隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ

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第48話 二人三脚の始まり、あるいは放課後の秘密

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文化祭実行委員長・雪城冬花、そしてその副委員長・相沢優斗。
その誰もが予想し、そして誰もが納得した(俺以外は)新体制が発足してから、俺の日常はまたしても一変した。
放課後の時間は、全て文化祭の準備に捧げられることになったのだ。

「では、第一回実行委員会を始めます」
放課後の教室。
雪城さんは教壇の前に立ち、完璧なまでの落ち着き払った態度でそう宣言した。
その手には既に製本された分厚い企画書が握られている。表紙には『クラス2-A お化け屋敷企画・基本設計書』と、例の如く美しい明朝体で印字されていた。仕事が早すぎる。
「まず、本日決定すべきは、全体コンセプト、および各セクションの担当者割り振りです」
彼女は教室内を見渡すと、企画書の一ページを黒板に貼り付けた。
そこには教室の見取り図と共に、お化け屋敷のルート案が既に詳細に描き込まれている。
入口から出口まで、驚かすポイント、BGMの指示、照明の角度に至るまで、全てが緻密に計算され尽くしていた。
「……すげえ。もう、全部できてるじゃん」
陽平が感嘆の声を漏らす。クラスメイトたちも、その完璧すぎる設計書にただただ圧倒されていた。
「これは、あくまで叩き台です。皆さんの意見を取り入れ、より良いものにしていきたいと考えています」
彼女はそう言うが、その完璧な企画書に意見を挟める者などどこにもいなかった。

彼女のリーダーシップは圧巻だった。
クラスメイト一人一人の性格と得意分野を、まるで全て知っているかのように的確に役割を割り振っていく。
「手先の器用な佐藤さんと、美術部の中村さんは、小道具作成チームのリーダーをお願いします」
「声の大きい鈴木くんと、演劇部の加藤さんは、脅かし役の演技指導を」
「陽平くんと天宮さんは、そのコミュニケーション能力を活かして、広報および他クラスとの渉外担当に」
誰もが自分の適性に合った役割を与えられ、不満の声を上げる者はいなかった。
むしろ、クラス全体が彼女のその手腕に尊敬の念すら抱き始めている。
氷の女王は、いつしかクラスを導く絶対的なカリスマ指導者となっていた。

そして、俺の役割はというと。
「副委員長の相沢くんには、私の補佐として、全体の進捗管理と、各セクション間の調整役をお願いします」
つまり、彼女の側近として全ての雑務をこなせ、ということだ。
俺はため息をつきながらも、その役割を受け入れるしかなかった。

その日から、俺と雪城さんの二人三脚の日々が始まった。
昼休みには各チームのリーダーを集めて進捗確認会議。
放課後はクラスに残って、その日の作業の監督と翌日の準備。
クラスメイトたちがわいわいと楽しそうに作業しているのを横目に、俺たちは教室の隅で黙々と事務作業に没頭した。
買い出しリストの作成、予算の管理、シフト表の調整。
地味で目立たない仕事ばかり。だが、俺はそれが不思議と苦ではなかった。
なぜなら、俺の隣には常に彼女がいたからだ。

「優斗さん、ここの予算計算、少し違っています」
「あ、本当だ。悪い」
「いえ。未来のあなたはもっと壊滅的に数字に弱かったので、これくらいは想定内です」
「……それは、どうも」
そんな軽口を叩き合いながら、二人で一つの机に向かう。
その距離はいつも近くて、時々肩が触れ合った。
そのたびに、俺の心臓は小さく跳ねる。
他のクラスメイトたちが帰ってしまい、静かになった放課後の教室。
そこに二人きり。
夕日が差し込み、彼女の銀色の髪をオレンジ色に染め上げる。
そのあまりにも美しい横顔を、俺は何度盗み見たことだろうか。
それは誰にも邪魔されない、俺と彼女だけの秘密の時間だった。
大変だけど、忙しいけど、でもこんな毎日がずっと続けばいいのに。
俺はそんなことを本気で考え始めていた。

その日も俺たちは、最後まで教室に残って作業をしていた。
他の生徒たちはとうに帰り、校舎はシンと静まり返っている。
「よし、今日の分はこれで終わりだな」
俺が大きく伸びをすると、彼女も「お疲れ様でした」と小さく息をついた。
その表情には、さすがに少し疲れの色が見える。
「お前も、疲れただろ。毎日、大変もんな」
俺が労いの言葉をかけると、彼女は少しだけ意外そうな顔をした。
そして、ふっと柔らかく微笑む。
「……いいえ。大変だとは、思いません」
彼女は窓の外、茜色に染まる空を見つめながら言った。
「未来では、叶わなかったことですから」
「え?」
「こうして、あなたと二人で同じ目標に向かって何かを創り上げること。未来の私たちは、学生時代にそんな経験をすることができなかった」
彼女の声には、どこか寂しげな響きがあった。
「だから、今、こうしてあなたと二人で放課後の教室で過ごすこの時間が……私にとっては、何よりも大切で、幸せなんです」
彼女はこちらを振り返ると、はにかむように微笑んだ。
その笑顔は、今まで見た中で一番自然で、一番穏やかで。
俺は、その笑顔に完全に心を奪われた。
心臓がぎゅっと甘く締め付けられる。
俺はもう何も言えなかった。
ただ、彼女のその笑顔を永遠に見ていたいと、強く、強く、願った。

静かになった教室に、俺たちの穏やかな沈黙だけが流れる。
この二人だけの特別な時間。
それはお化け屋敷の完成よりも、文化祭の成功よりも、ずっとずっと価値のある宝物のような時間だと、俺は感じていた。
二人三脚の毎日はまだ始まったばかり。
これから先、どんな困難が待っていようと、彼女と一緒ならきっと乗り越えられる。
俺はそんな確信を胸に、茜色の空を見つめる彼女の美しい横顔を、ただじっと見つめ続けていた。
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