30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

エビルズピーク 3

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<剣姫イリサヴィア視点>



 目の前には、巨体を誇るブラッドウルフが2頭。

「グルゥ……」

「グルルゥ……」

 こちらを値踏みするように、ゆっくりと眺めている。

 と!

「グロォ!」

「グルゥ!」

 ブラッドウルフが二手に分かれた。
 挟撃するつもりか。

「イリサヴィアさん!」

「ああ、右手は私が相手しよう。左の1頭は貴君らに任せたぞ」

「助かります! こっちは任せてください」

 さすがにブラッドウルフ2頭の相手を、彼らだけに押し付けるわけにはいかない。

「剣姫さんがいりゃ、あっちは問題ねえ」
「おう、俺らは1頭倒せばいいだけだ」

「こっちは10人いるんだ。ブラッドウルフの1頭くらい何とかなんだろ」
「だな!」

「やれるぞ!」
「ああ!」

 ブラッドウルフを前にしても、士気は衰えていない。


「待てよ、もう少しだ……よし、放て!」

「ファイヤーボール!」
「アイスアロー!」

「次は前衛、攻撃開始だ。ただし、あいつは硬いからな。注意しろよ」

「「「「「おうっ!!」」」」」


 何とかやれそうだな。
 なら、こっちはこっちで責任を果たすとしよう。

「グルルルゥ」

 ブラッドウルフは単体であっても、冒険者に恐れられるほどの魔物。
 知能もある。
 並の魔物ではないが。
 残念ながら、今回は相手が悪かったと諦めてもらおう。

「グロォォォ!」

 地響きを立てて迫りくるブラッドウルフ。
 対処はこうだ。

 猛烈な突進を右に避け、すれ違いざまに剣を入れる。

「ギャン!」

 首筋に入った剣は、ブラッドウルフの体表を斬っただけ。
 まったく駄目だな。

「グルゥゥ……」

 ブラッドウルフの特徴。
 それはその素早さと表皮の硬さ。

 普通に振るう程度では、私の愛剣であっても簡単に切り裂くことはできない。

「グルァァ!!」

 再びの突進。
 また右に避けるが、ブラッドウルフも読んでいたのか?
 こちらに向かって方向を変え、飛びかかって来た!

 素晴らしい反応だ。
 が、足りないな。
 今度は左に避け、剣を振るう。

「ギャワン!!」

 悪くない手応え。
 それでも、致命傷には至ってない。

「グルゥゥ……」

 こちらを警戒するように距離を取り、動きを止めるブラッドウルフ。

「……」

 ゆっくり相手をする場面でもないか。
 仕方ない。

 体内の魔力を整え……。
 右手に流す。
 そのまま魔力を愛剣に移動。
 表面を覆い。
 均一化……。

 完了!

「グルゥ」

 もう、きさまに勝ち目は微塵もないぞ。
 次で最後だ。

「グロォォ!!」

 3度目の突進は跳躍?

 空中を飛びかかってくるブラッドウルフ。
 その巨体の前に体をさらし。
 振るわれたブラッドウルフの右腕をギリギリで躱す。

 そして!
 斬り上げる!

 ブラッドウルフの体の下から真上への一撃。

 ザンッ!!

 魔力で完璧に強化された魔剣ドゥエリンガーがブラッドウルフを切り裂く!

 ブラッドウルフは跳躍を終え着地。
 が……。

 足を止め。
 血飛沫をあげ。

 首が……落ちる。

 ドッシーン!!

 ブラッドウルフがミルトの地に沈んだ。


 さて。
 こちらは片付いたが、メルビンたちの戦いは?

「真下から斬り上げたぞ!」
「ああ、しかも一撃だ!」

「あの体勢で一振りかよ?」
「ブラッドウルフを簡単に?」

「嘘だろ?」
「いやいや、あの剣姫だぞ」
「さすがだぜ!」

「おい、余所見すんな。集中しろ!」

「「「「「「お、おう」」」」」」


 ブラッドウルフを相手にしながら、この余裕。
 やはり彼らの実力は3級より上、か。

 とはいえ、まだ時間はかかりそうだ。
 攻撃面が物足りないからな。

 10人が巧みに連携してブラッドウルフの攻撃を凌いでいるものの、あの硬い表皮を破る決め手の一撃がない。

 となると、急所を集中的に叩いて倒しきるしかないのだが……。

 相手は素早いブラッドウルフ。
 そう簡単ではないだろう。


「手を貸そうか?」

 指揮を執るメルビンの背後から問いかけてみる。

「それはありがたいですが……。やれるところまで我々だけでやってみますよ」

「……」

「ただし、危なくなったらお願いします」

「……うむ」

 メルビンという男、必要以上に私を頼ろうとはしない。
 かといって、こちらに無頓着なわけでもない。
 バランスをとって状況を見極め、適宜行動している。

 やはり、凡庸な冒険者とは出来が違う。

 2日同行しただけでも、その力量、心根が見て取れるな。
 一団を率いるに十分な器の持ち主だ。

「……」

 今回の依頼。
 黒晶宮での仕事のついでに止む無く引き受けることになったミッドレミルト行。
 正直乗り気ではなかったが……。



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