M.M.O. - Monster Maker Online

夏見ナイ

文字の大きさ
37 / 100

第三十七話 勝ち進め、相棒

しおりを挟む
モンスターコロッセオの初日。アステリアの円形闘技場は、かつてないほどの熱気に包まれていた。観客席は満員。プレイヤーだけでなく、多くのNPCたちも、この強者の祭典を一目見ようと詰めかけている。

「さあ、始まりました第一回モンスターコロッセオ!栄光の初代チャンピオンに輝くのは、一体どのチームか!」
実況のNPCが、朗々と声を張り上げる。

俺とゴブは、選手控え室で出番を待っていた。周囲には、屈強なモンスターを連れた参加者たちが、思い思いにウォーミングアップをしている。その誰もが、俺たちを一瞥すると、侮るような笑みを浮かべるか、あるいは興味すら示さなかった。

「マスター、少し、緊張しますね」
ゴブが、俺のローブの裾を握りしめながら言った。その小さな手は、わずかに震えている。

俺は、彼の頭を優しく撫でた。
「大丈夫だ、ゴブ。俺たちには、俺たちの戦い方がある。いつも通りやればいい」
「……はい!」

俺の言葉に、ゴブはこくりと頷き、ぎゅっと杖を握り直した。その瞳には、再び闘志の光が宿る。

やがて、俺たちの名前が呼ばれた。
「第一回戦、第八試合!東ゲートより、グリズリーテイマー、ゴードン選手と、その相棒、フォレストグリズリー!西ゲートより、モンスターメイカー、ユー選手と、その相棒、ゴブリン・メイジのゴブ選手の入場です!」

俺たちが闘技場へと足を踏み入れると、観客席から、どっと失笑が漏れた。
「本当にゴブリンで出てきたぜ」
「ちっちぇえなあ。あの熊の一撃で、ミンチだろ」

対戦相手のゴードンも、俺たちを見るなり、鼻で笑った。彼は筋骨隆々の獣人で、その隣には、四足で立つと俺の背丈ほどもある、巨大な森熊が唸り声を上げている。

「おいおい、マジかよ。俺の一回戦の相手が、こんなチビと出来損ないのゴブリンとはな。運がねえのは、どっちなんだか」
ゴードンは、明らかに俺たちを見下していた。

「試合開始!」
開始のゴングが鳴り響く。

「潰せ、グリズリー!」
ゴードンが叫ぶと、森熊は咆哮を上げ、地震のような地響きを立てながら、一直線にこちらへ突進してきた。

観客席から、悲鳴に近い歓声が上がる。誰もが、俺たちが一瞬で蹂蟙される光景を予想していただろう。

だが、俺とゴブは、冷静だった。
「ゴブ、足元に『粘着スライム』を」
「承知!」

俺は、ゴブの魔法の邪魔にならないよう、懐からスティッキー・スライムのコアを取り出し、地面にばら撒いた。ゴブの詠唱が、それに呼応する。
「創造魔法『マテリアル・ライズ』!」

ゴブが習得した、新たな魔法。それは、コアを触媒に、スライムを遠隔で、しかも複数体同時に召喚する、モンスターメイカー専用の高等魔法だった。

突進してくるグリズリーの足元に、十数体の粘着スライムが、突如として出現する。
「グオッ!?」
グリズリーは、足を取られて大きく体勢を崩した。その動きが、一瞬だけ止まる。

「今です!『ウィンドカッター』!」
ゴブの杖から、鋭い風の刃が連射される。狙いは、グリズリーの目。
「グギャアアア!」
視力を奪われたグリズリーは、苦し紛れに暴れ回る。

「くそっ、小賢しい真似を!」
ゴードンが、慌ててグリズリーに指示を飛ばす。

だが、俺たちの攻撃は、まだ終わらない。
「次だ、ゴブ!『硬質化スライム』で、壁を!」
「はい、マスター!」

再び、創造魔法が発動する。暴れ回るグリズリーの周囲に、岩のように硬いスライムが壁となって出現し、その動きを完全に封じ込めた。

身動きが取れず、目も見えない。巨大な熊は、今やただの的だ。

「とどめです、マスター!」
「ああ、やれ!」

ゴブが、杖を天に掲げる。その先端に、今までで最大の魔力が集束していく。
「喰らえ!『ファイアボール』!」

灼熱の火球が、スライムの壁に閉じ込められたグリズリーに直撃した。
轟音。爆炎。

炎が消えた時、そこに立っていたのは、黒焦げになったグリズリーが、光の粒子となって消えていく姿だった。

「……勝者、ユー選手!」
審判が、一瞬の沈黙の後、呆然としながら告げた。
観客席も、静まり返っていた。誰もが、目の前で起こった、あまりにも一方的な勝利を、信じられないという顔で見つめている。

やがて、誰からともなく、拍手が起こった。それは、瞬く間に闘技場全体を包む、割れんばかりの喝采へと変わっていった。

「すげえ……なんだ今の戦い方!」
「あのゴブリン、とんでもない魔法の使い手だぞ!」
「モンスターメイカーって、あんなことできるのかよ!?」

嘲笑は、驚嘆と称賛に変わっていた。
対戦相手のゴードンは、膝から崩れ落ち、ただ呆然と、俺とゴブを見つめている。

俺たちは、観客席に向かって、深く一礼した。
隣で、ゴブが俺のローブを、誇らしげに握っている。

これが、俺たちの戦い方だ。
一体の強力なモンスターに頼るのではなく、多種多様なスライムと、相棒の魔法を組み合わせ、戦場の盤面そのものを支配する。

俺たちの快進撃は、そこから始まった。
二回戦の相手は、無数の毒蛇を操るスネークサマナー。俺は、ゴブの創造魔法で『解毒スライム』を大量に召喚し、その毒を完全に無力化して勝利した。
三回戦の相手は、鉄壁の防御を誇るアイアンゴーレム使い。俺は、事前に用意していた『アシッド・スライム』でその装甲を溶かし、ゴブの魔法で内部から破壊した。

奇想天外な戦術で、次々と強敵を打ち破っていく、無名のモンスターメイカーと、小さなゴブリンの魔法使い。
その噂は、瞬く間にアステリア中に広まっていった。

「見たか、ユーさんの試合!最高だったよ!」
控え室に戻ると、リオが満面の笑みで駆け寄ってきた。
「ああ。見事だった。お前たちの力、侮っていたのは、あの観客だけではなかったようだな」
カエデも、満足げに頷いている。

仲間たちの称賛が、何よりも嬉しかった。

そして、ついに準々決勝。ベスト8を決める戦い。
俺たちの快進撃は、アステリア中の注目を集めていた。

「勝ち進め、相棒」
俺は、闘技場へ向かうゴブの背中に、そっと声をかけた。
「はい、マスター!僕たちの力、世界に示しましょう!」

ゴブは、力強く振り返った。その小さな体には、もはや一片の気後れもない。そこには、一人の誇り高き魔法使いの姿が、確かにあった。

俺たちの挑戦は、まだ終わらない。この祭典の主役は、俺たちだと証明するために。
俺とゴブは、新たな強敵が待つ、光の闘技場へと、再び足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

 神典日月神示 真実の物語

蔵屋
歴史・時代
 私は二人の方々の神憑りについて、今から25年前にその真実を知りました。 この方たちのお名前は 大本開祖•出口なお(でぐちなお)、 神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)です。  この日月神示(ひつきしんじ)または日尽神示(ひつくしんじ)は、神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)に「国常立尊(国之常立神)という高級神霊からの神示を自動書記によって記述したとされる書物のことです。  昭和19年から27年(昭和23・26年も無し)に一連の神示が降り、6年後の昭和33、34年に補巻とする1巻、さらに2年後に8巻の神示が降りたとされています。 その書物を纏めた書類です。  この書類は神国日本の未来の預言書なのだ。 私はこの日月神示(ひつきしんじ)に出会い、研究し始めてもう25年になります。  日月神示が降ろされた場所は麻賀多神社(まかたじんじゃ)です。日月神示の最初の第一帖と第二帖は第二次世界大戦中の昭和19年6月10日に、この神社の社務所で岡本天明が神憑りに合い自動書記さされたのです。 殆どが漢数字、独特の記号、若干のかな文字が混じった文体で構成され、抽象的な絵のみで書記されている「巻」もあります。 本巻38巻と補巻1巻の計39巻が既に発表されているが、他にも、神霊より発表を禁じられている「巻」が13巻あり、天明はこの未発表のものについて昭和36年に「或る時期が来れば発表を許されるものか、許されないのか、現在の所では不明であります」と語っています。 日月神示は、その難解さから、書記した天明自身も当初は、ほとんど読むことが出来なかったが、仲間の神典研究家や霊能者達の協力などで少しずつ解読が進み、天明亡き後も妻である岡本三典(1917年〈大正6年〉11月9日 ~2009年〈平成21年〉6月23日)の努力により、現在では一部を除きかなりの部分が解読されたと言われているます。しかし、一方では神示の中に「この筆示は8通りに読めるのであるぞ」と書かれていることもあり、解読法の一つに成功したという認識が関係者の間では一般的です。 そのために、仮訳という副題を添えての発表もありました。 なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。 縄文人の祝詞に「ひふみ祝詞(のりと)」という祝詞の歌があります。 日月神示はその登場以来、関係者や一部専門家を除きほとんど知られていなかったが、1990年代の初め頃より神典研究家で翻訳家の中矢伸一の著作などにより広く一般にも知られるようになってきたと言われています。 この小説は真実の物語です。 「神典日月神示(しんてんひつきしんじ)真実の物語」 どうぞ、お楽しみ下さい。 『神知りて 人の幸せ 祈るのみ 神の伝えし 愛善の道』

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...