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第二十五話 新たなる旅立ち
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モンスターメイカー協会の工房は、静かな興奮に包まれていた。俺の隣には、生まれたばかりのゴブリン・メイジ、ゴブがちょこんと座っている。その小さな背中を見ているだけで、胸の奥から温かいものが込み上げてきた。
「本当に……喋って、考えて、そこにいるんだな」
カエデが、感嘆のため息と共に呟いた。彼女はゴブの前にしゃがみ込むと、その大きな黒い瞳をじっと見つめている。
「ゴブ、と申します。マスターの剣となる、カエデ様。以後、お見知りおきを」
ゴブは、たどたどしいながらも、杖を胸に当てて騎士のような礼をした。その知性と礼儀正しさに、カエデは目を見開いた。
「すごい!すごいよユーさん!これ、歴史的大発見じゃない!?AIペットとか目じゃないよ!」
リオは完全に自分の世界に入り、ゴブのステータスや今後の育成方針について、ブツブツと独り言を呟いている。彼女の商人としての血が、ゴブという存在に計り知れない価値を見出しているのだろう。
その夜、俺たちは再び宿屋に戻り、ささやかな祝宴を開いた。ゴブの誕生と、俺たちのパーティの正式な結成を祝して。
テーブルの上には、リオが奮発した豪勢な料理が並ぶ。ゴブは初めて見る料理の数々に目を輝かせ、おずおずとフルーツに手を伸ばした。
「マスター、これ、食べてもいいのですか?」
「ああ、好きなだけ食べろ」
俺が言うと、ゴブは嬉しそうにフルーツを頬張り、その甘さに目を丸くしていた。その姿は、どこにでもいる子供のようで、見ているだけで心が和む。
「しかし、これからどうする?依頼は達成した。私たちの契約は、ここで一旦終わりということになるが」
カエデが、少しだけ寂しそうな響きを声に乗せて言った。
その言葉に、リオが待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「終わりだなんて、もったいない!ねえ、カエデさん、ユーさん。このまま、三人でパーティを続けない?」
彼女の提案は、俺が心の奥で望んでいたことと、全く同じだった。
「ユーさんの奇想天外な創造術と、それを実行に移すためのカエデさんの剣技。そして、二人が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、情報と物資でサポートする私の商才。このパーティ、はっきり言って、最強だよ!」
リオは自信満々に胸を張る。その言葉に、嘘や誇張はなかった。俺たち三人の力は、それぞれが全く違う方向を向いているからこそ、組み合わさった時に無限の可能性を生み出す。ゴブリンの洞窟での戦いが、それを証明していた。
「私も、異論はない」
カエデが、静かに、しかし力強く言った。
「ユー、あなたと共に戦うのは、退屈しない。次に何が飛び出すか、予測がつかないからな。それに、リオ。あなたの鑑定眼と情報は、私の剣だけでは見えない道を照らしてくれる」
彼女は、俺とリオの顔を順番に見た。その青い瞳には、仲間への確かな信頼の色が宿っている。
「私も、このパーティでなら、もっと高みを目指せる気がする」
二人の視線が、俺に集まる。
俺の答えは、もう決まっていた。
「俺も、二人と、そしてゴブと一緒に冒険を続けたいです。このパーティなら、どこへだって行ける。何だってできる。そんな気がするんです」
俺の言葉に、リオとカエデは花が咲くように微笑んだ。
こうして、俺たちのパーティは、ただのビジネスパートナーから、本当の意味での仲間になった。
「よし、決まりだね!じゃあ、次の目標を決めなくちゃ!」
リオが、パン!と軽快に手を叩いた。
「目的もなくぶらぶらするのもいいけど、やっぱり大きな目標があった方が、冒険はもっと楽しくなるからね!」
「次の目標、か」
カエデが腕を組む。
「フロンティア周辺のダンジョンは、あらかた攻略した。さらに腕を磨くなら、もっと遠くへ遠征する必要があるだろう」
その時、リオの瞳が、商人のそれになった。抜け目のない、それでいて夢見るような輝き。
「だったら、目指す場所は一つしかないよ。大陸中央に君臨する、世界最大の商業都市――『アステリア』!」
アステリア。その名前は、俺も聞いたことがあった。このM.M.O.の世界における、経済、文化、そして情報が集まる中心地。トップランカーと呼ばれるプレイヤーの多くが、その街を拠点に活動しているという。
「アステリアに行けば、全てが手に入るよ!」
リオは、目を輝かせながら語り始めた。
「世界中から集められた、未知のレア素材!伝説級の職人が打ち上げた、ユニークな武具!そして、まだ誰も知らないダンジョンや、隠されたクエストの情報!私たちの冒険を、次のステージに引き上げてくれるものが、あの街には全部あるんだ!」
彼女の言葉は、俺の創造意欲を強く刺激した。未知の素材。それは、俺にとって何よりも魅力的な響きだった。
カエデも、腕利きのプレイヤーが集まるという言葉に、心を動かされているようだった。彼女は、常に自分より強い相手を求めている。
「アステリア……。良い目標だ。フロンティアに留まっているより、遥かに成長できるだろう」
「マスター。アステリアとは、どんな場所なのですか?」
ゴブが、こてんと首を傾げて俺に尋ねた。
「俺にも分からない。でも、きっとすごいものがたくさんあって、すごい冒険が待ってる場所だ」
俺がそう答えると、ゴブは「冒険……!」と呟き、その黒い瞳を期待に輝かせた。
目標は決まった。新たなる旅立ちの時だ。
俺たちは翌日、アステリアへ向かうための準備を始めた。フロンティアからアステリアまでは、馬車を使っても一週間はかかる長い道のりだ。道中には、強力なモンスターが生息する危険なエリアも点在している。十分な準備が必要だった。
俺はまず、ゴブのために新しい装備を買い与えることにした。今まで着ていたボロ布のローブでは、防御力も心許ない。仕立屋で、彼の体に合った、魔力伝導率の高い上質なローブを注文した。深い青色のローブに身を包んだゴブは、どこかの魔法学院の生徒のようで、とても誇らしげに見えた。
カエデは、ゴブリンの洞窟での激戦で傷んだレイピアの手入れをしていた。俺は彼女に、道中で手に入れた金属質の鉱石とオイルを配合して創った【メタルリペア・スライム】を渡した。スライムが剣の傷を舐めるように修復し、新品同様の輝きを取り戻していく様子に、彼女は「あなたの創造術は、本当に便利だな」と感心しきりだった。
リオは、その情報網と商才をフルに活用していた。アステリアまでの最も安全で、かつ効率的なルートを調べ上げ、道中の街や村の情報を地図に書き込んでいく。旅に必要な食料やポーションも、彼女の交渉術で驚くほど安く仕入れてきた。彼女がいなければ、この旅は始まらなかっただろう。
準備期間は三日。その間に、俺たちはパーティとしての役割を自然と確立し、絆を深めていった。俺が創造という名の奇跡を起こし、カエデがその奇跡を現実の力に変える剣となる。そしてリオが、俺たちの冒険という名の船が、常に正しい航路を進めるよう導く羅針盤となる。
そして、旅立ちの朝。
俺たち三人と一匹は、フロンティアの南門の前に立っていた。アステリアへと続く、遥かなる道。その先には、どんな出会いと、どんな困難が待ち受けているのだろう。
「思えば、ここから始まったんだな」
カエデが、感慨深げに街を振り返った。
「そうですね。俺が、最弱のスライムを創ったのも、この街でした」
あの時の、心細さと悔しさ。それが、今の俺を形作っている。
リオが、にっと笑って俺たちの肩を叩いた。
「しんみりするのは、まだ早いよ!私たちの冒険は、まだ始まったばかりなんだから!」
彼女の言う通りだ。
俺は、隣に立つ小さな相棒の頭を、そっと撫でた。
「行くぞ、ゴブ」
「はい、マスター!」
ゴブは、杖を高く掲げて元気よく答えた。
俺たちは顔を見合わせ、頷き合う。
そして、まだ見ぬ地、アステリアへ向かって、力強く第一歩を踏み出した。
始まりの街で出会った、バラバラだった三つの魂。
それは、一つのパーティとなり、今、遥かなる地平線の先を目指す。
僕たちのオンラインは、まだ、始まったばかりだ。
「本当に……喋って、考えて、そこにいるんだな」
カエデが、感嘆のため息と共に呟いた。彼女はゴブの前にしゃがみ込むと、その大きな黒い瞳をじっと見つめている。
「ゴブ、と申します。マスターの剣となる、カエデ様。以後、お見知りおきを」
ゴブは、たどたどしいながらも、杖を胸に当てて騎士のような礼をした。その知性と礼儀正しさに、カエデは目を見開いた。
「すごい!すごいよユーさん!これ、歴史的大発見じゃない!?AIペットとか目じゃないよ!」
リオは完全に自分の世界に入り、ゴブのステータスや今後の育成方針について、ブツブツと独り言を呟いている。彼女の商人としての血が、ゴブという存在に計り知れない価値を見出しているのだろう。
その夜、俺たちは再び宿屋に戻り、ささやかな祝宴を開いた。ゴブの誕生と、俺たちのパーティの正式な結成を祝して。
テーブルの上には、リオが奮発した豪勢な料理が並ぶ。ゴブは初めて見る料理の数々に目を輝かせ、おずおずとフルーツに手を伸ばした。
「マスター、これ、食べてもいいのですか?」
「ああ、好きなだけ食べろ」
俺が言うと、ゴブは嬉しそうにフルーツを頬張り、その甘さに目を丸くしていた。その姿は、どこにでもいる子供のようで、見ているだけで心が和む。
「しかし、これからどうする?依頼は達成した。私たちの契約は、ここで一旦終わりということになるが」
カエデが、少しだけ寂しそうな響きを声に乗せて言った。
その言葉に、リオが待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「終わりだなんて、もったいない!ねえ、カエデさん、ユーさん。このまま、三人でパーティを続けない?」
彼女の提案は、俺が心の奥で望んでいたことと、全く同じだった。
「ユーさんの奇想天外な創造術と、それを実行に移すためのカエデさんの剣技。そして、二人が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、情報と物資でサポートする私の商才。このパーティ、はっきり言って、最強だよ!」
リオは自信満々に胸を張る。その言葉に、嘘や誇張はなかった。俺たち三人の力は、それぞれが全く違う方向を向いているからこそ、組み合わさった時に無限の可能性を生み出す。ゴブリンの洞窟での戦いが、それを証明していた。
「私も、異論はない」
カエデが、静かに、しかし力強く言った。
「ユー、あなたと共に戦うのは、退屈しない。次に何が飛び出すか、予測がつかないからな。それに、リオ。あなたの鑑定眼と情報は、私の剣だけでは見えない道を照らしてくれる」
彼女は、俺とリオの顔を順番に見た。その青い瞳には、仲間への確かな信頼の色が宿っている。
「私も、このパーティでなら、もっと高みを目指せる気がする」
二人の視線が、俺に集まる。
俺の答えは、もう決まっていた。
「俺も、二人と、そしてゴブと一緒に冒険を続けたいです。このパーティなら、どこへだって行ける。何だってできる。そんな気がするんです」
俺の言葉に、リオとカエデは花が咲くように微笑んだ。
こうして、俺たちのパーティは、ただのビジネスパートナーから、本当の意味での仲間になった。
「よし、決まりだね!じゃあ、次の目標を決めなくちゃ!」
リオが、パン!と軽快に手を叩いた。
「目的もなくぶらぶらするのもいいけど、やっぱり大きな目標があった方が、冒険はもっと楽しくなるからね!」
「次の目標、か」
カエデが腕を組む。
「フロンティア周辺のダンジョンは、あらかた攻略した。さらに腕を磨くなら、もっと遠くへ遠征する必要があるだろう」
その時、リオの瞳が、商人のそれになった。抜け目のない、それでいて夢見るような輝き。
「だったら、目指す場所は一つしかないよ。大陸中央に君臨する、世界最大の商業都市――『アステリア』!」
アステリア。その名前は、俺も聞いたことがあった。このM.M.O.の世界における、経済、文化、そして情報が集まる中心地。トップランカーと呼ばれるプレイヤーの多くが、その街を拠点に活動しているという。
「アステリアに行けば、全てが手に入るよ!」
リオは、目を輝かせながら語り始めた。
「世界中から集められた、未知のレア素材!伝説級の職人が打ち上げた、ユニークな武具!そして、まだ誰も知らないダンジョンや、隠されたクエストの情報!私たちの冒険を、次のステージに引き上げてくれるものが、あの街には全部あるんだ!」
彼女の言葉は、俺の創造意欲を強く刺激した。未知の素材。それは、俺にとって何よりも魅力的な響きだった。
カエデも、腕利きのプレイヤーが集まるという言葉に、心を動かされているようだった。彼女は、常に自分より強い相手を求めている。
「アステリア……。良い目標だ。フロンティアに留まっているより、遥かに成長できるだろう」
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ゴブが、こてんと首を傾げて俺に尋ねた。
「俺にも分からない。でも、きっとすごいものがたくさんあって、すごい冒険が待ってる場所だ」
俺がそう答えると、ゴブは「冒険……!」と呟き、その黒い瞳を期待に輝かせた。
目標は決まった。新たなる旅立ちの時だ。
俺たちは翌日、アステリアへ向かうための準備を始めた。フロンティアからアステリアまでは、馬車を使っても一週間はかかる長い道のりだ。道中には、強力なモンスターが生息する危険なエリアも点在している。十分な準備が必要だった。
俺はまず、ゴブのために新しい装備を買い与えることにした。今まで着ていたボロ布のローブでは、防御力も心許ない。仕立屋で、彼の体に合った、魔力伝導率の高い上質なローブを注文した。深い青色のローブに身を包んだゴブは、どこかの魔法学院の生徒のようで、とても誇らしげに見えた。
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そして、旅立ちの朝。
俺たち三人と一匹は、フロンティアの南門の前に立っていた。アステリアへと続く、遥かなる道。その先には、どんな出会いと、どんな困難が待ち受けているのだろう。
「思えば、ここから始まったんだな」
カエデが、感慨深げに街を振り返った。
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あの時の、心細さと悔しさ。それが、今の俺を形作っている。
リオが、にっと笑って俺たちの肩を叩いた。
「しんみりするのは、まだ早いよ!私たちの冒険は、まだ始まったばかりなんだから!」
彼女の言う通りだ。
俺は、隣に立つ小さな相棒の頭を、そっと撫でた。
「行くぞ、ゴブ」
「はい、マスター!」
ゴブは、杖を高く掲げて元気よく答えた。
俺たちは顔を見合わせ、頷き合う。
そして、まだ見ぬ地、アステリアへ向かって、力強く第一歩を踏み出した。
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