助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした

Karamimi

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第7話:アダム様の誕生日を迎えました

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とりあえず沢山の毛糸を買って来たから、しばらくは街に買い物に行かなくてもよさそうね。早速買って来た毛糸を使って、マフラーから編み始めた。裁縫のお仕事もあるので、あまり編み物に時間をとれないのが痛いが、睡眠時間を削れば何とかなるだろう。

そんな私の隣で、木彫りをしているアダム様。

「今度は編み物か。フローラは本当に何でも器用にこなすね」

「アダム様に比べたら、私なんて大したことはありませんわ。それにしても、本当に見事な木彫りですものね」

アダム様の木彫りは細かい所まで丁寧に彫られていて、まさに芸術品だ。それもこんなにも素晴らしい作品を、ものの数時間で作り上げるのだから本当に凄い。

「ありがとう。フローラに褒めてもらえると、俄然やる気が出て来るよ」

そう言ってまた彫り始めたアダム様。どうやらおだてると調子に乗るタイプの様だ。

それからアダム様の誕生日まで、家の事をこなしつつ編み物も行う。やはり時間がないせいで、睡眠時間を削って必死に編んでいく。遅くまで灯りがともっている事に気が付いたアダム様が、部屋を訪ねて来る事もしばしば。

そのたびに
「もう寝ますから大丈夫です!」
そう伝えた。それでも夜遅くまで起きて作業をしている私に

「俺の木彫りの収入で生活できるはずだ。だからあまり無理をしないで欲しい!」
と、真剣な顔で訴えて来た。最近私が疲れた顔をしているが心配な様だ。

「ありがとうございます。でも、好きでやっておりますので」

そう答えた。私の体をこうやって気遣ってくれる人がいる、そう思うとなんだか心がほっこりした。

そして迎えたアダム様の誕生日当日。何とか昨日の夜、マフラーと帽子、手袋が完成した。ギリギリだったが間に合ってよかったわ。

今日は朝から台所に立つ。

「フローラ、君は昨日の夜も遅くまで作業をしていたのだろう?俺の誕生日のお祝いなんてどうでもいいから、少し休んで欲しい!」

そう訴えるアダム様。

「ありがとうございます!でも、今日はアダム様の大切なお誕生日ですもの!しっかり祝わせて頂きますわ!それに前にも言いましたが、私は人のお誕生日を祝うのが好きなのです!」

「分かったよ…でも、無理はしないで欲しい…」

「ええ、大丈夫ですわ!」

お料理の下ごしらえが終わった後は、部屋の飾りつけだ。実は部屋を飾るのが一番好きなのだ。カミラさんのお誕生日の時に使っていた飾り、捨てなくて良かったわ。

「へ~、随分本格的に飾り付けをするのだね!フローラ、俺も飾り付けを手伝うよ」

「ありがとうございます!でも今日の主役でもあるアダム様に、手伝ってもらう訳にはいきませんわ!さあ、座ってゆっくりしていて下さい!」

アダム様を無理やり座らせ、ホットチョコを作って渡した。さあ、あと少しね!気合いを入れて飾り付けをする。飾り付けが終わったら、次はお料理を仕上げていく。ある程度下準備は出来ている為、そんなに時間はかからずに準備完了だ。

早速テーブルに並べる。それにしても、少し作りすぎちゃったわね…テーブルいっぱいに並んだ料理を見て、1人苦笑いだ。

「うぁぁ、凄いご馳走だね!これ全部フローラが作ったのかい?凄いね!」

「ありがとうございます。少し早いですが、始めましょう!さあ、アダム様、座って下さい!」

早速アダム様を座らせ、パーティースタートだ。

「アダム様、18歳のお誕生日おめでとうございます!」

まずはシャンパンで乾杯だ。ただ私はお酒が飲めないので、リンゴジュースを準備した。そして2人で食事をする。誕生日パーティーと言っても、ただ2人で食事をするだけなのだが、それでもこうやって私の作った料理で誰かの誕生日を祝えるのは幸せな事だ。

嬉しそうにお料理を頬張るアダム様を見ていると、私もつい笑みがこぼれる。そして温かい気持ちになるのだ。

「こんな風に心のこもった誕生日祝いをして貰ったのは、生まれて初めてだ。本当にありがとう。今日は俺にとって、最高の1日になったよ!」

心底嬉しそうに微笑んだアダム様。

「大袈裟ですわ!この程度でしたら、毎年お祝いいたしますわ…あっ…でもアダム様もずっとここにはいないですわよね…」

きっとある程度落ち着いたら、ここから去っていくだろう…そう思ったのだが…

「フローラさえよければ、ずっとここにいたいな…」

頬を赤らめ、恥ずかしそうにそう言ったアダム様。

「本当ですか!嬉しいです!それならずっとここにいて下さい!」

いつか出て行くと思っていたアダム様が、ずっといてくれると言ってくれた!それが嬉しくてたまらない!

「あのさ…フローラ…俺がずっとここにいるって言った意味、分かっている?」

「意味ですか?う~ん、居心地がいいからとかですかね?」

アダム様の言っている意味がよく分からないが、きっと居心地がいいのだろう。そう思ったのだが…

「こりゃ駄目だ…フローラは相当鈍い様だな…まあ、色々な男たちがかなり好意を持って接しているのに、全く気付かないくらいだもんな…クソ、ここは長期戦で行くしかなさそうだな…」

なぜか頭を抱えてブツブツ呟いている。一体どうしたのかしら?そうだわ!すっかり忘れていたけれど、アダム様に誕生日プレゼントを渡さないと!

「アダム様、改めて18歳のお誕生日おめでとうございます。これ、ささやかですがお誕生日のプレゼントです!気に入って下さるといいのですが…」

アダム様に奇麗に梱包した包み紙を渡した。

「俺にかい?嬉しいな!開けてもいいかい?」

「はい!」

ゆっくり包み紙を開けるアダム様。緊張の瞬間である。

「凄い!マフラーと手袋、帽子まで入っている!待って!これってフローラの手作りだよね。まさかこれを作っていたから、毎晩寝るのが遅かったのかい?」

「ええ…急いで作ったので、少し失敗しているところもあって恥ずかしい限りですが…」

次の瞬間、急に立ち上がったアダム様に抱きしめられた。

「あぁ、君はなんて素敵な子なんだ!ありがとう!こんなに心のこもったプレゼントを貰ったのは初めてだ!本当にありがとう!!」

そう言ってギューギュー抱きしめられる。初めて感じる男性の温もり…そもそも、男性に抱きしめられたのは初めてだ。一気に鼓動が高鳴り、心臓の音がうるさくなる。

「よ…喜んで頂けて良かったですわ…」

完全に動揺してしまい、声が裏返ってしまった。そんな私に

「急に抱きしめてごめん!あまりにも嬉しくて、つい」

そう言って慌てて私から離れたアダム様。一気に温もりが離れていき、なんだか寂しい気持ちになった。って、私は何を思っているのかしら!とにかく落ち着かないと!

1人動揺している間に、隣で嬉しそうにマフラーと手袋、帽子を身につけているアダム様。どうしてアダム様はあんな涼しそうな顔をしているのかしら?こっちは心臓が口から飛び出しそうなくらい、ドキドキしていると言うのに…

結局しばらくドキドキが収まらなかったフローラであった。
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