52 / 73
第52話:離れ離れになってもずっと親友です
しおりを挟む
「それからね、これ。受け取ってくれるかしら?」
少し恥ずかしそうに、ミリアム様が私に何かを手渡してきたのだ。可愛らしい袋に入っている。これは一体、何かしら?
「ありがとうございます、開けてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
早速袋を開ける。袋の中から出てきたのは、可愛らしい2人の女の子が模られたブローチだった。
「なんて素敵なブローチなのでしょう。もしかして、私とミリアム様ですか?」
よく見たら、私とミリアム様によく似ている。一つ一つ宝石で作られているうえ、とても細かいところまで再現されているのだ。
「ええ、そうよ。キャリーヌは明後日、アラステ王国に帰ってしまうでしょう?だからその、何か思い出になるものをと思って。実はね、このブローチ、私とお揃いなの。離れていても、私たちはずっと親友よね?」
不安そうにミリアム様が呟く。そんなミリアム様を、ギュッと抱きしめた。
「当たり前ですわ。私達は離れていても、ずっと親友です!ミリアム様、こんな素敵なブローチを、ありがとうございます。私、ミリアム様に出会えて、本当に幸せでした。あなた様に会えて、色々な事を経験できました。あなた様に会えて、友人の素晴らしさを知りました。己の間違いにも気づく事が出来ました。ミリアム様がいてくれたから、今の私があるのです」
ミリアム様がいなかったら、私はきっとカリアン王国でこんなにも楽しい時間を過ごす事なんてできなかった。それに、サミュエル様と結ばれる事だってなかっただろう。
「お礼を言うのは私の方よ。あなたが私と友達になってくれたお陰で、空っぽだった私の心は満たされたの。孤独で真っ暗な世界で生きていた私が、キャリーヌと出会った事で、いつしか色鮮やかな世界へと変わっていった。全てあなたのお陰よ。キャリーヌ、本当にありがとう。あなたに会えて、私は本当に幸せよ」
ポロポロと涙を流しながら、ほほ笑んでいるミリアム様。
本当はミリアム様と離れたくない!ずっと一緒にいたい。でも、私はアラステ王国の公爵令嬢。それに何よりも、散々傷つけ苦しめてしまったサミュエル様を、今後は支えたい。
そう、私の居場所はアラステ王国なのだ。もちろん、ミリアム様の居場所も、ここ、カリアン王国。だから私たちは、いずれ離れ離れになる。分かっている事…でも、辛くてたまらない。
涙がとめどなく溢れ出す。
「ミリアム様、私はずっと…ずっとあなた様の傍にいたい…でも…」
それは決して叶わない事なのだ。
「キャリーヌ、泣かないで。遠く離れても、私たちの絆が切れる事はない、私はそう信じているわ。それにもしキャリーヌに何かあったら、その時はどこにいても、助けに行くからね」
「私も、もしミリアム様に何かあったら、すぐに駆け付けますわ。どこにいても、何があっても!」
「ありがとう、キャリーヌ。私がこうやって素直に自分の気持ちを話せる様になったのは、あなたのお陰よ。キャリーヌ、大好きよ」
「私も、ミリアム様が大好きです」
再び強く抱きしめ合った。不安の中カリアン王国にたった1人でやって来た私を支えてくれた大切な親友、ミリアム様。
彼女の存在が、どれほど私を支えてくれたか。
きっとアラステ王国にいたら、決して得る事が出来なかった私の宝物。ジェイデン殿下には酷い事を沢山されたけれど、私をカリアン王国に来るきっかけを作ってくれた彼には、ほんの少しだけ感謝している。
彼があんな愚かな行動をしなければ、私は決してカリアン王国に来ることはなかったのだから…
憎くてたまらなかったジェイデン殿下にすら感謝してしまうだなんて、私も相当変わっているのだろう。
「さあ、日も沈みかけて来たし、そろそろ帰りましょう。帰りが夜になる事は伝えてあるけれど、あまり遅くなるとやっぱり心配されちゃうものね」
「確かにカイロ様は、ミリアム様の事をとても大切にされていますものね。今頃首を長くして、帰りを待っていらっしゃるかもしれません」
「あら、サミュエル殿下も似た様なものでしょう。キャリーヌ、私達、幸せになりましょうね」
「ええ、もちろんです」
早速ミリアム様から頂いたブローチを胸に付けた。その姿を見たミリアム様も、同じデザインのブローチを胸に付けている。
「ミリアム様、私はこのブローチ、ずっと左胸に付けますね。このブローチは、ミリアム様と私を繋いてくれる、大切なブローチですから」
「それなら、私も左胸に付けておくわ。どんなに離れていても、このブローチで繋がっていれるみたいで嬉しいものね」
どんなに離れていても、このブローチが2人を繋げてくれる。そう考えると、嬉しくてたまらない。
「それでは帰りましょう」
すっとミリアム様の手を握った。私と同じくらいの手、温かくて柔らかい。私はきっとこの温もりを、忘れないだろう。ミリアム様の手を握りながら、そんな事を考えたのだった。
少し恥ずかしそうに、ミリアム様が私に何かを手渡してきたのだ。可愛らしい袋に入っている。これは一体、何かしら?
「ありがとうございます、開けてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
早速袋を開ける。袋の中から出てきたのは、可愛らしい2人の女の子が模られたブローチだった。
「なんて素敵なブローチなのでしょう。もしかして、私とミリアム様ですか?」
よく見たら、私とミリアム様によく似ている。一つ一つ宝石で作られているうえ、とても細かいところまで再現されているのだ。
「ええ、そうよ。キャリーヌは明後日、アラステ王国に帰ってしまうでしょう?だからその、何か思い出になるものをと思って。実はね、このブローチ、私とお揃いなの。離れていても、私たちはずっと親友よね?」
不安そうにミリアム様が呟く。そんなミリアム様を、ギュッと抱きしめた。
「当たり前ですわ。私達は離れていても、ずっと親友です!ミリアム様、こんな素敵なブローチを、ありがとうございます。私、ミリアム様に出会えて、本当に幸せでした。あなた様に会えて、色々な事を経験できました。あなた様に会えて、友人の素晴らしさを知りました。己の間違いにも気づく事が出来ました。ミリアム様がいてくれたから、今の私があるのです」
ミリアム様がいなかったら、私はきっとカリアン王国でこんなにも楽しい時間を過ごす事なんてできなかった。それに、サミュエル様と結ばれる事だってなかっただろう。
「お礼を言うのは私の方よ。あなたが私と友達になってくれたお陰で、空っぽだった私の心は満たされたの。孤独で真っ暗な世界で生きていた私が、キャリーヌと出会った事で、いつしか色鮮やかな世界へと変わっていった。全てあなたのお陰よ。キャリーヌ、本当にありがとう。あなたに会えて、私は本当に幸せよ」
ポロポロと涙を流しながら、ほほ笑んでいるミリアム様。
本当はミリアム様と離れたくない!ずっと一緒にいたい。でも、私はアラステ王国の公爵令嬢。それに何よりも、散々傷つけ苦しめてしまったサミュエル様を、今後は支えたい。
そう、私の居場所はアラステ王国なのだ。もちろん、ミリアム様の居場所も、ここ、カリアン王国。だから私たちは、いずれ離れ離れになる。分かっている事…でも、辛くてたまらない。
涙がとめどなく溢れ出す。
「ミリアム様、私はずっと…ずっとあなた様の傍にいたい…でも…」
それは決して叶わない事なのだ。
「キャリーヌ、泣かないで。遠く離れても、私たちの絆が切れる事はない、私はそう信じているわ。それにもしキャリーヌに何かあったら、その時はどこにいても、助けに行くからね」
「私も、もしミリアム様に何かあったら、すぐに駆け付けますわ。どこにいても、何があっても!」
「ありがとう、キャリーヌ。私がこうやって素直に自分の気持ちを話せる様になったのは、あなたのお陰よ。キャリーヌ、大好きよ」
「私も、ミリアム様が大好きです」
再び強く抱きしめ合った。不安の中カリアン王国にたった1人でやって来た私を支えてくれた大切な親友、ミリアム様。
彼女の存在が、どれほど私を支えてくれたか。
きっとアラステ王国にいたら、決して得る事が出来なかった私の宝物。ジェイデン殿下には酷い事を沢山されたけれど、私をカリアン王国に来るきっかけを作ってくれた彼には、ほんの少しだけ感謝している。
彼があんな愚かな行動をしなければ、私は決してカリアン王国に来ることはなかったのだから…
憎くてたまらなかったジェイデン殿下にすら感謝してしまうだなんて、私も相当変わっているのだろう。
「さあ、日も沈みかけて来たし、そろそろ帰りましょう。帰りが夜になる事は伝えてあるけれど、あまり遅くなるとやっぱり心配されちゃうものね」
「確かにカイロ様は、ミリアム様の事をとても大切にされていますものね。今頃首を長くして、帰りを待っていらっしゃるかもしれません」
「あら、サミュエル殿下も似た様なものでしょう。キャリーヌ、私達、幸せになりましょうね」
「ええ、もちろんです」
早速ミリアム様から頂いたブローチを胸に付けた。その姿を見たミリアム様も、同じデザインのブローチを胸に付けている。
「ミリアム様、私はこのブローチ、ずっと左胸に付けますね。このブローチは、ミリアム様と私を繋いてくれる、大切なブローチですから」
「それなら、私も左胸に付けておくわ。どんなに離れていても、このブローチで繋がっていれるみたいで嬉しいものね」
どんなに離れていても、このブローチが2人を繋げてくれる。そう考えると、嬉しくてたまらない。
「それでは帰りましょう」
すっとミリアム様の手を握った。私と同じくらいの手、温かくて柔らかい。私はきっとこの温もりを、忘れないだろう。ミリアム様の手を握りながら、そんな事を考えたのだった。
1,190
あなたにおすすめの小説
俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
ワガママを繰り返してきた次女は
柚木ゆず
恋愛
姉のヌイグルミの方が可愛いから欲しい、姉の誕生日プレゼントの方がいいから交換して、姉の婚約者を好きになったから代わりに婚約させて欲しい。ロートスアール子爵家の次女アネッサは、幼い頃からワガママを口にしてきました。
そんなアネッサを両親は毎回注意してきましたが聞く耳を持つことはなく、ついにアネッサは自分勝手に我慢の限界を迎えてしまいます。
『わたくしは酷く傷つきました! しばらく何もしたくないから療養をさせてもらいますわ! 認められないならこのお屋敷を出ていきますわよ!!』
その結果そんなことを言い出してしまい、この発言によってアネッサの日常は大きく変化してゆくこととなるのでした。
※現在体調不良による影響で(すべてにしっかりとお返事をさせていただく余裕がないため)、最新のお話以外の感想欄を閉じさせていただいております。
※11月23日、本編完結。後日、本編では描き切れなかったエピソードを番外編として投稿させていただく予定でございます。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?
柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」
「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」
新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。
わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。
こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。
イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。
ですが――。
やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。
「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」
わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。
…………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。
なにか、裏がありますね。
お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?
柚木ゆず
恋愛
「すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」
「ダーファルズ伯爵家のエドモン様は、雄々しく素敵な御方。お顔も財力も最上級な方で、興味を持ちましたの。好きに、なってしまいましたの」
私のものを何でも欲しがる、妹のニネット。今度は物ではなく人を欲しがり始め、エドモン様をもらうと言い出しました。
確かに私は、家族に隠れて交際を行っているのですが――。その方は、私にしつこく言い寄ってきていた人。恋人はエドモン様ではなく、エズラル侯爵家のフレデリク様なのです。
どうやらニネットは大きな勘違いをしているらしく、自身を溺愛するお父様とお母様の力を借りて、そんなエドモン様にアプローチをしてゆくみたいです。
10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。
けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。
悪夢はそれで終わらなかった。
ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。
嵌められてしまった。
その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。
裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。
※他サイト様でも公開中です。
2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。
本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる