死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第四十八話 第三階層『竜の巣』

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ナイトメア・アイが浄化され、第二階層『惑わしの森』の呪いは解かれた。
だが、その代償は大きかった。リリアナは覚醒の反動で魔力を一滴残らず使い果たし、その場に崩れ落ちていた。
その顔は青白かったが、表情は不思議と晴れやかだった。

「……無理すんじゃねえよ」
ガロウはぶっきらぼうに言いながらも、その巨大な体で優しく彼女を抱え上げた。
「少し休むぞ。この先に何があるか分からねえ。万全の状態じゃねえと進むのは自殺行為だ」

俺もそれに同意した。
俺たちは森の出口付近にあった小さな洞窟で、野営の準備を始めた。
焚き火の炎が疲弊した俺たちの体を温める。
俺は倒した魔物から手に入れた携帯食料を火で炙り、リリアナに差し出した。

彼女はそれを受け取りながら、小さく「ありがとうございます」と呟いた。
そして、俺の顔をじっと見つめた。
「……ジン様」
「なんだ」
「あの時、私の名を呼んでくださって……嬉しかったです。ジン様の声が私を絶望の淵から引き上げてくれました」

俺は何も答えなかった。
ただ黙って肉を口に運ぶ。
俺が彼女を呼んだのは戦力として必要だったからだ。それ以上でも、それ以下でもない。
だが、その言葉が彼女を救ったというのなら、それはそれで悪くない結果だった。

「へへっ、まったくだぜ」
ガロウが豪快に笑う。
「お前が目を覚ましてくれなきゃ、俺たち二人、あのデカい目玉に精神を喰われて終わりだった。お前は俺たちの命の恩人だ、リリアナ」
その言葉にはこれまでの「守るべきお嬢様」に対するものとは違う、対等な戦友への敬意が込められていた。

リリアナは二人の言葉に、照れたように頬を赤らめた。
そして、彼女は自分の両手を見つめながら静かに言った。
「……私、少しだけ自分の力が分かりました。この力は誰かを傷つけるためではなく、大切な仲間を、守るためにあるのだと」

その瞳にはもはや迷いも自己嫌悪もなかった。
一人の戦士として完全に覚醒した者の、強く清らかな光が宿っていた。

俺たちはその夜、深い眠りについた。
仲間への絶対的な信頼が、この危険なダンジョンの中で何よりの安らぎを与えてくれた。

翌日。
完全に回復した俺たちは第二階層の出口、その先に続く新たな階段の前に立っていた。
階段の向こうから吹き上げてくる風は、これまでのどの階層とも違っていた。
熱い。
まるで巨大な溶鉱炉の前に立っているかのような灼熱の空気。そして、微かに漂う硫黄の匂い。

「……禁書庫の情報通りなら、次は『竜の巣』だな」
ガロウがゴクリと喉を鳴らす。
これまでの二つの階層は、どちらかといえばギミックや特殊な能力を持つ敵が中心だった。
だが、ここから先は違う。
純粋な、圧倒的なまでの物理的な暴力が支配する世界だ。

俺たちは覚悟を決めて階段を下りた。
熱気は下へ行けば行くほど強くなる。
そして、階段の終わり。俺たちの目の前に広がったのは、まさしく地獄と呼ぶにふうわしい光景だった。

果てしなく広がる黒い火山岩の大地。
地面の亀裂からは真っ赤な溶岩が川のように流れ、不気味な光を放っている。
空気は熱波で歪み、遠くでは巨大な火山が黒い煙を噴き上げていた。
そして、時折その灼熱地獄の空を巨大な翼を持つ影が滑空していくのが見えた。

「キシャアアアアッ!」
遠くから響き渡る竜の咆哮。
それはワイバーンのそれとは比較にならないほど重く、大地そのものを震わせるような響きを持っていた。

「……最高じゃないか」
俺の口元に獰猛な笑みが浮かんだ。
これだ。これこそが俺が求めていた戦場だ。
小細工なし。ただ、純粋な力と力がぶつかり合う死闘の舞台。

俺たちがその灼熱の大地に一歩足を踏み出した、その時だった。
近くの溶岩の川から一体の魔物がその姿を現した。
それは巨大なトカゲだった。
だが、その全身は燃え盛る炎のような鱗で覆われ、口からは絶えず灼熱の息が漏れ出ている。
ファイアドレイク。竜種の中でも特に気性が荒く、強力な炎のブレスを吐くという。
その体躯はワイバーンに匹敵し、放つ威圧感はそれ以上だった。

「……おいおい、マジかよ。こいつが、この階層の雑魚敵かよ」
ガロウが顔を引きつらせながら大盾を構える。

ファイアドレイクは俺たち侵入者を認めると、一切の躊躇なく襲いかかってきた。
その口が大きく開かれ、灼熱の奔流が放たれる。

「水の精霊よ、彼の者の炎を鎮めたまえ!」
リリアナの詠唱が即座に響き渡った。
彼女の杖から放たれた水の障壁がブレスを真正面から受け止める。
ジュウウウウッ!という凄まじい蒸発音と共に大量の水蒸気が立ち上った。

「ナイスだ、リリアナ!」
ガロウが水蒸気で生まれた視界の悪さを利用し、ドレイクの側面に回り込む。
そして、渾身のウォーハンマーをその脇腹に叩きつけた。
轟音。
だが、ドレイクの鱗は異常に硬く、ウォーハンマーの一撃ですらわずかにへこませるのがやっとだった。

「グルオオオ!」
ドレイクはその長い尻尾を鞭のようにしならせ、ガロウを薙ぎ払おうとする。
俺はその隙を見逃さなかった。
尻尾の攻撃を低く屈んでかわし、ドレイクの懐へと潜り込む。
そして、硬い鱗のわずかな隙間。関節の部分を狙って闘気を込めた拳を叩き込んだ。

「ギシャッ!?」
確かな手応え。
ドレイクは初めて明確なダメージを受け、苦悶の声を上げた。

だが、この程度の敵にこれほど手こずっていては、この先へは進めない。
俺たちの連携は完璧だった。
だが、敵の純粋なステータスがそれを上回っている。

俺たちが一体のドレイクと死闘を繰り広げている、その時だった。
空から二つ、三つと新たな影が舞い降りてきた。
俺たちが倒したドレイクの血の匂いを嗅ぎつけて、その仲間たちが集まってきたのだ。

俺たちは完全に包囲されていた。
一体ですらこれほど苦戦したというのに。

「……おいおい、冗談だろ」
ガロウが絶望的な声を上げる。
リリアナもその顔から血の気を失っていた。

だが、俺は笑っていた。
これだ。これこそが神々の墓場。
これこそが俺が求めていた死と隣り合わせの戦場。

「最高だ」
俺は静かに呟いた。
「……ここが、俺たちの新しい鍛錬場だ」

俺の目に宿る狂気にも似た光を見て、ガロウとリリアナは諦めたように、しかしどこか楽しそうに笑みを浮かべた。
俺たちのパーティはとっくの昔に常識という名の箍が外れてしまっていたのだ。

第三階層『竜の巣』。
終わりなき死闘の幕が今、切って落とされた。
俺たちの本当の地獄はここから始まる。
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