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第99話 楽園への帰還
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俺たちが王都を旅立つ日、空は雲一つなく晴れ渡っていた。
王宮の門前には国王陛下をはじめ、アルフォンス副団長率いる王国騎士団が最敬礼をもって俺たちを見送るために整列していた。その光景は俺たちがこの王都に到着した日とは全く違う、心からの敬意と感謝に満ちていた。
「リアム殿、そして英雄の皆様。このご恩は生涯忘れませぬ。どうか、道中ご無事で」
アルフォンスが騎士として力強く、そして少しだけ寂しそうに言った。
「ええ。あなた方も、この国の再建を頑張ってください」
俺は彼と固い握手を交わした。
国王は多くを語らなかった。ただ俺たちの前に立ち、深く、深くその頭を下げただけだった。その無言の礼が何よりも雄弁に彼の感謝の気持ちを物語っていた。
俺たちの周りには黒山の人だかりができていた。王都の民衆が俺たちの旅立ちを一目見ようと集まっていたのだ。彼らはもはや熱狂的な歓声を上げることはなかった。ただ静かに涙を浮かべながら、俺たちに手を振っている。
「聖女様、どうかお元気で」
「リアム様、エデンにいつか遊びに行ってもいいですか?」
その温かい声援の一つ一つに、俺たちは笑顔で応えた。
「――さあ、行こうか」
俺の合図でアイリスがフレアを呼んだ。
広場に舞い降りた真紅の竜の姿に、民衆から最後のため息のような歓声が上がる。
俺たちは次々とフレアの背へと乗り込んでいった。
そして最後に俺が乗り込むと、アイリスが快活な声を上げた。
「みんな、またねー! エデン航空、故郷へ向けて出発進行!」
「グルルルルルッ!」
フレアが喜びの咆哮を上げると、その巨大な翼が力強く風を捉えた。
俺たちの身体はふわりと宙に浮き、見送る人々が見守る中、王都の上空へと舞い上がっていく。
眼下に巨大な王都の全景が広がっていく。
俺が絶望の中で追放された街。
そして仲間たちと共に絶望から救った街。
その光景は俺の心に万感の思いを刻みつけていた。
「……さよならだ」
俺は誰に言うでもなく小さく呟いた。
もう二度とこの場所に戻ってくることはないだろう。
フレアは大きく旋回すると西へ、俺たちの故郷エデンがある方角へとその進路を取った。
王都の喧騒が急速に遠ざかっていく。
代わりに頬を撫でる風の音と、仲間たちの安堵に満ちた声が聞こえてくる。
「はぁー、終わったわね。王都なんて息が詰まる場所だったわ」
ルナリエルが心底うんざりしたように髪をかき上げた。
「ですが、皆さんがご無事で本当によかったですわ。リアム様も、もう無理はなさらないでくださいね」
セレスティアが俺の身体を気遣うように優しく言った。
「早く帰って村のみんなにお土産話をしたいです! ギデオンさんのお店で買った珍しいお菓子もあるんですよ!」
アイリスが子供のようにはしゃいでいる。
「……王都の図書館は実に興味深い蔵書の宝庫でした。いずれ正式な手続きを踏んで閲覧許可を申請してみるのも一興かもしれませんね」
ソフィアが早くも次の知的好奇心に胸を躍らせている。
「……リアム殿。俺はお前についてきて本当によかった」
ダリウスがただ一言、無骨な、しかし心の底からの言葉を漏らした。
俺はそんな仲間たちの声を聞きながら目を閉じた。
戦いは終わったのだ。
これから俺たちを待っているのは銃声も悲鳴も呪いもない、穏やかで温かい日常だけだ。
その事実が俺の心をこれ以上ないほどの幸福感で満たしていた。
半日後。
俺たちの視界の先に見慣れた緑の森が広がってきた。
その中心に、まるで森と一体化するように美しい町並みが夕日に照らされて黄金色に輝いている。
エデンだ。
俺たちの故郷。
フレアが帰還を告げるように高らかな咆哮を上げた。
その声に気づいたのだろう。
町の中心にある鐘楼から、カン、カン、カンと歓迎の鐘の音が高らかに鳴り響いた。
町の門が大きく開かれる。
そしてそこから、村人たちがまるで堰を切ったかのように溢れ出してきた。
フレアがゆっくりと広場へと舞い降りる。
俺たちがその背から地上へと降り立った瞬間。
「「「おかえりなさーい!!」」」
村人たちの心の底からの温かい声が、俺たちを包み込んだ。
村長が、タロウが、ギデオンさんが、そして村の子供たちが。
全員が涙を浮かべ、満面の笑みで俺たちの帰りを迎えてくれたのだ。
「リアム様! ご無事で……!」
「ルナリエル様、かっこよかったって噂で聞きましたよ!」
「アイリスお姉ちゃん! お土産は!?」
人々が俺たちを取り囲み、その無事を心から喜んでくれている。
もみくちゃにされながら、俺はようやく実感した。
帰ってきたのだ、と。
俺が本当に帰りたかった場所へ。
俺は仲間たちと顔を見合わせた。
彼女たちの顔にも俺と同じ最高の笑顔が咲き誇っていた。
ここは王都ではない。
富も名声も地位もここにはない。
だが、ここにはそれら全てよりも遥かに尊いものがある。
俺は俺たちを出迎えてくれる愛するべき『家族』たちに向かって、少しだけ照れくさく、しかしはっきりと告げた。
「――ただいま」
その一言に全てが込められていた。
王宮の門前には国王陛下をはじめ、アルフォンス副団長率いる王国騎士団が最敬礼をもって俺たちを見送るために整列していた。その光景は俺たちがこの王都に到着した日とは全く違う、心からの敬意と感謝に満ちていた。
「リアム殿、そして英雄の皆様。このご恩は生涯忘れませぬ。どうか、道中ご無事で」
アルフォンスが騎士として力強く、そして少しだけ寂しそうに言った。
「ええ。あなた方も、この国の再建を頑張ってください」
俺は彼と固い握手を交わした。
国王は多くを語らなかった。ただ俺たちの前に立ち、深く、深くその頭を下げただけだった。その無言の礼が何よりも雄弁に彼の感謝の気持ちを物語っていた。
俺たちの周りには黒山の人だかりができていた。王都の民衆が俺たちの旅立ちを一目見ようと集まっていたのだ。彼らはもはや熱狂的な歓声を上げることはなかった。ただ静かに涙を浮かべながら、俺たちに手を振っている。
「聖女様、どうかお元気で」
「リアム様、エデンにいつか遊びに行ってもいいですか?」
その温かい声援の一つ一つに、俺たちは笑顔で応えた。
「――さあ、行こうか」
俺の合図でアイリスがフレアを呼んだ。
広場に舞い降りた真紅の竜の姿に、民衆から最後のため息のような歓声が上がる。
俺たちは次々とフレアの背へと乗り込んでいった。
そして最後に俺が乗り込むと、アイリスが快活な声を上げた。
「みんな、またねー! エデン航空、故郷へ向けて出発進行!」
「グルルルルルッ!」
フレアが喜びの咆哮を上げると、その巨大な翼が力強く風を捉えた。
俺たちの身体はふわりと宙に浮き、見送る人々が見守る中、王都の上空へと舞い上がっていく。
眼下に巨大な王都の全景が広がっていく。
俺が絶望の中で追放された街。
そして仲間たちと共に絶望から救った街。
その光景は俺の心に万感の思いを刻みつけていた。
「……さよならだ」
俺は誰に言うでもなく小さく呟いた。
もう二度とこの場所に戻ってくることはないだろう。
フレアは大きく旋回すると西へ、俺たちの故郷エデンがある方角へとその進路を取った。
王都の喧騒が急速に遠ざかっていく。
代わりに頬を撫でる風の音と、仲間たちの安堵に満ちた声が聞こえてくる。
「はぁー、終わったわね。王都なんて息が詰まる場所だったわ」
ルナリエルが心底うんざりしたように髪をかき上げた。
「ですが、皆さんがご無事で本当によかったですわ。リアム様も、もう無理はなさらないでくださいね」
セレスティアが俺の身体を気遣うように優しく言った。
「早く帰って村のみんなにお土産話をしたいです! ギデオンさんのお店で買った珍しいお菓子もあるんですよ!」
アイリスが子供のようにはしゃいでいる。
「……王都の図書館は実に興味深い蔵書の宝庫でした。いずれ正式な手続きを踏んで閲覧許可を申請してみるのも一興かもしれませんね」
ソフィアが早くも次の知的好奇心に胸を躍らせている。
「……リアム殿。俺はお前についてきて本当によかった」
ダリウスがただ一言、無骨な、しかし心の底からの言葉を漏らした。
俺はそんな仲間たちの声を聞きながら目を閉じた。
戦いは終わったのだ。
これから俺たちを待っているのは銃声も悲鳴も呪いもない、穏やかで温かい日常だけだ。
その事実が俺の心をこれ以上ないほどの幸福感で満たしていた。
半日後。
俺たちの視界の先に見慣れた緑の森が広がってきた。
その中心に、まるで森と一体化するように美しい町並みが夕日に照らされて黄金色に輝いている。
エデンだ。
俺たちの故郷。
フレアが帰還を告げるように高らかな咆哮を上げた。
その声に気づいたのだろう。
町の中心にある鐘楼から、カン、カン、カンと歓迎の鐘の音が高らかに鳴り響いた。
町の門が大きく開かれる。
そしてそこから、村人たちがまるで堰を切ったかのように溢れ出してきた。
フレアがゆっくりと広場へと舞い降りる。
俺たちがその背から地上へと降り立った瞬間。
「「「おかえりなさーい!!」」」
村人たちの心の底からの温かい声が、俺たちを包み込んだ。
村長が、タロウが、ギデオンさんが、そして村の子供たちが。
全員が涙を浮かべ、満面の笑みで俺たちの帰りを迎えてくれたのだ。
「リアム様! ご無事で……!」
「ルナリエル様、かっこよかったって噂で聞きましたよ!」
「アイリスお姉ちゃん! お土産は!?」
人々が俺たちを取り囲み、その無事を心から喜んでくれている。
もみくちゃにされながら、俺はようやく実感した。
帰ってきたのだ、と。
俺が本当に帰りたかった場所へ。
俺は仲間たちと顔を見合わせた。
彼女たちの顔にも俺と同じ最高の笑顔が咲き誇っていた。
ここは王都ではない。
富も名声も地位もここにはない。
だが、ここにはそれら全てよりも遥かに尊いものがある。
俺は俺たちを出迎えてくれる愛するべき『家族』たちに向かって、少しだけ照れくさく、しかしはっきりと告げた。
「――ただいま」
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