10 / 57
第10話:絶対に無理です
しおりを挟む
「アントアーネ、ディーストン伯爵、夫人、今回の件はさすがに僕がやりすぎていました。ですが僕は、それほどまでにアントアーネを愛しているのです。もちろん、今でも誰よりも愛しております。すぐにでもアントアーネの悪い噂は消します。消す準備も出来ているのです」
「悪い噂を消すとは、今までお金で操っていた令息たちに、全ての罪を擦り付けるという計画ですか?令息たちの悪事を見抜き、婚約者の名誉を回復した人として、またご自分の株を上げる計画だったのですよね。そこまでして、ご自分の株を上げたいですか?あなたは一体、どうしたいのですか?人気者になりたいのですか?その為なら、人の人生などどうなってもよいのですか?」
悪い噂を流した令息たちだって、家の為に泣く泣く言う事を聞いたのだ。それなのに、最後は悪者にされるだなんて…
私だって、ただ名誉が回復すればそれで全て水に流すという訳ではない。この1年、どれほど苦しみ傷ついてきたか…
「僕は別に、自分の株を上げたい訳ではないよ。アントアーネが傍にいてくれたら、それでいいんだ。アントアーネ、君を傷つけた事は謝るよ。君の名誉も回復させる。もう二度と、君を傷つけるような事はしないから。これからは、もっともっと大切にするから」
「これから?そんなものはありません。半年前、私は全てを知りました。あの日から私は、あなたのやることなす事、全てが気持ち悪くて…私の名前を呼ぶ声、触れる手、全てが嫌で仕方がなかった。早く自由になりたくて、必死に証拠を集めました。あなたから離れて、自由に生きる事だけを糧に、今まで頑張って来たのです。もうあなたと関わりたくはありません。慰謝料はいりませんので、婚約を解消してください。お願いします」
すっと立ち上がり、頭を下げた。言いたい事は全て言えたお陰か、なんだか心も晴れやかだ。
「アントアーネはこの1年、ずっと傷つき苦しんできたのです。アントアーネはこう言っておりますが、私はどうしてもラドル殿がやった事を許すことが出来ない。婚約解消はもちろん、それ相応の責任を取ってもらいますから」
「お父様、私は…」
「アントアーネは黙っていなさい。君が良くても、私は良くないのだよ!このまま婚約を解消すれば全て丸く収まるだなんて、あってはならない。ラドル殿には、自分がどれほど恐ろしい事をしたのか、しっかり理解してもらわないと、彼の為にもならないだろう」
「ディーストン伯爵の言う通りだ。まさかラドルが、こんな恐ろしい事をしていただなんて。アントアーネ嬢、本当に申し訳なかった。婚約は今この場を持って解消し、真実を皆に話し、アントアーネ嬢の名誉の回復に努めよう。もちろん、慰謝料も支払おう。アントアーネ嬢、ディーストン伯爵、夫人、この度は本当に申し訳ございませんでした」
ラドル様の両親が立ち上がり、頭を下げたのだ。夫人に至っては、泣いていた。
「待って下さい、父上。アントアーネ、婚約解消だけは勘弁してくれ。君の名誉は必ず僕が回復するから…僕は君を愛している。君を失ったら、僕はどうやって生きていけばいいのだい?こんなに君を愛しているのに」
「本当に愛しているなら、私の悪い噂なんて流さないと思いますし、何よりも私の幸せを考えて下さると思いますわ。私はあなたを愛しておりませんし、嫌悪感すら抱いております。どうかもう、私には関わらないで下さい。今のあなた様が出来る事は、もう二度と私に関わらない事だけですから」
「どうしてそんな酷い事を言うのだい?僕は絶対に、君と婚約を解消しないからな」
そう叫ぶと、そのまま部屋から出て行ってしまったラドル様。
「ラドルが本当にすまない。ラドルには必ずサインをさせるから」
何度も頭を下げるブラッディ伯爵。その後ラドル様以外全員が、婚約解消届にサインをした。
「それでは私共はこれで。ブラッディ伯爵、今後の話はまた後日行いましょう」
「ええ、承知しました。この度は息子が本当に申し訳ない事をしました。必ず償わせますので…」
改めてブラッディ伯爵と夫人が、頭を下げていた。彼らに見送られ、私たちも馬車に乗り込む。
まさかラドル様が、あのような感情を抱いていただなんて…
私が令嬢と仲良くしているのが気に入らないからという理由で、あのような噂を流すだなんて、正直信じられない。
あんな恐ろしい人とこのまま結婚していたと思うと、ぞっとする。ある意味本性が分かって、よかったのかもしれない。
何はともあれ、婚約は解消できそうだから、よかったわ。
※次回、ラドル視点です。
よろしくお願いします。
「悪い噂を消すとは、今までお金で操っていた令息たちに、全ての罪を擦り付けるという計画ですか?令息たちの悪事を見抜き、婚約者の名誉を回復した人として、またご自分の株を上げる計画だったのですよね。そこまでして、ご自分の株を上げたいですか?あなたは一体、どうしたいのですか?人気者になりたいのですか?その為なら、人の人生などどうなってもよいのですか?」
悪い噂を流した令息たちだって、家の為に泣く泣く言う事を聞いたのだ。それなのに、最後は悪者にされるだなんて…
私だって、ただ名誉が回復すればそれで全て水に流すという訳ではない。この1年、どれほど苦しみ傷ついてきたか…
「僕は別に、自分の株を上げたい訳ではないよ。アントアーネが傍にいてくれたら、それでいいんだ。アントアーネ、君を傷つけた事は謝るよ。君の名誉も回復させる。もう二度と、君を傷つけるような事はしないから。これからは、もっともっと大切にするから」
「これから?そんなものはありません。半年前、私は全てを知りました。あの日から私は、あなたのやることなす事、全てが気持ち悪くて…私の名前を呼ぶ声、触れる手、全てが嫌で仕方がなかった。早く自由になりたくて、必死に証拠を集めました。あなたから離れて、自由に生きる事だけを糧に、今まで頑張って来たのです。もうあなたと関わりたくはありません。慰謝料はいりませんので、婚約を解消してください。お願いします」
すっと立ち上がり、頭を下げた。言いたい事は全て言えたお陰か、なんだか心も晴れやかだ。
「アントアーネはこの1年、ずっと傷つき苦しんできたのです。アントアーネはこう言っておりますが、私はどうしてもラドル殿がやった事を許すことが出来ない。婚約解消はもちろん、それ相応の責任を取ってもらいますから」
「お父様、私は…」
「アントアーネは黙っていなさい。君が良くても、私は良くないのだよ!このまま婚約を解消すれば全て丸く収まるだなんて、あってはならない。ラドル殿には、自分がどれほど恐ろしい事をしたのか、しっかり理解してもらわないと、彼の為にもならないだろう」
「ディーストン伯爵の言う通りだ。まさかラドルが、こんな恐ろしい事をしていただなんて。アントアーネ嬢、本当に申し訳なかった。婚約は今この場を持って解消し、真実を皆に話し、アントアーネ嬢の名誉の回復に努めよう。もちろん、慰謝料も支払おう。アントアーネ嬢、ディーストン伯爵、夫人、この度は本当に申し訳ございませんでした」
ラドル様の両親が立ち上がり、頭を下げたのだ。夫人に至っては、泣いていた。
「待って下さい、父上。アントアーネ、婚約解消だけは勘弁してくれ。君の名誉は必ず僕が回復するから…僕は君を愛している。君を失ったら、僕はどうやって生きていけばいいのだい?こんなに君を愛しているのに」
「本当に愛しているなら、私の悪い噂なんて流さないと思いますし、何よりも私の幸せを考えて下さると思いますわ。私はあなたを愛しておりませんし、嫌悪感すら抱いております。どうかもう、私には関わらないで下さい。今のあなた様が出来る事は、もう二度と私に関わらない事だけですから」
「どうしてそんな酷い事を言うのだい?僕は絶対に、君と婚約を解消しないからな」
そう叫ぶと、そのまま部屋から出て行ってしまったラドル様。
「ラドルが本当にすまない。ラドルには必ずサインをさせるから」
何度も頭を下げるブラッディ伯爵。その後ラドル様以外全員が、婚約解消届にサインをした。
「それでは私共はこれで。ブラッディ伯爵、今後の話はまた後日行いましょう」
「ええ、承知しました。この度は息子が本当に申し訳ない事をしました。必ず償わせますので…」
改めてブラッディ伯爵と夫人が、頭を下げていた。彼らに見送られ、私たちも馬車に乗り込む。
まさかラドル様が、あのような感情を抱いていただなんて…
私が令嬢と仲良くしているのが気に入らないからという理由で、あのような噂を流すだなんて、正直信じられない。
あんな恐ろしい人とこのまま結婚していたと思うと、ぞっとする。ある意味本性が分かって、よかったのかもしれない。
何はともあれ、婚約は解消できそうだから、よかったわ。
※次回、ラドル視点です。
よろしくお願いします。
472
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
婚約解消したはずなのに、元婚約者が嫉妬心剥き出しで怖いのですが……
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のフローラと侯爵令息のカルロス。二人は恋愛感情から婚約をしたのだったが……。
カルロスは隣国の侯爵令嬢と婚約をするとのことで、フローラに別れて欲しいと告げる。
国益を考えれば確かに頷ける行為だ。フローラはカルロスとの婚約解消を受け入れることにした。
さて、悲しみのフローラは幼馴染のグラン伯爵令息と婚約を考える仲になっていくのだが……。
なぜかカルロスの妨害が入るのだった……えっ、どういうこと?
フローラとグランは全く意味が分からず対処する羽目になってしまう。
「お願いだから、邪魔しないでもらえませんか?」
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します
もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる