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4 初対面~レオナルド・ボンディング目線
しおりを挟む~レオナルド・ボンディング目線
トーマス殿下は俺の又従兄弟に当たる。
俺の祖母は前王の妹だから。
そのトーマス殿下が自分の元婚約者を俺に押し付けて来た。
俺はこんな見た目だから、これまで幾人もの令嬢から婚姻の打診を断られてきた。
始めは同じくらいの爵位の令嬢から、最後は下級貴族の男爵令嬢にまで。
元婚約者を押し付けてきたトーマス殿下に悔しさを憶えはしたが、王太子命令なら仕方ないとその婚約話を了承した。
渋々といった雰囲気を演出してはみたものの、もう一生結婚など出来ないと諦めていた俺は正直嬉しくて仕方がなかった。
どんな女性だろう?
この国の王太子殿下の元婚約者というからには、それなりに美しくはあるのだろうか。
しかし、あの品行方正で優しいと評判のトーマス殿下に婚約を破棄されるくらいだ。
ものすごく性格が悪いのだろう。
それでもいい。
『妻』という立場で俺の子を、このボンディング家の跡取りを生んでくれるなら性格くらい悪くても我慢する。
顔など首と繋がってさえいればそれだけで構わない。
この広い公爵邸の中なら顔を合わさずに暮らすことなど容易だ。
夜会や茶会などの公の場に出るときだけは、『良妻』として振る舞ってくれればそれだけでいい。
とにかく俺は『妻』と『子』が欲しいのだ。
公爵邸の客間のソファでそんなことを考えながら待っていると、コンコン、とノックが響いた。
来た!俺の体に緊張が走る。
第一印象が大事だからな、とにかくなるべく威圧しないように、優しく振る舞おう。
ここでまた失敗しては『妻』と『子』は、きっともう一生手に入らない。
そんな俺の前に現れたのは、それはもう、目の覚めるような美しい令嬢だった。
なんだ?これは本当に俺と同じ人間なのか?
ふわふわのピンクゴールドの髪。
陶器のような白い肌。
小振りでスッとした形の良い鼻。
ポッテリとした薔薇の蕾のような唇。
黒い大きな瞳は、見ていると吸い込まれそうなほどに美しい。
「ボ、ボンディング公爵の当主、レオナルド・ボンディングです」
「・・・・・・・・・・」
俺を一目見た瞬間、彼女が固まってしまった。
やはり、俺の見た目は恐ろしいか・・・・・
しかし、引き攣った顔もまた美しいなんて、こんなにも美しい女性がこの世にいるなど信じられない。
何とか気を取り直してお嬢の礼をする彼女は、それはもうまるで女神か天使か妖精か。
・・・・・・こんな美しい女性が、俺の妻になどなるはずがない。
しかしこの婚約は王太子命令だ。
一年間は婚約者として我慢するのだろう。
このままコンポジット伯爵邸に帰って、約束の一年が過ぎるのをじっと待つのだろう。
そして断りの便りが届くのだ。
「・・・・今日は遠い所を馬車で大変でしたね。疲れてはいませんか?」
威圧しないように、優しい口調で話しかける。
彼女との結婚など一瞬で諦めたが、怖がらせる訳にはいかない。
「いえ、ボンディング公爵様に会えるのを楽しみにしておりましたから。時間など気にならないくらいあっという間でしたわ」
「そ、そうですか。しかし、噂通りの見た目でガッカリなさったでしょう?」
「・・・・・・・・・・」
俺のこの恐ろしい見た目に何と答えようか考えているのだろう、彼女は言葉に詰まった。
「・・・・・・リリア嬢?」
「わ、わたくしったら、も、申し訳ございません。ボンディング公爵があんまり素敵な方でしたから・・・・・・」
は?『素敵な方』だと?
お世辞なのは解っている。
しかし、生まれて初めて言われたお世辞が、こんなにも美しい女性の口から発せられた。
もう、それだけで幸せな気分になってしまう。
「いや、そのように気を使わなくとも、私は貴女を取って食いはしない」
「気を使うだなんて、とんでもございませんわ。ボンディング様は本当に素敵ですもの。わたくし、トーマス殿下に感謝しなければなりませんわね!」
その瞬間、俺は彼女のまわりにたくさんのピンクの小花が舞い踊る幻を見た。
脳天から背中に、そして足元まで強烈な電流が走り抜ける。
まるで雷に打たれたかのように。
思わず倒れそうになったが、何とか持ちこたえた。
俺のこの恐ろしい見た目を、そんな顔で素敵だと言ってくれるのか?
しかも、自分を捨てた元婚約者のトーマス殿下に感謝だと?
これは・・・・・・
本当に俺の妻になってくれるのか?
俺は、夢を見ているのか?
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5 帰りません へ
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