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第11章 陰謀編
蒼珠
しおりを挟む<ヴァーンベック視点>
澱みが薄れ始めている?
「なっ!」
そう感じた次の瞬間、黒球のような澱みが完全に消え失せてしまった。
今はもう、あの禍々しさが嘘だったように通常の廊下に戻っている。
もちろん、そこにはギリオンの背中も。
「無事か、ギリオン?」
足を止めた俺の横をヴァルターが通り過ぎていく。
「おう、平気だ」
ヴァルターに応えるギリオンは余裕の表情。
ただし、頬には裂傷が見えている。
「怪我してんじゃねえか?」
「ちっと切れただけだ。大したことねえ」
確かに、深くはないが。
「顔を出せ、治療してやる」
「必要ねえ。唾でもつけときゃ直んだ、こんなのはよ」
本人がそう言うなら……問題はないか。
「それで、何があった?」
「中に入ったら、目の前に蒼い珠が見えてな」
黒球の澱みの中に蒼い珠?
「どうにも怪しいもんで、斬りつけてやったら……こうなっちまった」
「調べもせずいきなり斬りつけたのかよ」
「けっ、オレがどう調べるってんだ?」
それはまあ、そうなんだが。
「斬るのが手っ取り早いじゃねえか」
「……破壊したんだな?」
さっきの音は蒼珠を斬った音なんだろう。
なら、破壊できたはず。
「ん……多分?」
「多分とは?」
「手応え的には完璧だったんだけどよ、珠が残ってねえんだわ」
「蒼珠を叩き斬ったのに、残骸が残ってないと?」
「そういうこった」
「……」
ギリオンの感覚としては十分な手応えがあった。こちらもその破壊音を聞いている。なのに、蒼珠の欠片すら見当たらない。黒い澱みと同時に消えてしまった。
「あり得ないな」
どう考えても普通じゃない。怪しすぎる。
「そうだ、あり得ねえ。けど、現実がこれだからよ」
「……」
「ところでギリオン、頬の傷は蒼珠を斬りつけた時のものだな?」
現状に戸惑う俺たちを尻目に通路を確認していたヴァルターがギリオンに問いかけてきた。
「おう、あん時だぜ」
「ならば、蒼珠の欠片が頬を裂いたんだろう」
欠片が飛び散り頬を浅く切り裂いたとヴァルターは踏んでいるのか?
ただ……。
「その珠の欠片が見当たらねえからなぁ」
「確かに、蒼珠の欠片すら残っていない。それでもだ、この壁を見てみろ」
ヴァルターが指さしたのはギリオンの後ろの壁面。
そこを確認してみると。
「跡があんぞ」
壁面に見えたのは何かが突き刺さったような痕跡。
しかも、真新しい。
「状況からして、蒼珠の欠片が刺さったと考えられる」
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