30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

エビルズピーク 5

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<ヴァーンベック視点>



「探るのですか?」

「ええ、ちっと偵察しとこうと思いましてね」

「ヴァーンさん、おれも行くぜ」

「……アル君、ヴァーンさん、休憩は?」

「休憩は要りませんよ」

「おれもです」

「そんな……」

「大丈夫、心配無用です」

 これくらい、何のことはねえ。

「……無理しないでくださいね」

「了解です。では、少し出てきますので」

 テポレン方面の様子を見てくるか。

「アル、行くぞ」

「了解」


 アルとふたり広場を出て、山道を進むと。
 また視界が狭まってきた。

 ホント、木々の勢いが凄え。
 先が見えにくくて仕方ねえわ。
 まっ、さっきまでよりはましだけどな。

「ヴァーンさん、どこまで見に行くんだ?」

「ん? まあ、この辺でいいか」

 特に問題はなさそ……。

 ちょっと、待て!

 何か音が?
 音が聞こえる?

 風に乗って僅かに耳に届くこの音は……。

「アル、もう少し先に進むぞ」

「えっ、どうしたんだよ?」

「敵兵がいるかもしれねえ。確認だ」

「……」

 足音を消しながら、急いで音の聞こえる方向に歩を進めると……。

「間違いねえ」

 まだ離れてはいるが、武装した一団がこちらに向かっている。

「敵兵? レザンジュの王軍!?」

「そうみたいだな」

「っ! 早く知らせないと!」

「ああ、ちっと急ぐぜ!」

 時間的猶予は僅かなもの。
 急いで戻って対策を立てないといけねえ。

 今進んで来た道を引き返し、静かに駆ける。
 視界の悪い山道をもどかしい思いでただ駆ける!

「……」

「……」

 ふたり無言のまま悪道を抜けると、視界が広がり。
 道幅のある坂道へ。
 見覚えのある山道だ。

 ここを駆け上がると、すぐ先には皆の休憩している広場。
 もう少しで到着だぞ。

 すると、広場を目の前にして。

「グロォォォ!!」

「オオォォォ!!」

 聞こえてきたのは魔物の雄叫び?
 こいつは!?

「ヴァーンさん!?」

 まずい。
 これは、まずいな。

「アル、聞こえるか?」

「ああ……聞こえる」


「グロォォォ!」

「グルォォォ!」

「皆、態勢を整えるんだ!!」

「「「「「「おう!」」」」」」
「「「「「「了解!」」」」」」

 俺たちの前方。
 セレスさんたちが休憩しているはずの広場から聞こえてくるのは、魔物の雄叫び。それに、ルボルグ隊長とワディン騎士の声。

 その声には焦りが混じっている?

 隊長が焦るほどの魔物。
 この距離でも感じ取れる魔物の気配。
 何が現れたのかは分からないが、並じゃねえことだけは確かだ。

「ヴァーンさん!」

「……」

 おそらく、戦闘はまだ始まっていない。
 それなら。

「広場に入ったらお前はセレスさんのもとへ走れ」

 この一団の中で戦えないのはセレスさんのみ。
 まずは、彼女の安全を確保する必要がある。
 もちろん、ワディン騎士もセレスさんを護りながら戦ってはいるだろう。
 それでもだ。
 優先順位は変わらねえ。

「分かった」

 セレスさんのことはアルに任せて、こっちは状況次第。
 相手の魔物次第で対応も変わってくる。

「……」

「……」

 よし!
 もうすぐだ。
 あの坂を越えれば広場が見える。

「アル、一気に行くぞ」

「了解!」

 アルとふたり、全速で駆け上がり坂の上へ。
 そこで目に入ってきたのは……。

 2頭の魔物。
 赤茶色の毛並みを持った4足の巨体。
 その眼は真っ赤に染まっている。

「ヴァーンさん、あいつら?」

「……ブラッドウルフだな」


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