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第6章 移ろう魂編
エビルズピーク 4
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<剣姫イリサヴィア視点>
「よーし、もうすぐだ!」
「ああ、あと数撃で終わりだな」
「けど、油断すんなよ」
「分かってらぁ。じゃあ、いくぞ!」
「「「了解!」」」
ブラッドウルフを相手にすること四半刻。
そろそろ決着がつきそうだ。
「「「「「「おおぉ!!」」」」」」
「「「「よっしゃ!」」」」
夜の帳が下りかけたミルト山に冒険者の歓声が木霊する。
助力は必要なかったな。
「イリサヴィアさん、お待たせしました」
「いや、貴君らの戦い確と見せてもらった。良い戦いぶりだ」
「はは、あなたにそう言われると返答に窮しますよ」
「偽らざる本心なのだが」
「いや、まあ……ありがとうございます」
「礼など必要ない。こちらも助かっているのだからな」
この険峻なミッドレミルトでの追跡。
ひとりで行うより軽易であることは間違いない。
「それは、お互い様ですよ」
「……そう、か」
「では、もう少し待っててください。遺骸の処理を済ませてしまいますので」
「うむ。ところで、貴君らは普段から行動を共にしているのか?」
あの連携の取れた動きは、一朝一夕で身に付くものではないだろう。
「これは珍しい。イリサヴィアさんが我らに興味を持ってくれるとは」
「……」
「数人は長く組んでいますよ。黒都に来てから知り合った者もいますけど」
「黒都に来た? ずっと黒都で活動しているのではなかったのか?」
ギルドの指名なのだから、当然黒都の冒険者だと思っていたが。
「ええ、黒都は久しぶりですね。こちらに戻って活動を始めたのは最近のことです」
「以前はどこに?」
「キュベリッツです。キュベリッツのオルドウで活動していました」
オルドウ……。
彼がオルドウに?
「おっと。処理が終わったようです。では、野営の準備に取り掛かりましょうか」
******************
エビルズピークの奥深く。
獣の艶やかな毛並みのごとく滑らかな緑に覆われた最奥。
人が足を踏み入れることなどない未踏の地。
そこに出現した異物。
尋常ではない空気を纏い周囲を圧するそれは……。
「ウウゥゥゥ」
低い唸り声を発するのみ。
身動ぎもしない。
「ウゥゥ……」
だというのに、それに近寄るものは皆無。
「ゥゥゥ……」
ただただ唸り声だけが響きわたる深山。
木々の濃緑と相まって、むせ返るような空間が作り出されていた。
*********************
<ヴァーンベック視点>
エビルズピークの山道。
俺たちは、この悪道をひたすら進んでいる。
「セレスティーヌ様、この辺りは険しくなっていますので足下にはご注意ください」
「はい、分かりました」
快晴の空がこれでもかというほど青々と高く透き通っているのに、こっちは木々に遮られて空どころじゃねえ。
ほんと、視界が悪いぜ。
まっ、視界を遮る木々も青々としてるけどよ。
「セレス様、お手を」
「シアさん、大丈夫です。ひとりで歩けますから」
「……気をつけてくださいね」
「ええ、心配要りませんよ」
「……」
「セレス様、ここも危ないです」
「……はい」
確かに、この山道は歩きづらい。
とはいえ、さっきから心配しすぎだろ。
特にシア。
セレスさんが意識を取り戻してから、過保護の度合いが凄いことになってるぞ。
まあなぁ。
今もまだ記憶が曖昧のようだし、たまに頭痛もするみたいだから。
心配になるのも理解できるんだけどよ。
セレスさんは、コーキと2人でテポレン山を越えた経験があるんだぜ。
この程度の道なら、まだ平気だと思うぞ。
「ここ、滑りますので」
「……はい」
っと、危ねえ!
こっちが足を滑らすとこだった。
「……」
やっぱり、注意が必要だな。
しばらく狭くて急な斜面が続き、セレスさんの顔に疲れの色が見え始めた頃。
ようやく視界が開けてきた。
これなら、高い空も眺めることができる。
「セレス様、道が広くなりましたよ」
「はあっ、はあっ……。良かったです」
「セレス様!」
セレスさんの息が上がっている。
ちょっと休んだ方がいいか。
ここもそれなりに道幅があるが、この坂の向こうは木々も途切れ平坦な地面が広がっているように見える。
なら、そこで。
「セレスティーヌ様、この先に良い場所があります。そこで休憩いたしましょう」
「……はい。お願いします、隊長さん」
俺が言うまでもなかったな。
坂を越えると。
隊長の言葉通り、そこは四方に開けた小さな広場のようになっていた。
「ほう……」
ここまで続いた深緑が嘘のように、この辺りだけ木々が綺麗に切り取られている。
剛毛を剃り上げられたダブルヘッドの柔肌って感じだぜ。
まさに休憩地だな。
「セレス様、こちらにどうぞ」
「ありがと、シアさん」
ちょうどいい岩に腰を下ろすセレスさん。
明らかにホッとしている。
とりあえず、一安心か。
しかし、ここでしばらく休憩するのなら。
「セレスさん、少し周囲を探ってきますよ」
「よーし、もうすぐだ!」
「ああ、あと数撃で終わりだな」
「けど、油断すんなよ」
「分かってらぁ。じゃあ、いくぞ!」
「「「了解!」」」
ブラッドウルフを相手にすること四半刻。
そろそろ決着がつきそうだ。
「「「「「「おおぉ!!」」」」」」
「「「「よっしゃ!」」」」
夜の帳が下りかけたミルト山に冒険者の歓声が木霊する。
助力は必要なかったな。
「イリサヴィアさん、お待たせしました」
「いや、貴君らの戦い確と見せてもらった。良い戦いぶりだ」
「はは、あなたにそう言われると返答に窮しますよ」
「偽らざる本心なのだが」
「いや、まあ……ありがとうございます」
「礼など必要ない。こちらも助かっているのだからな」
この険峻なミッドレミルトでの追跡。
ひとりで行うより軽易であることは間違いない。
「それは、お互い様ですよ」
「……そう、か」
「では、もう少し待っててください。遺骸の処理を済ませてしまいますので」
「うむ。ところで、貴君らは普段から行動を共にしているのか?」
あの連携の取れた動きは、一朝一夕で身に付くものではないだろう。
「これは珍しい。イリサヴィアさんが我らに興味を持ってくれるとは」
「……」
「数人は長く組んでいますよ。黒都に来てから知り合った者もいますけど」
「黒都に来た? ずっと黒都で活動しているのではなかったのか?」
ギルドの指名なのだから、当然黒都の冒険者だと思っていたが。
「ええ、黒都は久しぶりですね。こちらに戻って活動を始めたのは最近のことです」
「以前はどこに?」
「キュベリッツです。キュベリッツのオルドウで活動していました」
オルドウ……。
彼がオルドウに?
「おっと。処理が終わったようです。では、野営の準備に取り掛かりましょうか」
******************
エビルズピークの奥深く。
獣の艶やかな毛並みのごとく滑らかな緑に覆われた最奥。
人が足を踏み入れることなどない未踏の地。
そこに出現した異物。
尋常ではない空気を纏い周囲を圧するそれは……。
「ウウゥゥゥ」
低い唸り声を発するのみ。
身動ぎもしない。
「ウゥゥ……」
だというのに、それに近寄るものは皆無。
「ゥゥゥ……」
ただただ唸り声だけが響きわたる深山。
木々の濃緑と相まって、むせ返るような空間が作り出されていた。
*********************
<ヴァーンベック視点>
エビルズピークの山道。
俺たちは、この悪道をひたすら進んでいる。
「セレスティーヌ様、この辺りは険しくなっていますので足下にはご注意ください」
「はい、分かりました」
快晴の空がこれでもかというほど青々と高く透き通っているのに、こっちは木々に遮られて空どころじゃねえ。
ほんと、視界が悪いぜ。
まっ、視界を遮る木々も青々としてるけどよ。
「セレス様、お手を」
「シアさん、大丈夫です。ひとりで歩けますから」
「……気をつけてくださいね」
「ええ、心配要りませんよ」
「……」
「セレス様、ここも危ないです」
「……はい」
確かに、この山道は歩きづらい。
とはいえ、さっきから心配しすぎだろ。
特にシア。
セレスさんが意識を取り戻してから、過保護の度合いが凄いことになってるぞ。
まあなぁ。
今もまだ記憶が曖昧のようだし、たまに頭痛もするみたいだから。
心配になるのも理解できるんだけどよ。
セレスさんは、コーキと2人でテポレン山を越えた経験があるんだぜ。
この程度の道なら、まだ平気だと思うぞ。
「ここ、滑りますので」
「……はい」
っと、危ねえ!
こっちが足を滑らすとこだった。
「……」
やっぱり、注意が必要だな。
しばらく狭くて急な斜面が続き、セレスさんの顔に疲れの色が見え始めた頃。
ようやく視界が開けてきた。
これなら、高い空も眺めることができる。
「セレス様、道が広くなりましたよ」
「はあっ、はあっ……。良かったです」
「セレス様!」
セレスさんの息が上がっている。
ちょっと休んだ方がいいか。
ここもそれなりに道幅があるが、この坂の向こうは木々も途切れ平坦な地面が広がっているように見える。
なら、そこで。
「セレスティーヌ様、この先に良い場所があります。そこで休憩いたしましょう」
「……はい。お願いします、隊長さん」
俺が言うまでもなかったな。
坂を越えると。
隊長の言葉通り、そこは四方に開けた小さな広場のようになっていた。
「ほう……」
ここまで続いた深緑が嘘のように、この辺りだけ木々が綺麗に切り取られている。
剛毛を剃り上げられたダブルヘッドの柔肌って感じだぜ。
まさに休憩地だな。
「セレス様、こちらにどうぞ」
「ありがと、シアさん」
ちょうどいい岩に腰を下ろすセレスさん。
明らかにホッとしている。
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しかし、ここでしばらく休憩するのなら。
「セレスさん、少し周囲を探ってきますよ」
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