ゴブリンだって進化したい!~最弱モンスターに転生したけど、スキル【弱肉強食】で食って食って食いまくったら、気づけば魔王さえ喰らう神になってた

夏見ナイ

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第64話 地からの支援

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イグニールの意識が一瞬飛んだ。それは千載一遇の好機。だが、俺の力もまた限界に近づいていた。喉に突き立てた槍をさらに押し込むが、彼の強靭な筋肉に阻まれ致命傷には至らない。

このままでは奴が意識を取り戻した瞬間に俺は振り払われる。
万策尽きたか。

俺がそう思いかけた、その時だった。

「――ゴブ様!」

遥か下方の崖の下から、凛とした声が響き渡ってきた。
リリアの声だ。

俺は一瞬だけ視線を下に向けた。
そこには卵を抱えた急襲部隊と、彼らを守るように展開するガロンの主力部隊の姿があった。そして、その中心でリリアが杖を天に掲げ、何か巨大な魔法の詠唱を開始していた。

彼女の周囲に緑色の魔力の光が集まっていく。森の木々がざわめき、大地が微かに震える。それは彼女が持つ精霊魔法の最大級の儀式だった。

「何を……?」

イグニールもまたその異様な光景に気づき、訝しげな声を漏らす。

リリアは俺に向かって叫んだ。
「今、援護します! 森の全ての生命の力を、あなたに!」

「――古き森の精霊たちよ、我が声に応えよ! その大いなる息吹を、我が王の力と為せ! エンシェント・ブレス!」

リリアが杖を振り下ろした瞬間、崖の下の森全体から膨大な量の緑色の魔力光が、一筋の光線となって天を突いた。
その光は一直線に、竜哭山の頂上、俺の身体へと降り注いだ。

「ぐ……おおおおおおおっ!」

俺の身体に森の生命エネルギーそのものが直接流れ込んでくる。
枯渇していたMPが瞬く間に全快する。それどころか許容量を超えて溢れ出しそうになっている。傷ついた身体は癒え、失われた力は以前にも増して全身にみなぎっていた。

これがリリアの奥の手。
個人を強化する最高位の補助魔法。

「リリア……お前……!」

俺は仲間からの熱い支援に胸が熱くなるのを感じた。
俺は一人じゃなかった。

「感謝するぜ、皆!」

俺は雄叫びを上げた。
そして、溢れ出す魔力を一点に集中させる。

「これで終わりだ! イグニール!」

俺は喉に突き刺さった槍をさらに奥深くへとねじ込んだ。
そして、槍を伝導体として俺の持つスキルを直接彼の体内へと叩き込む!

【溶解液】と【毒牙】!
酸と、麻痺毒!

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

イグニールの身体が内側から破壊されていく。
槍が突き刺さった喉の傷口から、酸で溶かされた肉と黒い血が溢れ出した。麻痺毒が彼の神経系を焼き切り、その巨体から完全に力を奪い去っていく。

空の王者がついにその巨体を支えきれず、前のめりに崩れ落ちようとしていた。

だが、俺はまだ攻撃の手を緩めない。

「お前の翼、もらうぞ!」

俺はイグニールの背中に飛び乗り、その巨大な翼の付け根に長剣を深々と突き立てた。そして、テコの原理を使い、力任せにその翼を身体から引き剥がそうとする。

ミシミシと嫌な音が響き渡る。
イグニールはもはや抵抗する力もなく、ただ苦悶の声を漏らすだけだった。

そして、ついに。

ブチリ、という肉が引き千切れる生々しい音と共に、イグニールの片翼が完全にその身体から断ち切られた。

バランスを失った漆黒の巨体は、もはや崖の上にとどまることはできない。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、その巨体は崖の縁から奈落の底へと傾いていった。

「……見事、だ。ゴブ……よ……」

落下していく中でイグニールの最後の声が俺の脳内に響いた。
その声にはもはや怒りはなく、ただ自分を打ち破った新たな王への静かな敬意だけが込められていた。

漆黒のワイバーンロード、イグニール。
その巨体は遥か下方の岩だらけの谷底へと、吸い込まれるように消えていった。

静寂が再び竜哭山の頂を支配した。
俺は肩で荒い息を繰り返しながら、イグニールが消えていった奈落をただ呆然と見下ろしていた。

勝った。
俺はあの空の絶対王者に、勝ったのだ。

麓から地鳴りのような歓声が上がった。
俺の勝利をその目で目撃した、連合軍の仲間たちの魂の叫びだった。

俺は仲間たちがいる崖下を見下ろし、そしてゆっくりと右腕を天に突き上げた。

それは、このグラーヴェ大森林に新たな王が誕生したことを告げる高らかな宣言だった。
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