3 / 38
3 初対面
しおりを挟むコンポジット伯爵邸を出発して、馬車に揺られること三日、やっとボンディング公爵のお屋敷に着いた。
ああ、腰が痛いわ。
これでも伯爵家でいちばん豪華な馬車なんだけど、やっぱり馬車は所詮馬車よね。
ステアリングが悪いのよ、車輪にゴムとか巻いてみたらどうかしら?
サスペンションもいいわね。車体と車輪軸の間をバネでこう・・・・・・
「コンポジット伯爵家ご令嬢、リリア・コンポジット様、ようこそおいでくださいました。ボンディング公爵家の執事をしております、セバスと申します」
馬車の前に立つ50代半ばくらいのナイスミドルが深々と頭を下げた。
セバスって執事にありがちな名前。
さすが日本の乙女ゲームの世界だわ。
セバスの後ろの沢山の使用人たちも、セバスに合わせて頭を下げる。
さすが公爵家。
お屋敷も伯爵邸とは比べ物にならないくらいでかけりゃ、使用人の数も半端ない。
でもまあ、王宮はもっとすごかったからね、慣れたもんよ。
というか、前世アイドル時代の東京ドームでの55000人コンサートや終わりの見えないサイン会や握手会を普通にこなしてた私からしてみたら大したことではないわ。
私は優雅な仕草で馬車から降りると、にっこりと微笑んで返事をした。
「コンポジット伯爵家から参りましたリリアですわ。ご丁寧なお出迎え、ありがとう存じます」
「・・・・・・で、では、こちらにどうぞ。公爵が首を長くして待っております」
ボンディング公爵、王太子命令で無理矢理結婚させられるっていうのに首を長くして待ってたの?
しかも花嫁は王太子のお下がりよ?
ああ、なるほど、幾人ものご令嬢に婚姻の打診を断られてるらしいものね。
もう、結婚できるなら誰でもいいって境地にまで追い込まれているのかしら。
でもね、私はやっぱり愛したい。
夫婦になるんだもの。
愛したいし、愛されたい。
例えこの結婚がトーマスからの命令だとしても。
「ボンディング公爵家の当主、レオナルド・ボンディングです」
広い客間のでっかいソファから立ち上がったレオナルド・ボンディングが挨拶してきた。
「・・・・・・・・・・」
私は一瞬言葉が出ない。
が、直ぐに気を取り直して挨拶を返す。
「コンポジット伯爵家から参りました、リリアでございます」
前から見ても、後ろから見ても、右から見ても、左から見ても、美しい所作でお嬢の礼をした。
「・・・・今日は遠い所を大変でしたね。疲れてはいませんか?」
「いえ、ボンディング公爵様に会えるのを楽しみにしておりましたから。時間など気にならないくらい、あっという間でしたわ」
「そ、そうですか。しかし、噂通りの見た目でガッカリなさったでしょう?」
噂通りの見た目って、魔物のようなってこと?
魔物ってこんな顔じゃないと思うわよ?
だって、だって、
めっっっっちゃカッコいいもの!!
この顔を魔物だなんて誰が言ったのよ?!
これは私の好みのタイプど真ん中!
見上げるほどの長身は2メートル以上ありそう。
筋骨隆々のたくましく引き締まった体つきに、相手を射抜くような鋭い三白眼。
濃い茶色の髪の毛は根本から立ち上がり、触ると痛そうなくらいの毛質だ。
そしてこめかみから頬を通り、顎まで伸びる大きな傷跡。
その姿は前世で大ファンだったスーパーヘビー級のボクサーのよう。
そして声!
今まで聞いてきた、どんな声優よりも素敵なイケメンボイス!!
ああ!さすがトーマス、私の好みを知り尽くしている男!
くそとか言ってゴメンなさい!!
ありがとう!愛しているわ!
「・・・・・・リリア嬢?」
はっ!
ボンディング公爵のあまりのイケメンぶりに、何処か遠くの世界に行ってしまっていたわ。
「わ、わたくしったら、も、申し訳ございません。ボンディング公爵があんまり素敵な方でしたから・・・・・・」
「・・・・・・は?素敵?い、いや、そのように気を使わなくとも、私は貴女を取って食いはしない」
「気を使うだなんて、とんでもございませんわ。ボンディング様は本当に素敵ですもの。わたくし、トーマス殿下に感謝しなければなりませんわね!」
「そ、それでは貴女はこの私との婚約に快く応じて下さると?」
は?婚約?このまま結婚するんじゃないの?
トーマスは嫁げって言ったわよね?
「婚約?このまま婚姻を結ぶのではないのですか?わたくし、トーマス殿下からそのように言われて参ったのですが・・・・・・」
「え、いや、トーマス殿下からは一年間の婚約の後、お互いが望むなら婚姻を結ぶといい、と言われているのですが」
Oh!!トーマース!!!
あんた、なんて素晴らしいの!
やっぱりトーマスは私の味方!
今度会ったらほっぺにチューしてあげよう!
嫌がって怒って逃げると思うけど、追いかけ回して捕まえて絶対チューしちゃうんだから!
────────────────────
4 初対面~レオナルド・ボンディング目線
37
あなたにおすすめの小説
【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした
Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。
同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。
さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、
婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった……
とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。
それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、
婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく……
※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』
に出てくる主人公の友人の話です。
そちらを読んでいなくても問題ありません。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ
春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。
エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!?
この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて…
しかも婚約を破棄されて毒殺?
わたくし、そんな未来はご免ですわ!
取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。
__________
※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。
読んでくださった皆様のお陰です!
本当にありがとうございました。
※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。
とても励みになっています!
※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
その破滅エンド、ボツにします!~転生ヒロインはやり直し令嬢をハッピーエンドにしたい~
福留しゅん
恋愛
自分がシナリオを書いた乙女ゲームの世界に転生したメインヒロインはゲーム開始直後に前世を思い出す。一方の悪役令嬢は何度も断罪と破滅を繰り返しては人生をやり直していた。そうして創造主の知識を持つヒロインと強くてニューゲームな悪役令嬢の奇妙な交友が始まる――。
※小説家になろう様にも投稿しています。
転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる