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第55話 飛竜狩り部隊
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試作一号機の圧倒的な成功は、グラーヘ-イム全体を熱狂の渦に巻き込んだ。対ワイバーン兵器『ドラゴン・スレイヤー』は、絶望に沈んでいた住民たちにとってまさに救世主の如き存在となったのだ。
俺は、この高まった士気を逃さず、すぐさま次なる段階へと移行した。
「これよりバリスタの量産体制に入る! 生産技術部隊は、総力を挙げて取り組め!」
大鍛冶場は再び不眠不休の稼働を開始した。試作機のデータを元に、俺はさらに改良を加えた量産型の設計図を完成させる。巻き上げ機の歯車の精度を上げ、台座の安定性を高め、そして魔法の照準器の魔力効率を改善する。
オークの職人たちは、俺の指示の下、驚異的な集中力で作業を進めていった。彼らにとってこのバリスタを創ることは、もはや単なる仕事ではない。空の圧制者への復讐の狼煙を上げるための神聖な儀式となっていた。
そして、バリスタの量産と並行して、俺はもう一つの重要な組織の編成に着手した。
「これより、対ワイバーン戦を専門とする特殊部隊を結成する。その名は、『飛竜狩り部隊(ワイバーン・ハンターズ)』!」
俺は連合軍の全兵士を練兵場に集め、高らかに宣言した。
「この部隊の任務はただ一つ。バリスタを運用し、空の敵を撃ち落とすことだ。それは、このグラーヘイムの防衛の要となる、最も名誉ある、そして最も過酷な任務となる」
この部隊に求められるのは、個人の武勇ではない。
第一に、絶対的な冷静さ。パニックに陥らず的確に状況を判断できる精神力。
第二に、精密な連携力。一体のバリスタを運用するには、巻き上げ役、装填役、照準役、そして指揮官と、最低でも五人の息の合った連携が不可欠だ。
第三に、強靭な肉体。巨大な杭を運び、重い巻き上げ機を回すための純粋なパワー。
俺はガロンと共に、全兵士の中から適性のある者を選抜していった。オークの怪力自慢、ゴブリンの冷静沈着な者、そして遠くの物音を聞き分ける聴力に優れた者。種族やこれまでの功績に関係なく、純粋に「バリスタを扱う」という一点において、最も優れた者たちが集められていく。
最終的に五十名の兵士が選抜された。彼らで十機のバリスタを運用する十個の分隊を編成する。そして、その全部隊を統括する部隊長には俺が自ら就任した。この国の命運を左右する兵器の指揮は、誰にも任せるわけにはいかない。
飛竜狩り部隊の訓練は過酷を極めた。
来る日も来る日も、彼らは演習場でバリスタの操作を繰り返した。
巻き上げの速度、装填の正確さ、照準の迅速さ。全ての動作を無意識に、そして完璧に行えるようになるまで徹底的に反復練習を叩き込む。
最初はぎこちなかった彼らの動きも、訓練を重ねるうちに一つの生命体のように滑らかで効率的なものへと変わっていった。
「目標、右翼! 距離七百! 撃て!」
俺の号令一下、分隊長が指示を飛ばし、兵士たちが淀みない動きでバリスタを操作する。
そして、放たれた杭が遥か彼方の空中に吊るされた的を正確に撃ち抜いた。
訓練の成果は着実に表れていた。
だが、俺はまだ満足していなかった。
固定された的を撃つことと、高速で飛び回り炎を吐く生きたワイバーンを撃つことの間には、天と地ほどの差がある。
「実戦形式の訓練が必要だ」
俺はガロンに指示を出した。
「鉄槌軍団と疾風軍団にワイバーンの役をやらせろ。空は飛べないが、森の中から予測不能な動きで演習場に突入してこい。飛竜狩り部隊はそれを迎え撃つ。もちろん杭は使わん。模擬弾だ」
その日から、訓練はさらに実践的なものとなった。
ガロン率いる部隊が様々な方向から様々なタイミングで奇襲を仕掛けてくる。
飛竜狩り部隊は敵の出現をいち早く察知し、即座にバリスタの狙いを定め、迎撃態勢を整えなければならない。
最初は何度も対応が遅れ、ガロンたちの突入を許してしまった。その度に、俺の容赦ない叱責が飛ぶ。
「遅い! お前たちのその一秒の遅れが都を火の海にするんだぞ!」
「連携がバラバラだ! 自分の仕事だけをするな! 隣の分隊の状況も把握しろ!」
兵士たちは泥と汗に塗れ、疲労で倒れそうになりながらも必死に食らいついてきた。彼らの目には、共通の光が宿っていた。
それは仲間を、家族を、自分たちが築き上げたこの都を自分たちの手で守り抜くという、強い意志の光だった。
数週間後。
十機の量産型バリスタが、グラーヘイムの城壁に等間隔で設置された。黒々としたその巨体は、まるで空を睨みつける鋼鉄の神々のようだ。
そして、その傍らには、厳しい訓練を乗り越え、精悍な顔つきとなった飛竜狩り部隊の兵士たちが立っていた。
彼らの連携は、もはや芸術の域に達していた。敵の気配を察知してから十機のバリスタが一斉に狙いを定め、迎撃態態勢を完了するまで、わずか数十秒。
対ワイバーン防衛システムはついに完成した。
俺は城壁の上から、眼下に広がるグラーヘイムを見下ろした。
住民たちの生活は落ち着きを取り戻し、焦土と化した畑も再び耕され始めている。
「準備は整った」
俺は静かに呟いた。
「もう待つのは終わりだ。今度は、こちらから仕掛ける」
俺の視線は、森の中央、天を突くようにそびえる竜哭山へと向けられていた。
防御を固めるだけでは、真の勝利は得られない。
我々は敵の巣に乗り込み、その首魁を討ち、この森の真の支配者が誰であるかを証明しなければならないのだ。
次なる作戦の始まりだった。
俺は、この高まった士気を逃さず、すぐさま次なる段階へと移行した。
「これよりバリスタの量産体制に入る! 生産技術部隊は、総力を挙げて取り組め!」
大鍛冶場は再び不眠不休の稼働を開始した。試作機のデータを元に、俺はさらに改良を加えた量産型の設計図を完成させる。巻き上げ機の歯車の精度を上げ、台座の安定性を高め、そして魔法の照準器の魔力効率を改善する。
オークの職人たちは、俺の指示の下、驚異的な集中力で作業を進めていった。彼らにとってこのバリスタを創ることは、もはや単なる仕事ではない。空の圧制者への復讐の狼煙を上げるための神聖な儀式となっていた。
そして、バリスタの量産と並行して、俺はもう一つの重要な組織の編成に着手した。
「これより、対ワイバーン戦を専門とする特殊部隊を結成する。その名は、『飛竜狩り部隊(ワイバーン・ハンターズ)』!」
俺は連合軍の全兵士を練兵場に集め、高らかに宣言した。
「この部隊の任務はただ一つ。バリスタを運用し、空の敵を撃ち落とすことだ。それは、このグラーヘイムの防衛の要となる、最も名誉ある、そして最も過酷な任務となる」
この部隊に求められるのは、個人の武勇ではない。
第一に、絶対的な冷静さ。パニックに陥らず的確に状況を判断できる精神力。
第二に、精密な連携力。一体のバリスタを運用するには、巻き上げ役、装填役、照準役、そして指揮官と、最低でも五人の息の合った連携が不可欠だ。
第三に、強靭な肉体。巨大な杭を運び、重い巻き上げ機を回すための純粋なパワー。
俺はガロンと共に、全兵士の中から適性のある者を選抜していった。オークの怪力自慢、ゴブリンの冷静沈着な者、そして遠くの物音を聞き分ける聴力に優れた者。種族やこれまでの功績に関係なく、純粋に「バリスタを扱う」という一点において、最も優れた者たちが集められていく。
最終的に五十名の兵士が選抜された。彼らで十機のバリスタを運用する十個の分隊を編成する。そして、その全部隊を統括する部隊長には俺が自ら就任した。この国の命運を左右する兵器の指揮は、誰にも任せるわけにはいかない。
飛竜狩り部隊の訓練は過酷を極めた。
来る日も来る日も、彼らは演習場でバリスタの操作を繰り返した。
巻き上げの速度、装填の正確さ、照準の迅速さ。全ての動作を無意識に、そして完璧に行えるようになるまで徹底的に反復練習を叩き込む。
最初はぎこちなかった彼らの動きも、訓練を重ねるうちに一つの生命体のように滑らかで効率的なものへと変わっていった。
「目標、右翼! 距離七百! 撃て!」
俺の号令一下、分隊長が指示を飛ばし、兵士たちが淀みない動きでバリスタを操作する。
そして、放たれた杭が遥か彼方の空中に吊るされた的を正確に撃ち抜いた。
訓練の成果は着実に表れていた。
だが、俺はまだ満足していなかった。
固定された的を撃つことと、高速で飛び回り炎を吐く生きたワイバーンを撃つことの間には、天と地ほどの差がある。
「実戦形式の訓練が必要だ」
俺はガロンに指示を出した。
「鉄槌軍団と疾風軍団にワイバーンの役をやらせろ。空は飛べないが、森の中から予測不能な動きで演習場に突入してこい。飛竜狩り部隊はそれを迎え撃つ。もちろん杭は使わん。模擬弾だ」
その日から、訓練はさらに実践的なものとなった。
ガロン率いる部隊が様々な方向から様々なタイミングで奇襲を仕掛けてくる。
飛竜狩り部隊は敵の出現をいち早く察知し、即座にバリスタの狙いを定め、迎撃態勢を整えなければならない。
最初は何度も対応が遅れ、ガロンたちの突入を許してしまった。その度に、俺の容赦ない叱責が飛ぶ。
「遅い! お前たちのその一秒の遅れが都を火の海にするんだぞ!」
「連携がバラバラだ! 自分の仕事だけをするな! 隣の分隊の状況も把握しろ!」
兵士たちは泥と汗に塗れ、疲労で倒れそうになりながらも必死に食らいついてきた。彼らの目には、共通の光が宿っていた。
それは仲間を、家族を、自分たちが築き上げたこの都を自分たちの手で守り抜くという、強い意志の光だった。
数週間後。
十機の量産型バリスタが、グラーヘイムの城壁に等間隔で設置された。黒々としたその巨体は、まるで空を睨みつける鋼鉄の神々のようだ。
そして、その傍らには、厳しい訓練を乗り越え、精悍な顔つきとなった飛竜狩り部隊の兵士たちが立っていた。
彼らの連携は、もはや芸術の域に達していた。敵の気配を察知してから十機のバリスタが一斉に狙いを定め、迎撃態態勢を完了するまで、わずか数十秒。
対ワイバーン防衛システムはついに完成した。
俺は城壁の上から、眼下に広がるグラーヘイムを見下ろした。
住民たちの生活は落ち着きを取り戻し、焦土と化した畑も再び耕され始めている。
「準備は整った」
俺は静かに呟いた。
「もう待つのは終わりだ。今度は、こちらから仕掛ける」
俺の視線は、森の中央、天を突くようにそびえる竜哭山へと向けられていた。
防御を固めるだけでは、真の勝利は得られない。
我々は敵の巣に乗り込み、その首魁を討ち、この森の真の支配者が誰であるかを証明しなければならないのだ。
次なる作戦の始まりだった。
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