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第110話:一時代の終わり
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俺が『未来へのロードマップ』を提示してから数年が過ぎた。
王国は、その設計図に沿って着実に、しかし世界のどの国も追随できないほどの圧倒的なスピードで、その姿を変え続けていた。
大陸大戦の終結は人々の心の中に、一つの明確な時代の区切りを刻み込んでいた。
それは剣と魔法と、そして血筋や家柄といった古い価値観が絶対的な力を持っていた時代の、完全な終わりだった。
王都の街角を歩けば、その変化は誰の目にも明らかだった。
石畳の上を馬車と並んで俺が開発した初期型の蒸気自動車が、黒い煙を吐きながらゆっくりと走っている。
夜になればガス灯に取って代わった電灯が街を煌々と照らし、人々の活動時間は以前とは比較にならないほど長くなった。
カフェの片隅では、商人たちが電信で送られてきた遠く離れた街の最新の商品相場について熱心に議論を交わしている。
子供たちは身分に関わらず新設された公立学校へと通い、教科書を広げて新しい知識を貪欲に吸収していた。
そして人々の会話の中に当たり前のように新しい言葉が飛び交うようになっていた。
『科学』、『技術』、『経済』、そして『権利』。
価値観のパラダイムシフト。
人々はもはや自分たちの運命を神や王侯貴族の気まぐれに委ねるだけではなくなっていた。
自分たちの知恵と努力によって未来は変えることができるのだと。
その新しい時代の空気を、誰もが肌で感じていた。
そして、その変化の波は古い時代の象徴であったある者たちの存在意義をも、静かに、しかし確実に奪い去っていこうとしていた。
騎士団。
かつては国の守りの要として少年たちの憧れの的であった、栄光の騎士たち。
彼らの重い鎧も磨き上げられた長剣も、後装式ライフルと機関銃が支配する新しい時代の戦場においては、もはやほとんど意味をなさなくなっていた。
バルガスが校長を務める王立士官学校では、もはや伝統的な剣術や馬術は必須科目ではなくなっていた。
学生たちが学ぶのは、弾道学、測量術、そして情報に基づいた合理的な集団戦術。
騎士道精神は、ロマンティックな過去の遺物となりつつあった。
多くの古い騎士たちがその変化に戸惑い、あるいは憤慨し、自らその職を辞していった。
彼らは自分たちが信じてきた全てが否定されていく時代に、ついていくことができなかったのだ。
魔法もまた、その在り方を大きく変えようとしていた。
シルフィが学部長を務める王立魔導科学大学では、魔法はもはや神秘の奇跡ではなかった。
それはマナというエネルギーの性質を解明し、その効率を最大限に高めるための科学的な研究対象となっていた。
才能のある者だけが感覚的に使えた旧時代の魔法は、体系化され、理論化され、才能のない者でも訓練と知識によってある程度は扱える『魔導技術』へと姿を変えつつあった。
古代のエルフたちがそうであったように。
魔法は再び知性の力によって制御されるべき巨大なエネルギー源として、再定義されようとしていたのだ。
森の奥で古い伝統を守り続けていたエルフたちも、シルフィを通じて変わりゆく世界の姿を知り、少しずつ人間との交流を再開し始めていた。
一時代の終わり。
それは常に少しの寂しさと、そして新しい時代への大きな希望を伴って訪れる。
俺は公爵としての執務室の窓から、変わりゆく世界の姿を見下ろしていた。
俺が望んだ世界。
俺が創り上げた世界。
だが、俺は知っていた。
俺の仕事はまだ何も終わってはいないことを。
古い時代が終わった後に訪れるのは、必ずしも輝かしい未来だけではない。
新しい時代には、新しい時代の問題が必ず生まれるのだ。
貧富の格差、労働問題、そしてあまりにも強力になりすぎた科学技術という新しい力の暴走。
俺は、そのまだ見ぬ未来の課題を見据えていた。
そして、その課題を乗り越えていくための鍵もまた、俺たちの手の中にあることを確信していた。
それは、教育。
そして、対話。
人々が賢くなり、互いを理解し、共に未来を創り上げていこうとするその意志。
それこそが、どんな困難な時代をも乗り越えていくための唯一の力なのだと。
俺は執務室の机の上に置かれた一枚の設計図に目を落とした。
それはラジオ放送のための巨大な電波塔の設計図だった。
この塔が完成する時。
俺の声は、王の声は、新しい時代の思想は、この国に住まう全ての人々の元へと同時に届けられることになるだろう。
それは新しい対話の時代の始まりを告げる狼煙となるはずだ。
剣と魔法の時代は終わった。
これからは科学と理性が、そして人々の対話が世界を動かす時代。
その新しい時代の中心に、俺、リオ・アシュフォードは立っていた。
自らが終わらせてしまった古い時代へのわずかな哀悼と、自らが創り出す新しい時代への無限の責任をその両肩に感じながら。
王国は、その設計図に沿って着実に、しかし世界のどの国も追随できないほどの圧倒的なスピードで、その姿を変え続けていた。
大陸大戦の終結は人々の心の中に、一つの明確な時代の区切りを刻み込んでいた。
それは剣と魔法と、そして血筋や家柄といった古い価値観が絶対的な力を持っていた時代の、完全な終わりだった。
王都の街角を歩けば、その変化は誰の目にも明らかだった。
石畳の上を馬車と並んで俺が開発した初期型の蒸気自動車が、黒い煙を吐きながらゆっくりと走っている。
夜になればガス灯に取って代わった電灯が街を煌々と照らし、人々の活動時間は以前とは比較にならないほど長くなった。
カフェの片隅では、商人たちが電信で送られてきた遠く離れた街の最新の商品相場について熱心に議論を交わしている。
子供たちは身分に関わらず新設された公立学校へと通い、教科書を広げて新しい知識を貪欲に吸収していた。
そして人々の会話の中に当たり前のように新しい言葉が飛び交うようになっていた。
『科学』、『技術』、『経済』、そして『権利』。
価値観のパラダイムシフト。
人々はもはや自分たちの運命を神や王侯貴族の気まぐれに委ねるだけではなくなっていた。
自分たちの知恵と努力によって未来は変えることができるのだと。
その新しい時代の空気を、誰もが肌で感じていた。
そして、その変化の波は古い時代の象徴であったある者たちの存在意義をも、静かに、しかし確実に奪い去っていこうとしていた。
騎士団。
かつては国の守りの要として少年たちの憧れの的であった、栄光の騎士たち。
彼らの重い鎧も磨き上げられた長剣も、後装式ライフルと機関銃が支配する新しい時代の戦場においては、もはやほとんど意味をなさなくなっていた。
バルガスが校長を務める王立士官学校では、もはや伝統的な剣術や馬術は必須科目ではなくなっていた。
学生たちが学ぶのは、弾道学、測量術、そして情報に基づいた合理的な集団戦術。
騎士道精神は、ロマンティックな過去の遺物となりつつあった。
多くの古い騎士たちがその変化に戸惑い、あるいは憤慨し、自らその職を辞していった。
彼らは自分たちが信じてきた全てが否定されていく時代に、ついていくことができなかったのだ。
魔法もまた、その在り方を大きく変えようとしていた。
シルフィが学部長を務める王立魔導科学大学では、魔法はもはや神秘の奇跡ではなかった。
それはマナというエネルギーの性質を解明し、その効率を最大限に高めるための科学的な研究対象となっていた。
才能のある者だけが感覚的に使えた旧時代の魔法は、体系化され、理論化され、才能のない者でも訓練と知識によってある程度は扱える『魔導技術』へと姿を変えつつあった。
古代のエルフたちがそうであったように。
魔法は再び知性の力によって制御されるべき巨大なエネルギー源として、再定義されようとしていたのだ。
森の奥で古い伝統を守り続けていたエルフたちも、シルフィを通じて変わりゆく世界の姿を知り、少しずつ人間との交流を再開し始めていた。
一時代の終わり。
それは常に少しの寂しさと、そして新しい時代への大きな希望を伴って訪れる。
俺は公爵としての執務室の窓から、変わりゆく世界の姿を見下ろしていた。
俺が望んだ世界。
俺が創り上げた世界。
だが、俺は知っていた。
俺の仕事はまだ何も終わってはいないことを。
古い時代が終わった後に訪れるのは、必ずしも輝かしい未来だけではない。
新しい時代には、新しい時代の問題が必ず生まれるのだ。
貧富の格差、労働問題、そしてあまりにも強力になりすぎた科学技術という新しい力の暴走。
俺は、そのまだ見ぬ未来の課題を見据えていた。
そして、その課題を乗り越えていくための鍵もまた、俺たちの手の中にあることを確信していた。
それは、教育。
そして、対話。
人々が賢くなり、互いを理解し、共に未来を創り上げていこうとするその意志。
それこそが、どんな困難な時代をも乗り越えていくための唯一の力なのだと。
俺は執務室の机の上に置かれた一枚の設計図に目を落とした。
それはラジオ放送のための巨大な電波塔の設計図だった。
この塔が完成する時。
俺の声は、王の声は、新しい時代の思想は、この国に住まう全ての人々の元へと同時に届けられることになるだろう。
それは新しい対話の時代の始まりを告げる狼煙となるはずだ。
剣と魔法の時代は終わった。
これからは科学と理性が、そして人々の対話が世界を動かす時代。
その新しい時代の中心に、俺、リオ・アシュフォードは立っていた。
自らが終わらせてしまった古い時代へのわずかな哀悼と、自らが創り出す新しい時代への無限の責任をその両肩に感じながら。
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