ゴブリンだって進化したい!~最弱モンスターに転生したけど、スキル【弱肉強食】で食って食って食いまくったら、気づけば魔王さえ喰らう神になってた

夏見ナイ

文字の大きさ
73 / 96

第78話 魔王軍の注目

しおりを挟む
アークライト王国がグラーヴェ大森林の『緑の災厄』に対し、その最強戦力である『白銀騎士団』の派遣を決定していた頃。
世界の全く別の場所で、もう一つの巨大な勢力がこの森の異変に気づき始めていた。

大陸の北端。
万年雪と活火山が混在する過酷な大地。
魔王城『パンデモニウム』。

その最深部、黒曜石でできた巨大な玉座の間で、魔王ゴルザリオンは退屈そうに肘をついていた。
彼の前には、この世界の全ての情報を収集し分析するための魔法具『千里眼の水盤』が置かれている。水盤には大陸各地の様子が、まるで衛星映像のようにリアルタイムで映し出されていた。

「……つまらぬ」

魔王は低く、地響きのような声で呟いた。
「人間どもは相変わらず小競り合いを繰り返すばかり。勇者の生まれ変わりもまだ赤子のまま。我が覇道を阻むものは何一つない。あまりにも退屈だ」

数千年の時を生きる魔王にとって、この世界の時間はあまりにも緩慢に流れすぎていた。
彼が水盤を魔法で消し去ろうとした、その時だった。

「――おや?」

彼の紅い瞳が、水盤に映し出されたある一点に釘付けになった。
それは大陸の中央部に広がる、グラーヴェ大森林の魔力分布図だった。

「……なんだ、この魔力の流れは」

これまでグラーヴェ大森林は、多種多様な魔物が無秩序に存在するだけの混沌とした魔力溜まりに過ぎなかった。
だが今、水盤に映し出されているのは全く違う光景だった。

森全体の魔力が、まるで一つの巨大な心臓に吸い寄せられるかのように森の中央の一点に向かって渦を巻くように流れている。そしてその中心点からは、他のどんな魔物の魔力とも違う、禍々しくもどこか神聖ささえ感じさせる規格外の魔力が、脈動するように放たれていた。

「……面白い。我が知らぬ間に、あの森に新たな『王』でも誕生したか」

魔王の口元に、数百年ぶりに獰猛な笑みが浮かんだ。
退屈な世界にようやく楽しめそうな玩具が現れた。

「――ザラキエルを呼べ」

魔王の命令に応じ、影の中から一人の魔族が音もなく姿を現した。
痩身で長い黒髪を持つ優美な男。だがその瞳の奥には、底知れない狡猾さと残忍さが宿っている。

魔王軍四天王の一人、『策謀』のザラキエル。
彼は魔王軍の諜報と謀略の全てを司る、魔王の懐刀だった。

「お呼びでしょうか、我が主、魔王ゴルザリオン様」
ザラキエルは優雅に片膝をついた。

「ザラキエルよ。グラーヴェ大森林へ行け」
魔王は水盤を指し示した。
「あの森で何が起きているのか。この異常な魔力の主が何者なのか。その全てをその目で確かめてこい」

「御意に」
ザラキエルは水盤を一瞥すると、すぐに事態を理解したようだった。
「人間どももこの異変に気づき、動き始めているようですな。好都合です。彼らを観測の駒として使いましょう」

「うむ。好きにせよ」魔王は楽しそうに言った。「だが一つだけ言っておく。その新たな『王』とやら、もし見込みがあるのなら殺すな。我が軍門に降るよう誘ってみるのも一興だろう。この退屈な世界を共に塗り替える仲間は、多いに越したことはない」

「……ふふ。承知いたしました。我が王の新たな『玩具』として相応しいかどうか。このザラキエルが、じっくりと品定めしてまいりましょう」

ザラキエルは不敵な笑みを浮かべると、再び影の中へと溶けるように消えていった。

魔王は一人、玉座の間で再び水盤を見つめていた。
水盤には森の中央、俺が築き上げた都『グラーヘイム』の姿が、ぼんやりと、しかし確実に映し出されている。

「ゴブリンロード、か……。下級の魔物が随分と大きく出たものだ。だがその放つ魔力の質は、そこらの魔王などとは比較にならん。一体何者だ……?」

時を同じくしてアークライト王国と魔王軍。
世界の二大勢力が、奇しくも同じ場所に、同じタイミングでその触手を伸ばし始めていた。

彼らの目的はただ一つ。
グラーヴェ大森林に突如として現れた未知なる第三勢力。
漆黒の翼を持つ魔物の王『ゴブ』。

俺はまだ知らない。
自分という存在がもはや森の中だけの問題ではなく、世界全体のパワーバランスを揺るがす巨大な嵐の目となりつつあることを。
そして人間と魔王軍、二つの巨大な思惑が、俺の築き上げた王国の上で複雑に交錯しようとしていることを。

束の間の平和は終わりを告げようとしていた。
俺の国は否応なく、世界の大きな奔流へと飲み込まれていく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

M.M.O. - Monster Maker Online

夏見ナイ
SF
現実世界に居場所を見出せない大学生、神代悠。彼が救いを求めたのは、モンスターを自由に創造できる新作VRMMO『M.M.O.』だった。 彼が選んだのは、戦闘能力ゼロの不遇職【モンスターメイカー】。周囲に笑われながらも、悠はゴミ同然の素材と無限の発想力を武器に、誰も見たことのないユニークなモンスターを次々と生み出していく。 その常識外れの力は、孤高の美少女聖騎士や抜け目のない商人少女といった仲間を引き寄せ、やがて彼の名はサーバーに轟く。しかし、それは同時にゲームの支配を目論む悪徳ギルドとの全面対決の始まりを意味していた。 これは、最弱の職から唯一無二の相棒を創り出し、仲間と世界を守るために戦う、創造と成り上がりの物語。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...