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第5話:規格外のポーション
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翌朝。俺は夜明けと共に目を覚まし、真っ先に畑へと向かった。
昨夜、マナウォーターを撒いた場所。そこに何か変化が起きているかもしれないという期待が、俺を突き動かしていた。
畑に足を踏み入れた瞬間、俺は息を呑んだ。
土の色が、明らかに昨日よりも濃くなっている。黒々とした大地はしっとりと潤い、まるで呼吸しているかのように生命力に満ち溢れていた。手ですくってみると、ふかふかと柔らかく、指の間から極上の土の香りが立ち上る。
「すごい……一晩でここまで変わるのか」
マナウォーターの効果は絶大だった。これなら、どんな種を蒔いても元気に育つだろう。俺は自分の土地が持つ無限の可能性に、改めて興奮を覚えた。
拠点に戻り、簡単な朝食を済ませると、俺は昨日ダンジョンから持ち帰った収穫物に向き合った。特に気になるのは、あの『ポーション草』だ。
すり潰すだけで傷を癒やす効果があるのは確認済みだ。だが、これを本格的な回復薬、つまりポーションとして完成させることはできないだろうか。
俺は石皿の上にポーション草の葉を数枚置き、石ですり潰していく。すぐに鮮やかな緑色の液体が滲み出てきた。爽やかな香りが周囲に漂う。
「これだけでも効果はある。でも……」
俺は水筒に入れておいたマナウォーターを、すり潰した葉に数滴垂らしてみた。
その瞬間だった。
パァッ、と緑色の液体が淡い光を放った。まるでホタルが集まったかのような、幻想的な輝き。光はすぐに収まったが、液体の色は先ほどよりもずっと深く、濃いエメラルドグリーンに変わっていた。香りも一層強くなっている。
「これは……間違いなく何か変化が起きたな」
俺は完成した液体を、荷物の中から見つけた空の小瓶に慎重に移した。ガラス瓶の中で、それは宝石のようにきらめいている。見た目だけなら、王都の高級店で売られているエリクサーにも引けを取らないだろう。
問題は、その効果だ。
指先の切り傷は昨日治してしまった。もっと分かりやすい傷で試す必要がある。
俺は覚悟を決め、腰のショートソードを抜くと、鞘から出したナイフで左腕の前腕を浅く切りつけた。
チリッとした痛みが走り、赤い線が浮かび上がる。そこから、ぷくりと血の玉が滲み出てきた。
「よし……」
震える手で小瓶の蓋を開け、中の液体を傷口に一滴だけ垂らす。
「――っ!」
信じられない光景が目の前で起こった。
液体が傷に触れた瞬間、シュワッと微かな音を立て、傷口が緑色の光に包まれた。痛みは一瞬で消え去り、光が消えた後には、傷ひとつない元のきれいな肌があるだけだった。血の跡すら残っていない。
「嘘だろ……」
俺は自分の腕を何度も撫でた。夢じゃない。現実だ。
「竜の牙」にいた頃、俺たちはAランクパーティとして最高級のポーションを使っていた。それでも、これほどの傷を癒やすには数分はかかったし、治った後も数日は傷跡が残った。聖女セレスティアが使う下級の回復魔法でも、効果は似たようなものだった。
だが、今俺が作ったこのポーションは、それらを遥かに凌駕している。治癒速度、完全性、どれをとっても比較にならない。まさに規格外の性能だ。
「ポーション草と、マナウォーター……。この二つを組み合わせることで、とんでもないものが生まれるのか」
俺は小瓶を握りしめた。これがどれほどの価値を持つか、冒険者だった俺には痛いほど分かる。
高難易度のダンジョンに挑む冒険者にとって、高品質なポーションは命綱だ。致命傷さえ瞬時に治せる薬があるなら、どんな大金でも払うだろう。貴族や金持ちだって、万が一の時のために欲しがるに違いない。
これが、新たな生活の糧になる。
確信が、胸の奥から湧き上がってきた。
これまでは、自分の畑で採れた作物で自給自足の生活を送れればそれでいいと思っていた。だが、このポーションがあれば、もっと多くのことができる。
資金を稼いで、もっと良い農具を手に入れる。生活を豊かにするための家具や道具も買える。何より、この農園とダンジョンをさらに発展させるための投資ができる。
「テルマの街で、売ってみるか……」
このポーションの価値を確かめたい。そして、俺の新しい人生が、本当にここから始まるのだと実感したかった。
俺は残っていたポーション草をすべて使い、同じ手順でポーションを十数本ほど作り上げた。空き瓶が足りなかったので、水筒も一つ潰して容器にした。見栄えは悪いが、中身は本物だ。
すべてのポーションを布で丁寧に包み、背負い袋に詰める。
クワとシャベルも手に取り、俺は自分の農園を見渡した。
黒々とした大地。その地下に眠る神秘のダンジョン。
「行ってくる」
誰に言うでもなく呟き、俺はテルマの街へと向かって歩き出した。
追放されたあの日、なけなしの金で買った荒れ地。そこは今や、俺にとって無限の可能性を秘めた希望の土地へと変わっていた。
この一歩が、俺の、そしてこの土地の運命を大きく変えることになる。
そんな予感を胸に抱きながら、俺はしっかりと前を見据えていた。
もう、うつむく必要などないのだ。
昨夜、マナウォーターを撒いた場所。そこに何か変化が起きているかもしれないという期待が、俺を突き動かしていた。
畑に足を踏み入れた瞬間、俺は息を呑んだ。
土の色が、明らかに昨日よりも濃くなっている。黒々とした大地はしっとりと潤い、まるで呼吸しているかのように生命力に満ち溢れていた。手ですくってみると、ふかふかと柔らかく、指の間から極上の土の香りが立ち上る。
「すごい……一晩でここまで変わるのか」
マナウォーターの効果は絶大だった。これなら、どんな種を蒔いても元気に育つだろう。俺は自分の土地が持つ無限の可能性に、改めて興奮を覚えた。
拠点に戻り、簡単な朝食を済ませると、俺は昨日ダンジョンから持ち帰った収穫物に向き合った。特に気になるのは、あの『ポーション草』だ。
すり潰すだけで傷を癒やす効果があるのは確認済みだ。だが、これを本格的な回復薬、つまりポーションとして完成させることはできないだろうか。
俺は石皿の上にポーション草の葉を数枚置き、石ですり潰していく。すぐに鮮やかな緑色の液体が滲み出てきた。爽やかな香りが周囲に漂う。
「これだけでも効果はある。でも……」
俺は水筒に入れておいたマナウォーターを、すり潰した葉に数滴垂らしてみた。
その瞬間だった。
パァッ、と緑色の液体が淡い光を放った。まるでホタルが集まったかのような、幻想的な輝き。光はすぐに収まったが、液体の色は先ほどよりもずっと深く、濃いエメラルドグリーンに変わっていた。香りも一層強くなっている。
「これは……間違いなく何か変化が起きたな」
俺は完成した液体を、荷物の中から見つけた空の小瓶に慎重に移した。ガラス瓶の中で、それは宝石のようにきらめいている。見た目だけなら、王都の高級店で売られているエリクサーにも引けを取らないだろう。
問題は、その効果だ。
指先の切り傷は昨日治してしまった。もっと分かりやすい傷で試す必要がある。
俺は覚悟を決め、腰のショートソードを抜くと、鞘から出したナイフで左腕の前腕を浅く切りつけた。
チリッとした痛みが走り、赤い線が浮かび上がる。そこから、ぷくりと血の玉が滲み出てきた。
「よし……」
震える手で小瓶の蓋を開け、中の液体を傷口に一滴だけ垂らす。
「――っ!」
信じられない光景が目の前で起こった。
液体が傷に触れた瞬間、シュワッと微かな音を立て、傷口が緑色の光に包まれた。痛みは一瞬で消え去り、光が消えた後には、傷ひとつない元のきれいな肌があるだけだった。血の跡すら残っていない。
「嘘だろ……」
俺は自分の腕を何度も撫でた。夢じゃない。現実だ。
「竜の牙」にいた頃、俺たちはAランクパーティとして最高級のポーションを使っていた。それでも、これほどの傷を癒やすには数分はかかったし、治った後も数日は傷跡が残った。聖女セレスティアが使う下級の回復魔法でも、効果は似たようなものだった。
だが、今俺が作ったこのポーションは、それらを遥かに凌駕している。治癒速度、完全性、どれをとっても比較にならない。まさに規格外の性能だ。
「ポーション草と、マナウォーター……。この二つを組み合わせることで、とんでもないものが生まれるのか」
俺は小瓶を握りしめた。これがどれほどの価値を持つか、冒険者だった俺には痛いほど分かる。
高難易度のダンジョンに挑む冒険者にとって、高品質なポーションは命綱だ。致命傷さえ瞬時に治せる薬があるなら、どんな大金でも払うだろう。貴族や金持ちだって、万が一の時のために欲しがるに違いない。
これが、新たな生活の糧になる。
確信が、胸の奥から湧き上がってきた。
これまでは、自分の畑で採れた作物で自給自足の生活を送れればそれでいいと思っていた。だが、このポーションがあれば、もっと多くのことができる。
資金を稼いで、もっと良い農具を手に入れる。生活を豊かにするための家具や道具も買える。何より、この農園とダンジョンをさらに発展させるための投資ができる。
「テルマの街で、売ってみるか……」
このポーションの価値を確かめたい。そして、俺の新しい人生が、本当にここから始まるのだと実感したかった。
俺は残っていたポーション草をすべて使い、同じ手順でポーションを十数本ほど作り上げた。空き瓶が足りなかったので、水筒も一つ潰して容器にした。見栄えは悪いが、中身は本物だ。
すべてのポーションを布で丁寧に包み、背負い袋に詰める。
クワとシャベルも手に取り、俺は自分の農園を見渡した。
黒々とした大地。その地下に眠る神秘のダンジョン。
「行ってくる」
誰に言うでもなく呟き、俺はテルマの街へと向かって歩き出した。
追放されたあの日、なけなしの金で買った荒れ地。そこは今や、俺にとって無限の可能性を秘めた希望の土地へと変わっていた。
この一歩が、俺の、そしてこの土地の運命を大きく変えることになる。
そんな予感を胸に抱きながら、俺はしっかりと前を見据えていた。
もう、うつむく必要などないのだ。
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