隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ

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第47話 女王の戴冠、あるいは不本意な副委員長

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クラスの出し物が「お化け屋敷」に決定したはいいものの、そこから先が全く進まなかった。
「で、誰が実行委員やるんだ?」
タナチューのその一言で、さっきまでの熱気はどこへやら、教室は気まずい沈黙に包まれた。誰もが面倒な役目を押し付け合うまいと、必死に目を逸らしている。
お化け屋敷は、企画や内装、脅かし役のシフト管理まで、やらなければならないことが山積みだ。その中心となる実行委員長など、貧乏くじ以外の何物でもない。

「じゃあ、俺がやるよ!」
その空気を破ったのは、意外にも陽平だった。
「陽平が?」「お前、そういうの面倒くさがるタイプじゃん」
友人たちが驚きの声を上げる。
「まあな。でも、誰もやんねえなら、文化祭失敗すんだろ。それは嫌だからな」
陽平はお調子者だが、こういう時にクラスのことを考えられる男だ。
「私も、手伝うよ! 陽平くん一人じゃ大変だろうし」
続いて、天宮さんも優しく微笑みながら手を挙げた。
クラスのムードメーカーと、絶対的アイドルの立候補。これで決まりか、とクラスの誰もが思った、その時だった。

「その人選では、非効率的です」

凛とした氷のように冷たい声が、教室の空気を切り裂いた。
声の主は、もちろん雪城冬花だった。
彼女は腕を組んだまま、静かに立ち上がった。クラス中の視線が、彼女一人に集まる。
陽平が、少しむっとした顔で言い返した。
「なんだよ、雪城さん。非効率的ってどういう意味だよ」
「赤坂くん、あなたは発想力と行動力には優れていますが、緻密な計画性に欠ける。天宮さんは、人心掌握能力は高いですが、非情な決断を下すことができない。この二人のリーダーシップでは、必ず計画に遅延が生じ、他のクラスメイトに不公平な負担がかかるでしょう。未来のデータが、そう示しています」
淀みない口調で、完璧な分析。
陽平も天宮さんも、ぐっと言葉に詰まっている。図星だったのだろう。
教室が再び静寂に包まれた。彼女の言う通りだ。だが、じゃあ一体、誰がやるというのか。
誰もがそう思った、その時。

「じゃあ、雪城さんがやればいいじゃん!」

声を上げたのは、他ならぬ陽平だった。
彼は自分の欠点を指摘されたにもかかわらず、怒るどころか、むしろ感心したような顔で冬花を見ていた。
「お前なら、完璧な計画立てて、全部うまくやってくれそうだもんな!」
その言葉に、クラス中がざわめいた。
「え、雪城さんが委員長?」「想像つかない……」
だが、そのざわめきはすぐに期待へと変わっていった。
「……確かに、雪城さんなら、すごいクオリティのお化け屋敷作りそう」
「うん。なんか、本物のお化け呼び寄せたりして」
「氷の女王様プロデュースのお化け屋敷、逆にめちゃくちゃ行ってみたくない!?」
風向きが一気に変わった。
天宮さんも、ぱっと顔を輝かせて言った。
「私も、賛成! 雪城さんなら、きっと、みんなが驚くような、素敵なものを作ってくれると思うな!」
クラスの二大巨頭である陽平と天宮さんからの推薦。もはや、流れは決まったようなものだった。
クラス中の期待の視線が、雪城さん一人に集まる。
彼女はそんな視線をものともせず、静かに、そして堂々と宣言した。

「承知しました。私が、実行委員長を務めます」

女王の戴冠の瞬間だった。
教室が、わっと歓声に包まれる。
だが、彼女はその歓声を、すっと右手を上げて制した。
「ただし、条件があります」
静まり返る教室。
彼女は、その氷の瞳でクラスの生徒一人一人を見回した。そして最後に、その視線を俺の上でぴたりと止めた。
嫌な予感がした。全身の毛が逆立つような、強烈な予感。

「私の計画遂行を、公私にわたって全面的にサポートしてくれる、副委員長を一人、私が指名させていただきます」

彼女の白く細い指先が、ゆっくりと持ち上がる。
そして、その指は寸分の狂いもなく、俺を真っ直ぐに指し示した。

「副委員長は、相沢優斗さんにお願いします」

時が止まった。
そして次の瞬間、クラス中から「やっぱりな」「知ってた」「お幸せに」という、納得と生暖かい祝福の嵐が俺に降り注いだ。
「え、あ、ちょ、俺!?」
俺は椅子から飛び上がらんばかりに驚愕した。
なんで俺なんだ! 俺はただ、その他大勢として黒いビニールシートでも貼っているだけでよかったのに!
俺が必死に断りの言葉を探していると、雪城さんが俺の隣までやってきた。
そして、俺にしか聞こえない声で囁く。
「これは、決定事項です。拒否権はありません」
「な、なんでだよ!」
「未来のあなたは、常に私の右腕でした。仕事のパートナーとしても、人生のパートナーとしても。ですから、この再現は私たちの未来のために、必要不可可決なプロセスなのです」
そのあまりにも理不尽で、あまりにも個人的な理由。
俺は、もう何も言い返すことができなかった。
陽平が、遠くから「ご愁傷さまー」と笑いながら手を振っている。裏切り者め。

こうして俺は、本人の意思を完全に無視する形で、お化け屋敷実行委員会の副委員長という重責を担うことになってしまった。
俺の穏やかで平穏な二学期は、どこへ行ってしまったのだろうか。
「これから、忙しくなりますね、優斗さん」
目の前で、新しく戴冠した女王様は満足げに微笑んでいた。
その笑顔は、これからの苦難を予告する悪魔の微笑みのようでもあり、二人で何かを成し遂げられるという喜びに満ちた天使の微笑みのようでもあった。
「最高の文化祭にしましょう。二人で」
彼女のその言葉に、俺は深いため息と共に、ただ頷くことしかできなかった。
これから始まる彼女との二人三脚の日々。
それが、どれほど大変で、そしてどれほど甘い時間になるのか。
この時の俺は、まだ知る由もなかった。
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