ゴブリンだって進化したい!~最弱モンスターに転生したけど、スキル【弱肉強食】で食って食って食いまくったら、気づけば魔王さえ喰らう神になってた

夏見ナイ

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第49話 新体制

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大農園に緑の芽吹きが見られたことで、グラーヘイムの住民たちの心には、これまでにない安定感と未来への希望が根付き始めていた。軍備の拡張と、食料自給への道筋。国家としての両輪が、ようやく噛み合い始めたのだ。

だが、組織が大きくなり、役割が多様化するにつれて、新たな問題も浮上してきた。
それは、指揮系統の複雑化だ。

これまでの俺の組織は、俺を頂点とし、その下に各部隊のリーダーがいる、という単純なピラミッド構造だった。だが今や、オーク重装歩兵部隊、ゴブリン遊撃部隊、生産技術部隊、衛生部隊、そして農耕部隊と、その専門性は多岐にわたる。

俺が、その全てを直接指揮するのは、非効率的極まりない。王の仕事は、現場で兵士に檄を飛ばすことではない。より大きな視点で国家の進むべき道を示し、重要な意思決定を下すことだ。

俺は、組織のさらなる効率化と、俺自身の負担を軽減するため、大規模な組織改編と、それに伴う人事刷新を行うことを決断した。

俺は再び、幹部全員を王城の会議室に招集した。
その場には、将軍となったガロン、各部隊のリーダーたち、内政顧問のオークの長老衆、そしてリリアもいた。

「これより、魔森連合の新たな統治体制を発表する」

俺の厳かな宣言に、全員が背筋を伸ばす。

「まず、軍事部門と、内政部門を、明確に分離する」

俺は、地面に組織図を描きながら説明を始めた。

「軍事に関する一切の権限は、将軍であるガロン、お前に委ねる。お前は、連合軍の総司令官として、全部隊を統括し、訓練、軍備、そして有事の際の全指揮を担え」

「ハッ! このガロン、身命を賭して!」
ガロンが、感激に打ち震えながら応える。彼に軍の全権を委ねることは、彼への絶対的な信頼を示すと同時に、オークたちの忠誠心をさらに強固にする狙いもあった。

「そして、ガロンの下に、二つの軍団を置く。一つは、オーク重装歩兵部隊を中核とする、『鉄槌軍団』。もう一つは、ゴブリン遊撃部隊を中心とする、『疾風軍団』だ。それぞれの軍団長には、これまでの部隊リーダーを任命する」

オークとゴブリンのリーダーが、驚きと誇りに満ちた顔で前に進み出た。軍団長という新たな地位は、彼らの責任感と士気を大いに高めるだろう。

「次に、内政部門だ」
俺は、リリアと長老衆に視線を向けた。
「内政の統括は、長老衆、お前たちに任せる。都の法と秩序の維持、資源の管理、そして民の生活の安定。その全てがお前たちの仕事だ。そして、リリア」

「はい」
「お前には、長老衆を補佐する形で、衛生部門と、技術開発部門の長についてもらう。お前の持つ魔法と薬草の知識、そして新しいものを受け入れる柔軟な発想は、この国の発展に不可欠だ」

「わ、私にそのような大役が……」
リリアは恐縮していたが、その瞳には、自分の知識が国のために役立つことへの、静かな喜びが浮かんでいた。

「そして、生産技術部隊と、農耕部隊も、内政部門の管轄とする。これで、軍事と内政、二つの大きな柱ができた。それぞれの長は、定期的に俺へ報告を行うこと。最終的な意思決定は、全て俺が下す」

俺が提示したのは、前世で言うところの「権限委譲」だった。俺は、現場の細かい判断を信頼できる部下に任せ、自分は国家全体を俯瞰する立場に立つ。これにより、組織の意思決定はより迅速になり、俺はより重要な戦略立案に集中できる。

新しい組織図が、完成した。

**【総帥】**
ゴブ

**【軍事部門】**
・総司令官(将軍):ガロン
 - 鉄槌軍団(オーク部隊)
 - 疾風軍団(ゴブリン部隊)

**【内政部門】**
・統括:オーク長老衆
・補佐官:リリア
 - 衛生部門
 - 技術開発部門
 - 生産技術部隊
 - 農耕部隊

それは、もはや単なる魔物の群れなどではない。機能的に分化し、有機的に連携する、洗練された国家統治システムだった。

任命式の後、俺は将軍となったガロンと二人、城壁の上を歩いていた。
「ガロン、一つ、お前に極秘の任務を与える」
「何なりと、我が王」
「連合軍の中から、さらに精鋭中の精鋭を選抜しろ。ゴブリン、オークの区別なく、純粋な実力だけでだ。そして、そいつらで、俺直属の親衛隊を組織する。その名は、『黒曜の爪(オブシディアン・クロウ)』。彼らの任務は、諜報、暗殺、そして、俺の身辺警護だ」

「……影の部隊、ですな」
ガロンは、すぐに俺の意図を理解した。

「そうだ。光が強くなれば、影もまた濃くなる。我々の国が大きくなれば、いずれ内外から、汚いやり方で我々を陥れようとする者も現れるだろう。その『影』に対抗するための、『爪』が必要だ」

「承知いたしました。早速、人選に取り掛かります」

新たな体制は、順調に滑り出した。
ガロンは、その卓越した指揮能力で、二つの軍団を厳しく、しかし公正に鍛え上げていく。ゴブリンとオークの兵士たちは、互いの長所を学び、競い合うようにして、その練度を高めていった。

リリアと長老衆が司る内政もまた、安定していた。都の治安は保たれ、生産活動は活気に満ちている。大農園の黒麦は、すくすくと育ち、豊かな実りの季節がすぐそこまで来ていた。

グラーヘイムは、盤石の平和を享受しているように見えた。

だが、俺だけは、常に空を見上げていた。
この森の、さらに上空。
雲の、さらに向こう側。

この森の生態系の頂点に君臨し、まだ俺たちが一度も接触していない、絶対的な存在。
その気配を、【危機察知】スキルが、微かに、しかし確実に捉え始めていたのだ。

この平穏が、永遠に続くものではないことを、俺の本能が警告していた。
そして、その警告は、ある晴れた日の午後、あまりにも突然に、現実のものとなる。
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