M.M.O. - Monster Maker Online

夏見ナイ

文字の大きさ
24 / 100

第二十四話 初めての相棒

しおりを挟む
ホブゴブリン・キングとの死闘から一夜。俺たちはフロンティアの街に戻り、宿屋の一室で祝杯をあげていた。といっても、未成年の俺たちが飲んでいるのはエールによく似たノンアルコールドリンクだ。

「いやー、それにしても昨日はすごかったね!私、もうダメかと思ったよ!」
リオが、興奮冷めやらぬ様子で身振り手振りを交えながら語る。

「全くだ。ユー、あなたの最後の創造がなければ、今頃私たちはデスペナルティでレベルダウンしていただろう。本当に、感謝する」
カエデも、硬い表情を崩して穏やかに微笑んでいた。

「二人こそ。カエデさんがキングを抑えてくれなければ、リオさんが弱点を教えてくれなければ、俺に創造の時間はありませんでした。三人で掴んだ勝利です」
俺が言うと、三人のグラスがカチン、と小気味よい音を立てて合わさった。

昨日の戦いで手に入れたドロップアイテムを換金し、俺たちはちょっとした富豪になっていた。依頼の成功報酬である五万Gもリオから受け取り、俺の所持金は、金欠だったことが嘘のように潤っている。

「それで、ユーさん。その『王の証』、どうするの?」
リオが、興味津々な瞳で俺の手元を見た。俺はテーブルの上に、あの禍々しいゴブリンの紋章を置いていた。

「これを使って、新しいモンスターを創ろうと思っています。今までのスライムとは、全く違うやつを」
俺の言葉に、二人の視線が集中する。

「違うやつ、というと?」
カエデが尋ねる。
俺は一度、言葉を区切ってから、ゆっくりと話し始めた。

「知性を持った、モンスターをです。簡単な命令を聞くだけじゃなく、自分で考え、俺と話し、共に成長していける。そんな、本当の意味での『相棒』を創りたいんです」

俺の夢物語のような言葉を、二人は真剣な眼差しで聞いていた。誰も、笑ったりはしない。俺なら、本当にそれを実現させてしまうかもしれないと、信じてくれているのが分かった。

「……面白い。あなたが創る『相棒』か。ぜひ、見てみたい」
カエデが、期待を込めて言った。
「うんうん!私も見たい!世紀の瞬間に立ち会わせてよ!」
リオも、目をキラキラさせて身を乗り出す。

二人の温かい視線に背中を押され、俺はモンスターメイカー協会の作業台へと向かった。カエデとリオも、興味深そうにその後ろをついてくる。

ギルドマスターのゲッペトは、俺が持ち帰った『王の証』を見て、腰を抜かさんばかりに驚いていた。
「こ、これはホブゴブリン・キングのドロップ品!まさか、あの洞窟を攻略してきたというのかね、ユー君!」
「ええ、まあ。仲間のおかげです」
俺が謙遜すると、ゲッペトは俺の後ろに立つカエデとリオを見て、なるほどと頷いた。

「聖騎士殿に、千里眼持ちの商人嬢か。とんでもないパーティを組んだもんじゃな。よかろう、作業台は自由に使いたまえ。わしも、歴史的創造の証人にならせてもらおう」

俺は作業台の前に立ち、深呼吸した。
これから行うのは、今までの創造とは次元が違う。一つの、新しい知性体をこの世に生み出す、神にも似た行為。失敗は許されない。

作業台の上に、『王の証』を置く。それだけで、周囲の空気がビリビリと震えるような魔力を放っていた。
次に、キングを倒した際に入手した『ホブゴブリンの心臓』と、シャーマンたちが持っていた『呪術の杖』を配置する。

知性の核となる『王の証』。生命力の源である『心臓』。そして、魔法の才能を与える『杖』。役者は、揃った。

「スキル、創造」

俺の意識が、深く、深く、創造の世界へと潜っていく。
光の設計図が、今までになく複雑で、巨大な姿となって現れた。それは、スライムのような単純な構造ではない。人間に近い骨格、筋肉、そして魔力を循環させるための回路。

俺は、自分の持てる全ての知識と、集中力を注ぎ込んだ。
ただ強いだけのモンスターじゃない。小柄で、魔術に特化した後衛タイプ。俺の指示を的確に理解し、時には俺に助言すら与えてくれる、賢い相棒。そんなイメージを、設計図に叩き込んでいく。

創造の光が、工房全体を包み込むほどの輝きを放った。ゲッペトも、カエデも、リオも、息を呑んでその光景を見守っている。

どれくらいの時間が経っただろうか。
眩い光が、ゆっくりと収束していく。そして、光が完全に消えた時、作業台の上には、一体の小さな人影が立っていた。

身長は、一メートルにも満たない。緑色の肌、尖った耳、そして大きな黒い瞳。ボロ布を継ぎ接ぎしたようなローブを纏い、その手には、彼の背丈ほどもある歪んだ木の杖が握られている。

それは、まさしくゴブリンだった。だが、洞窟で出会ったような、下劣で残忍な雰囲気は微塵もない。その大きな瞳には、生まれたばかりの赤子のような、純粋な好奇の光が宿っていた。

小さなゴブリンは、きょろきょろと周囲を見回し、やがて、創造主である俺の姿を捉えた。そして、おずおずと、たどたどしい声で、言葉を発した。

「……ア……ウ……? ア……ナタが……ワタシの……マスター……?」

その声を聞いた瞬間、俺の全身に鳥肌が立った。
言葉を話した。簡単な単語の羅列ではない。疑問形を持った、明確な意思疎通。

「そうだ。俺が、お前を創った、ユーだ」
俺が答えると、ゴブリンは嬉しそうに、こくりと頷いた。

「ユー……。ワタシの、名前は……?」
「お前の名前か……」

俺は少し考えてから、彼の特徴である魔法を使う姿を思い浮かべ、名前を付けた。
「お前の名前は、『ゴブ』だ」
「ゴブ……。ワタシ、ゴブ……!」

ゴブと名付けられたモンスターは、自分の名前を反芻し、嬉しそうに杖を掲げた。
俺は、震える手で鑑定ウィンドウを開いた。

【ゴブリン・メイジ】
ランク:ユニーク
HP: 150
MP: 300
スキル:ファイアボール、ウィンドカッター、マジックブースト、高速詠唱
ユニークスキル:言語理解、主従契約
【知性:B+】
【忠誠心:測定不能(MAX)】

そのステータスを見た瞬間、俺は勝利を確信した。
MPは、そこらの魔法使いプレイヤーを遥かに凌駕する数値。スキルも、攻撃魔法から補助魔法まで完備している。そして何より、ユニークスキル『言語理解』。これがあるから、彼は俺と話せるのだ。

「すごい……本当に、喋った……」
リオが、信じられないという顔で呟いている。
カエデも、驚きに目を見開いたまま固まっていた。

俺は作業台から降り、ゴブの前に膝をついた。そして、彼の小さな手を、そっと握った。
「これから、よろしくな。ゴブ」

「……はい!マスター!」
ゴブは、満面の笑みで答えた。

それは、俺にとって初めての、本当の意味での「相棒」が誕生した瞬間だった。
俺のスライム軍団に、強力な司令塔であり、絶対的な火力を誇る魔法使いが加わったのだ。

この小さな賢者と共に、俺はこれから、どんな冒険を繰り広げていくのだろう。
俺のモンスターメイカーとしての道は、新たな仲間を得て、さらに大きく、どこまでも広がっていく。そんな確かな予感に、俺の胸は満たされていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...