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第34話:私は何も見えていなかった
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「待って、ファビレス。それじゃあ私の無罪を晴らしたのは、グラディオンだったの?あの時大けがを負ったのは、私を助けるため?そんな…それならどうしてグラディオンは、そう言わなかったの?どうして…」
「それは僕には分からないよ。ただ、シャーロン曰く、“グラディオン1人がいくら騒いでも、僕たちがこうだと言えば皆僕たちを信じてくれるはずだ。大勢の意見の方が、優位だから“そう言っていたから、もしかしたらグラディオン隊長も、今更何を言っても無駄だと思ったのかもしれないね」
いいえ…グラディオンはそんなタイプの人間ではないわ。きっと何か理由があって、あえて真実を言わなかったのだわ。
「ジャンヌ、ずっと隠していて本当にごめんなさい。本来ならきちんと真実を話すべきだった。でも僕は、弱くて…自分が可愛いどうしようもない人間なんだ。それでも僕は、グラディオン隊長もジャンヌも大好きで…これからも騎士団を続けていきたくて…」
「ファビレス、泣かないで。話してくれてありがとう。あなたはどうしようもない人間なんかじゃないわ。だって私に謝罪し、真実を話してくれたのだもの。あなたは立派な私の仲間よ」
そう言ってファビレスに笑顔を向けた。
「ありがとう…ジャンヌ…」
再びポロポロと涙を流すファビレス。そんな彼の背中をそっと撫でた。
「ファビレス、もう泣かないで。そろそろ稽古場に戻った方がいいわ。ただ、あなた、酷い顔よ。顔を洗ってから戻った方がいいと思う。私は少し休んでから戻るわね」
「そうだね、あまり戻りが遅くなると、グラディオン隊長に怒られるもんね。ジャンヌ、話しを聞いてくれてありがとう。なんだか心が軽くなったよ」
「こちらこそ、真実を教えてくれてありがとう」
ファビレスが医務室から出ていくのを見送った。
1人になると、ベッドに腰を下ろした。
“ジャンヌの無実を晴らしたのは、グラディオン隊長だったんだよ”
ファビレスの言葉が、頭から離れない。
あの日私を助けてくれたのは、グラディオンだったなんて…それをシャーロン様が横取りした。
よく考えてみたら、グラディオンが意味もなく悪党どもと喧嘩なんかしないわ。きっと何か理由があったはずだ。あの時もそう思っていた。それなのに私は…
“ジャンヌが好きだ。今も昔も、この気持ちは色あせる事はない”
ふと昨日、グラディオンが言っていた言葉を思い出した。もしかしたらあの当時から、グラディオンは私の事を…だから私の無実を証明するために、危険を冒してまで。それなのに私は…
「私、本当にバカね…グラディオンの事、何も分かっていなかったわ…」
グラディオンが命を懸けて私の無罪を証明してくれたというのに、私はというと、まんまとシャーロン様の嘘に騙されて。その上、グラディオンに笑顔で、シャーロン様と婚約する事を告げるだなんて。
あの時、一瞬悲しそうな顔をしたグラディオン。それでも笑顔で“幸せになれよ”と言ってくれたのだ。一体どんな気持ちで、そう言ってくれたのだろう…
グラディオンの気持ちも知らないで、1人浮かれていた私。きっと神様が、何も分かっていない私に4年もの間、罰を与えたのかもしれない。そして4年半の時を超えて今、やっと真実を知った。
「グラディオン、ごめんね…私、鈍くてバカで。周りが全然見えていなかった。誰よりもあなたの事を理解しているはずだったのに…何も分かっていなかったのね」
溢れる涙を止める事が出来ずに、1人静かに泣いた。私に泣く権利なんてない。グラディオンの必死の努力を踏みにじり、1人幸せになろうとしていた私に。
グラディオンに会いたい、会って謝りたい。助けてくれてありがとう、あの時あなたが命を懸けて手に入れてくれた証拠のお陰で、私の無実が証明され、汚名返上にも繋がったのよ。
あなたは私の恩人で、誰よりも大切な人。今度は私があなたを支えて行きたい。あなたを傷つけてしまった過去は変えられないけれど、未来ならきっと変えられるはず。
昨日あれだけ悩んでいたことが嘘のように、私は今、進むべき道が見えた気がしたのだ。
「ジャンヌ?泣いているのか?大丈夫か?」
この声は、グラディオンだ!
「それは僕には分からないよ。ただ、シャーロン曰く、“グラディオン1人がいくら騒いでも、僕たちがこうだと言えば皆僕たちを信じてくれるはずだ。大勢の意見の方が、優位だから“そう言っていたから、もしかしたらグラディオン隊長も、今更何を言っても無駄だと思ったのかもしれないね」
いいえ…グラディオンはそんなタイプの人間ではないわ。きっと何か理由があって、あえて真実を言わなかったのだわ。
「ジャンヌ、ずっと隠していて本当にごめんなさい。本来ならきちんと真実を話すべきだった。でも僕は、弱くて…自分が可愛いどうしようもない人間なんだ。それでも僕は、グラディオン隊長もジャンヌも大好きで…これからも騎士団を続けていきたくて…」
「ファビレス、泣かないで。話してくれてありがとう。あなたはどうしようもない人間なんかじゃないわ。だって私に謝罪し、真実を話してくれたのだもの。あなたは立派な私の仲間よ」
そう言ってファビレスに笑顔を向けた。
「ありがとう…ジャンヌ…」
再びポロポロと涙を流すファビレス。そんな彼の背中をそっと撫でた。
「ファビレス、もう泣かないで。そろそろ稽古場に戻った方がいいわ。ただ、あなた、酷い顔よ。顔を洗ってから戻った方がいいと思う。私は少し休んでから戻るわね」
「そうだね、あまり戻りが遅くなると、グラディオン隊長に怒られるもんね。ジャンヌ、話しを聞いてくれてありがとう。なんだか心が軽くなったよ」
「こちらこそ、真実を教えてくれてありがとう」
ファビレスが医務室から出ていくのを見送った。
1人になると、ベッドに腰を下ろした。
“ジャンヌの無実を晴らしたのは、グラディオン隊長だったんだよ”
ファビレスの言葉が、頭から離れない。
あの日私を助けてくれたのは、グラディオンだったなんて…それをシャーロン様が横取りした。
よく考えてみたら、グラディオンが意味もなく悪党どもと喧嘩なんかしないわ。きっと何か理由があったはずだ。あの時もそう思っていた。それなのに私は…
“ジャンヌが好きだ。今も昔も、この気持ちは色あせる事はない”
ふと昨日、グラディオンが言っていた言葉を思い出した。もしかしたらあの当時から、グラディオンは私の事を…だから私の無実を証明するために、危険を冒してまで。それなのに私は…
「私、本当にバカね…グラディオンの事、何も分かっていなかったわ…」
グラディオンが命を懸けて私の無罪を証明してくれたというのに、私はというと、まんまとシャーロン様の嘘に騙されて。その上、グラディオンに笑顔で、シャーロン様と婚約する事を告げるだなんて。
あの時、一瞬悲しそうな顔をしたグラディオン。それでも笑顔で“幸せになれよ”と言ってくれたのだ。一体どんな気持ちで、そう言ってくれたのだろう…
グラディオンの気持ちも知らないで、1人浮かれていた私。きっと神様が、何も分かっていない私に4年もの間、罰を与えたのかもしれない。そして4年半の時を超えて今、やっと真実を知った。
「グラディオン、ごめんね…私、鈍くてバカで。周りが全然見えていなかった。誰よりもあなたの事を理解しているはずだったのに…何も分かっていなかったのね」
溢れる涙を止める事が出来ずに、1人静かに泣いた。私に泣く権利なんてない。グラディオンの必死の努力を踏みにじり、1人幸せになろうとしていた私に。
グラディオンに会いたい、会って謝りたい。助けてくれてありがとう、あの時あなたが命を懸けて手に入れてくれた証拠のお陰で、私の無実が証明され、汚名返上にも繋がったのよ。
あなたは私の恩人で、誰よりも大切な人。今度は私があなたを支えて行きたい。あなたを傷つけてしまった過去は変えられないけれど、未来ならきっと変えられるはず。
昨日あれだけ悩んでいたことが嘘のように、私は今、進むべき道が見えた気がしたのだ。
「ジャンヌ?泣いているのか?大丈夫か?」
この声は、グラディオンだ!
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