35 / 53
第35話:グラディオンはどこまでも優しい人です
しおりを挟む
「グラディオン、どうして?」
顔を上げると、そこには心配そうなグラディオンの姿が。
「どうしてって、ファビレスが中々戻って来ないから、心配で…それよりも、何があったんだ?どうして泣いているのだい?ファビレスはどこに行った?」
「ファビレスならさっき、戻ったわ。多分行き違いになってしまったのね」
「そうだったのか。それよりもジャンヌ、何かあったのか?今日のジャンヌ、おかしいぞ。もしかして俺、ジャンヌを傷つける様な何かをしてしまったか?」
「違うの、グラディオン。私…私…」
涙が次から次へと溢れてきて、上手く話せない。そんな私の背中を、優しく撫でてくれるグラディオン。背中越しに伝わるグラディオンの温もりが、より一層私の涙を誘った。
泣いていてはダメ!きちんとグラディオンに話しをしないと。そう思ったのだが、次から次へと涙が出てきて、上手く話せないのだ。
「グラディオン…ファビレスから…すべて聞いたわ。4年半前、あなたが私を…助けてくれたのよね」
グラディオンの方を見つめ、必死に涙をぬぐい、声にならない声で訴えた。すると大きく目を見開き、そしてため息をついたグラディオン。
「あいつ、あの時の話をジャンヌにしてしまったのだな…」
「どうしてあの時、すぐに教えてくれなかったの?あなたは命を懸けて、私を守ってくれた事。あんな大けがまでしたのに、シャーロン様に手柄を横取りされたのよ。どうして怒らなかったの?」
「そうだな、あの時、本当の事を話そうと思ったよ。でも…ジャンヌが嬉しそうに、シャーロンと婚約が決まった事を報告してくれただろう?ジャンヌのあんな嬉しそうな顔を見たら、それ以上何も言えなくなった。ジャンヌはシャーロンが好きなんだって、わかったしな。俺はジャンヌの無実が証明されたのであれば、それでいい。ジャンヌが笑ってくれていたら、それで満足だと思ったんだ。でも…」
なぜか悔しそうにグラディオンが唇を噛んでいる。
「あの時俺が真実を話さなかったせいで、あのままジャンヌはシャーロンと婚約してしまった。そのせいで、ジャンヌは4年もの間、辛い時間を過ごしたんだよな。ごめん、ジャンヌ。俺のせいで、ジャンヌに苦しくて辛い思いをさせてしまって。俺はやっぱり、ジャンヌの笑顔を守る事が出来なかったんだよ…」
悲しそうに微笑むグラディオン。この人はどこまで私の事を考えてくれているの?それなのに私は…
「謝るのは私の方よ。私、グラディオンの事を何でも分かっているつもりだった。グラディオンが無意味に悪党と戦ったりしない事だって。それなのに私…全然グラディオンの事を分かっていなくて…まんまとシャーロン様の嘘に騙されて。自分が本当に情けないわ。グラディオンはずっと昔から、私を守ってくれていたのよね?ありがとう、グラディオン」
「俺はそんな立派な人間じゃない。俺は不器用で、守りたい人すら幸せに出来ない様な男だよ」
「そんな事はないわ。ごめんね、私昨日、グラディオンと副騎士隊長の話を聞いてしまったの。正直どうしていいか分からなくて。グラディオンにどう接していいか、悩んでいたの。でも、もう悩まないわ。グラディオン、私もあなたが好きよ。最初は仲間としての好きだと思っていた。でも、やっと気が付いたの。私はグラディオンと共に、未来を歩んでいきたい。グラディオン、私と婚約してくれませんか?一度失敗しているこんな私だけれど、今度こそ幸せになりたい。これからは私が、グラディオンを守るから」
再び大量の涙が溢れ出てくる。私ったらいつからこんなに泣き虫になったのかしら。今グラディオンを守るって宣言したのに、こんなに泣いてばかりではダメだわ。
そんな私を、グラディオンがギュッと抱きしめてくれたのだ。
「ジャンヌ、お前はいつもいつも、どうしてそうなんだよ…本当にもう…」
「グラディオン?泣いているの?」
ビックリしてグラディオンから離れようとしたのだが、ギュッと抱きしめられていて動く事が出来ない。
「頼む、今俺の顔を見ないでくれ…みっともない姿を晒したくない…」
「みっともないだなんて、そんな事はないわよ。でも…分かったわ」
グラディオンが泣くなんて、初めてかもしれない。グラディオンはどんなことがあっても、決して涙を見せる事はなかったから。そんな彼が泣くだなんて。
「ジャンヌ、俺は子供の頃からジャンヌが大好きだった。最初は俺自身の手でジャンヌを幸せにしたいと思っていた。だから、何が何でもジャンヌより強くなりたいと思ったんだ。でも、ジャンヌを抜かせなくて。そんな中、あの事件が起きた」
グラディオンの抱きしめる力が、さらに強くなるのを感じた。
顔を上げると、そこには心配そうなグラディオンの姿が。
「どうしてって、ファビレスが中々戻って来ないから、心配で…それよりも、何があったんだ?どうして泣いているのだい?ファビレスはどこに行った?」
「ファビレスならさっき、戻ったわ。多分行き違いになってしまったのね」
「そうだったのか。それよりもジャンヌ、何かあったのか?今日のジャンヌ、おかしいぞ。もしかして俺、ジャンヌを傷つける様な何かをしてしまったか?」
「違うの、グラディオン。私…私…」
涙が次から次へと溢れてきて、上手く話せない。そんな私の背中を、優しく撫でてくれるグラディオン。背中越しに伝わるグラディオンの温もりが、より一層私の涙を誘った。
泣いていてはダメ!きちんとグラディオンに話しをしないと。そう思ったのだが、次から次へと涙が出てきて、上手く話せないのだ。
「グラディオン…ファビレスから…すべて聞いたわ。4年半前、あなたが私を…助けてくれたのよね」
グラディオンの方を見つめ、必死に涙をぬぐい、声にならない声で訴えた。すると大きく目を見開き、そしてため息をついたグラディオン。
「あいつ、あの時の話をジャンヌにしてしまったのだな…」
「どうしてあの時、すぐに教えてくれなかったの?あなたは命を懸けて、私を守ってくれた事。あんな大けがまでしたのに、シャーロン様に手柄を横取りされたのよ。どうして怒らなかったの?」
「そうだな、あの時、本当の事を話そうと思ったよ。でも…ジャンヌが嬉しそうに、シャーロンと婚約が決まった事を報告してくれただろう?ジャンヌのあんな嬉しそうな顔を見たら、それ以上何も言えなくなった。ジャンヌはシャーロンが好きなんだって、わかったしな。俺はジャンヌの無実が証明されたのであれば、それでいい。ジャンヌが笑ってくれていたら、それで満足だと思ったんだ。でも…」
なぜか悔しそうにグラディオンが唇を噛んでいる。
「あの時俺が真実を話さなかったせいで、あのままジャンヌはシャーロンと婚約してしまった。そのせいで、ジャンヌは4年もの間、辛い時間を過ごしたんだよな。ごめん、ジャンヌ。俺のせいで、ジャンヌに苦しくて辛い思いをさせてしまって。俺はやっぱり、ジャンヌの笑顔を守る事が出来なかったんだよ…」
悲しそうに微笑むグラディオン。この人はどこまで私の事を考えてくれているの?それなのに私は…
「謝るのは私の方よ。私、グラディオンの事を何でも分かっているつもりだった。グラディオンが無意味に悪党と戦ったりしない事だって。それなのに私…全然グラディオンの事を分かっていなくて…まんまとシャーロン様の嘘に騙されて。自分が本当に情けないわ。グラディオンはずっと昔から、私を守ってくれていたのよね?ありがとう、グラディオン」
「俺はそんな立派な人間じゃない。俺は不器用で、守りたい人すら幸せに出来ない様な男だよ」
「そんな事はないわ。ごめんね、私昨日、グラディオンと副騎士隊長の話を聞いてしまったの。正直どうしていいか分からなくて。グラディオンにどう接していいか、悩んでいたの。でも、もう悩まないわ。グラディオン、私もあなたが好きよ。最初は仲間としての好きだと思っていた。でも、やっと気が付いたの。私はグラディオンと共に、未来を歩んでいきたい。グラディオン、私と婚約してくれませんか?一度失敗しているこんな私だけれど、今度こそ幸せになりたい。これからは私が、グラディオンを守るから」
再び大量の涙が溢れ出てくる。私ったらいつからこんなに泣き虫になったのかしら。今グラディオンを守るって宣言したのに、こんなに泣いてばかりではダメだわ。
そんな私を、グラディオンがギュッと抱きしめてくれたのだ。
「ジャンヌ、お前はいつもいつも、どうしてそうなんだよ…本当にもう…」
「グラディオン?泣いているの?」
ビックリしてグラディオンから離れようとしたのだが、ギュッと抱きしめられていて動く事が出来ない。
「頼む、今俺の顔を見ないでくれ…みっともない姿を晒したくない…」
「みっともないだなんて、そんな事はないわよ。でも…分かったわ」
グラディオンが泣くなんて、初めてかもしれない。グラディオンはどんなことがあっても、決して涙を見せる事はなかったから。そんな彼が泣くだなんて。
「ジャンヌ、俺は子供の頃からジャンヌが大好きだった。最初は俺自身の手でジャンヌを幸せにしたいと思っていた。だから、何が何でもジャンヌより強くなりたいと思ったんだ。でも、ジャンヌを抜かせなくて。そんな中、あの事件が起きた」
グラディオンの抱きしめる力が、さらに強くなるのを感じた。
154
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる