30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

人為的?


<ヴァーンベック視点>



 壁面の痕跡は蒼珠の欠片によってできたもの。

 ヴァルターの指摘を聞けば、それが真実だとしか思えない。
 とはいえ、蒼珠が消えた現実に変わりはないんだぞ。

「んで、直後に消えたってか?」

「そう考えるのが妥当だな」

「ってこたぁ?」

「蒼珠が物体として存在していたのは間違いない」

 なるほど。

「蒼珠は霊的や魔力的なものではなく、物質として存在していたということですね?」

 ヴァルターが言いたかったのはこれか。

「うむ」

「なら、魔道具や宝具である可能性も。自然発生ではなく、誰かが持ち込んだ可能性も?」

「……そうだな」

 ヴァルターが存在を知らない宝具。
 そんなものが、一般の通路に設置されていた。
 常識的には考えられないことだ。
 が、この現実の前では常識なんて消し飛んじまう。

「問題は誰が、なぜ、どういった意図でこの通路に設置したかだが……?」

 答えなんて俺たちに分かるわけもない。
 それでも、考えずにはいられないだろ。

「……」
「……」
「……」

 通路に沈黙だけが流れていく。
 ただ、その時間はほんの僅かなものにすぎなかった。

 なぜなら、アレが再び漂ってきたからだ。

「おい、おい」

 最初はさっきの残滓かと感じる程度だった。
 が、僅かな間に。

「またかよ」

 ギリオンにも感知できるほどに濃密さが増したなれば、もう間違いない。

「終わりじゃなかったみたいだな」

「ちっ……左か、ヴァーン?」

「ああ、角の左だ」

 前回と同じ。
 前方の角を曲がった先から漂ってくる。

「こうなりゃ、何度でも叩き壊してやるぜ」

 宣言するやいなや、ギリオンが軽い足取りで飛び出していく。
 俺とヴァルターも数歩遅れて駆け出す。

 あっという間に角に到着、そこを曲がると。
 予想通り、黒い澱みが通路を覆っていた。

「じゃ、行ってくっからよ。おめえらは待ってろよ」

「いや、今回は一緒に行こう。蒼珠を破壊する前に調べたいからな」

 ヴァルターの言う通り。
 可能なら色々と調べたい。

「俺も入るぞ」

「……勝手にしろ」

 ということで、3人そろって黒い澱みの中に足を踏み入れようとした、その時。

「オオォォ……」

 澱みから鈍い音が響いてきた。

「何の音だ?」

「ォォォ……」

 1度目は聞こえなかった不気味な音。
 ただし、中に入ったギリオンなら聞いた可能性もある。

「さっきの澱みの中では聞こえたか、ギリオン?」

「いんや、聞いてねえ」

 ギリオンも聞いてない。
 今回が初。

「だったら、前回とは状況が異なる。慎重にいくぞ」

「りょうか……ん??」

「グゥルゥオ&$#@!!」

 澱みから響く音量が増した。
 これは、魔物や獣に近い咆哮だ。

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