令嬢たちとお茶を楽しんでいる時、1人の令嬢がポツリと呟いたのだ。
「私は…その…」
「ごめんなさい、あまり宜しくない話題でしたわね。ただ…サミュエル殿下をキャリーヌ様が避けている様な気がして…サミュエル殿下はとても紳士的で、本当に素敵な殿方なのに、勿体ないと思いまして。もしキャリーヌ様が興味がないのでしたら、私がアタックしようかと」
「それなら、私もサミュエル殿下にアプローチしたいですわ。それにしても、アラステ王国の方たちは皆さま、美男美女なのですね。美しくて聡明でお優しいサミュエル殿下は、令嬢たちからも人気が高いのですよ」
サミュエル殿下は、令嬢たちから人気が高い…
その言葉が、胸に突き刺さる。
確かにサミュエル殿下は、とても魅力的だ。令嬢たちも放っておかないだろう。もし令嬢たちの誰かとサミュエル殿下が結ばれたら…
いいえ、彼女たちの中にサミュエル殿下を幸せにして下さる方がいらっしゃるなら、その方がいいわ。
「私はサミュエル殿下の事は何とも思っておりませんから、ぜひアプローチしてください」
そう言って笑顔を作ったのだ。
本当は嫌よ、サミュエル殿下が他の令嬢と結婚するだなんて。でも…これでいい、これが私に出来る、サミュエル殿下への唯一の償いだから。
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