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第24話 戦利品の活用
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魔法の理論という新たな武器を手に入れた俺だったが、組織の強化はそれだけでは終わらない。人間の冒険者パーティとの戦いは、俺たちに大きな犠牲と共に、もう一つの重要な置き土産を残していた。
戦利品だ。
洞窟の広場の一角に、回収した武具や道具が山と積まれている。鋼鉄の剣、硬い革鎧、丈夫な弓、そして中身のよく分からない薬品や巻物が入った袋。これまでの俺たちにとって、これらはただのガラクタか、あるいはせいぜい棍棒よりはマシな武器、程度の認識だった。
だが、冒険者のリーダーを捕食し、【剣術】スキルを得た今の俺には、これらの価値が痛いほど理解できた。
俺は山の中から、リーダーが使っていた長剣を手に取った。ずしりと重いが、バランスが良く、手にしっくりと馴染む。知識として得た【剣術】の型に従って振るってみると、棍棒とは比較にならない鋭い風切り音が空気を裂いた。
「コレハ……」
ゴブリンたちが、興味深そうに俺の手元を見ている。
「コレハ、剣ト言ウ。突ク、斬ル、払ウ。棍棒ヨリモ、遥カニ効率的ニ敵ヲ殺セル武器ダ」
俺はそう説明すると、近くにいた狩り部隊のリーダーに、戦士が持っていた戦斧を手渡した。
「持ッテミロ」
リーダーは、おそるおそる巨大な戦斧を受け取る。その重さに一瞬よろめいたが、すぐに力強く握りしめた。彼の屈強な肉体と、【怪力】スキルを持つ俺に次ぐ腕力なら、十分に扱えるはずだ。
「振ッテミロ。棍棒ト同ジヨウニ」
リーダーが、戸惑いながらも戦斧を振り回す。ブオン、と空気を揺るがす重い音。威力は棍棒の比ではないだろう。だが、その動きはあまりにも無駄が多かった。
「違ウ」俺は彼の動きを止めた。「ソノ武器ハ、重サヲ利用シテ叩キ斬ルモノダ。力任セニ振ルナ。重心ヲ意識シロ」
俺は【剣術】スキルから得た知識を応用し、彼に戦斧の基本的な使い方を教え始めた。最初は戸惑っていたリーダーも、持ち前の戦闘センスですぐにコツを掴んでいく。数十分後には、彼の振るう戦斧は、最初とは比べ物にならないほど洗練され、破壊力を増していた。
他のゴブリンたちも、それを見て色めき立った。自分たちも、あの強力な武器を使いたい。その目が雄弁に物語っていた。
俺は、戦利品の中から比較的状態の良い剣や短剣、そして鎧を選び出し、精鋭たちに与えていくことにした。
「武器ハ、オマエタチノ力ヲ何倍ニモする。ダガ、使イコナセナケレバタダノ鉄ノ塊ダ。コレカラ、訓練ヲ行ウ」
俺は部隊を再編成し、武器の種類ごとに分けた。剣を持つ部隊、斧を持つ部隊、そして盗賊が使っていた短剣を持つ部隊。弓は扱える者がまだいないため、ひとまず保留とした。
俺の指導のもと、ゴブリンたちの武器訓練が始まった。俺自身も、【剣術】スキルを身体に馴染ませるため、彼らと共に汗を流す。最初は棍棒の癖が抜けず、ぎこちない動きだったゴブリンたちも、実戦形式の訓練を繰り返すうちに、驚くべき速さで金属製の武器を使いこなし始めた。
ガキン、と剣と斧がぶつかり合う音が、洞窟に響き渡る。それは、俺の組織がまた一つ、新たなステージへと進化した音だった。
さらに、俺はリリアに冒険者たちが持っていた袋の中身を調べさせた。彼女は薬草や魔法道具に関する知識も豊富だったからだ。
「ゴブ様、これは……!」
リリアが、興奮したようにいくつかの小瓶を手に取った。
「これは、ヒーリングポーションです! 傷を癒す魔法の薬です! これさえあれば、私の魔法に頼らずとも、軽傷ならすぐに治せます!」
「こっちの巻物は……転移の魔法陣が描かれています。一度だけ、登録した場所に瞬間移動できる、非常に高価なものです」
ポーション、魔法の巻物。
俺がいた世界で言えば、回復アイテムとワープアイテムか。その価値は計り知れない。特に、ポーションの存在は、今後の戦闘における負傷者の生存率を大きく左右するだろう。
俺はポーションを資材管理係に厳重に管理させ、緊急時以外は使用しないよう命じた。そして、転移の巻物は、万が一の事態に備え、俺自身が懐に仕舞った。
武器、防具、そして魔法の道具。
人間を倒したことで手に入れた「文明の利器」は、俺たちの狩猟採集レベルの生活を、一気に引き上げた。
数日後、武装を新たにした狩り部隊は、再び森へと出た。
彼らの装備は、もはやただのゴブリンの群れではない。粗末ながらも、一つの軍隊と呼んでも差し支えないほどの威容を整えていた。
森の中で遭遇した大型の魔物、ロックリザードの群れ。以前なら苦戦を強いられた相手だ。だが、今の俺たちにとっては、格好の訓練相手でしかなかった。
「前衛、盾ヲ構エロ! 攻撃ヲ防ゲ!」
戦士の鎧と盾を受け継いだゴブリンたちが、リザードの突進をがっしりと受け止める。その隙に、戦斧を持った部隊が側面から回り込み、硬い鱗を叩き割った。そして、とどめは剣を持った俺たちの役目だ。
連携は、以前よりも遥かに滑らかで、そして致死的だった。戦闘は、わずか数分で終わった。そして、俺たちの被害はゼロ。
ゴブリンたちは、自らの新しい力に歓喜し、雄叫びを上げた。
俺は、その光景を静かに見つめていた。組織は強くなった。個々の戦闘力も、連携の精度も、以前とは比べ物にならない。
だが、俺の心は晴れなかった。
これらの武器は、全て人間から奪ったものだ。自前で生産したものではない。つまり、消耗品だ。剣は折れ、鎧は砕け、ポーションは使えばなくなる。
このままでは、またジリ貧になる。
俺たちの軍備を維持し、さらに発展させるためには、これらの武具を自分たちで作り出す技術が必要だ。
鉄を加工する、鍛冶の技術が。
俺の視線は、森のさらに奥深く、まだ見ぬ領域へと向けられていた。
リリアの話によれば、この森のどこかには、ゴブリンよりも遥かに大きく、そして手先が器用な種族がいるという。
人間への憎しみを持ち、独自の集落を築き、そして、優れた鍛冶技術を持つと言われる、誇り高き種族。
オーク。
彼らの技術を、力を、知識を、全て食らい尽くし、我が物とする。
それが、俺の組織が次の段階へ進むために、為すべきことだった。
戦利品だ。
洞窟の広場の一角に、回収した武具や道具が山と積まれている。鋼鉄の剣、硬い革鎧、丈夫な弓、そして中身のよく分からない薬品や巻物が入った袋。これまでの俺たちにとって、これらはただのガラクタか、あるいはせいぜい棍棒よりはマシな武器、程度の認識だった。
だが、冒険者のリーダーを捕食し、【剣術】スキルを得た今の俺には、これらの価値が痛いほど理解できた。
俺は山の中から、リーダーが使っていた長剣を手に取った。ずしりと重いが、バランスが良く、手にしっくりと馴染む。知識として得た【剣術】の型に従って振るってみると、棍棒とは比較にならない鋭い風切り音が空気を裂いた。
「コレハ……」
ゴブリンたちが、興味深そうに俺の手元を見ている。
「コレハ、剣ト言ウ。突ク、斬ル、払ウ。棍棒ヨリモ、遥カニ効率的ニ敵ヲ殺セル武器ダ」
俺はそう説明すると、近くにいた狩り部隊のリーダーに、戦士が持っていた戦斧を手渡した。
「持ッテミロ」
リーダーは、おそるおそる巨大な戦斧を受け取る。その重さに一瞬よろめいたが、すぐに力強く握りしめた。彼の屈強な肉体と、【怪力】スキルを持つ俺に次ぐ腕力なら、十分に扱えるはずだ。
「振ッテミロ。棍棒ト同ジヨウニ」
リーダーが、戸惑いながらも戦斧を振り回す。ブオン、と空気を揺るがす重い音。威力は棍棒の比ではないだろう。だが、その動きはあまりにも無駄が多かった。
「違ウ」俺は彼の動きを止めた。「ソノ武器ハ、重サヲ利用シテ叩キ斬ルモノダ。力任セニ振ルナ。重心ヲ意識シロ」
俺は【剣術】スキルから得た知識を応用し、彼に戦斧の基本的な使い方を教え始めた。最初は戸惑っていたリーダーも、持ち前の戦闘センスですぐにコツを掴んでいく。数十分後には、彼の振るう戦斧は、最初とは比べ物にならないほど洗練され、破壊力を増していた。
他のゴブリンたちも、それを見て色めき立った。自分たちも、あの強力な武器を使いたい。その目が雄弁に物語っていた。
俺は、戦利品の中から比較的状態の良い剣や短剣、そして鎧を選び出し、精鋭たちに与えていくことにした。
「武器ハ、オマエタチノ力ヲ何倍ニモする。ダガ、使イコナセナケレバタダノ鉄ノ塊ダ。コレカラ、訓練ヲ行ウ」
俺は部隊を再編成し、武器の種類ごとに分けた。剣を持つ部隊、斧を持つ部隊、そして盗賊が使っていた短剣を持つ部隊。弓は扱える者がまだいないため、ひとまず保留とした。
俺の指導のもと、ゴブリンたちの武器訓練が始まった。俺自身も、【剣術】スキルを身体に馴染ませるため、彼らと共に汗を流す。最初は棍棒の癖が抜けず、ぎこちない動きだったゴブリンたちも、実戦形式の訓練を繰り返すうちに、驚くべき速さで金属製の武器を使いこなし始めた。
ガキン、と剣と斧がぶつかり合う音が、洞窟に響き渡る。それは、俺の組織がまた一つ、新たなステージへと進化した音だった。
さらに、俺はリリアに冒険者たちが持っていた袋の中身を調べさせた。彼女は薬草や魔法道具に関する知識も豊富だったからだ。
「ゴブ様、これは……!」
リリアが、興奮したようにいくつかの小瓶を手に取った。
「これは、ヒーリングポーションです! 傷を癒す魔法の薬です! これさえあれば、私の魔法に頼らずとも、軽傷ならすぐに治せます!」
「こっちの巻物は……転移の魔法陣が描かれています。一度だけ、登録した場所に瞬間移動できる、非常に高価なものです」
ポーション、魔法の巻物。
俺がいた世界で言えば、回復アイテムとワープアイテムか。その価値は計り知れない。特に、ポーションの存在は、今後の戦闘における負傷者の生存率を大きく左右するだろう。
俺はポーションを資材管理係に厳重に管理させ、緊急時以外は使用しないよう命じた。そして、転移の巻物は、万が一の事態に備え、俺自身が懐に仕舞った。
武器、防具、そして魔法の道具。
人間を倒したことで手に入れた「文明の利器」は、俺たちの狩猟採集レベルの生活を、一気に引き上げた。
数日後、武装を新たにした狩り部隊は、再び森へと出た。
彼らの装備は、もはやただのゴブリンの群れではない。粗末ながらも、一つの軍隊と呼んでも差し支えないほどの威容を整えていた。
森の中で遭遇した大型の魔物、ロックリザードの群れ。以前なら苦戦を強いられた相手だ。だが、今の俺たちにとっては、格好の訓練相手でしかなかった。
「前衛、盾ヲ構エロ! 攻撃ヲ防ゲ!」
戦士の鎧と盾を受け継いだゴブリンたちが、リザードの突進をがっしりと受け止める。その隙に、戦斧を持った部隊が側面から回り込み、硬い鱗を叩き割った。そして、とどめは剣を持った俺たちの役目だ。
連携は、以前よりも遥かに滑らかで、そして致死的だった。戦闘は、わずか数分で終わった。そして、俺たちの被害はゼロ。
ゴブリンたちは、自らの新しい力に歓喜し、雄叫びを上げた。
俺は、その光景を静かに見つめていた。組織は強くなった。個々の戦闘力も、連携の精度も、以前とは比べ物にならない。
だが、俺の心は晴れなかった。
これらの武器は、全て人間から奪ったものだ。自前で生産したものではない。つまり、消耗品だ。剣は折れ、鎧は砕け、ポーションは使えばなくなる。
このままでは、またジリ貧になる。
俺たちの軍備を維持し、さらに発展させるためには、これらの武具を自分たちで作り出す技術が必要だ。
鉄を加工する、鍛冶の技術が。
俺の視線は、森のさらに奥深く、まだ見ぬ領域へと向けられていた。
リリアの話によれば、この森のどこかには、ゴブリンよりも遥かに大きく、そして手先が器用な種族がいるという。
人間への憎しみを持ち、独自の集落を築き、そして、優れた鍛冶技術を持つと言われる、誇り高き種族。
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彼らの技術を、力を、知識を、全て食らい尽くし、我が物とする。
それが、俺の組織が次の段階へ進むために、為すべきことだった。
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