私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

文字の大きさ
42 / 73

第42話:サミュエル殿下はあの時と変わりません

しおりを挟む
 翌朝、いつもの様に制服に着替え、馬車に乗り込んだ。昨日の夜、色々と考えすぎて中々眠る事が出来なかったから、少し眠い。

 昨日お姉様から話を聞いて、サミュエル殿下は私の気持ちを大切にしてくれていると感じた。本来なら、さっさと私を帰国させて、自分の婚約者にすればいいだけだ。

 それなのにサミュエル殿下は、他の貴族たちを説得してまで、留学すると決意してくださったのだ。

 私は昔、彼を裏切り傷つけたのに…

 サミュエル殿下が私の気持ちを優先してくれればくれるほど、あの時の罪悪感が増すのだ。サミュエル殿下が優しくしてくだされば下さるほど、心が痛い。

 ただ、私の為にわざわざカリアン王国まで来てくださったのだから、きちんと話をしないといけないのは分かっている。なんだか気が重いな…

 それに昨日あまり寝ていないせいか、少し頭が痛い。きっと色々と考えたからだろう。

 なんだか気が重いが学院に着いてしまったため、馬車から降り教室へと向かった。

「おはようございます」

 いつも通り、笑顔で挨拶をする。私はこれでも公爵令嬢だ、体調が悪い姿なんて、見せる訳にはいかない。

「おはようございます、キャリーヌ様」

「おはよう、キャリーヌ。今日はとても天気がいいわね。お昼は中庭で、皆で食べるのはどう?」

 朝からミリアム様含め、令嬢たちが話しかけて来た。

「中庭でランチ、いいですわね。皆様さえよければ、そうしましょう」

 まずいわ、なんだか頭痛が酷くなっている気がする。それでも笑顔で答える。

「おはよう、キャリーヌ。あれ?なんだか体調が悪そうだね。大丈夫かい?」

 私達の輪に入って来たのは、サミュエル殿下だ。どうして私の体調が悪いという事が、分かったのかしら?でも、ここはごまかさないと!

「おはようございます、サミュエル殿下。私は元気ですわよ」

 オホホホホ、と言わんばかりに、笑顔を作る。

「いいや、そんな事はないよ。キャリーヌは体調が悪くなると、うっすらと青筋が出るんだ。今青筋が出ているだろう?とにかく医務室に向かおう」

 なんと!私は体調が悪くなると、青筋が出るですって?そんな事、私ですら知らなかったわ。彼の発言に驚いているうちに、私の手を握り歩き出したサミュエル殿下。

 まずいわ、増々頭が痛くなってきた…

「確か医務室はこっちだったよね?て、キャリーヌ、大丈夫かい?」

 何を思ったのか、私を抱きかかえたのだ。

「サミュエル殿下、私は大丈夫ですわ。ですから…」

「そんな真っ青な顔をして“大丈夫”と言われても、説得力がないよ。とにかく、今はジッとして。確か医務室は…あった、あそこだ」

 サミュエル殿下が、医務室へと入っていく。

「先生、キャリーヌの体調が悪い様で。すぐに見て下さい」

「あらあら。よほど体調が悪いのですね。さあ、ここに横になってください」

 ちょっと、さすがに抱っこされて登場だなんて、恥ずかしすぎるわ。先生も笑っているじゃない。

 ただ…7年半前と比べると、すっかり大きくなったサミュエル殿下。背も私より随分高くなったし、こんなに軽々しく私を抱きかかえられるだなんて…

 体は随分大きくなったけれど、私の事をよく見ている姿は、あの頃と何にも変わっていない。子供の頃からずっと、私の事を気にかけ、私のちょっとした異変にも気が付いてくれていた。

「見たところどこも悪くはなさそうですけれど、とりあえずベッドで休んでいてください」

 軽く診察を終え、そのままベッドに寝かされた。

「キャリーヌ、君、寝不足だったのだろう?昨日僕が急に留学してきたから、色々と考えていたのだろう。僕のせいで、ごめんね」

「どうして私が寝不足だってわかるのですか?サミュエル殿下は、昔からそうです。私の事を何でも知っていて。私達、7年半以上もほとんど会っていなかったのに…どうして…」

「僕はキャリーヌの事なら、何でもわかるよ。離れていた時間だって、君の事を忘れたことはないからね」

 少し寂しそうに、サミュエル殿下が笑った。その顔を見た瞬間、胸がズキリと痛んだ。こんなにも私を大切にしてくれているサミュエル殿下を、私は…

「とにかく、ゆっくり休んで。それじゃあ、僕は教室に戻るよ」

 そう言うと、医務室から出て行ったサミュエル殿下。昔からサミュエル殿下は、ずっと私に優しかった。今もあの頃と分からず、私の事を一番理解し、優しく接してくれる。

 あんなにも優しくて素敵なサミュエル殿下を、私を裏切ったのだ。きっと私とジェイデン殿下が婚約を結んだと聞いた時、サミュエル殿下は相当なショックを受けただろう。

 本来なら、もう二度と私の顔なんて見たくない!そう思っても不思議ではない。それなのに、どうしてあの頃と変わらず、優しくしてくれるのだろう…

 サミュエル殿下の優しさが、私の胸に突き刺さる。私の様な人間が、このままサミュエル殿下と共に幸せになっていいの?サミュエル殿下には、もっと素敵な令嬢が似合うのではないの?

 あんなにも素敵なサミュエル殿下を裏切った私ではなく、もっと他の令嬢の方が…

 やっぱり私は、サミュエル殿下の気持ちを受け入れてはいけない。だって私は、それだけの事をしたのだから…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?

雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。 理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。 クラリスはただ微笑み、こう返す。 「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」 そうして物語は終わる……はずだった。 けれど、ここからすべてが狂い始める。 *完結まで予約投稿済みです。 *1日3回更新(7時・12時・18時)

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?

柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。 わたしには、妹なんていないのに。  

処理中です...