私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi

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第52話:離れ離れになってもずっと親友です

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「それからね、これ。受け取ってくれるかしら?」

 少し恥ずかしそうに、ミリアム様が私に何かを手渡してきたのだ。可愛らしい袋に入っている。これは一体、何かしら?

「ありがとうございます、開けてもいいですか?」

「ええ、もちろんよ」

 早速袋を開ける。袋の中から出てきたのは、可愛らしい2人の女の子が模られたブローチだった。

「なんて素敵なブローチなのでしょう。もしかして、私とミリアム様ですか?」

 よく見たら、私とミリアム様によく似ている。一つ一つ宝石で作られているうえ、とても細かいところまで再現されているのだ。

「ええ、そうよ。キャリーヌは明後日、アラステ王国に帰ってしまうでしょう?だからその、何か思い出になるものをと思って。実はね、このブローチ、私とお揃いなの。離れていても、私たちはずっと親友よね?」

 不安そうにミリアム様が呟く。そんなミリアム様を、ギュッと抱きしめた。

「当たり前ですわ。私達は離れていても、ずっと親友です!ミリアム様、こんな素敵なブローチを、ありがとうございます。私、ミリアム様に出会えて、本当に幸せでした。あなた様に会えて、色々な事を経験できました。あなた様に会えて、友人の素晴らしさを知りました。己の間違いにも気づく事が出来ました。ミリアム様がいてくれたから、今の私があるのです」

 ミリアム様がいなかったら、私はきっとカリアン王国でこんなにも楽しい時間を過ごす事なんてできなかった。それに、サミュエル様と結ばれる事だってなかっただろう。

「お礼を言うのは私の方よ。あなたが私と友達になってくれたお陰で、空っぽだった私の心は満たされたの。孤独で真っ暗な世界で生きていた私が、キャリーヌと出会った事で、いつしか色鮮やかな世界へと変わっていった。全てあなたのお陰よ。キャリーヌ、本当にありがとう。あなたに会えて、私は本当に幸せよ」

 ポロポロと涙を流しながら、ほほ笑んでいるミリアム様。

 本当はミリアム様と離れたくない!ずっと一緒にいたい。でも、私はアラステ王国の公爵令嬢。それに何よりも、散々傷つけ苦しめてしまったサミュエル様を、今後は支えたい。

 そう、私の居場所はアラステ王国なのだ。もちろん、ミリアム様の居場所も、ここ、カリアン王国。だから私たちは、いずれ離れ離れになる。分かっている事…でも、辛くてたまらない。

 涙がとめどなく溢れ出す。

「ミリアム様、私はずっと…ずっとあなた様の傍にいたい…でも…」

 それは決して叶わない事なのだ。

「キャリーヌ、泣かないで。遠く離れても、私たちの絆が切れる事はない、私はそう信じているわ。それにもしキャリーヌに何かあったら、その時はどこにいても、助けに行くからね」

「私も、もしミリアム様に何かあったら、すぐに駆け付けますわ。どこにいても、何があっても!」

「ありがとう、キャリーヌ。私がこうやって素直に自分の気持ちを話せる様になったのは、あなたのお陰よ。キャリーヌ、大好きよ」

「私も、ミリアム様が大好きです」

 再び強く抱きしめ合った。不安の中カリアン王国にたった1人でやって来た私を支えてくれた大切な親友、ミリアム様。

 彼女の存在が、どれほど私を支えてくれたか。

 きっとアラステ王国にいたら、決して得る事が出来なかった私の宝物。ジェイデン殿下には酷い事を沢山されたけれど、私をカリアン王国に来るきっかけを作ってくれた彼には、ほんの少しだけ感謝している。

 彼があんな愚かな行動をしなければ、私は決してカリアン王国に来ることはなかったのだから…

 憎くてたまらなかったジェイデン殿下にすら感謝してしまうだなんて、私も相当変わっているのだろう。

「さあ、日も沈みかけて来たし、そろそろ帰りましょう。帰りが夜になる事は伝えてあるけれど、あまり遅くなるとやっぱり心配されちゃうものね」

「確かにカイロ様は、ミリアム様の事をとても大切にされていますものね。今頃首を長くして、帰りを待っていらっしゃるかもしれません」

「あら、サミュエル殿下も似た様なものでしょう。キャリーヌ、私達、幸せになりましょうね」

「ええ、もちろんです」

 早速ミリアム様から頂いたブローチを胸に付けた。その姿を見たミリアム様も、同じデザインのブローチを胸に付けている。

「ミリアム様、私はこのブローチ、ずっと左胸に付けますね。このブローチは、ミリアム様と私を繋いてくれる、大切なブローチですから」

「それなら、私も左胸に付けておくわ。どんなに離れていても、このブローチで繋がっていれるみたいで嬉しいものね」

 どんなに離れていても、このブローチが2人を繋げてくれる。そう考えると、嬉しくてたまらない。

「それでは帰りましょう」

 すっとミリアム様の手を握った。私と同じくらいの手、温かくて柔らかい。私はきっとこの温もりを、忘れないだろう。ミリアム様の手を握りながら、そんな事を考えたのだった。
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